【税理士×行政書士が解説】未成工事支出金(仕掛工事)の正しい計上方法|期ずれ指摘を防ぐ工事台帳管理術

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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未成工事支出金(仕掛工事)の正しい計上方法|期ずれ指摘を防ぐ工事台帳管理術
「未成工事支出金の計上がよくわからない」「税務調査で期ずれを指摘されたくない」という建設業の経営者に向けて、未成工事支出金の仕訳方法、消費税の仕入税額控除の時期、工事損失引当金、重機の減価償却まで、工事台帳の管理術とともに完全ガイドします。
🏆 結論:未成工事支出金の管理は「工事台帳の整備」がすべての基本
未成工事支出金を正しく計上するには、工事ごとに材料費・労務費・外注費・経費を集計する工事台帳の整備が不可欠です。税務調査では「完成しているのに翌期に原価を持ち越していないか(期ずれ)」と「未完成工事の原価を当期の経費に落としていないか(棚卸計上漏れ)」の2方向からチェックされます。工事台帳があれば両方に対応できます。
未成工事支出金の計上手順【5ステップ】
未成工事支出金の計上は、以下の5ステップで行います。工事完成基準を採用している場合の標準的な流れです。
- 工事台帳を工事ごとに作成する — 受注時に工事番号を付与し、台帳を開設
- 発生した原価を工事別に集計する — 材料費・労務費・外注費・経費を工事番号で区分して記帳
- 決算時に完成・未完成を判定する — 引渡確認書や検査済証で完成状況を確認
- 未完成工事の原価を未成工事支出金に振り替える — 当期に経費計上した原価のうち、未完成分を資産に振替
- 翌期以降に完成したら完成工事原価に振り替える — 未成工事支出金を取り崩して原価化
💡 実務のポイント
実務では2つの経理方法があります。①期中から未成工事支出金勘定で計上する方法(発生時に即計上)と、②期中は材料費・外注費などの原価科目で計上し、決算時にのみ未完成分を未成工事支出金に振り替える方法です。中小建設業では②の方法が多く採用されています。どちらでも結果は同じですが、②のほうが期中の経理処理が簡便です。
未成工事支出金の仕訳パターン【6つの場面別】
①材料費の発生(期中)
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 材料費(A工事) | 100万円 | 工事未払金 | 100万円 |
②外注費の発生(期中)
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 外注費(A工事) | 200万円 | 工事未払金 | 200万円 |
③出来高請求の入金
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 普通預金 | 150万円 | 未成工事受入金 | 150万円 |
④決算時:未完成工事の原価を振り替え
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 未成工事支出金 | 300万円 | 材料費 | 100万円 |
| | 外注費 | 200万円 |
⑤翌期:工事完成時に売上計上
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 完成工事未収入金 | 350万円 | 完成工事高 | 500万円 |
| 未成工事受入金 | 150万円 | | |
⑥翌期:原価の振替
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 完成工事原価 | 300万円 | 未成工事支出金 | 300万円 |
消費税の仕入税額控除の時期【原則と特例の2択】
未成工事支出金に含まれる消費税の仕入税額控除のタイミングには、原則と特例の2つがあります。国税庁タックスアンサーNo.6487に明記されています。
| 方法 |
控除のタイミング |
メリット |
注意点 |
| 原則 | 材料引渡し・外注工事完了の時点 | 早期に控除でき、消費税の資金繰りが有利 | 課税仕入れの時期管理が煩雑 |
| 特例 | 工事完成・引渡時にまとめて控除 | 法人税の経理と一致し管理が簡便 | 継続適用が条件。控除が遅れる |
⚠️ 注意
特例を選択する場合、毎期継続して適用することが条件です。ある期は原則、ある期は特例と使い分けることはできません。また、簡易課税を選択している場合はそもそも仕入税額控除の計算方法が異なるため、この論点は関係ありません。
工事完成基準と工事進行基準の選択については「工事完成基準と工事進行基準の選択ガイド」で詳しく解説しています。
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建設仮勘定と未成工事支出金の違い
建設業の経理で混同しやすいのが「建設仮勘定」と「未成工事支出金」です。両者は名称が似ていますが、使用目的がまったく異なります。
| 比較項目 |
未成工事支出金 |
建設仮勘定 |
| 目的 | 請負工事の仕掛原価(他者から受注した工事) | 自社使用の建物・設備の建設中の支出 |
| B/S区分 | 流動資産(棚卸資産) | 固定資産(有形固定資産) |
| 振替先 | 完成工事原価(費用) | 建物・機械装置等(資産) |
| 消費税の控除時期 | 原則:材料引渡し等の時点 or 特例:完成引渡時 | 原則:各支出時点で控除可能 |
たとえば、自社の事務所を新築する際の支出は「建設仮勘定」、得意先から請け負った住宅建築工事の支出は「未成工事支出金」です。両者を混同すると消費税の控除時期にも影響するため注意が必要です。
工事損失引当金の計上要件と法人税の取扱い
工事の途中で、工事原価が請負金額を超えることが確実になった場合(赤字工事)、会計上は「工事損失引当金」を計上します。
工事損失引当金の計上要件
工事損失引当金は、以下の2つの条件を満たす場合に計上します。工事の進行途上で見積工事原価総額が請負金額を超え、かつその損失額を合理的に見積もることができるときです。
| 処理区分 |
会計上の取扱い |
法人税上の取扱い |
| 引当金の繰入 | 工事損失引当金繰入額を計上(費用) | 損金不算入(別表四で加算) |
| 引当金の取崩 | 工事完成時に取崩益を計上(収益) | 損金算入(別表四で減算) |
📊 公認会計士の視点
中小建設業の多くは税務会計ベースで決算を行っているため、工事損失引当金を計上しないケースが大半です。しかし、大型の赤字工事を抱えている場合は、金融機関への報告のために会計上は引当金を計上し、法人税の申告で加算調整するという対応も検討に値します。赤字工事の損失を先行開示することで、金融機関の信頼を得られるケースがあります。
重機・建設機械の減価償却とリース処理
建設業では重機や建設機械の設備投資が大きな支出になります。自社保有とリースの選択は、資金繰りと節税の両面から検討が必要です。
建設機械の法定耐用年数
| 機械の種類 |
資産区分 |
法定耐用年数 |
| ブルドーザー・パワーショベル | 機械及び装置(建設業用設備) | 6年 |
| クレーン車 | 車両運搬具 | 5年 |
| フォークリフト | 車両運搬具 | 4年 |
| コンクリートポンプ車 | 車両運搬具 | 4年 |
| 高所作業車 | 車両運搬具 | 5年 |
自社保有 vs リースの比較
| 比較項目 |
自社保有(購入) |
リース |
| 初期資金 | 大きい(一括購入 or ローン) | 小さい(月額リース料のみ) |
| 損金算入 | 減価償却費を耐用年数で按分 | リース料を支払時に損金算入 |
| B/Sへの影響 | 資産計上(固定資産増) | オフバランス(中小企業の簡便法) |
| 工事原価への配賦 | 減価償却費を使用日数で工事別に配賦 | リース料を使用日数で工事別に配賦 |
| 修繕・メンテナンス | 自社負担 | メンテナンスリースなら含む |
中小建設業では、リースを活用して初期費用を抑え、リース料を工事原価に直接配賦するケースが多くみられます。ただし、特定の工事でしか使わない特殊機械を購入する場合は、その工事の原価に直接計上できるため、保有のほうが原価管理がしやすいケースもあります。
外注費と給与の区分については「建設業の外注費が「給与」と認定されたら?」で詳しく解説しています。
税務調査で指摘される3つのパターンと防衛策
| 指摘パターン |
内容 |
防衛策 |
| ①棚卸計上漏れ | 未完成工事の原価を経費に計上してしまっている | 工事台帳で全工事の完成状況を管理し、未完成分を漏れなく未成工事支出金に振替 |
| ②売上の期ずれ | 完成しているのに翌期に売上を持ち越している | 引渡確認書・検査済証の日付で完成日を確定。決算前後の工事を重点確認 |
| ③材料の在庫計上漏れ | 特定工事に紐づかない材料在庫を経費のままにしている | 事務所や倉庫に残っている材料は棚卸資産(貯蔵品)として計上 |
💡 実務のポイント
税務調査官は、決算日前後の請求書を重点的にチェックします。決算日直前に完成した工事が「翌期の売上」になっていないか、逆に、決算日直後に完成した工事が「当期の売上」に前倒し計上されていないか。引渡日の証跡(引渡確認書・検査済証・写真付き完了報告書)が最も有効な防衛策です。
決算時の未成工事支出金チェックリスト
| チェック項目 |
確認内容 |
確認書類 |
| ①全工事の完成状況確認 | 決算日時点で完成/未完成を工事ごとに判定 | 引渡確認書・検査済証 |
| ②工事台帳との照合 | 各工事の原価累計額と帳簿残高が一致するか | 工事台帳・総勘定元帳 |
| ③未計上原価の確認 | 決算日時点で未払いの外注費・材料費がないか | 請求書・納品書(決算後入手分も含む) |
| ④材料在庫の棚卸 | 倉庫・事務所に残っている材料の実地棚卸 | 棚卸表 |
| ⑤未成工事受入金の整理 | 完成工事の受入金が負債に残っていないか | 入金台帳・通帳 |
| ⑥追加工事の売上計上 | 追加工事分の売上を本体工事と同時に計上しているか | 追加工事の注文書・契約書 |
確定申告の基本的な流れについては「フリーランス・個人事業主の確定申告ガイド」もご参照ください。
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よくある質問(FAQ)
未成工事支出金とは何ですか?
まだ完成していない工事に投入した原価(材料費・労務費・外注費・経費)の累計額です。製造業の「仕掛品」に相当し、貸借対照表の流動資産に計上します。工事完成・引渡時に完成工事原価に振り替えます。
未成工事支出金の消費税はいつ控除できますか?
原則として材料の引渡しや外注工事の完了時点で控除可能です。ただし、工事完成・引渡時にまとめて控除する特例も認められており、継続適用が条件です。自社の経理方法に合わせてどちらかを選択してください。
未成工事支出金を計上しないとどうなりますか?
未完成工事の原価が当期の経費となり、利益が過少に計上されます。税務調査で棚卸計上漏れとして指摘され、法人税・消費税の追徴課税が発生します。意図的でなくても脱税行為とみなされるため注意が必要です。
工事損失引当金は法人税で損金算入できますか?
できません。会計上は赤字見込みの工事について引当金を計上しますが、法人税法上は工事損失引当金の繰入額は損金不算入です。別表四で加算調整し、翌期に取崩し時に減算します。
建設仮勘定と未成工事支出金の違いは何ですか?
未成工事支出金は請負工事の仕掛原価で流動資産に計上します。建設仮勘定は自社で使用する建物や設備の建設中の支出で固定資産に計上します。目的と勘定科目の区分が異なります。
期中に原価科目で計上し、決算時だけ振り替えてもよいですか?
はい、実務ではこの方法が一般的です。期中は材料費・外注費等の原価科目で計上し、決算時に未完成工事分だけ未成工事支出金に振り替えます。期首の未成工事支出金を加算し、期末分を減算して完成工事原価を計算します。
重機をリースした場合、工事原価にどう配賦しますか?
月額リース料を各工事の使用日数に応じて配賦します。複数の工事で使用する場合は、出面表や使用記録に基づいて日数按分するのが一般的です。特定工事でのみ使用する場合は全額をその工事の経費に計上します。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 未成工事支出金は未完成工事の仕掛原価。工事台帳で工事別に材料費・労務費・外注費・経費を集計するのが基本
- 消費税の仕入税額控除は「材料引渡し等の時点(原則)」か「工事完成引渡時(特例)」のいずれかを継続適用
- 建設仮勘定(自社用資産)と未成工事支出金(請負工事の仕掛原価)は目的が異なるので混同しない
- 工事損失引当金は会計上で計上できるが、法人税では損金不算入(別表四で加算調整)
- 重機はリース活用で初期資金を抑え、使用日数で工事別に配賦するのが実務的
- 税務調査では「棚卸計上漏れ」「売上の期ずれ」「材料在庫の計上漏れ」の3パターンが重点チェック
- 決算時は6項目のチェックリストで未成工事支出金の適正性を確認する
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