【税理士が解説】マイホームの買換え特例|課税の繰延べと注意点

【税理士が解説】マイホームの買換え特例|課税の繰延べと注意点
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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マイホームの買換え特例|課税の繰延べのしくみと3,000万円控除との比較

マイホームを売却して新しい住宅に買い換えるとき、「税金が高くて買換え資金が足りない」とお悩みの方に向けて、課税を将来に繰り延べできる買換え特例の要件・計算方法・3,000万円控除との有利判定を完全ガイドします。この記事を読めば、自分にとってどの特例が有利かを判断できます。

🏆 結論:買換え特例は「税金の免除」ではなく「先送り」

買換え特例を使うと、売却時の譲渡所得税をゼロにできますが、将来の売却時にまとめて課税されます。譲渡所得が3,000万円以下なら3,000万円控除+軽減税率の方が有利なケースが多いため、安易に買換え特例を選ばず、将来の売却予定も含めて判断することが重要です。

買換え特例とは?課税繰延べの基本的なしくみ

マイホームの買換え特例(正式名称:特定の居住用財産の買換えの特例)とは、所有期間10年超のマイホームを売却して新しいマイホームに買い換えた場合に、譲渡所得への課税を将来に繰り延べることができる制度です。租税特別措置法第36条の2に規定されています。

ここで最も重要なのは、「課税の繰延べ」であって「税金の免除」ではないという点です。買換え先の新居を将来売却した際に、繰り延べていた分の譲渡所得税がまとめて課税されます。

課税繰延べのイメージ

たとえば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円の新居に買い換えた場合を考えてみましょう。通常であれば、4,000万円の譲渡益に対して約812万円(長期譲渡所得税率20.315%)の税金がかかります。しかし買換え特例を使えば、この時点では課税されません。

ただし、将来この新居を8,000万円で売却した場合、実際の譲渡益1,000万円に加えて、繰り延べていた4,000万円の譲渡益も合算された5,000万円が課税対象になります。つまり、税金が消えるのではなく、支払いのタイミングが後ろにずれるだけなのです。

💡 実務のポイント

実務では、「買換え特例を使って税金がゼロだった」と安心していたのに、10年後に新居を売却したら高額の税金が発生して驚く方が少なくありません。買換え特例を選択する際は、「この新居を将来売却する予定があるかどうか」を必ず考慮に入れることが重要です。一生住み続ける前提なら有利になりますが、将来の売却可能性があるなら3,000万円控除の方が総額で得になるケースがほとんどです。

「非課税」と「課税繰延べ」の違い

比較項目 3,000万円特別控除(非課税型) 買換え特例(課税繰延型)
効果3,000万円まで税金が消える税金の支払いを将来に先送り
将来の売却時新居の取得費はそのまま使える旧居の取得費を引き継ぐ(低い)
譲渡所得3,000万円以下税額ゼロ(完全非課税)税額ゼロ(ただし将来課税)
適用期限恒久制度令和7年12月31日まで
所有期間要件なし10年超(所有・居住とも)

なお、マイホーム売却で使える他の特例については「不動産売却時の税金|譲渡所得の計算方法と使える特例一覧」で一覧にまとめていますので、あわせてご確認ください。

適用要件チェックリスト|売る側・買う側・手続きの3分類

買換え特例を使うには、売る側のマイホーム・買う側の新居・手続きの3つの面で要件を満たす必要があります。1つでも外れると適用できないため、事前にすべて確認しましょう。

売却するマイホームの要件(6項目)

No. チェック項目 補足・注意点
1自分が住んでいるマイホームの売却であること以前住んでいた場合は住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却
2所有期間が売却した年の1月1日時点で10年超「10年」は暦年で判定。2016年3月取得→2026年1月1日時点で9年のため不可
3居住期間が通算10年以上継続していなくてもよい。転勤等の中断期間があっても合計10年以上あればOK
4売却代金が1億円以下固定資産税精算金を含む。前年・前々年の一部売却分も合算して判定
5売手と買手が親子・夫婦等の特別関係でないこと生計を一にする親族・内縁関係も含む
6売却年の前年・前々年に3,000万円控除や軽減税率の特例を受けていないこと過去に居住用財産の損益通算・繰越控除の適用も不可

買換え先の新居の要件(4項目)

No. チェック項目 補足・注意点
7建物の床面積が50㎡以上登記簿面積で判定。マンションは専有部分の面積
8土地の面積が500㎡以下500㎡を超える部分は特例の対象外
9中古住宅の場合は耐火建築物以外は築25年以内 or 新耐震基準適合耐火建築物(RC造等)には築年数制限なし
10省エネ基準を満たすこと(2024年1月以降の建築確認の新築住宅)令和4年度税制改正で追加。既存住宅には適用なし

手続き・期間の要件(2項目)

No. チェック項目 補足・注意点
11売却した年の前年〜翌年の3年以内に新居を取得契約日ではなく引渡し日で判定
12取得した翌年の12月31日までに新居に居住開始売った年またはその前年に取得→翌年12月31日まで。翌年に取得→取得した翌年12月31日まで

⚠️ 注意

居住期間10年以上の要件は「継続」ではなく「通算」で判定されます。転勤で一時的に別の場所に住んでいた期間があっても、合計10年以上あれば要件を満たします。ただし、住民票だけを残して実際には住んでいない場合は税務上問題になるため、実態に基づいた居住期間で計算してください。

3,000万円控除の詳しい適用要件については「マイホーム売却の3,000万円特別控除|適用要件と注意点」をご確認ください。

計算方法|売却額と買換え額の関係で2パターン

買換え特例の計算は、売却したマイホームの金額と買い換えた新居の金額の大小関係で分岐します。

パターン1:売却額 ≦ 買換え額(高い物件に買い換えた場合)

売却額以上の物件に買い換えた場合、売却時点では課税されません。これが最もシンプルなケースです。

🧮 計算例:高い物件に買い換えた場合

旧居の取得費:2,000万円/旧居の売却額:5,000万円/新居の購入額:7,000万円
→ 売却額5,000万円 ≦ 買換え額7,000万円のため、売却時の譲渡所得税はゼロ
ただし、新居の取得価額は7,000万円ではなく、旧居の取得費2,000万円を引き継ぎます。

パターン2:売却額 > 買換え額(安い物件に買い換えた場合)

売却額より安い物件に買い換えた場合は、差額部分に課税されます。計算は3ステップです。

📐 シミュレーション前提条件

  • 旧居の取得費:1,500万円
  • 旧居の売却額:6,000万円
  • 譲渡費用:300万円
  • 新居の購入額:4,000万円
ステップ 計算内容 金額
①収入金額売却額6,000万円 − 買換え額4,000万円2,000万円
②必要経費(取得費1,500万円+譲渡費用300万円)×(2,000万円÷6,000万円)600万円
③課税譲渡所得①2,000万円 − ②600万円1,400万円
税額(長期20.315%)1,400万円 × 20.315%約284万円

参考: 国税庁「No.3358 売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき」

通常の譲渡所得計算では4,200万円(=6,000万円−1,500万円−300万円)に課税されるところ、買換え特例を適用することで1,400万円まで圧縮できます。ただし残りの2,800万円分は将来に繰り延べられている点に注意してください。

取得価額の引継ぎ|将来の税負担が変わるしくみ

買換え特例の最大の注意点は、新居の取得価額が実際の購入金額ではなく、旧居の取得費をベースに計算されるという点です。これを「取得価額の引継ぎ」と呼びます。

取得価額引継ぎの計算方法

パターン1(売却額≦買換え額)の場合、新居の取得価額は以下の計算式で求めます。

新居の取得価額 = 旧居の取得費 + 譲渡費用 +(新居の購入額 − 旧居の売却額)

先ほどの例(旧居取得費2,000万円・売却額5,000万円・新居購入額7,000万円・譲渡費用200万円)で計算すると、新居の取得価額は2,000万円+200万円+(7,000万円−5,000万円)=4,200万円となります。実際に7,000万円で購入したにもかかわらず、税務上の取得価額は4,200万円しかないのです。

取得価額引継ぎのbefore/after表

項目 買換え特例を使った場合 3,000万円控除を使った場合
売却時の税額0円約203万円 ※
新居の取得価額4,200万円7,000万円
将来8,000万円で売却した場合の譲渡益3,800万円1,000万円
将来の売却時の税額(長期20.315%)約772万円約203万円
2回の合計税額約772万円約406万円

※3,000万円控除+軽減税率適用。譲渡所得4,800万円−3,000万円=1,800万円のうち、6,000万円以下部分に14.21%を適用して約203万円(概算)。将来は再度3,000万円控除を使えるケースを想定

この表を見ると、将来売却の可能性がある場合は、買換え特例よりも3,000万円控除+軽減税率を使った方が2回分の合計税額が低くなるケースが多いことがわかります。

💡 実務のポイント

相続で取得した不動産を売却する際、被相続人(故人)が過去に買換え特例を使っていたかどうかが問題になることがあります。相続人はその事実を知らないケースが多く、税務署で「取得価額引継整理票」を確認するまで、取得費が極端に低いことに気づかないことがあります。親の確定申告書が残っていれば必ず確認しましょう。

参考: 国税庁「No.3362 居住用財産の買換えの特例を受けて買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算」

3,000万円控除+軽減税率との有利判定シミュレーション

買換え特例を使うか、3,000万円控除+軽減税率の特例を使うかは選択制です(併用不可)。どちらが有利かは「譲渡所得の額」と「将来の売却予定」の2つの要素で決まります。

有利判定の3パターン

📐 シミュレーション前提条件

  • いずれも所有期間10年超・居住期間10年以上
  • 売却した物件より高い物件に買い換え(売却額≦買換え額)
  • 将来の売却時にも3,000万円控除を使えるケースと使えないケースの両方を検討
  • 税率:長期20.315%、軽減税率14.21%(6,000万円以下)/ 20.315%(6,000万円超)
ケース 譲渡所得 将来の売却 有利な選択肢 理由
ケース12,000万円予定あり3,000万円控除控除で税額ゼロ&将来も正規の取得費が使える
ケース25,000万円予定なし買換え特例売却予定がなければ繰延べのまま。3,000万円控除では約338万円課税
ケース35,000万円10年後に予定ありケースバイケース将来の新居の値上がり幅次第。税理士への相談を推奨

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

💡 実務のポイント

年間100件以上の不動産譲渡を扱う中で、買換え特例が本当に有利だったケースは実は少数派です。多くの方は、譲渡所得が3,000万円以下に収まるため、3,000万円控除だけで税額ゼロになります。買換え特例が真に有利なのは、「譲渡所得が3,000万円を大幅に超える」かつ「新居を一生手放す予定がない」というケースに限られます。迷ったら、まず3,000万円控除を適用した場合の税額を計算してみることをおすすめします。

軽減税率の特例の詳しい計算方法については「マイホーム売却の軽減税率の特例(10年超所有)」で解説しています。

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売った金額より少ない金額で買い換えた場合の計算例

買換え先の新居が旧居の売却額より安い場合は、差額部分に課税されます。この計算は実務でも複雑に感じる方が多いので、具体的な数値で解説します。

具体例:6,000万円で売って4,000万円の新居を購入

📐 計算の前提

  • 旧居の取得費:1,500万円(建物の減価償却後)
  • 旧居の売却額:6,000万円
  • 譲渡費用(仲介手数料等):300万円
  • 新居の購入額:4,000万円
  • 所有期間:15年(長期譲渡所得・軽減税率適用可能)

ステップ1:収入金額を計算

収入金額 = 売却額 − 買換え額 = 6,000万円 − 4,000万円 = 2,000万円

ステップ2:必要経費を計算

必要経費 =(取得費 + 譲渡費用)×(収入金額 ÷ 売却額)=(1,500万円 + 300万円)×(2,000万円 ÷ 6,000万円)= 600万円

ステップ3:課税譲渡所得を計算

課税譲渡所得 = 収入金額 − 必要経費 = 2,000万円 − 600万円 = 1,400万円

ステップ4:税額を計算

税額 = 1,400万円 × 20.315% = 約284万円

通常の譲渡所得計算との比較

項目 買換え特例 3,000万円控除+軽減税率 特例なし
課税譲渡所得1,400万円1,200万円4,200万円
税額約284万円約170万円約853万円
将来の取得費への影響旧居の取得費を引継ぎ新居の購入額をそのまま使える新居の購入額をそのまま使える

※3,000万円控除+軽減税率の計算:4,200万円−3,000万円=1,200万円×14.21%=約170万円

安い物件に買い換えた場合は、3,000万円控除+軽減税率の方が売却時の税額も低く、将来の取得費への悪影響もないため、ほとんどのケースで3,000万円控除が有利になります。

店舗併用住宅の買換え|面積按分のルール

自宅の一部を事業用として使っている店舗併用住宅の場合、居住用部分のみが買換え特例の対象となります。按分計算が必要になるため、ルールを確認しておきましょう。

居住用部分の判定方法

居住用部分の割合は、原則として床面積比で按分します。たとえば、1階が店舗(50㎡)・2階が住居(100㎡)の場合、居住用割合は100㎡÷150㎡=約67%となります。

90%ルール(みなし居住用)

居住用部分の面積が全体の90%以上の場合は、全体を居住用とみなして特例を適用できます。これを「90%ルール」と呼びます。

居住用割合 特例の適用 計算上の取扱い
90%以上全体に適用按分不要。全額を居住用として計算
50%超〜90%未満居住用部分のみ適用面積按分で計算。事業用部分は事業用の特例を別途検討
50%以下居住用部分のみ適用同上。主に事業用資産として扱われる

💡 実務のポイント

店舗併用住宅の買換えでは、居住用部分には「マイホームの買換え特例」、事業用部分には「事業用資産の買換え特例(措法37条)」と、2つの特例を併用できる可能性があります。ただし、それぞれ別々の要件を満たす必要があるため、税理士に相談されることをおすすめします。事業用資産の買換え特例については「事業用資産の買換え特例|課税の繰延べと適用要件」で解説しています。

譲渡した年に買換えができなかった場合の対応

マイホームを売却した年に新居が見つからず、翌年に買い換える場合もあります。この場合、確定申告の時点で買換え資産を取得していないため、特別な手続きが必要です。

買換え資産を翌年に取得する場合の手続き

確定申告書に「買換(代替)資産の明細書」を添付して、取得予定の新居の情報(取得予定年月日・取得価額の見積額など)を記載します。そのうえで、見積額に基づいて買換え特例の適用を受けます。

翌年に実際に取得した金額が見積額と異なる場合は、修正申告または更正の請求が必要になります。

取得期限内に買換えができなかった場合

期限内に新居を取得できなかった場合は、買換え特例の適用が取り消されます。この場合、修正申告書の提出と、繰り延べていた譲渡所得税の納付が必要です。さらに、延滞税も加算されるため、取得期限には十分な余裕をもって計画を立ててください。

⚠️ 注意

買換え特例の適用を受けた後に買換えができなかった場合、やむを得ない事情(災害等)がない限り、3,000万円控除や軽減税率の特例に変更することはできません。つまり、買換え特例を選択した時点で他の特例は使えなくなります。この「後戻りできない」リスクも考慮したうえで特例を選択してください。

確定申告の手続きと必要書類

買換え特例の適用を受けるには、売却した翌年の確定申告で所定の書類を提出する必要があります。

必要書類一覧

書類 入手先 注意点
確定申告書(分離課税用)税務署 / e-Tax第三表を使用
譲渡所得の内訳書税務署 / 国税庁HP売却・購入の両方の情報を記入
旧居の登記事項証明書法務局所有期間・面積の確認に使用
新居の登記事項証明書法務局床面積50㎡以上・築年数の確認
売買契約書のコピー(旧居・新居)手元保管取得費・売却額の証明
住民票の写し市区町村居住期間の確認
耐震基準適合証明書(中古住宅の場合)建築士等耐火建築物以外の中古住宅で築25年超の場合

確定申告の基本的な流れについては「確定申告の基礎知識」で詳しく解説しています。

他の特例との併用可否一覧

マイホームの買換え特例は、他の居住用財産の特例との併用が制限されています。併用の可否を一覧表で確認しておきましょう。

特例の種類 買換え特例との併用 備考
3,000万円特別控除×選択制。どちらか一方のみ
軽減税率の特例(10年超所有)×3,000万円控除とセットで使う制度
住宅ローン控除×入居年とその前後2年ずつの5年間は併用不可
譲渡損失の損益通算・繰越控除×損失が出た場合の特例のため前提が異なる
収用等の5,000万円控除×収用の場合は収用等の特例を検討
空き家の3,000万円控除×相続した空き家の売却に使う別制度
取得費加算の特例相続税の取得費加算は併用可能

マイホーム売却で損失が出た場合の特例については「マイホーム売却で損失が出たときの特例|損益通算と繰越控除」をご確認ください。

よくある失敗パターンと対策

買換え特例に関して、実務でよく見かける失敗パターンを5つ紹介します。

失敗パターン 問題点 対策
①将来の売却を考えずに買換え特例を選択10年後に新居を売却したら繰延べ分が一気に課税売却前に「一生住むか」を冷静に判断。将来の可能性があれば3,000万円控除を選択
②所有期間の判定ミス「10年住んだから10年超」と思ったが、1月1日基準で10年以下だった売却年の1月1日時点で計算。登記簿の取得日を確認
③居住期間と所有期間を混同所有期間は10年超だが居住期間が10年未満で不適用買換え特例は「所有10年超」かつ「居住10年以上」の両方が必要
④売却代金が1億円超になるケース前年の庭先売却分を含めると1億円超で適用不可前年・前々年・翌年・翌々年の一部売却も合算されるため要確認
⑤確定申告を忘れて特例を逃す「税額ゼロだから申告不要」と誤解特例の適用には必ず確定申告が必要。税額ゼロでも申告が条件

💡 実務のポイント

現場でよく見かけるのが、「買換え特例で税金がゼロだから確定申告は不要」という誤解です。買換え特例に限らず、居住用財産の譲渡の特例は確定申告が適用の条件になっています。申告しなければ特例は使えず、後から気づいても期限後申告では認められないケースもあります。不動産を売却したら、利益・損失にかかわらず確定申告を検討してください。

買換え特例を使うべきケースの判断基準

最終的に買換え特例を選ぶべきかどうかは、以下の判断基準で検討してください。

買換え特例が有利になる条件

判断ポイント 買換え特例が有利 3,000万円控除が有利
譲渡所得の額3,000万円を大幅に超える3,000万円以下
新居の将来売却一生住む予定将来売却する可能性がある
新居の価格旧居と同額以上旧居より安い
今の手元資金税金を払う余裕がない税金を払っても問題ない
相続の見通し相続人も住み続ける予定相続人が売却する可能性あり

譲渡所得の基本的な計算方法については「譲渡所得とは?計算方法・税率・確定申告のやり方を完全解説」で体系的に解説しています。

よくある質問(FAQ)

買換え特例は「税金が免除される」のですか?
いいえ、免除ではなく「課税の繰延べ」です。将来、買い換えた新居を売却した際に、繰り延べていた分の譲渡所得税がまとめて課税されます。一生売却しなければ実質的に課税されませんが、相続人が売却する可能性もあるため、「税金が消える」とは考えないでください。
買換え特例と3,000万円控除は併用できますか?
併用はできません。選択制となっており、どちらか一方を選ぶ必要があります。一般的には、譲渡所得が3,000万円以下の場合は3,000万円控除の方が有利です。譲渡所得が3,000万円を大幅に超え、かつ新居を将来売却する予定がない場合に限り、買換え特例の方が有利になります。
居住期間は「連続10年」でなければいけませんか?
連続している必要はありません。転勤等で一時的に別の場所に住んでいた期間があっても、通算で10年以上あれば要件を満たします。ただし、実際に住んでいない期間に住民票だけ残す行為は、税務上問題になりますのでご注意ください。
売却代金が1億円を超えると買換え特例は使えませんか?
はい、売却代金が1億円を超えると適用できません。さらに、前年・前々年に敷地の一部を売却している場合は、その金額も合算して1億円以下かどうかを判定します。固定資産税精算金も売却代金に含まれるため、ギリギリの金額の場合は要注意です。
買い換え先の住宅ローンと住宅ローン控除は併用できますか?
買換え特例と住宅ローン控除は併用できません。新居の購入に住宅ローンを使う場合、買換え特例を選ぶと住宅ローン控除が使えなくなります。住宅ローン控除は最大13年間にわたって所得税が軽減される制度のため、総額で比較することが重要です。
買換え特例を適用した後に、やっぱり3,000万円控除に変更できますか?
原則として変更できません。確定申告で買換え特例の適用を受けた後に、3,000万円控除に切り替えることは認められていません。そのため、確定申告前にどちらの特例が有利かを十分に検討することが重要です。
買い換えた新居を相続人が売却する場合、取得費はどうなりますか?
相続人は、被相続人が引き継いでいた取得価額をそのまま引き継ぎます。つまり、実際の新居の購入額ではなく、買換え特例適用時に引き継いだ旧居の取得費がベースになります。そのため、相続人が売却する際に想定以上の譲渡所得税が発生する可能性があります。
店舗併用住宅でも買換え特例は使えますか?
居住用部分のみ適用可能です。居住用部分の面積が全体の90%以上であれば全体を居住用とみなせますが、90%未満の場合は面積按分が必要です。事業用部分については、事業用資産の買換え特例(措法37条)の適用を別途検討できます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 買換え特例は「税金の免除」ではなく「課税の繰延べ」。将来の売却時にまとめて課税される
  • 適用要件は所有期間10年超+居住期間10年以上+売却代金1億円以下の3点がポイント
  • 取得価額の引継ぎにより、新居の税務上の取得費が実際の購入額より低くなる
  • 譲渡所得3,000万円以下なら、3,000万円控除+軽減税率の方がほとんどのケースで有利
  • 買換え特例を選択すると、3,000万円控除・軽減税率・住宅ローン控除が使えなくなる
  • 確定申告は税額ゼロでも必須。申告しなければ特例は適用されない
  • 特例選択は後戻りできないため、将来の売却可能性・相続まで含めた長期的な視点で判断する

マイホームの買換えは一生に何度もない大きな取引です。特例の選択を誤ると、数百万円単位の税負担の差が生じることもあります。判断に迷う場合は、必ず不動産譲渡の実務に詳しい税理士に相談してください。

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