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「まかないを無料で出しているけど、税務処理はどうすればいい?」と悩む飲食店オーナーに向けて、福利厚生費になる条件・給与課税の分岐点・自家消費の処理方法を仕訳例つきで完全ガイドします。


「まかないを無料で出しているけど、税務処理はどうすればいい?」と悩む飲食店オーナーに向けて、福利厚生費になる条件・給与課税の分岐点・自家消費の処理方法を仕訳例つきで完全ガイドします。
🏆 結論:まかないは「2要件」を満たせば福利厚生費、満たさなければ全額給与課税
従業員へのまかないを福利厚生費として処理するには、①従業員が食事価額の半額以上を負担、②会社負担額が月3,500円(税抜)以下の2要件を両方満たす必要があります。要件を満たさない場合は、食事の価額から従業員負担額を引いた全額が給与課税の対象です。個人事業主が自分で食材を消費する「自家消費」は、売上として計上する必要があります。
飲食店では「従業員へのまかない」「事業主自身の自家消費」「新メニュー開発の試食」という3つの場面で、店舗の食材を営業以外に使用します。この3つは税務上の取扱いがまったく異なるため、まず全体像を整理しましょう。
| パターン | 対象者 | 税務上の取扱い | 勘定科目 |
|---|---|---|---|
| まかない | 従業員・アルバイト | 2要件を満たせば福利厚生費。満たさなければ給与課税 | 福利厚生費 or 給与 |
| 自家消費 | 個人事業主本人・家族 | 売上(総収入金額)に計上 | 事業主貸/自家消費 |
| 試食 | 従業員・事業主 | 業務上の必要性があれば経費 | 福利厚生費 or 研究開発費 |
| 取引先への提供 | 仕入先・業者 | 交際費 | 交際費 |
💡 実務のポイント
税務調査で飲食店の帳簿を見る際、まかない・自家消費の処理が未処理のまま放置されているケースが非常に多いです。求人広告に「まかない付き!」と書いてあるのに帳簿に一切の記録がなければ、調査官は「この店は基本的な経理ができていない」と判断し、他の項目もより厳しくチェックされる傾向があります。
所得税基本通達36-38の2に基づき、従業員に提供するまかないを福利厚生費として処理するためには、以下の2要件を「両方とも」満たす必要があります。どちらか一方でも欠けると、食事の価額から従業員負担額を差し引いた全額が給与課税の対象です。
| 要件 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| ① | 従業員が食事の価額の半額以上を負担していること | 材料費200円のまかない→従業員が100円以上を天引き |
| ② | (食事の価額)−(従業員負担額)=月3,500円(税抜)以下 | 会社負担額が月3,500円以内に収まること |
参考: 国税庁タックスアンサー No.2594「食事を支給したとき」
ここで重要なのが、「食事の価額」の計算方法がまかないの提供方法によって異なる点です。
| 提供方法 | 食事の価額 | 含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|---|---|
| 自社で調理(まかない) | 材料費等の直接費合計 | 食材・調味料・ガス代(直接分) | 人件費・減価償却費・家賃 |
| 外部から弁当を購入 | 業者への支払額 | 弁当代金の全額 | — |
⚠️ 注意
「食事の価額」を計算する際に、お店で提供している通常メニューの販売価格を使ってはいけません。まかないの食事価額はあくまで材料費等の「直接費」です。間接費を含めた販売価格で計算すると、福利厚生費の要件を満たさなくなるケースがあります。
具体的な数値で、福利厚生費になるケースとならないケースを比較してみましょう。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | ケースA(福利厚生費OK) | ケースB(福利厚生費OK) | ケースC(給与課税) |
|---|---|---|---|
| 月間食事価額 | 4,000円 | 4,000円 | 4,000円 |
| 従業員負担額 | 2,000円(50%) | 2,500円(62.5%) | 0円(無料提供) |
| 会社負担額 | 2,000円 | 1,500円 | 4,000円 |
| 要件①(半額以上負担) | ✅ 50% | ✅ 62.5% | ❌ 0% |
| 要件②(月3,500円以下) | ✅ 2,000円 | ✅ 1,500円 | ❌ 4,000円 |
| 判定 | 福利厚生費OK | 福利厚生費OK | 全額給与課税 |
| 給与課税額 | 0円 | 0円 | 4,000円/月 |
💡 実務のポイント
ケースCの無料提供の場合、5名のアルバイトに年間で提供すると4,000円×12ヶ月×5名=24万円の源泉所得税の徴収漏れとなります。税務調査では3年分遡及されるため、72万円の追徴+不納付加算税10%が発生する可能性があります。1食100円でも従業員から徴収する仕組みを作ることで、この問題は回避できます。
材料費200円のまかないを提供し、従業員から100円を給与天引きするケース(月20日勤務)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 2,000円 | 材料費 | 4,000円 |
| 給与(天引き分) | 2,000円 |
材料費200円のまかないを無料で提供するケース(月20日勤務)。従業員負担ゼロのため全額給与課税。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給与 | 4,000円 | 雑収入(課税売上) | 4,000円 |
この場合、事業者側は給与として源泉徴収が必要です。また、雑収入として消費税の課税売上に含まれる点にも注意してください。
役員にまかないを無料提供した場合、福利厚生費の2要件を満たさなければ「役員賞与」として認定されます。役員賞与は法人税法上損金不算入のため、法人側の税負担が増加します。
個人事業主が自分の飲食店の食材を自分や家族の食事に使った場合、それは「自家消費」として売上に計上しなければなりません。これはまかない(従業員への提供)とはまったく別の論点です。
所得税法第39条の規定により、棚卸資産を自家消費した場合は、その資産の「通常販売する価額」を総収入金額に算入します。ただし実務上は、販売価額の70%以上であれば認められるとされています(所得税基本通達39-1)。
| 項目 | 所得税の計算 | 消費税の計算 |
|---|---|---|
| 計上基準 | 販売価額(通常の売値) | 仕入価額と販売価額の50%のいずれか高い方 |
| 実務上の簡便法 | 販売価額の70%以上 | 販売価額の70%以上 |
| 具体例 | 売値1,000円の料理→700円以上を売上計上 | 同左(課税売上として処理) |
参考: 国税庁タックスアンサー No.6317「個人事業者の自家消費の取扱い」
個人事業主が売値1,000円(材料費300円)の食事を自分で消費した場合。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 700円 | 自家消費(売上) | 700円 |
月20日、1日1食の自家消費がある場合、年間の計上額は700円×20日×12ヶ月=168,000円となります。これを計上しないまま税務調査を受けると、3年分で約50万円の売上計上漏れを指摘される可能性があります。
新メニュー開発のための試食は、業務上の必要性が認められるため経費として処理できます。ただし、「誰が」「何の目的で」試食したかによって勘定科目が変わります。
| 試食の目的 | 対象者 | 勘定科目 | 記録すべき事項 |
|---|---|---|---|
| 新メニュー開発 | 従業員全体 | 福利厚生費 or 研究開発費 | 日付・メニュー名・参加者・目的 |
| メニュー品質確認 | 店主・料理長 | 福利厚生費 | 日付・メニュー名・確認事項 |
| 取引先への試食提供 | 仕入先・業者 | 交際費 | 日付・相手先・人数・金額 |
💡 実務のポイント
試食の記録を残すには、「試食記録簿」を作成しておくことをおすすめします。ノートに日付・メニュー名・参加者・目的を書くだけで十分です。記録がまったくない場合、税務調査で「それは試食ではなく通常のまかないでは?」と指摘される可能性があります。
まかないの2要件を満たさない場合でも、以下のケースでは例外的に給与課税されません。
| 例外ケース | 条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 残業・宿日直時の食事 | 無料で提供してもOK(金額上限なし) | 所得税基本通達36-24 |
| 深夜勤務者への夜食代 | 現物支給できない場合、1食300円(税抜)以下の現金支給 | 所得税基本通達36-24 |
飲食店は深夜営業が多い業態のため、この例外規定を活用できるケースがあります。ただし、「常識的な金額の範囲内」であることが前提で、高額な食事を残業食として提供した場合は否認される可能性があります。
まかないと自家消費では、消費税の取扱いも異なります。間違えやすいポイントなので、表で整理します。
| パターン | 消費税の取扱い | 理由 |
|---|---|---|
| まかない(有料提供・福利厚生費) | 従業員負担分は課税売上 | 対価を得ているため |
| まかない(無料提供・給与課税) | 原則として課税対象外 | 対価性がないため(消基通5-4-5) |
| まかない(役員への無料提供) | みなし譲渡として課税売上 | 消費税法第4条第5項 |
| 自家消費(個人事業主) | 課税売上(みなし譲渡) | 消費税法第4条第5項 |
📢 令和8年度税制改正
福利厚生費として認められる会社負担額の上限が、月3,500円(税抜)から月7,000円(税抜)に引き上げられる見込みです(令和8年度税制改正大綱)。物価高を背景とした改正で、飲食店のまかない処理にも大きな影響があります。
| 項目 | 現行(〜令和8年3月) | 改正後(令和8年4月〜) |
|---|---|---|
| 会社負担額の上限 | 月3,500円(税抜) | 月7,000円(税抜) |
| 従業員負担の要件 | 食事価額の50%以上 | 変更なし(50%以上) |
| 1食200円の材料費×月20日 | 会社負担2,000円→OK | 会社負担2,000円→OK |
| 1食500円の材料費×月20日 | 会社負担5,000円→NG | 会社負担5,000円→OK |
この改正により、1食あたりの材料費が高い飲食店でも、福利厚生費として処理しやすくなります。飲食店の開業から届出・許認可の全体像については「飲食店の開業届・許認可完全ガイド」も参照してください。
飲食店を開業する際に支払う保証金(敷金)・礼金・権利金の税務処理は、金額と返還の有無によって異なります。全額を一括で経費にできるとは限らない点に注意が必要です。
| 支出の種類 | 税務上の取扱い | 償却方法 |
|---|---|---|
| 敷金(返還される部分) | 資産計上(差入保証金) | 経費にならない。退去時に返還 |
| 敷金の償却分(返還されない部分) | 繰延資産 | 契約期間(5年超なら5年)で均等償却 |
| 礼金・権利金(20万円以上) | 繰延資産 | 契約期間(5年超なら5年)で均等償却 |
| 礼金・権利金(20万円未満) | 一括経費 | 支払時に全額損金算入可能 |
| 仲介手数料 | 一括経費 | 支払時に全額損金算入 |
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 支払額 | 処理 | 年間償却額 |
|---|---|---|---|
| 保証金(返還分) | 480万円 | 差入保証金(資産) | 0円 |
| 保証金(償却分) | 120万円 | 繰延資産(5年均等償却) | 24万円 |
| 礼金 | 50万円 | 繰延資産(5年均等償却) | 10万円 |
| 合計 | 650万円 | 34万円/年 |
開業時に一括で650万円を支払いますが、年間で経費にできるのは34万円です。資金繰り計画と経費計上のタイミングにズレが生じるため、開業前に税理士と相談しておくことをおすすめします。
飲食店の税務調査で指摘されやすいポイントについては「飲食店の税務調査|不正発見割合42%の業種で指摘される7つのポイント」で詳しく解説しています。まかない・自家消費の処理漏れも調査で指摘される主要項目の一つです。
以下のチェックリストを月次で確認し、まかないの処理が適正に行われているかをセルフチェックしてください。
| No. | チェック項目 | 対応方法 |
|---|---|---|
| 1 | まかないの材料費(食事価額)を計算しているか | 月次で材料費合計を集計 |
| 2 | 従業員から食事代の半額以上を徴収しているか | 給与天引きの記録を確認 |
| 3 | 会社負担額が月3,500円以下か(令和8年4月以降は7,000円以下) | 月次集計で確認 |
| 4 | 個人事業主の自家消費を売上計上しているか | 自家消費記録簿で管理 |
| 5 | 試食の記録(日付・目的・参加者)を残しているか | 試食記録簿を作成 |
| 6 | 給与課税する場合に源泉徴収を行っているか | 給与計算に含めて処理 |
確定申告の基本的なしくみについては「フリーランスの確定申告ガイド」も参考になります。
📋 この記事のポイント