【税理士×行政書士のダブル監修】建設業許可と法人化|500万円要件・許可区分と個人→法人の許可承継手続き・経審

【税理士×行政書士のダブル監修】建設業許可と法人化|500万円要件・許可区分と個人→法人の許可承継手続き・経審
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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建設業許可と法人化|500万円要件・許可区分と個人→法人の許可承継手続き・経審

建設業許可を持つ個人事業主の法人化で失敗しない方法を知りたい方に向けて、許可の5要件・承継認可vs廃業新規の比較・経審・JVの会計処理まで完全ガイドします。この記事を読めば、許可を失わずに法人化するための最適な手順とスケジュールがわかります。

🏆 結論:建設業許可の法人化は「承継認可」か「廃業+新規」の2方式から選ぶ

令和2年10月の建設業法改正で、個人の許可を法人に承継できる制度が創設されました。公共工事の受注実績がある場合は承継認可が有利です。民間工事のみで無許可期間が許容できる場合は、手続きがシンプルな廃業+新規申請でも問題ありません。どちらを選ぶにせよ、許可の5要件(経管・専技・財産・営業所・欠格)を法人で満たす準備と、社会保険の移行タイミングの管理が成否を分けます。

建設業許可が必要になるケースと許可区分

建設業許可が必要な工事の基準

建設業法第3条の規定により、1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上または延べ面積150㎡以上の木造住宅)の工事を請け負うには、建設業許可が必要です。この金額は消費税込みの金額で判定します。

許可区分の判定フローチャート

判定ステップ 条件 結果
① 営業所の所在地2つ以上の都道府県に営業所がある?Yes→大臣許可 / No→知事許可
② 下請発注額元請として下請代金合計4,500万円以上(建築一式7,000万円以上)?Yes→特定建設業 / No→一般建設業
③ 結論①×②の組合せ例:東京のみ+下請4,500万円未満=都知事・一般

💡 実務のポイント

一人親方や小規模の建設業者が法人化する場合、ほとんどは「知事許可・一般建設業」です。特定建設業は元請として大規模な下請発注を行う場合に必要であり、財産要件も格段に厳しくなります。自社の受注形態を確認し、本当に特定が必要か見極めましょう。

建設業許可の5つの要件|個人と法人の違い

建設業許可を取得するには、建設業法第7条(一般)・第15条(特定)に定められた以下の5つの要件を全て満たす必要があります。法人化の際は、これらの要件を法人として改めて満たす必要があるため、個人と法人での違いを理解しておくことが重要です。

要件 個人事業主の場合 法人の場合
① 経営業務の管理責任者(経管)事業主本人が建設業の経営経験5年以上常勤役員の1人が経営経験5年以上
② 専任技術者(専技)本人 or 従業員が国家資格 or 実務経験10年常勤の役員・従業員が同要件を満たす
③ 財産的基礎(500万円要件)500万円以上の残高証明書純資産500万円以上 or 残高証明書
④ 営業所の要件自宅兼事務所でも可(独立性が必要)登記上の本店所在地に実態が必要
⑤ 欠格要件に該当しないこと事業主本人法人・役員全員・支配人

参考: 国土交通省「建設業許可について」

500万円の財産要件を満たす方法

一般建設業の財産要件は「自己資本500万円以上」または「500万円以上の資金調達能力」のいずれかです。法人化の際は、以下の方法で要件を満たせます。

方法 具体的な対応 注意点
資本金500万円以上で法人設立設立登記時に資本金を500万円以上にする最もシンプル。初年度の決算書で純資産額が確認可能
残高証明書を取得法人口座に500万円以上を預入し、残高証明書を発行申請直前の日付で発行が必要。一時的な入金でも可

⚠️ 特定建設業の財産要件は桁違いに厳しい

特定建設業の場合、①資本金2,000万円以上、②自己資本4,000万円以上、③流動比率75%以上、④欠損の額が資本金の20%を超えないこと——の4つを全て満たす必要があります。法人化と同時に特定を取得する場合は、十分な自己資本の準備が必要です。

個人→法人の建設業許可:2つの方式を比較

建設業許可を持つ個人事業主が法人化する際、許可の取扱いには2つの方式があります。

方式①:廃業+新規申請(従来方式)

個人事業の建設業許可を廃業し、法人として新規に許可を申請する方法です。手続きはシンプルですが、審査期間中(知事許可で1〜3ヶ月)に無許可期間が生じます。

方式②:承継認可(令和2年10月新設)

建設業法第17条の2の規定により、個人事業主から法人への事業譲渡として、事前に許可行政庁の認可を受ける方法です。無許可期間が生じず、許可番号もそのまま引き継げます。

2方式の比較表

比較項目 廃業+新規申請 承継認可
無許可期間1〜3ヶ月(審査期間中)なし
許可番号新しい番号が付与そのまま引継ぎ
経審の実績法人としてゼロからスタート個人時代の実績を引継ぎ可能
手続きの複雑さ比較的シンプル事前相談・認可申請が必要で複雑
申請手数料(知事・一般)9万円(新規申請)9万円(認可申請)
法人の活動開始時期設立後すぐに営業可能(許可不要工事に限る)譲渡日まで個人で営業を継続する必要あり
監督処分の引継ぎ引き継がれない引き継がれる
おすすめケース民間工事中心・経審不要公共工事受注・経審の実績維持が重要

📝 行政書士の視点

承継認可制度は令和2年に新設された比較的新しい制度で、許可行政庁によって運用の細部が異なります。例えば大阪府では事業譲渡日の30日前までに認可申請が必要ですが、東京都ではさらに早い段階で事前相談を求められるケースがあります。法人化を決めたら、まず管轄の許可行政庁に事前相談のアポイントを取ることが最初の一歩です。

許可承継の手続きフロー【6ステップ】

承継認可方式で法人化する場合の手続きフローは以下のとおりです。

順序 手続き ポイント 目安時期
1許可行政庁への事前相談承継認可の可否・必要書類を確認法人設立の2〜3ヶ月前
2法人設立登記定款作成・登記申請(司法書士に依頼)譲渡日の1〜2ヶ月前
3認可申請書類の準備・提出事業譲渡契約書・財産目録・法人謄本等譲渡日の30日前まで
4認可の取得行政庁の審査を経て認可を受ける譲渡日前日まで
5事業譲渡日(=許可承継日)個人の許可が法人に承継される任意に設定可能
6税務届出・社会保険の切替え法人設立届出・青色申告承認申請・社保加入譲渡日以降速やかに

⚠️ 社会保険の切替えミスは許可取消しリスク

承継認可方式では、譲渡日まで個人事業で営業を続ける必要があります。この間、経管・専技は個人事業の常勤として勤務している必要があり、法人の社会保険に先行加入すると「個人の常勤性」が否定される恐れがあります。社会保険の切替えは譲渡日に合わせて行い、タイミングのズレがないよう社労士と連携して進めましょう。

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法人化のコスト比較シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 知事許可・一般建設業(1業種)
  • 法人形態:株式会社 or 合同会社
  • 行政書士・司法書士への報酬は一般的な相場
費用項目 株式会社 合同会社
法人設立の実費(登録免許税+定款認証)約25万円約6万円
司法書士報酬(設立登記)約8〜12万円約5〜8万円
建設業許可の申請手数料9万円9万円
行政書士報酬(許可申請 or 承継認可)約15〜25万円約15〜25万円
合計目安約57〜71万円約35〜48万円

※概算値です。地域や事務所により異なります。

合同会社は設立費用が安いものの、社会的信用度では株式会社に劣る面があります。元請企業との取引拡大や公共工事の受注を目指す場合は株式会社を選ぶ方が有利です。インボイス対応や確定申告の基礎については「一人親方のインボイス対応と確定申告」もあわせてご確認ください。

経営事項審査(経審)の仕組みと法人化の影響

経審の評点構造

経営事項審査(経審)は、公共工事の入札に参加するために受ける審査です。総合評定値(P点)は以下の4項目で構成されます。

項目 内容 配点ウェイト
X1(完成工事高)直近2年 or 3年の年間平均完成工事高0.25
X2(自己資本額・利払前税引前償却前利益)財務の安定性0.15
Z(技術力)技術職員数・元請完成工事高0.25
W(社会性)社保加入・退職金制度・建設機械保有等0.15
Y(経営状況)登録経営状況分析機関の分析結果0.20

参考: 国土交通省「経営事項審査について」

法人化が経審に与える影響

評点項目 廃業+新規の場合 承継認可の場合
X1(完成工事高)法人としての実績ゼロからスタート個人時代の実績を引継ぎ
W(社会性・社保加入)法人は社保加入義務→W評点UP同上
Y(経営状況)法人初年度の決算で分析(設立費用で利益が圧迫される可能性)個人時代の最終期の決算で分析可能
許可番号新番号→入札参加資格の再取得が必要同番号→入札参加資格を継続

📊 公認会計士の視点

公共工事の受注を継続する建設業者にとって、経審の完成工事高(X1)のリセットは致命的です。年間完成工事高5,000万円の業者がゼロリセットされると、P点が大幅に下がり、入札参加ランクが下がってしまいます。公共工事の比率が高い場合は、手続きが複雑でも承継認可を選択すべきです。

JV(共同企業体)の会計処理と税務

JVの2つの形態

JV(Joint Venture・共同企業体)は、建設業者が共同で工事を受注・施工する形態です。法人化後に公共工事の受注を目指す場合、JVへの参加機会が増えるため、会計処理を理解しておく必要があります。

項目 甲型JV(共同施工方式) 乙型JV(分担施工方式)
施工方法全構成員が共同で施工各構成員が分担部分を独立施工
経理の主体幹事会社が一元管理各社が分担部分を個別管理
収益の計上出資比率に応じて各社に配分分担部分を各社が直接計上
消費税各構成員が持分割合で申告各構成員が分担部分で申告
経審の扱い出資比率に応じた完成工事高を計上分担部分の完成工事高を計上

甲型JVの仕訳例

A社(幹事・出資60%)とB社(出資40%)で請負金額1億円の工事を甲型JVで施工する場合の、A社の仕訳例です。

A社の仕訳(出資比率60%)

①完成引渡時(収益計上)
(借方)完成工事未収入金 6,600万円 / (貸方)完成工事高 6,000万円、仮受消費税 600万円

②工事原価の負担(A社持分60%)
(借方)完成工事原価 4,200万円 / (貸方)JV勘定(幹事分配金)4,200万円

JVの会計処理は複雑で、特に消費税の区分経理には注意が必要です。構成員間の精算金の取扱いや、インボイスの交付義務など、法人化後にJVに参加する場合は税理士に事前相談することをおすすめします。

建設業の外注費と給与の区分については「建設業の外注費と給与の区分|税務調査で否認されないための実務ガイド」で詳しく解説しています。

法人化後に必要な届出一覧

届出先 届出書類 期限
税務署法人設立届出書設立日から2ヶ月以内
税務署青色申告承認申請書設立日から3ヶ月以内 or 最初の事業年度末
税務署給与支払事務所等の開設届出書設立日から1ヶ月以内
税務署源泉所得税の納期の特例の承認申請書随時(従業員10人未満の場合)
都道府県税事務所法人設立届出書設立日から15日以内(東京都の場合)
市区町村法人設立届出書自治体により異なる
年金事務所健康保険・厚生年金保険の新規適用届設立日から5日以内
労働基準監督署労働保険の保険関係成立届従業員を雇用した日から10日以内
ハローワーク雇用保険適用事業所設置届設置日の翌日から10日以内
税務署(個人の廃業届)個人事業の開業・廃業等届出書廃業日から1ヶ月以内

🔷 社労士の視点

建設国保に加入している個人事業主は、法人化後も「健康保険被保険者適用除外承認」の手続きを行えば建設国保を継続できます。協会けんぽより保険料が安いケースが多いため、切替え前に両者の保険料を比較しましょう。手続きは年金事務所への提出が必要で、法人設立後5日以内に行う必要があります。

フリーランス・個人事業主の確定申告の基礎については「フリーランスの確定申告の基礎」もご参照ください。

法人化の判断チェックリスト

チェック項目 Yes→法人化検討
事業所得が800万円を超えている所得税率>法人実効税率で節税効果あり
売上が1,000万円を超えている消費税の課税事業者。法人成りで免税期間が取れる可能性
500万円以上の工事を受注したい建設業許可が必要。法人の方が信用度が高い
公共工事の入札に参加したい経審の受審が必要。法人は社保加入でW評点UP
従業員を雇用する予定がある労務管理・社保加入が法人の方が整備しやすい
将来的に事業承継を考えている法人は株式譲渡で承継可能。個人は廃業→新規が必要

よくある質問(FAQ)

建設業許可の500万円要件とは?
一般建設業許可の財産的基礎の要件です。自己資本(純資産)が500万円以上あるか、または500万円以上の残高証明書を提出できることが必要です。法人の場合は直前の決算書の純資産合計額で判断されるため、資本金500万円以上で設立するのが最もシンプルな方法です。
承継認可はどの許可行政庁でも使える?
制度自体は全国共通(建設業法第17条の2)ですが、運用の細部は許可行政庁(都道府県)によって異なります。事前相談の時期や必要書類の詳細が異なるため、法人化を決めたらまず管轄の都道府県庁の建設業課に相談してください。
法人化すると建設業許可の有効期限はリセットされる?
承継認可の場合、許可の有効期限は承継日(事業譲渡日)から5年間に更新されます。廃業+新規申請の場合は、新規許可の日から5年間です。いずれも有効期限は5年で、更新時に許可要件を満たしている必要があります。
経審は毎年受ける必要がある?
公共工事の入札に参加し続けるには、経審の結果通知書の有効期限(審査基準日から1年7ヶ月)が切れないよう、毎年受審する必要があります。決算日→決算変更届提出→経営状況分析→経審受審という流れを年間スケジュールに組み込んでおきましょう。
JVで受注した工事は経審の完成工事高に計上できる?
はい。甲型JVの場合は出資比率に応じた金額を、乙型JVの場合は分担施工部分の金額を完成工事高として計上できます。JVの出資比率が低くても、経審で一定の実績として評価されるため、法人化初期の実績積み上げに活用できます。
法人化したら建設業許可の業種を追加できる?
法人として許可を取得した後、または承継認可を受けた後に、業種追加の申請が可能です。ただし追加する業種ごとに専任技術者の要件を満たす必要があります。承継認可の場合、個人時代の全業種を承継した後に追加申請を行います。
合同会社でも建設業許可は取れる?
はい。建設業許可は株式会社に限らず、合同会社・合名会社・合資会社・一般社団法人など、あらゆる法人形態で取得可能です。合同会社は設立費用が安い(約6万円〜)メリットがありますが、元請企業の中には株式会社のみを取引先とするケースもあるため、取引先の要件を事前に確認しましょう。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 建設業許可は個人から法人に自動では引き継がれない。「廃業+新規」か「承継認可」の2方式から選ぶ
  • 令和2年改正の承継認可制度を使えば、無許可期間ゼロ・許可番号維持・経審実績引継ぎが可能
  • 許可の5要件(経管・専技・財産・営業所・欠格)を法人として満たす準備が先決
  • 500万円の財産要件は、資本金500万円での設立 or 残高証明書で対応
  • 経審を受けている場合は承継認可が有利。完成工事高のリセットを回避できる
  • 社会保険の切替えタイミングを誤ると許可取消しリスク。社労士と連携して進める
  • JVの会計処理は甲型(共同)と乙型(分担)で異なり、消費税の申告にも影響する

建設業許可を持つ個人事業主の法人化は、許可の承継・税務届出・社会保険の切替えなど、複数の専門分野にまたがる手続きが同時進行します。行政書士(許可承継)・税理士(税務届出・決算)・社労士(社保切替え)が連携して進めることで、手続きの漏れや遅延を防げます。

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