【公認会計士×税理士が解説】固定資産の除却・売却の会計処理|ソフトウェア・建物附属設備の仕訳

【公認会計士×税理士が解説】固定資産の除却・売却の会計処理|ソフトウェア・建物附属設備の仕訳
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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固定資産の除却・売却の会計処理|ソフトウェア・建物附属設備の仕訳

使わなくなった固定資産の経理処理に迷っている方に向けて、除却・売却・有姿除却の仕訳パターンを資産種類別に解説します。この記事を読めば、ソフトウェアや建物附属設備の除却から車両の売却まで、正しい会計処理と必要な証拠書類を把握できます。

🏆 結論:固定資産の処分は「除却」「売却」「有姿除却」の3パターン

①除却=帳簿から外す処理(廃棄時)。残存簿価を「固定資産除却損」として特別損失に計上する。②売却=対価を得て譲渡する処理。帳簿価額との差額が「売却益」or「売却損」になる。③有姿除却=物理的に廃棄せず帳簿だけ外す処理。使用を中止し再利用の見込みがない場合に限り認められる。いずれも税務上は証拠書類の保管が必須。

固定資産の除却とは?売却・減損との違い

固定資産の除却とは、事業で使用しなくなった固定資産を帳簿から取り除く会計処理のことです。「物理的に捨てる」廃棄とは異なり、「帳簿上で資産をなくす」のが除却です。実務では廃棄と同時に除却処理を行うケースがほとんどですが、両者は厳密には別の概念です。

除却・売却・有姿除却・減損の比較表

区分 内容 勘定科目 損益表示 税務上の注意
除却使用中止+廃棄固定資産除却損特別損失実際に廃棄するまで損金不算入(原則)
売却対価を得て譲渡売却益 or 売却損特別損益時価と著しく乖離する取引は否認リスク
有姿除却廃棄せず帳簿から除外固定資産除却損特別損失使用中止+再利用不可の要件あり
減損収益性低下による帳簿減額減損損失特別損失使用継続中でも適用可。中小企業は任意

💡 実務のポイント:除却しないと償却資産税を払い続ける

使っていない固定資産を帳簿に残しておくと、市区町村に対して償却資産税(固定資産税)を払い続けることになります。年に一度の固定資産棚卸で、使用していない資産を洗い出し、速やかに除却処理を行うことが節税の基本です。実務では12月〜1月の償却資産税申告前にまとめて除却するケースが多く見られます。

固定資産の除却の仕訳パターン

除却の仕訳は、間接法(減価償却累計額を使う方法)と直接法で処理が異なります。ここでは実務で多い間接法を中心に解説します。

パターン1:償却途中の資産を除却(間接法)

📐 前提条件

  • 機械装置:取得価額100万円、減価償却累計額70万円(帳簿価額30万円)
  • スクラップ価値なし、廃棄費用なし
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額70万円機械装置100万円
固定資産除却損30万円

パターン2:スクラップ価値がある場合

鉄くず等として売却価値がある場合、その見込額を「貯蔵品」として計上します。

借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額70万円機械装置100万円
貯蔵品5万円
固定資産除却損25万円

パターン3:廃棄費用が発生する場合

撤去費用や処分費用が発生する場合、除却損に加算します。

借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額70万円機械装置100万円
固定資産除却損38万円現金8万円

※除却損38万円=帳簿価額30万円+撤去費用8万円

パターン4:償却済み資産(備忘価額1円)の除却

減価償却が完了した資産は備忘価額1円が残っています。除却時はこの1円を費用化します。

借方 金額 貸方 金額
固定資産除却損(雑費)1円器具備品1円

金額が僅少のため「雑費」で処理しても差し支えありません。

固定資産の売却の仕訳パターン

固定資産を売却した場合、売却価額と帳簿価額の差額が「固定資産売却益」または「固定資産売却損」として計上されます。

売却益が出る場合

📐 前提条件

  • 車両運搬具:取得価額300万円、減価償却累計額200万円(帳簿価額100万円)
  • 売却価額:120万円(税抜)
借方 金額 貸方 金額
普通預金132万円車両運搬具300万円
減価償却累計額200万円固定資産売却益20万円
仮受消費税12万円

売却損が出る場合

帳簿価額100万円の車両を60万円(税抜)で売却した場合:

借方 金額 貸方 金額
普通預金66万円車両運搬具300万円
減価償却累計額200万円仮受消費税6万円
固定資産売却損40万円

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資産種類別の除却・売却仕訳一覧

資産の種類によって仕訳で使う勘定科目が変わります。代表的な5種類をまとめました。

資産の種類 勘定科目 除却時の特徴 売却時の消費税
建物附属設備建物附属設備撤去費用が発生しやすい。建物本体と区分管理が必要課税
機械装置機械装置スクラップ価値(貯蔵品)の判定が必要課税
車両運搬具車両運搬具廃車の場合はリサイクル預託金の取崩しあり課税
器具備品器具備品少額の場合は雑費での処理も可課税
ソフトウェアソフトウェア減価償却累計額を使わない(直接法が一般的)課税

ソフトウェアの除却処理

ソフトウェアは無形固定資産であり、有形固定資産とは除却の考え方が異なります。物理的な「廃棄」がないため、「使用を中止した事実」をどのように証明するかがポイントになります。

ソフトウェア除却が認められるケース

No. ケース 具体例
1対象業務の廃止業務システムが対象としていた事業部門を閉鎖
2新システムへの移行旧会計ソフトから新しいクラウド会計ソフトに完全移行
3ハードウェア・OSの変更OSのバージョンアップにより旧ソフトが動作不能に
4販売中止(複写販売用)新バージョンのリリースにより旧版の販売を終了

ソフトウェア除却の仕訳例

取得価額50万円、減価償却累計額40万円(帳簿価額10万円)の自社利用ソフトウェアを除却する場合:

借方 金額 貸方 金額
固定資産除却損10万円ソフトウェア10万円

※ソフトウェアは直接法が一般的なため、帳簿価額(取得価額−累計償却額)がそのままソフトウェア勘定の残高になります。

⚠️ 注意:ソフトウェア除却の証拠書類

ソフトウェアは物理的な実体がないため、税務調査で「本当に使用を中止したのか」を厳しく確認されます。以下の書類を必ず保管してください:社内稟議書(使用中止の決定)、新システムの導入契約書、旧システムのアンインストール記録、販売流通業者への通知文書(複写販売用の場合)。

建物附属設備の除却処理

建物附属設備(空調設備、照明設備、給排水設備など)は建物本体とは別の固定資産として管理し、耐用年数も異なります。除却の際は建物本体との区分に注意が必要です。

建物附属設備の除却仕訳例

空調設備(取得価額200万円、減価償却累計額150万円)を老朽化により撤去し、撤去費用30万円を支払った場合:

借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額150万円建物附属設備200万円
固定資産除却損80万円現金30万円

※除却損80万円=帳簿価額50万円+撤去費用30万円

💡 実務のポイント:撤去して新設する場合の区分

旧い空調設備を撤去して新しい設備を設置する場合、撤去費用は旧設備の除却損に含め、新設備の取得価額には含めません。ただし、新設備の設置のために必要な基礎工事費用は新設備の取得価額に含める場合があります。工事見積書を「撤去費用」と「新設備工事費用」に分けて取得しておくことが重要です。

有姿除却の要件と仕訳

有姿除却とは、固定資産を物理的に廃棄せずに帳簿から除却する処理です。通常、税務上は実際に廃棄するまで損金算入できませんが、以下の要件を満たせば有姿のまま除却損を計上できます。

有姿除却が認められる2つの要件

要件 内容 具体例
要件①使用を廃止し、今後通常の方法で事業に利用される可能性がないと認められる旧型の製造ラインを停止。部品が製造中止で修理不能
要件②特定の製品の生産のために専用に使用されていた金型等で、生産を中止したもの旧製品の製造に使っていた金型。新製品には使えない

有姿除却の場合、帳簿価額から処分見込額を控除した金額を除却損として計上します。

⚠️ 注意:有姿除却は税務調査で重点確認項目

有姿除却は「物を残したまま損金計上する」ため、税務調査で否認されやすい項目です。「なぜ廃棄しないのか」「本当に再利用の見込みがないのか」を説明できる資料(使用中止の稟議書、代替設備の導入記録、市場価値の調査結果など)を必ず準備しておいてください。現場でよく見かけるのが、「倉庫に放置してあるだけで使用中止の意思決定がなされていない」ケースです。これは有姿除却の要件を満たしません。

法人と個人事業主の売却処理の違い

固定資産を売却した場合、法人と個人事業主では会計処理が大きく異なります。

項目 法人 個人事業主
売却益の勘定科目固定資産売却益(特別利益)事業主借
売却損の勘定科目固定資産売却損(特別損失)事業主貸
課税区分法人の課税所得に含む譲渡所得(事業所得に含めない)
損益通算他の所得と通算総合課税の譲渡所得として他の所得と通算

💡 個人事業主の除却損は事業所得の経費になる

個人事業主の場合、売却益・損は事業所得ではなく譲渡所得として扱いますが、除却損は事業所得の必要経費(雑費 or 固定資産除却損)として処理します。売却と除却で所得区分が変わる点に注意してください。

売却時の消費税の課税・非課税判定

固定資産を売却する際、消費税の課税対象かどうかは資産の種類によって異なります。

資産の種類 課税区分 根拠・備考
建物課税事業用資産の譲渡として課税対象
建物附属設備課税建物と同様
土地非課税消費税法別表第一に規定
車両課税事業用資産の譲渡として課税対象
機械装置課税事業用資産の譲渡として課税対象
ソフトウェア課税著作権の譲渡として課税対象
有価証券非課税消費税法別表第一に規定

参考: 国税庁「No.6321 固定資産を売却した場合の消費税」

⚠️ 注意:土地建物の一括売却時の按分

土地と建物をまとめて売却した場合、建物部分は消費税の課税対象、土地部分は非課税です。売買契約書で土地と建物の金額が区分されていない場合、合理的な方法で按分する必要があります。按分方法には固定資産税評価額によるなどの方法がありますが、按分比率によって消費税の課税売上高が変わるため、慎重な判断が求められます。

除却時に必要な証拠書類チェックリスト

税務調査では「本当に除却・廃棄したのか」を厳しく確認されます。以下の証拠書類を保管してください。

No. 書類・資料 目的 保管のポイント
1廃棄業者の証明書廃棄の事実を証明産業廃棄物管理票(マニフェスト)等
2社内稟議書・決裁書除却の意思決定を証明決裁日・除却理由・対象資産を明記
3除却前の写真資産の現物確認日付入りで撮影。資産管理番号を映す
4固定資産台帳の更新記録帳簿処理の証拠除却日・除却理由を台帳に記録
5取締役会議事録(高額の場合)経営判断の証拠金額基準は社内規程に従う
6撤去費用の請求書・領収書廃棄費用の金額を証明撤去日・対象資産がわかる内容で取得

減価償却の基本的な仕組みや固定資産台帳の管理方法については、「減価償却の経理処理完全ガイド」で詳しく解説しています。

一括償却資産の除却処理

一括償却資産(取得価額10万円以上20万円未満の資産を3年均等償却するもの)は、通常の除却処理とは異なるルールがあります。

⚠️ 重要:一括償却資産は個別の除却ができない

一括償却資産に計上した資産を途中で廃棄しても、個別に除却損を計上することはできません。3年間の均等償却をそのまま継続する必要があります(法人税法施行令第133条の2)。この点は少額減価償却資産の特例(即時償却)で計上した資産とは異なりますので注意してください。

会計ソフトでの除却・売却処理の手順

主要な会計ソフトでは、固定資産台帳から除却・売却の処理を行うと、自動で仕訳が作成されます。

ステップ 操作内容 注意点
①除却日の入力固定資産台帳で対象資産を選択し、除却日を入力除却日=実際に廃棄した日(有姿除却は使用中止日)
②除却日までの償却費計上除却日までの月割償却が自動計算される期中除却の場合、当月分の償却費を含むか確認
③仕訳の自動作成除却損の仕訳が自動で作成される廃棄費用は手動で追加入力が必要な場合あり
④仕訳の確認自動作成された仕訳を確認・承認スクラップ価値の計上漏れがないか確認

会計ソフトの選び方や導入方法については、「会計ソフトの選び方ガイド」をご覧ください。また、簿記・仕訳の基礎知識は「簿記・帳簿の基礎知識ガイド」で体系的に解説しています。

よくある質問(FAQ)

固定資産除却損は損益計算書のどこに表示されますか?
一般的に「特別損失」として表示されます。固定資産の処分は通常の営業活動ではないため、経常損益ではなく特別損益に区分します。ただし、運送業やレンタル業のように固定資産の入れ替えが頻繁に行われる業種では、営業外損益として計上することもあります。
除却と売却を同時に行うことはありますか?
会計上は除却と売却は別の処理ですが、実務では「下取り」のように売却代金を得ながら帳簿から外すケースがあります。この場合は売却処理を行い、売却益または売却損を計上します。会計ソフトでは、固定資産台帳の「除却・売却」メニューで売却価額を入力すれば、自動で適切な仕訳が作成されます。
廃棄せずに倉庫に保管している遊休資産を除却できますか?
会計上は除却処理が可能です。ただし、税務上は有姿除却の要件(使用を廃止し再利用の見込みがない)を満たす必要があります。単に「使っていない」だけでは要件を満たしません。使用中止の経営判断がなされ、再利用の可能性がないことを証拠書類で示す必要があります。
期中に除却した場合、その月の減価償却費は計上しますか?
法人の場合、除却した月の減価償却費は月割計算で計上するのが一般的です。たとえば3月決算法人が10月に除却した場合、4月〜10月分の7ヶ月分の減価償却費を計上し、その後の帳簿価額を除却損とします。個人事業主の場合は1月〜除却月までの月割で計算します。
固定資産を無償で譲渡した場合はどう処理しますか?
法人の場合、無償譲渡であっても時価で譲渡したものとして処理する必要があります(法人税法第22条第2項)。帳簿価額と時価の差額は寄附金として扱われる場合があり、損金算入限度額の制限を受けます。個人事業主の場合は、帳簿価額を除却損として処理します。
除却した固定資産について、過去の減価償却費が誤っていたことが判明した場合はどうなりますか?
過去の減価償却費の誤りは、発見した事業年度で修正仕訳を行います。償却不足(過小償却)の場合は、不足分を除却時に一括して損金算入することはできず、各事業年度の償却限度額の範囲内でしか損金算入できません。償却超過(過大償却)の場合は、各事業年度の修正申告が必要になる場合があります。
仕掛品や半製品を廃棄する場合は固定資産除却損で処理しますか?
いいえ、仕掛品や半製品は固定資産ではなく棚卸資産(流動資産)です。廃棄する場合は「棚卸資産廃棄損」や「棚卸資産評価損」として処理します。損益計算書上は売上原価の内訳項目として計上するのが一般的ですが、臨時的・多額の場合は特別損失に計上することもあります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 固定資産の処分は「除却」「売却」「有姿除却」の3パターン。それぞれ会計処理と税務の取扱いが異なる
  • 除却損は特別損失に計上。税務上は実際に廃棄するまで損金算入できないのが原則(有姿除却は例外)
  • ソフトウェアの除却は「使用中止の事実」を証明する書類の保管が特に重要
  • 建物附属設備の除却は撤去費用の区分と新設備との切り分けに注意
  • 法人は売却益・損を特別損益に計上。個人事業主は譲渡所得として事業主借・貸で処理
  • 固定資産の売却には消費税がかかる(土地・有価証券は非課税)
  • 一括償却資産は個別の除却ができない(3年均等償却を継続)

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