まかない・自家消費の正しい税務処理|福利厚生費になる条件と給与課税の分岐点

まかない・自家消費の正しい税務処理|福利厚生費になる条件と給与課税の分岐点
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「まかないを無料で出しているけど、税務処理はどうすればいい?」と悩む飲食店オーナーに向けて、福利厚生費になる条件・給与課税の分岐点・自家消費の処理方法を仕訳例つきで完全ガイドします。

🏆 結論:まかないは「2要件」を満たせば福利厚生費、満たさなければ全額給与課税

従業員へのまかないを福利厚生費として処理するには、①従業員が食事価額の半額以上を負担、②会社負担額が月3,500円(税抜)以下の2要件を両方満たす必要があります。要件を満たさない場合は、食事の価額から従業員負担額を引いた全額が給与課税の対象です。個人事業主が自分で食材を消費する「自家消費」は、売上として計上する必要があります。

まかない・自家消費・試食の税務上の違い

飲食店では「従業員へのまかない」「事業主自身の自家消費」「新メニュー開発の試食」という3つの場面で、店舗の食材を営業以外に使用します。この3つは税務上の取扱いがまったく異なるため、まず全体像を整理しましょう。

パターン 対象者 税務上の取扱い 勘定科目
まかない従業員・アルバイト2要件を満たせば福利厚生費。満たさなければ給与課税福利厚生費 or 給与
自家消費個人事業主本人・家族売上(総収入金額)に計上事業主貸/自家消費
試食従業員・事業主業務上の必要性があれば経費福利厚生費 or 研究開発費
取引先への提供仕入先・業者交際費交際費

💡 実務のポイント

税務調査で飲食店の帳簿を見る際、まかない・自家消費の処理が未処理のまま放置されているケースが非常に多いです。求人広告に「まかない付き!」と書いてあるのに帳簿に一切の記録がなければ、調査官は「この店は基本的な経理ができていない」と判断し、他の項目もより厳しくチェックされる傾向があります。

まかないが福利厚生費になる2つの要件

所得税基本通達36-38の2に基づき、従業員に提供するまかないを福利厚生費として処理するためには、以下の2要件を「両方とも」満たす必要があります。どちらか一方でも欠けると、食事の価額から従業員負担額を差し引いた全額が給与課税の対象です。

要件 内容 具体例
従業員が食事の価額の半額以上を負担していること材料費200円のまかない→従業員が100円以上を天引き
(食事の価額)−(従業員負担額)=月3,500円(税抜)以下会社負担額が月3,500円以内に収まること

参考: 国税庁タックスアンサー No.2594「食事を支給したとき」

「食事の価額」の計算方法

ここで重要なのが、「食事の価額」の計算方法がまかないの提供方法によって異なる点です。

提供方法 食事の価額 含まれるもの 含まれないもの
自社で調理(まかない)材料費等の直接費合計食材・調味料・ガス代(直接分)人件費・減価償却費・家賃
外部から弁当を購入業者への支払額弁当代金の全額

⚠️ 注意

「食事の価額」を計算する際に、お店で提供している通常メニューの販売価格を使ってはいけません。まかないの食事価額はあくまで材料費等の「直接費」です。間接費を含めた販売価格で計算すると、福利厚生費の要件を満たさなくなるケースがあります。

福利厚生費になるケース・ならないケースの判定シミュレーション

具体的な数値で、福利厚生費になるケースとならないケースを比較してみましょう。

📐 シミュレーション前提条件

  • アルバイト1名、月の勤務日数20日、1日1食のまかない提供
  • まかない1食あたりの材料費(直接費):200円
  • 月間の食事価額合計:200円×20日=4,000円
項目 ケースA(福利厚生費OK) ケースB(福利厚生費OK) ケースC(給与課税)
月間食事価額4,000円4,000円4,000円
従業員負担額2,000円(50%)2,500円(62.5%)0円(無料提供)
会社負担額2,000円1,500円4,000円
要件①(半額以上負担)✅ 50%✅ 62.5%❌ 0%
要件②(月3,500円以下)✅ 2,000円✅ 1,500円❌ 4,000円
判定福利厚生費OK福利厚生費OK全額給与課税
給与課税額0円0円4,000円/月

💡 実務のポイント

ケースCの無料提供の場合、5名のアルバイトに年間で提供すると4,000円×12ヶ月×5名=24万円の源泉所得税の徴収漏れとなります。税務調査では3年分遡及されるため、72万円の追徴+不納付加算税10%が発生する可能性があります。1食100円でも従業員から徴収する仕組みを作ることで、この問題は回避できます。

まかないの仕訳例|3パターン

パターン1:福利厚生費として処理(2要件を満たす場合)

材料費200円のまかないを提供し、従業員から100円を給与天引きするケース(月20日勤務)。

借方 金額 貸方 金額
福利厚生費2,000円材料費4,000円
給与(天引き分)2,000円

パターン2:給与課税(無料提供の場合)

材料費200円のまかないを無料で提供するケース(月20日勤務)。従業員負担ゼロのため全額給与課税。

借方 金額 貸方 金額
給与4,000円雑収入(課税売上)4,000円

この場合、事業者側は給与として源泉徴収が必要です。また、雑収入として消費税の課税売上に含まれる点にも注意してください。

パターン3:役員への提供(認定賞与リスク)

役員にまかないを無料提供した場合、福利厚生費の2要件を満たさなければ「役員賞与」として認定されます。役員賞与は法人税法上損金不算入のため、法人側の税負担が増加します。

個人事業主の自家消費の処理

個人事業主が自分の飲食店の食材を自分や家族の食事に使った場合、それは「自家消費」として売上に計上しなければなりません。これはまかない(従業員への提供)とはまったく別の論点です。

所得税法上の自家消費

所得税法第39条の規定により、棚卸資産を自家消費した場合は、その資産の「通常販売する価額」を総収入金額に算入します。ただし実務上は、販売価額の70%以上であれば認められるとされています(所得税基本通達39-1)。

項目 所得税の計算 消費税の計算
計上基準販売価額(通常の売値)仕入価額と販売価額の50%のいずれか高い方
実務上の簡便法販売価額の70%以上販売価額の70%以上
具体例売値1,000円の料理→700円以上を売上計上同左(課税売上として処理)

参考: 国税庁タックスアンサー No.6317「個人事業者の自家消費の取扱い」

自家消費の仕訳例

個人事業主が売値1,000円(材料費300円)の食事を自分で消費した場合。

借方 金額 貸方 金額
事業主貸700円自家消費(売上)700円

月20日、1日1食の自家消費がある場合、年間の計上額は700円×20日×12ヶ月=168,000円となります。これを計上しないまま税務調査を受けると、3年分で約50万円の売上計上漏れを指摘される可能性があります。

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試食の経費処理|福利厚生費vs交際費の区分

新メニュー開発のための試食は、業務上の必要性が認められるため経費として処理できます。ただし、「誰が」「何の目的で」試食したかによって勘定科目が変わります。

試食の目的 対象者 勘定科目 記録すべき事項
新メニュー開発従業員全体福利厚生費 or 研究開発費日付・メニュー名・参加者・目的
メニュー品質確認店主・料理長福利厚生費日付・メニュー名・確認事項
取引先への試食提供仕入先・業者交際費日付・相手先・人数・金額

💡 実務のポイント

試食の記録を残すには、「試食記録簿」を作成しておくことをおすすめします。ノートに日付・メニュー名・参加者・目的を書くだけで十分です。記録がまったくない場合、税務調査で「それは試食ではなく通常のまかないでは?」と指摘される可能性があります。

給与課税される場合の例外(非課税になるケース)

まかないの2要件を満たさない場合でも、以下のケースでは例外的に給与課税されません。

例外ケース 条件 根拠
残業・宿日直時の食事無料で提供してもOK(金額上限なし)所得税基本通達36-24
深夜勤務者への夜食代現物支給できない場合、1食300円(税抜)以下の現金支給所得税基本通達36-24

飲食店は深夜営業が多い業態のため、この例外規定を活用できるケースがあります。ただし、「常識的な金額の範囲内」であることが前提で、高額な食事を残業食として提供した場合は否認される可能性があります。

消費税の取扱い|まかないと自家消費の違い

まかないと自家消費では、消費税の取扱いも異なります。間違えやすいポイントなので、表で整理します。

パターン 消費税の取扱い 理由
まかない(有料提供・福利厚生費)従業員負担分は課税売上対価を得ているため
まかない(無料提供・給与課税)原則として課税対象外対価性がないため(消基通5-4-5)
まかない(役員への無料提供)みなし譲渡として課税売上消費税法第4条第5項
自家消費(個人事業主)課税売上(みなし譲渡)消費税法第4条第5項

令和8年度税制改正の影響|会社負担上限の引上げ

📢 令和8年度税制改正

福利厚生費として認められる会社負担額の上限が、月3,500円(税抜)から月7,000円(税抜)に引き上げられる見込みです(令和8年度税制改正大綱)。物価高を背景とした改正で、飲食店のまかない処理にも大きな影響があります。

項目 現行(〜令和8年3月) 改正後(令和8年4月〜)
会社負担額の上限月3,500円(税抜)月7,000円(税抜)
従業員負担の要件食事価額の50%以上変更なし(50%以上)
1食200円の材料費×月20日会社負担2,000円→OK会社負担2,000円→OK
1食500円の材料費×月20日会社負担5,000円→NG会社負担5,000円→OK

この改正により、1食あたりの材料費が高い飲食店でも、福利厚生費として処理しやすくなります。飲食店の開業から届出・許認可の全体像については「飲食店の開業届・許認可完全ガイド」も参照してください。

店舗家賃・保証金・礼金の経費処理(繰延資産)

飲食店を開業する際に支払う保証金(敷金)・礼金・権利金の税務処理は、金額と返還の有無によって異なります。全額を一括で経費にできるとは限らない点に注意が必要です。

保証金・礼金の処理方法一覧

支出の種類 税務上の取扱い 償却方法
敷金(返還される部分)資産計上(差入保証金)経費にならない。退去時に返還
敷金の償却分(返還されない部分)繰延資産契約期間(5年超なら5年)で均等償却
礼金・権利金(20万円以上)繰延資産契約期間(5年超なら5年)で均等償却
礼金・権利金(20万円未満)一括経費支払時に全額損金算入可能
仲介手数料一括経費支払時に全額損金算入

繰延資産の償却シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 保証金600万円(うち償却分120万円=返還されない部分)
  • 礼金50万円
  • 契約期間:5年
項目 支払額 処理 年間償却額
保証金(返還分)480万円差入保証金(資産)0円
保証金(償却分)120万円繰延資産(5年均等償却)24万円
礼金50万円繰延資産(5年均等償却)10万円
合計650万円34万円/年

開業時に一括で650万円を支払いますが、年間で経費にできるのは34万円です。資金繰り計画と経費計上のタイミングにズレが生じるため、開業前に税理士と相談しておくことをおすすめします。

飲食店の税務調査で指摘されやすいポイントについては「飲食店の税務調査|不正発見割合42%の業種で指摘される7つのポイント」で詳しく解説しています。まかない・自家消費の処理漏れも調査で指摘される主要項目の一つです。

まかないの実務チェックリスト

以下のチェックリストを月次で確認し、まかないの処理が適正に行われているかをセルフチェックしてください。

No. チェック項目 対応方法
1まかないの材料費(食事価額)を計算しているか月次で材料費合計を集計
2従業員から食事代の半額以上を徴収しているか給与天引きの記録を確認
3会社負担額が月3,500円以下か(令和8年4月以降は7,000円以下)月次集計で確認
4個人事業主の自家消費を売上計上しているか自家消費記録簿で管理
5試食の記録(日付・目的・参加者)を残しているか試食記録簿を作成
6給与課税する場合に源泉徴収を行っているか給与計算に含めて処理

確定申告の基本的なしくみについては「フリーランスの確定申告ガイド」も参考になります。

よくある質問(FAQ)

まかないを無料で提供すると税金はどうなりますか?
従業員に無料でまかないを提供すると、食事の価額(材料費等)の全額が給与課税の対象になります。福利厚生費として処理するには、従業員が食事価額の半額以上を負担し、かつ会社負担額が月3,500円(税抜)以下である必要があります。
まかないの食事価額はどうやって計算しますか?
自社で調理するまかないの場合、食事の価額は材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計です。人件費や光熱費などの間接費は含まれません。外部から弁当を購入して提供する場合は、業者に支払った金額が食事の価額となります。
個人事業主が自分で食材を消費した場合の処理は?
個人事業主の自家消費は、所得税法上、販売価額(通常の売値)を総収入金額に算入する必要があります。消費税は課税売上として、売価の70%以上の金額で計算します。仕訳は「事業主貸/自家消費(売上)」となります。
試食は経費になりますか?
新メニュー開発のための試食は、業務上の必要性が認められるため、福利厚生費または研究開発費として処理できます。ただし、試食の記録(日付・目的・参加者・メニュー)を残しておくことが重要です。記録がないと税務調査で給与課税される可能性があります。
残業時のまかないも給与課税されますか?
残業または宿日直を行うときに提供する食事は、無料で支給しても給与課税されません。深夜勤務者に夜食を支給できない場合は、1食あたり300円(税抜)以下の現金支給であれば非課税です。
店舗の保証金や礼金は一括で経費にできますか?
返還されない保証金(償却分)や礼金は、20万円未満なら一括で経費にできます。20万円以上の場合は繰延資産として、賃貸契約期間(5年超なら5年)で均等に償却します。敷金のうち返還される部分は資産計上し、経費にはなりません。
令和8年度の税制改正でまかないの要件は変わりますか?
令和8年度税制改正で、福利厚生費として認められる会社負担額の上限が月3,500円から月7,000円に引き上げられる見込みです。これにより、従業員の自己負担額を抑えつつ福利厚生費として処理できる範囲が広がります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • まかないを福利厚生費にするには「従業員が半額以上負担」+「会社負担が月3,500円以下」の2要件が必要
  • 2要件を満たさない無料まかないは、全額が給与課税の対象(源泉徴収義務あり)
  • 個人事業主の自家消費は、売価の70%以上を売上として計上する必要がある
  • 試食は記録を残せば経費にできるが、記録がないと給与課税される可能性がある
  • 役員への無料提供は「役員賞与」認定リスクがあり、消費税のみなし譲渡にも注意
  • 令和8年度改正で会社負担上限が月7,000円に引上げ予定
  • 店舗の保証金・礼金は20万円以上なら繰延資産として均等償却が必要

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