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固定資産の除却・売却の会計処理|ソフトウェア・建物附属設備の仕訳
使わなくなった固定資産の経理処理に迷っている方に向けて、除却・売却・有姿除却の仕訳パターンを資産種類別に解説します。この記事を読めば、ソフトウェアや建物附属設備の除却から車両の売却まで、正しい会計処理と必要な証拠書類を把握できます。


使わなくなった固定資産の経理処理に迷っている方に向けて、除却・売却・有姿除却の仕訳パターンを資産種類別に解説します。この記事を読めば、ソフトウェアや建物附属設備の除却から車両の売却まで、正しい会計処理と必要な証拠書類を把握できます。
🏆 結論:固定資産の処分は「除却」「売却」「有姿除却」の3パターン
①除却=帳簿から外す処理(廃棄時)。残存簿価を「固定資産除却損」として特別損失に計上する。②売却=対価を得て譲渡する処理。帳簿価額との差額が「売却益」or「売却損」になる。③有姿除却=物理的に廃棄せず帳簿だけ外す処理。使用を中止し再利用の見込みがない場合に限り認められる。いずれも税務上は証拠書類の保管が必須。
固定資産の除却とは、事業で使用しなくなった固定資産を帳簿から取り除く会計処理のことです。「物理的に捨てる」廃棄とは異なり、「帳簿上で資産をなくす」のが除却です。実務では廃棄と同時に除却処理を行うケースがほとんどですが、両者は厳密には別の概念です。
| 区分 | 内容 | 勘定科目 | 損益表示 | 税務上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 除却 | 使用中止+廃棄 | 固定資産除却損 | 特別損失 | 実際に廃棄するまで損金不算入(原則) |
| 売却 | 対価を得て譲渡 | 売却益 or 売却損 | 特別損益 | 時価と著しく乖離する取引は否認リスク |
| 有姿除却 | 廃棄せず帳簿から除外 | 固定資産除却損 | 特別損失 | 使用中止+再利用不可の要件あり |
| 減損 | 収益性低下による帳簿減額 | 減損損失 | 特別損失 | 使用継続中でも適用可。中小企業は任意 |
💡 実務のポイント:除却しないと償却資産税を払い続ける
使っていない固定資産を帳簿に残しておくと、市区町村に対して償却資産税(固定資産税)を払い続けることになります。年に一度の固定資産棚卸で、使用していない資産を洗い出し、速やかに除却処理を行うことが節税の基本です。実務では12月〜1月の償却資産税申告前にまとめて除却するケースが多く見られます。
除却の仕訳は、間接法(減価償却累計額を使う方法)と直接法で処理が異なります。ここでは実務で多い間接法を中心に解説します。
📐 前提条件
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却累計額 | 70万円 | 機械装置 | 100万円 |
| 固定資産除却損 | 30万円 |
鉄くず等として売却価値がある場合、その見込額を「貯蔵品」として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却累計額 | 70万円 | 機械装置 | 100万円 |
| 貯蔵品 | 5万円 | ||
| 固定資産除却損 | 25万円 |
撤去費用や処分費用が発生する場合、除却損に加算します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却累計額 | 70万円 | 機械装置 | 100万円 |
| 固定資産除却損 | 38万円 | 現金 | 8万円 |
※除却損38万円=帳簿価額30万円+撤去費用8万円
減価償却が完了した資産は備忘価額1円が残っています。除却時はこの1円を費用化します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 固定資産除却損(雑費) | 1円 | 器具備品 | 1円 |
金額が僅少のため「雑費」で処理しても差し支えありません。
固定資産を売却した場合、売却価額と帳簿価額の差額が「固定資産売却益」または「固定資産売却損」として計上されます。
📐 前提条件
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 132万円 | 車両運搬具 | 300万円 |
| 減価償却累計額 | 200万円 | 固定資産売却益 | 20万円 |
| 仮受消費税 | 12万円 |
帳簿価額100万円の車両を60万円(税抜)で売却した場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 66万円 | 車両運搬具 | 300万円 |
| 減価償却累計額 | 200万円 | 仮受消費税 | 6万円 |
| 固定資産売却損 | 40万円 |
資産の種類によって仕訳で使う勘定科目が変わります。代表的な5種類をまとめました。
| 資産の種類 | 勘定科目 | 除却時の特徴 | 売却時の消費税 |
|---|---|---|---|
| 建物附属設備 | 建物附属設備 | 撤去費用が発生しやすい。建物本体と区分管理が必要 | 課税 |
| 機械装置 | 機械装置 | スクラップ価値(貯蔵品)の判定が必要 | 課税 |
| 車両運搬具 | 車両運搬具 | 廃車の場合はリサイクル預託金の取崩しあり | 課税 |
| 器具備品 | 器具備品 | 少額の場合は雑費での処理も可 | 課税 |
| ソフトウェア | ソフトウェア | 減価償却累計額を使わない(直接法が一般的) | 課税 |
ソフトウェアは無形固定資産であり、有形固定資産とは除却の考え方が異なります。物理的な「廃棄」がないため、「使用を中止した事実」をどのように証明するかがポイントになります。
| No. | ケース | 具体例 |
|---|---|---|
| 1 | 対象業務の廃止 | 業務システムが対象としていた事業部門を閉鎖 |
| 2 | 新システムへの移行 | 旧会計ソフトから新しいクラウド会計ソフトに完全移行 |
| 3 | ハードウェア・OSの変更 | OSのバージョンアップにより旧ソフトが動作不能に |
| 4 | 販売中止(複写販売用) | 新バージョンのリリースにより旧版の販売を終了 |
取得価額50万円、減価償却累計額40万円(帳簿価額10万円)の自社利用ソフトウェアを除却する場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 固定資産除却損 | 10万円 | ソフトウェア | 10万円 |
※ソフトウェアは直接法が一般的なため、帳簿価額(取得価額−累計償却額)がそのままソフトウェア勘定の残高になります。
⚠️ 注意:ソフトウェア除却の証拠書類
ソフトウェアは物理的な実体がないため、税務調査で「本当に使用を中止したのか」を厳しく確認されます。以下の書類を必ず保管してください:社内稟議書(使用中止の決定)、新システムの導入契約書、旧システムのアンインストール記録、販売流通業者への通知文書(複写販売用の場合)。
建物附属設備(空調設備、照明設備、給排水設備など)は建物本体とは別の固定資産として管理し、耐用年数も異なります。除却の際は建物本体との区分に注意が必要です。
空調設備(取得価額200万円、減価償却累計額150万円)を老朽化により撤去し、撤去費用30万円を支払った場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却累計額 | 150万円 | 建物附属設備 | 200万円 |
| 固定資産除却損 | 80万円 | 現金 | 30万円 |
※除却損80万円=帳簿価額50万円+撤去費用30万円
💡 実務のポイント:撤去して新設する場合の区分
旧い空調設備を撤去して新しい設備を設置する場合、撤去費用は旧設備の除却損に含め、新設備の取得価額には含めません。ただし、新設備の設置のために必要な基礎工事費用は新設備の取得価額に含める場合があります。工事見積書を「撤去費用」と「新設備工事費用」に分けて取得しておくことが重要です。
有姿除却とは、固定資産を物理的に廃棄せずに帳簿から除却する処理です。通常、税務上は実際に廃棄するまで損金算入できませんが、以下の要件を満たせば有姿のまま除却損を計上できます。
| 要件 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 要件① | 使用を廃止し、今後通常の方法で事業に利用される可能性がないと認められる | 旧型の製造ラインを停止。部品が製造中止で修理不能 |
| 要件② | 特定の製品の生産のために専用に使用されていた金型等で、生産を中止したもの | 旧製品の製造に使っていた金型。新製品には使えない |
有姿除却の場合、帳簿価額から処分見込額を控除した金額を除却損として計上します。
⚠️ 注意:有姿除却は税務調査で重点確認項目
有姿除却は「物を残したまま損金計上する」ため、税務調査で否認されやすい項目です。「なぜ廃棄しないのか」「本当に再利用の見込みがないのか」を説明できる資料(使用中止の稟議書、代替設備の導入記録、市場価値の調査結果など)を必ず準備しておいてください。現場でよく見かけるのが、「倉庫に放置してあるだけで使用中止の意思決定がなされていない」ケースです。これは有姿除却の要件を満たしません。
固定資産を売却した場合、法人と個人事業主では会計処理が大きく異なります。
| 項目 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 売却益の勘定科目 | 固定資産売却益(特別利益) | 事業主借 |
| 売却損の勘定科目 | 固定資産売却損(特別損失) | 事業主貸 |
| 課税区分 | 法人の課税所得に含む | 譲渡所得(事業所得に含めない) |
| 損益通算 | 他の所得と通算 | 総合課税の譲渡所得として他の所得と通算 |
💡 個人事業主の除却損は事業所得の経費になる
個人事業主の場合、売却益・損は事業所得ではなく譲渡所得として扱いますが、除却損は事業所得の必要経費(雑費 or 固定資産除却損)として処理します。売却と除却で所得区分が変わる点に注意してください。
固定資産を売却する際、消費税の課税対象かどうかは資産の種類によって異なります。
| 資産の種類 | 課税区分 | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| 建物 | 課税 | 事業用資産の譲渡として課税対象 |
| 建物附属設備 | 課税 | 建物と同様 |
| 土地 | 非課税 | 消費税法別表第一に規定 |
| 車両 | 課税 | 事業用資産の譲渡として課税対象 |
| 機械装置 | 課税 | 事業用資産の譲渡として課税対象 |
| ソフトウェア | 課税 | 著作権の譲渡として課税対象 |
| 有価証券 | 非課税 | 消費税法別表第一に規定 |
参考: 国税庁「No.6321 固定資産を売却した場合の消費税」
⚠️ 注意:土地建物の一括売却時の按分
土地と建物をまとめて売却した場合、建物部分は消費税の課税対象、土地部分は非課税です。売買契約書で土地と建物の金額が区分されていない場合、合理的な方法で按分する必要があります。按分方法には固定資産税評価額によるなどの方法がありますが、按分比率によって消費税の課税売上高が変わるため、慎重な判断が求められます。
税務調査では「本当に除却・廃棄したのか」を厳しく確認されます。以下の証拠書類を保管してください。
| No. | 書類・資料 | 目的 | 保管のポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 廃棄業者の証明書 | 廃棄の事実を証明 | 産業廃棄物管理票(マニフェスト)等 |
| 2 | 社内稟議書・決裁書 | 除却の意思決定を証明 | 決裁日・除却理由・対象資産を明記 |
| 3 | 除却前の写真 | 資産の現物確認 | 日付入りで撮影。資産管理番号を映す |
| 4 | 固定資産台帳の更新記録 | 帳簿処理の証拠 | 除却日・除却理由を台帳に記録 |
| 5 | 取締役会議事録(高額の場合) | 経営判断の証拠 | 金額基準は社内規程に従う |
| 6 | 撤去費用の請求書・領収書 | 廃棄費用の金額を証明 | 撤去日・対象資産がわかる内容で取得 |
減価償却の基本的な仕組みや固定資産台帳の管理方法については、「減価償却の経理処理完全ガイド」で詳しく解説しています。
一括償却資産(取得価額10万円以上20万円未満の資産を3年均等償却するもの)は、通常の除却処理とは異なるルールがあります。
⚠️ 重要:一括償却資産は個別の除却ができない
一括償却資産に計上した資産を途中で廃棄しても、個別に除却損を計上することはできません。3年間の均等償却をそのまま継続する必要があります(法人税法施行令第133条の2)。この点は少額減価償却資産の特例(即時償却)で計上した資産とは異なりますので注意してください。
主要な会計ソフトでは、固定資産台帳から除却・売却の処理を行うと、自動で仕訳が作成されます。
| ステップ | 操作内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ①除却日の入力 | 固定資産台帳で対象資産を選択し、除却日を入力 | 除却日=実際に廃棄した日(有姿除却は使用中止日) |
| ②除却日までの償却費計上 | 除却日までの月割償却が自動計算される | 期中除却の場合、当月分の償却費を含むか確認 |
| ③仕訳の自動作成 | 除却損の仕訳が自動で作成される | 廃棄費用は手動で追加入力が必要な場合あり |
| ④仕訳の確認 | 自動作成された仕訳を確認・承認 | スクラップ価値の計上漏れがないか確認 |
会計ソフトの選び方や導入方法については、「会計ソフトの選び方ガイド」をご覧ください。また、簿記・仕訳の基礎知識は「簿記・帳簿の基礎知識ガイド」で体系的に解説しています。
📋 この記事のポイント