【税理士監修】マイホーム売却で損失が出たときの特例|損益通算と繰越控除の2パターン完全解説

【税理士監修】マイホーム売却で損失が出たときの特例|損益通算と繰越控除の2パターン完全解説
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の法人決算・会社設立を支援。
📋 税理士監修 🏠 マイホーム売却向け 📊 比較表で整理

マイホーム売却で損失が出たときの特例|損益通算と繰越控除

マイホームを売却して譲渡損失が生じた場合、買換え型と住宅ローン残債型の2つの特例があり、給与所得等との損益通算と最大3年間の繰越控除が認められます。本記事では、両特例の適用要件・比較・節税効果シミュレーション・住宅ローン控除との併用・確定申告手続きまでを税理士の実務目線で完全解説します。

🏆 結論:買換え型と残債型の2パターン、最大4年間(売却年+繰越3年)の節税効果

マイホーム売却で譲渡損失が生じた場合、租税特別措置法第41条の5に基づく2つの特例があります。①「買換え型(マイホームを買い換えた場合)」は新住宅取得が要件、譲渡損失の全額が損益通算対象。②「残債型(住宅ローン残債型)」は新住宅取得不要、ただし損益通算限度額は「住宅ローン残高−売却価額」まで。両特例とも、売却年の給与所得・事業所得等と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越して控除可能(売却年+3年=最大4年間)。買換え型は住宅ローン控除との併用も可能で、所得が高い世帯では数百万円規模の節税効果が得られます。確定申告必須で、5年以内なら遡及還付申告も可能です。

マイホーム譲渡損失の特例|2つのパターン

マイホームを売却して譲渡損失(取得費・譲渡費用 > 売却価額)が出た場合、原則として他の所得(給与・事業所得等)との損益通算はできません。譲渡損失は譲渡所得の枠内でのみ通算可能で、他の所得の節税には使えないのが基本ルールです。

しかし、租税特別措置法第41条の5・第41条の5の2に基づく2つの特例があり、一定の要件を満たせば、給与所得等との損益通算と繰越控除が認められます。住宅ローン残債のあるマイホーム売却で損失が出た方にとって、極めて重要な救済制度です。

2つの特例の概要

区分 特例の正式名称 通称
①買換え型マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法第41条の5)居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の特例
②残債型特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法第41条の5の2)特定居住用財産の譲渡損失の特例

2つの特例の選択フロー

📢 どちらの特例を使うかの判断フロー

STEP1: マイホームを売却して新たなマイホームを取得するか?
- 取得する(買換える) → STEP2へ
- 取得しない(売却のみ) → STEP3へ

STEP2: 新住宅の取得に償還期間10年以上の住宅ローンを利用するか?
- 利用する → ①買換え型を選択(譲渡損失の全額が対象)
- 利用しない → 適用不可

STEP3: 売却したマイホームに償還期間10年以上の住宅ローン残債があるか?
- ある(売却価額 < ローン残高) → ②残債型を選択(ローン残高−売却価額が限度)
- ない → 適用不可

①買換え型(マイホームを買い換えた場合の特例)

新しいマイホームを取得する場合に使える特例で、損益通算限度額に上限がない最も強力なパターンです。譲渡損失の全額が他の所得との損益通算対象となります。

適用要件(譲渡資産・買換資産)

区分 要件
譲渡資産(売却するマイホーム)①譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年超、②本人の居住用財産
買換資産(新住宅)①譲渡年の前年〜翌年に取得、②床面積50㎡以上、③取得日から翌年12月31日までに居住、④償還期間10年以上の住宅ローンを有する
所得制限繰越控除を受ける年の合計所得金額3,000万円以下
親族間取引の除外譲渡資産の売主と買主が親子・夫婦・生計を一にする親族等の場合は対象外
他の特例との重複制限譲渡前年・前々年に3,000万円特別控除等を受けていないこと

買換え型の損益通算と繰越控除

項目 内容
損益通算対象譲渡損失の全額(限度額なし)
通算先給与所得・事業所得・不動産所得等の総合課税所得
繰越控除期間譲渡年の翌年以降3年間
通算可能総期間譲渡年+3年=最大4年間
住民税への影響翌年度以降の住民税も連動して減額

💡 実務のポイント

買換え型は譲渡損失全額が対象となるため、節税効果が非常に大きい特例です。買換えタイミングは譲渡年の「前年・当年・翌年」のいずれでもOKで、売却前に新住宅を取得していても、売却の翌年までに取得しても適用可能です。新住宅に償還期間10年以上のローンを組むことが要件のため、現金一括購入では適用できません。買換えの計画段階から、ローン期間とこの特例の適用を念頭に置いた資金計画が重要です。

②残債型(住宅ローン残のマイホーム譲渡)

新住宅を取得しない場合(または現金で取得する場合)でも、売却したマイホームに住宅ローン残債があり、売却価額がローン残債を下回る場合に適用できる特例です。買換え型と異なり、損益通算限度額に上限があります。

適用要件

区分 要件
譲渡資産①譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年超、②本人の居住用財産
住宅ローン残債譲渡契約締結日の前日において償還期間10年以上のローン残債あり
譲渡価額の条件譲渡価額 < 住宅ローン残債(オーバーローン状態)
所得制限繰越控除を受ける年の合計所得金額3,000万円以下
親族間取引の除外親子・夫婦・生計を一にする親族間の譲渡は対象外
買換資産の取得不要(新住宅を取得しなくてもOK)

残債型の損益通算限度額

📢 残債型の損益通算限度額の計算式

損益通算限度額 = 住宅ローン残高(譲渡契約締結日の前日) − 譲渡価額

※譲渡損失全額が限度額の範囲内なら全額通算可、超過部分は通算・繰越不可
※借換え後のローンも一定要件で対象

残債型の損益通算と繰越控除

項目 内容
損益通算対象譲渡損失のうち「住宅ローン残債 − 譲渡価額」が限度
通算先給与所得・事業所得・不動産所得等の総合課税所得
繰越控除期間譲渡年の翌年以降3年間
通算可能総期間譲渡年+3年=最大4年間
住宅ローン控除との関係買換えしないため住宅ローン控除との重複問題なし

2つの特例の比較

比較項目 買換え型(措法41の5) 残債型(措法41の5の2)
買換え必要必要(新住宅取得+10年以上のローン)不要
損益通算限度額譲渡損失全額(限度なし)住宅ローン残高−譲渡価額が限度
譲渡資産の所有期間5年超(1月1日基準)5年超(1月1日基準)
譲渡資産の住宅ローン残債不問必要(償還期間10年以上)
所得制限合計所得3,000万円以下(繰越年)合計所得3,000万円以下(繰越年)
繰越控除期間3年(売却年+3年=最大4年)3年(売却年+3年=最大4年)
住宅ローン控除との併用○ 可能該当事例なし(買換えしない)

節税効果のシミュレーション

買換え型のシミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 給与収入800万円・課税所得約600万円(所得税率20%・住民税10%・合計30%)
  • マイホーム取得費6,000万円・売却価額3,000万円・譲渡費用200万円
  • 譲渡損失=取得費6,000万円+譲渡費用200万円−売却価額3,000万円=3,200万円
  • 新住宅(35年ローン)を取得して買換え型適用
  • 所得は4年間変わらないものと仮定

🧮 買換え型の4年間節税効果

【売却年】
譲渡損失3,200万円 − 課税所得600万円 = 残り損失2,600万円(翌年繰越)
所得税・住民税還付額:約180万円(600万円×30%)

【翌年】
残り損失2,600万円 − 課税所得600万円 = 残り損失2,000万円(翌々年繰越)
所得税・住民税還付額:約180万円

【翌々年】
残り損失2,000万円 − 課税所得600万円 = 残り損失1,400万円(3年目繰越)
所得税・住民税還付額:約180万円

【3年目】
残り損失1,400万円 − 課税所得600万円 = 残り損失800万円(繰越期間終了で消滅)
所得税・住民税還付額:約180万円

4年間累計節税額:約720万円
※さらに新住宅の住宅ローン控除との併用(所得がある年のみ)で追加節税可能

残債型のシミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 給与収入800万円・課税所得600万円(税率30%)
  • 取得費3,000万円のマイホームを2,100万円で売却(譲渡費用100万円)
  • 譲渡損失=取得費3,000万円+譲渡費用100万円−2,100万円=1,000万円
  • 売却時の住宅ローン残債2,200万円
  • 新住宅は取得しない

🧮 残債型の節税効果(損益通算限度額の計算)

損益通算限度額 = 住宅ローン残債2,200万円 − 譲渡価額2,100万円 = 100万円
譲渡損失1,000万円のうち、損益通算対象は100万円のみ(900万円は通算・繰越不可)

【売却年】
給与所得600万円 − 譲渡損失100万円 = 課税所得500万円
還付額: 100万円 × 30% = 30万円

譲渡損失の限度額が100万円のため、繰越控除なし。総節税効果:30万円

残債型は「ローン残債 > 譲渡価額」の差額のみが対象のため、節税効果は限定的です。

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住宅ローン控除との併用

買換え型の特例と住宅ローン控除は、平成11年以降併用可能となっています。両制度を組み合わせると、譲渡損失の損益通算で所得税・住民税を還付しつつ、住宅ローン控除で新住宅取得時の節税効果も得られます。

併用時の優先順位

適用順序 内容
①譲渡損失の損益通算給与所得等から譲渡損失を控除して所得税を計算
②住宅ローン控除残った所得税額から住宅ローン控除を控除
所得税ゼロ年住宅ローン控除は適用不可(控除対象の税額がない)
所得税回復後住宅ローン控除の残り期間で控除を継続

併用シミュレーション

譲渡損失が大きい年は住宅ローン控除を活かせない可能性がありますが、損益通算で所得税自体がゼロになる節税効果のほうが大きいため、トータルでは併用が有利です。住宅ローン控除の控除期間は13年あるため、譲渡損失の繰越期間(3年)が終わってから残り10年間で住宅ローン控除を活用できます。

適用が受けられないケース

⚠️ 特例の適用ができない代表的なケース

①親族間取引:夫婦・親子・生計を一にする親族間の売買
②内縁関係・特殊関係法人との取引
③譲渡年の前年・前々年に居住用財産の3,000万円特別控除等を受けた場合
④譲渡年の前年・前々年に居住用財産の譲渡所得の長期譲渡所得の軽減税率の特例を受けた場合
⑤所得制限超過: 合計所得3,000万円超の年は繰越控除不可
⑥所有期間5年以下: 譲渡年1月1日時点で5年以下のマイホーム
⑦居住用以外の物件: 投資用・賃貸用不動産は対象外
これらに該当すると、特例の適用が制限または不可となります。

確定申告の手順|1年目・2年目以降

1年目の必要書類

書類 入手先・備考
確定申告書(損失申告用)税務署・国税庁HP
居住用財産の譲渡損失の金額の明細書税務署・国税庁HP
居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書税務署・国税庁HP
譲渡資産の登記事項証明書法務局
譲渡資産の売買契約書(コピー)取引時のもの
買換資産の登記事項証明書(買換え型)法務局
買換資産の住宅ローン年末残高証明書(買換え型)金融機関
譲渡資産の住宅ローン契約書(残債型)取引時のもの
譲渡契約締結日の前日における住宅ローン残高証明書(残債型)金融機関
源泉徴収票(給与所得者)勤務先

2年目以降の繰越控除手続き

繰越控除を受ける年は、翌年以降も継続して確定申告(損失申告用)が必要です。所得税額がゼロでも、繰越のため申告は必須。確定申告書とともに、繰越控除を受ける年分まで連続して提出する必要があります。

修正申告と更正の請求

適用後の修正申告

マイホーム譲渡損失の特例を適用した後、後から要件不備が判明したり、買換資産が要件を満たさなくなった場合は、修正申告で適用を取り消す必要があります。例えば、買換え型で取得した新住宅を取得後すぐに転売した場合、特例適用が取り消され、追加納税が必要になります。

遡及還付申告

適用を忘れていた場合でも、5年以内なら遡及還付申告が可能です。例えば、2023年にマイホームを売却して譲渡損失が出たが特例を申請しなかった場合、2026年中なら2023年分の還付申告ができます。ただし、繰越控除を受けるには売却年に申告していることが原則のため、特例の適用は税理士に確認することが推奨されます。

よくある質問(FAQ)

マイホーム売却で譲渡損失が出たら、必ず特例が使えますか?
いいえ、適用要件があります。買換え型・残債型のいずれも、譲渡資産の所有期間が5年超(譲渡年1月1日基準)・本人の居住用財産・所得3,000万円以下等の要件を満たす必要があります。買換え型は新住宅取得+10年以上のローンが必要、残債型は住宅ローン残債の存在(償還期間10年以上)が必要です。投資用・賃貸用不動産は対象外で、親族間取引も対象外です。両特例とも適用できない場合、譲渡損失は他の所得との通算不可で、譲渡所得の枠内のみで通算となります。
買換え型と残債型はどちらが有利ですか?
原則として買換え型の方が有利です。理由は、買換え型は「譲渡損失の全額」が損益通算対象なのに対し、残債型は「住宅ローン残債−譲渡価額」が上限となるため、節税効果が大きく異なります。例えば、譲渡損失3,000万円・残債2,500万円・売却価額2,400万円の場合、買換え型なら3,000万円全額が対象、残債型なら100万円のみが対象となります。ただし、買換え型は新住宅取得が必須で、新住宅にも10年以上のローンを組む必要があるため、ライフプランに応じた選択が重要です。
譲渡損失の繰越控除期間中、住民税はゼロになりますか?
所得税ゼロの年は、住民税も基本的にゼロになります。住民税は前年の所得をベースに計算されるため、譲渡損失の損益通算で前年の所得がゼロまたは減額された場合、その翌年度の住民税も連動して減額されます。例えば、2026年に譲渡損失で所得ゼロになった場合、2027年度の住民税(2026年分)もゼロになります。住民税の還付は確定申告時点では行われず、自動的に翌年度の住民税通知書に反映されます。
買換え型を使った後、新住宅に住宅ローン控除も使えますか?
はい、併用可能です。買換え型の特例と住宅ローン控除は平成11年以降併用可能で、両方の節税効果を得られます。ただし、住宅ローン控除は「控除すべき所得税額があること」が前提のため、譲渡損失の損益通算で所得税がゼロになった年は住宅ローン控除を使えません。所得税が回復した年から、住宅ローン控除の残り期間で控除を継続できます。住宅ローン控除の控除期間は最大13年あるため、繰越控除期間(3年)が終わってから10年間使えるケースが多くあります。
所有期間5年以下のマイホームを売却した場合は?
特例は使えません。買換え型・残債型のいずれも、譲渡年1月1日時点で所有期間5年超が要件です。所有期間5年以下の場合、譲渡損失は譲渡所得の枠内でのみ通算可能(短期譲渡所得内で通算)で、給与所得等との損益通算はできません。マイホーム購入直後の急なライフチェンジで売却する場合、節税効果が得られない可能性があります。所有期間の判定基準日(1月1日)を意識した売却タイミングの検討が重要です。
残債型で借換え後の住宅ローンも対象になりますか?
はい、借換え後のローンも一定要件で対象となります。当初のローンを借換えた場合でも、①借換え後のローンも住宅取得のためのものであること、②借換え時点で残債が残っていたこと、③償還期間10年以上のローンであることを満たせば、譲渡契約締結日の前日のローン残高が損益通算限度額の計算基準となります。借換えで金利を下げたケースでも、特例の適用は妨げられません。
譲渡損失が大きすぎて4年で控除しきれない場合は?
繰越期間(売却年+3年=最大4年)を超えた損失は消滅し、それ以降の年への繰越はできません。譲渡損失が大きい場合、できるだけ給与収入の多い年に売却するか、副業所得・配偶者の所得との通算を考慮した申告計画が重要です。実務上、譲渡損失5,000万円規模の大型案件では、税理士のサポートのもと、複数年にわたる節税計画を立てることが推奨されます。なお、所得3,000万円超の年は繰越控除を使えないため、その年の翌年から再開可能なケースもあります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • マイホーム譲渡損失の特例は買換え型(措法41の5)と残債型(措法41の5の2)の2パターン
  • 買換え型は譲渡損失全額が対象(新住宅取得+10年以上のローン必要)
  • 残債型は「住宅ローン残債−譲渡価額」が損益通算限度額
  • 両特例とも給与所得等との損益通算と3年間の繰越控除が可能
  • 売却年+3年=最大4年間で所得税・住民税の節税効果
  • 所有期間5年超(譲渡年1月1日基準)が要件
  • 合計所得3,000万円以下の年のみ繰越控除可
  • 親族間取引・3,000万円特別控除等との重複は不可
  • 買換え型は住宅ローン控除と併用可能
  • 確定申告必須(損失申告用)、繰越年も連続申告必要

🚀 次のアクション

  • マイホーム売却前に譲渡損失の見込みを試算する
  • 所有期間5年超を満たすか1月1日基準で確認する
  • 買換え型・残債型のいずれが適用できるか判断する
  • 新住宅を取得する場合は10年以上の住宅ローンを準備
  • 必要書類(契約書・登記事項証明書・ローン残高証明書)を準備
  • 1年目の確定申告で特例を申請する
  • 2年目以降も繰越控除のため連続して確定申告
  • 判断に迷うケースは税理士に相談する

マイホーム売却で譲渡損失が出た場合、特例を活用すれば数百万円規模の節税効果が得られる重要な制度です。住宅ローン控除の基礎確定申告の基礎所得控除の一覧もあわせてご参照ください。マイホーム売却での税務でお困りの場合は、税理士にご相談いただくことを強くお勧めします。

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