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不動産売却時にかかる税金(譲渡所得税・印紙税・登録免許税等)を完全ガイド。取得費5%ルールの落とし穴、店舗併用住宅の按分計算、保証債務履行による売却の特例、低額譲渡の問題まで、税理士が実務目線で解説します。
🏆 結論:不動産売却にかかる税金は4種類・特例適用で大幅節税が可能
不動産売却時にかかる税金は、①譲渡所得税(所得税・住民税の20.315%または39.63%)、②印紙税(契約書に貼付)、③登録免許税(抵当権抹消等)、④消費税(個人売却は原則非課税)の4種類。最大の税金は譲渡所得税で、所有期間5年超なら20.315%・5年以下なら39.63%と倍違います。取得費が不明な場合の5%ルールは大きな税負担増を招くため、可能な限り実額立証が鉄則。マイホーム3,000万円特別控除・空き家3,000万円特別控除・10年超軽減税率・買換え特例・平成21年・22年取得土地の1,000万円特別控除など、複数の特例が用意されており、適用要件を満たせば数百万円〜数千万円の節税が可能です。本記事では税金の全体像と特例の使い分けを完全解説します。
不動産売却時にかかる税金4種類
不動産を売却すると、譲渡所得税・印紙税・登録免許税等の複数の税金が発生します。譲渡所得税は売却益(譲渡所得)に対し、印紙税は契約書に対し、登録免許税は登記手続きに対して課税されます。
4種類の税金と概要
| 税金 | 課税対象 | 税額の目安 |
|---|---|---|
| ①譲渡所得税(所得税+住民税) | 売却益(譲渡所得) | 譲渡所得×20.315% or 39.63% |
| ②印紙税 | 売買契約書 | 1万円〜60万円(契約金額別) |
| ③登録免許税 | 抵当権抹消・所有権移転登記等 | 1物件1,000円〜固定資産税評価額×2% |
| ④消費税 | 建物部分(個人売却は原則非課税) | 建物価額×10%(課税事業者の場合) |
個人売却と事業者売却の違い
| 区分 | 個人(一般人) | 個人事業主・法人 |
|---|---|---|
| 所得税 | 譲渡所得(分離課税) | 事業所得(棚卸資産)or 譲渡所得 |
| 消費税 | 原則非課税 | 建物部分は課税(課税事業者の場合) |
| 減価償却 | 非業務用は累計の計算 | 事業用は帳簿の簿価で計算 |
💡 実務のポイント
個人がマイホームを売却する場合、消費税は非課税(基準期間の課税売上高1,000万円以下)ですが、不動産業者として継続的に不動産を売買している個人や、課税事業者となっている個人事業主・法人が建物を売却する場合は、建物部分に10%の消費税が課税されます。実務では「個人の自宅売却は譲渡所得税だけ」、「投資用不動産の連続売却は事業所得+消費税」と覚えておくと判断ミスを防げます。インボイス制度の影響もあり、課税事業者である不動産オーナーが法人へ売却する際は、建物分の消費税を明確に切り分けて契約書に記載することが重要です。
譲渡所得税の計算式と税率
不動産売却時の最大の税金は譲渡所得税です。譲渡所得=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除のシンプル構造ですが、所有期間で税率が大きく異なります。詳しくは譲渡所得の基礎記事もご覧ください。
計算式と適用税率
🧮 譲渡所得税の計算式
譲渡所得 = 収入金額 − (取得費 + 譲渡費用) − 特別控除
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率(20.315% or 39.63%)
所有期間の判定:
譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超 → 長期譲渡(20.315%)
譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年以下 → 短期譲渡(39.63%)
具体的なシミュレーション(マイホーム3,000万円控除なし)
🧮 売却益2,000万円のケース
前提: 売却額5,000万円、取得費2,500万円、譲渡費用500万円
譲渡所得 = 5,000 − (2,500 + 500) = 2,000万円
短期譲渡(5年以下): 2,000万 × 39.63% = 約793万円
長期譲渡(5年超): 2,000万 × 20.315% = 約406万円
差額:約387万円
収入金額に含める金額(国税庁No.3214)
不動産売却時の「収入金額」には、売買契約書の金額だけでなく、固定資産税の精算金等も含まれます。収入金額の認識を誤ると譲渡所得が小さく計算されて税務調査で否認される可能性があるため、注意が必要です。
収入金額に含めるもの・含めないもの
| 含めるもの | 含めないもの |
|---|---|
| 売買契約書の売却価額 | 譲渡資産の補修費(売主負担) |
| 固定資産税・都市計画税の精算金 | 譲渡費用に含まれる支出 |
| 未収管理費の精算金 | − |
| 残置物の買取代金 | − |
| 借家人立退料の負担(売主負担分) | − |
⚠️ 固定資産税の精算金は要注意
不動産売買では、引渡日を基準に固定資産税・都市計画税を日割り精算するのが慣例です。例えば3,000万円で売却し、固定資産税精算金25万円を買主から受領した場合、譲渡収入は3,025万円となります(3,000万円ではない)。「固定資産税の精算金は税金返還だから収入ではない」と勘違いするケースが多発し、税務調査で指摘されています。実務では契約書・決済確認書を精査し、すべての金銭授受を譲渡収入に反映することが重要です。
取得費の範囲|5%ルールの落とし穴
取得費は売却益の計算で重要な要素です。取得費を多く積み上げるほど譲渡所得が小さくなり、節税効果が大きくなります。古い物件で取得費不明の場合の5%ルールは、想定以上の税負担を招くため要注意です。
取得費に含めるべき項目
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| ①土地・建物の購入代金 | 売買契約書記載の金額(消費税込) |
| ②不動産取得税 | 取得後の不動産取得税(都道府県税) |
| ③登録免許税・登記費用 | 所有権移転登記・抵当権設定登記等 |
| ④仲介手数料(取得時) | 取得時の不動産仲介業者への報酬 |
| ⑤司法書士報酬 | 取得時の登記費用 |
| ⑥設備費・改良費(資本的支出) | 増築・改築・スケルトンリフォーム等 |
| ⑦借入金利子(非業務用) | 取得時から使用開始時までの利子 |
| ⑧契約解除違約金(売主側) | 他物件の購入をキャンセルした際の違約金 |
5%ルールの仕組みと節税ロス
⚠️ 5%概算取得費は最後の手段
取得時の契約書を紛失等で取得費が不明な場合、売却価額の5%を概算取得費として扱う特例(措置法第31条の4)があります。ただし、この場合譲渡所得が大きく計算され、税負担も大きくなります。例えば売却額5,000万円なら概算取得費250万円のみとなり、譲渡所得が4,750万円超に膨らみます。実務では数百万円〜数千万円の節税ロスとなるため、最後の手段にとどめるべきです。
取得費を立証する6つの代替手段
| 手段 | 入手先 |
|---|---|
| ①住宅ローン契約書(借入時の金額) | 銀行・金融機関 |
| ②登記簿の抵当権設定額 | 法務局・登記情報提供サービス |
| ③通帳の振込記録(購入代金の支払) | 本人保管の通帳(10年保管) |
| ④契約書のコピー(売主・買主・仲介業者保管) | 不動産業者・売主 |
| ⑤建築確認書類(建築時の費用) | 市区町村・本人保管 |
| ⑥固定資産税評価額の推移 | 市区町村役場 |
譲渡費用の範囲
譲渡費用は資産の譲渡に直接要した費用で、譲渡所得を圧縮できる重要な要素です。範囲は所得税基本通達33-7に規定されています。
譲渡費用に含めるもの・含めないもの
| 含めるもの | 含めないもの |
|---|---|
| 仲介手数料(売却時) | 譲渡資産の修繕費・固定資産税(売主負担) |
| 印紙税(売主負担分) | 確定申告書の作成費用 |
| 借家人立退料 | 譲渡資産の維持管理費 |
| 土地譲渡のための建物取り壊し費用 | 譲渡時に支払う引っ越し費用(売主の私的支出) |
| 譲渡契約解除の違約金(売主負担) | − |
| 司法書士報酬(売却の登記費用) | − |
店舗併用住宅を売ったときの按分計算
マイホームの一部を店舗・事務所として使用していた場合(店舗併用住宅)、その家屋の譲渡所得計算では、居住用部分と事業用部分を区分して計算します。マイホーム3,000万円特別控除は居住用部分のみに適用される点が重要です。
店舗併用住宅の按分計算方法
| 按分項目 | 按分方法 |
|---|---|
| 建物面積 | 居住用床面積 ÷ 全床面積 |
| 土地面積 | 建物の按分割合に準じて按分 |
| 居住用割合90%以上の特例 | 全部を居住用として扱う(基通35-6) |
| 居住用部分 | 3,000万円特別控除・10年超軽減税率適用可 |
| 事業用部分 | 事業用譲渡所得として通常の譲渡所得課税 |
💡 実務のポイント
実務では「1階が店舗・2階が住居の併用住宅」の売却で按分計算ミスが多発します。重要なのが「居住用割合90%以上の特例」で、店舗部分が10%以下なら全部を居住用として3,000万円特別控除を適用できます(基通35-6)。逆に居住用割合が90%未満の場合は厳格に按分が必要となり、事業用部分には3,000万円控除が使えません。床面積比による按分が原則ですが、店舗の天井高が高い等で「面積に表れない使用比率」がある場合は、容積基準・賃料相当額基準等の合理的な按分も認められます。
時価より低い価額で売ったとき(低額譲渡)
親族間等で時価より著しく低い価額で不動産を売却した場合、譲渡所得の計算と贈与税の取扱いに特殊なルールがあります。低額譲渡は税務上のトラブルが頻発する分野です。
個人間の低額譲渡の取扱い
| 取扱い | 内容 |
|---|---|
| 売主(譲渡所得の計算) | 実際の対価で計算(時価ではない) |
| 買主(贈与税の取扱い) | 時価との差額を贈与とみなして贈与税課税(相法第7条) |
| 譲渡損失 | 親族間の低額譲渡で生じた損失は他の所得と通算不可 |
個人から法人への低額譲渡
| 対価の水準 | 取扱い |
|---|---|
| 時価の1/2以上 | 実際の対価で譲渡所得計算 |
| 時価の1/2未満 | 時価相当額で譲渡があったものとみなす(所法第59条第1項第2号) |
| 法人側 | 時価との差額を受贈益として法人税課税 |
⚠️ 同族会社への自宅売却の落とし穴
マイクロ法人化に伴い自宅を同族会社に売却するケースが増えていますが、時価の1/2未満で売却すると「みなし譲渡」課税が発生し、時価相当の譲渡所得税が個人にかかります。さらに、同族会社への売却はマイホーム3,000万円特別控除の適用外(「特別な関係」)で、節税効果が大きく削がれます。実務では同族会社への売却を検討する際、必ず不動産鑑定士の鑑定評価を取得し、時価以上の対価で取引することが安全です。
保証債務を履行するために土地建物を売ったとき
債務者の代わりに保証債務を履行するため、不動産を売却して資金を作るケースがあります。この場合、保証履行の支出について譲渡所得の計算上特例があります(所法第64条第2項)。
保証債務履行特例の要件と効果
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる保証債務 | 他人の債務の保証(身元保証は除外) |
| 適用要件 | 保証債務履行のために土地建物を譲渡し、求償権を行使しても回収不能 |
| 取扱い | 回収不能の求償権相当額を譲渡収入金額に含めない |
| 節税効果 | 譲渡所得が圧縮され、譲渡所得税が軽減される |
具体例
🧮 保証債務履行特例の例
状況: 知人の借入1,500万円を保証→知人破産→保証履行のため自宅売却
不動産売却額:5,000万円(取得費2,000万円)
保証履行額:1,500万円(求償権回収不能)
特例なし:譲渡所得 = 5,000−2,000 = 3,000万円
特例適用:譲渡所得 = (5,000−1,500)−2,000 = 1,500万円
節税効果(長期譲渡):約304万円
平成21年・22年取得土地等の1,000万円特別控除
リーマンショック後の不動産取引の活性化政策として、平成21年(2009年)・平成22年(2010年)に取得した土地等を譲渡した場合、譲渡所得から最大1,000万円を控除できる特例があります(措法第35条の2)。
1,000万円特別控除の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①取得期間 | 平成21年1月1日〜平成22年12月31日に取得した土地等 |
| ②所有期間 | 譲渡年1月1日時点で5年超(長期譲渡所得に該当) |
| ③除外取引 | 特殊関係者(親族・同族法人等)からの取得は対象外 |
| ④他特例との併用 | 買換え特例等との重複適用不可 |
| ⑤控除額 | 最大1,000万円(譲渡所得を限度) |
📢 平成21・22年取得土地の節税効果は限定的
この特例は対象期間が平成21〜22年の2年間に限定されているため、適用可能な物件は減少傾向にあります。ただし、現在所有している不動産が当該期間の取得であれば、最大1,000万円の控除で約203万円(長期譲渡20.315%)の節税効果が期待できます。土地のみが対象で建物は対象外、また法人からの取得・同族法人からの取得・収用等の場合は対象外となるため、過去の取得経緯の確認が必須です。
不動産売却の特例一覧
不動産売却時に使える特例は多岐にわたります。各特例の控除額・適用要件・他特例との併用関係を整理します。
主な特別控除8項目の比較
| 特例 | 控除額 | 主な要件 |
|---|---|---|
| マイホーム3,000万円特別控除 | 3,000万円 | 居住用財産・親族等への譲渡除外 |
| 空き家3,000万円特別控除 | 3,000万円 | 相続した被相続人居住用家屋 |
| 収用等の特別控除 | 5,000万円 | 公共事業のための収用 |
| 10年超軽減税率特例 | 税率軽減 | 所有期間10年超のマイホーム |
| マイホーム買換え特例 | 課税繰延 | 所有期間10年超・居住期間10年超 |
| 特定土地区画整理事業等 | 2,000万円 | 区画整理・市街地再開発 |
| 平成21・22年取得土地特例 | 1,000万円 | 平成21・22年取得かつ5年超所有 |
| 低未利用土地等の譲渡 | 100万円 | 800万円以下の低未利用土地 |
不動産売買契約書と印紙税
不動産売買契約書には印紙税が課税されます(印紙税法第1号文書「不動産の譲渡に関する契約書」)。契約金額に応じて段階的に税額が設定されており、軽減措置の適用期限にも注意が必要です。
印紙税額一覧(軽減措置適用)
| 契約金額 | 本則税額 | 軽減税額(令和9年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
| 5億円超〜10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
※軽減措置は平成26年4月1日〜令和9年3月31日まで(変更可能性あり)。売主・買主が原本を1通ずつ保管する場合、それぞれに印紙が必要。コピー保管なら原本1通分だけで足ります。
登録免許税|抵当権抹消・所有権移転
不動産売却時には、売主側で抵当権抹消登記・住所変更登記の費用が、買主側で所有権移転登記・抵当権設定登記の費用が発生します。売主負担となる登録免許税は譲渡費用に含めて計算します。
売主側で発生する登録免許税
| 登記の種類 | 税額 |
|---|---|
| 抵当権抹消登記 | 1物件あたり1,000円 |
| 住所変更登記(売主の住所が変わっている場合) | 1物件あたり1,000円 |
| 司法書士報酬(抵当権抹消) | 2万円〜3万円程度 |
不動産売却の確定申告手続き
不動産売却で譲渡所得が発生した場合、翌年2月16日〜3月15日までに確定申告が必要です。給与所得者でも譲渡所得があれば必ず申告する必要があります。
確定申告の必要書類
| 書類 | 必要性 |
|---|---|
| 確定申告書(第一表・第二表・第三表分離課税用) | 必須 |
| 譲渡所得の内訳書(土地・建物用) | 必須 |
| 取得時・売却時の売買契約書のコピー | 必須 |
| 登記事項証明書 | 必須(所有期間の証明) |
| 取得費・譲渡費用の領収書 | 必須 |
| 特例適用のための添付書類 | 特例利用時に必要 |
よくある質問
📋 この記事のポイント
- 不動産売却にかかる税金は譲渡所得税・印紙税・登録免許税・消費税の4種類
- 譲渡所得税は所有期間で税率が約2倍違う(短期39.63% vs 長期20.315%)
- 収入金額には売却額のほか固定資産税精算金等も含める
- 取得費5%概算は最後の手段、可能な限り実額立証で大幅節税
- 店舗併用住宅は居住用部分のみに3,000万円控除(90%以上なら全部居住用扱い)
- 個人間の低額譲渡は買主に贈与税課税、個人→法人は時価1/2未満でみなし譲渡
- 保証債務履行特例で求償権回収不能分を譲渡収入から控除可能
- 平成21・22年取得土地等の1,000万円特別控除も対象物件があれば検討価値あり
📋 まとめ
- 不動産売却時の最大の税金は譲渡所得税で、所有期間5年超か否かで税率約2倍違う
- 取得費は実額立証を最大限試みるのが鉄則、5%概算は数百万円〜数千万円の節税ロスを招く
- 店舗併用住宅は居住用部分の按分計算が必要、90%以上なら全部居住用扱いの特例あり
- 親族・同族法人への低額譲渡は贈与税課税やみなし譲渡で逆に税負担増のリスク
- 保証債務履行特例で求償権回収不能分を譲渡収入から控除し節税
- マイホーム3,000万円控除・10年超軽減税率・空き家3,000万円控除・買換え特例等の特別控除を組み合わせて節税
- 令和7年12月の基礎控除引上げ・令和8年4月の少額減価償却40万円拡大に対応
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