減価償却の経理処理|定額法・定率法の仕訳と固定資産台帳の管理

減価償却の経理処理|定額法・定率法の仕訳と固定資産台帳の管理
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「減価償却の計算がややこしくて毎年の決算で苦労する」とお悩みの経理担当者に向けて、定額法・定率法の計算手順から仕訳方法、月割計算のルール、固定資産台帳の作り方まで完全ガイドします。この記事を読めば、資産の取得から最終年度まで迷わず処理できます。

🏆 結論:減価償却の経理処理で押さえる3つのポイント

①法人の法定償却方法は原則「定率法」だが、建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアは「定額法」のみ。②仕訳は「直接法」(資産を直接減額)と「間接法」(減価償却累計額を使用)の2パターンがあり、法人は間接法が一般的。③期中取得の場合は月割計算が必要で、「事業の用に供した日」が起算点です。

減価償却とは?経理処理の全体像

減価償却とは、10万円以上の固定資産(建物・車両・機械・パソコンなど)を購入した際に、取得価額を一度に費用計上するのではなく、その資産の使用可能期間(耐用年数)にわたって分割して費用計上する会計処理です。

減価償却を行う理由は、費用と収益を対応させる「費用収益対応の原則」にあります。100万円の機械を購入して5年間使用するなら、その費用は5年間に分けて計上するのが、各年度の利益を正しく表すことにつながります。

取得価額 経理処理 科目
10万円未満全額をその年度の費用消耗品費
10万円以上20万円未満通常の減価償却 or 一括償却資産(3年均等)固定資産 or 一括償却資産
20万円以上40万円未満通常の減価償却 or 少額減価償却資産の特例(中小企業のみ)固定資産 or 少額減価償却資産
40万円以上通常の減価償却(定額法 or 定率法)固定資産

※少額減価償却資産の特例は2026年4月以降、上限が30万円未満→40万円未満に引き上げ。詳しくは「少額減価償却資産・一括償却資産の経理処理」をご覧ください。

資産区分別の法定償却方法一覧

すべての資産で定額法・定率法を自由に選べるわけではありません。資産の区分によって法定の償却方法が決まっています。

資産区分 法人の法定方法 個人事業主の法定方法 届出による変更
建物定額法のみ定額法のみ不可
建物附属設備・構築物定額法のみ定額法のみ不可(H28.4.1以降取得分)
機械装置定率法定額法届出で変更可
車両運搬具定率法定額法届出で変更可
器具備品(PC・家具等)定率法定額法届出で変更可
ソフトウェア定額法のみ定額法のみ不可
工具定率法定額法届出で変更可

💡 実務のポイント

法人が定率法から定額法に変更する場合は「減価償却資産の償却方法の変更の届出書」を、変更しようとする事業年度開始日の前日までに税務署に提出します。逆に、届出を出していなければ法定償却方法(定率法)が自動的に適用されます。設立1期目は届出書が間に合わないケースがあるため、設立時に忘れず検討してください。

定額法の計算方法と6年間の推移表

定額法は、取得価額に定額法の償却率を掛けて、毎年同額の減価償却費を計上する方法です。計算がシンプルで将来の費用予測が立てやすいのがメリットです。

計算式:減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

📐 シミュレーション前提条件

  • 取得価額:100万円(器具備品・パソコンサーバー)
  • 耐用年数:5年(償却率 0.200)
  • 期首に取得・事業供用開始
年度 期首簿価 減価償却費 期末簿価
1年目1,000,000200,000800,000
2年目800,000200,000600,000
3年目600,000200,000400,000
4年目400,000200,000200,000
5年目200,000199,9991

※最終年度は備忘価額1円を残すため、200,000円ではなく199,999円を償却します。

定率法の計算方法と6年間の推移表

定率法は、未償却残高(期首簿価)に定率法の償却率を掛けて減価償却費を計算する方法です。初年度に多く費用計上できるため、節税効果を早期に得たい法人で使われます。

計算式:減価償却費 = 期首未償却残高 × 定率法の償却率

ただし、計算結果が「償却保証額」を下回った年度以降は、改定取得価額×改定償却率に切り替わります。

年度 期首簿価 償却費(定率法) 期末簿価 備考
1年目1,000,000400,000600,0001,000,000×0.400
2年目600,000240,000360,000600,000×0.400
3年目360,000144,000216,000360,000×0.400
4年目216,000108,000108,000改定償却率0.500に切替
5年目108,000107,9991備忘価額1円を残す

※耐用年数5年の200%定率法:償却率0.400、改定償却率0.500、保証率0.10800(償却保証額=1,000,000×0.10800=108,000円)。4年目の通常計算(216,000×0.400=86,400)が償却保証額108,000円を下回るため、改定償却率に切替。

定額法 vs 定率法|同一資産の5年間比較

同じ100万円の資産を定額法と定率法で償却した場合、各年度の費用計上額は以下のように異なります。

年度 定額法 定率法 差額(定率法−定額法)
1年目200,000400,000+200,000
2年目200,000240,000+40,000
3年目200,000144,000▲56,000
4年目200,000108,000▲92,000
5年目199,999107,999▲92,000
合計999,999999,9990

累計の減価償却費はどちらも同じ999,999円(備忘価額1円を残す)です。定率法は初年度に多く計上するため、利益を早期に圧縮できますが、後半は費用が少なくなるため注意が必要です。

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減価償却の仕訳|直接法と間接法の比較

減価償却の仕訳には「直接法」と「間接法」の2パターンがあります。法人では間接法が一般的ですが、個人事業主では直接法を使うケースも多いです。

同一取引での仕訳比較(定額法・年間200,000円の場合)

方法 借方 金額 貸方 金額
直接法減価償却費200,000器具備品200,000
間接法減価償却費200,000減価償却累計額200,000
比較項目 直接法 間接法
B/Sの固定資産表示未償却残高のみ取得価額と減価償却累計額の両方
取得価額の把握帳簿からは読み取れない帳簿から読み取れる
主な使用場面個人事業主・小規模法人法人(一般的)

📊 公認会計士の視点

間接法を推奨する理由は、取得価額と累計償却額が帳簿上で分かれるため、固定資産の実態を把握しやすいからです。たとえば「器具備品100万円、減価償却累計額60万円」と表示されれば、取得時の投資額と現在の簿価が一目でわかります。金融機関への決算書提出時にも、間接法のほうが固定資産の評価を理解してもらいやすいです。

月割計算のルール|事業供用日が起算点

期の途中で取得した資産は、月割計算(取得月から期末まで)で減価償却費を按分します。起算点は「購入日」ではなく「事業の用に供した日」です。

ケース 購入日 事業供用日 月割の起算月 3月決算の場合の月数
①即日使用開始10月1日10月1日10月6ヶ月
②設置工事後に使用10月1日11月15日11月5ヶ月
③試運転期間あり10月1日12月1日12月4ヶ月

月割計算の計算式(定額法の場合):年間償却費 × 使用月数 ÷ 12

上記の①のケースで取得価額100万円・耐用年数5年の場合:200,000 × 6/12 = 100,000円 が初年度の減価償却費になります。

⚠️ 注意:個人事業主は1月〜12月が事業年度

個人事業主は常に1月〜12月が事業年度です。7月に取得した場合は6ヶ月分(7月〜12月)の月割計算になります。法人のように決算月を自由に設定できないため、取得時期によっては初年度の償却額が大きく変わる点に注意してください。

固定資産台帳の作成と管理

固定資産台帳は、法律で作成が義務づけられている帳簿ではありませんが、減価償却の正確な計算と税務調査への対応のために、事実上必須の管理ツールです。

固定資産台帳の記載項目チェックリスト

No 記載項目 記載内容 確認のポイント
1資産名「ノートPC Dell Latitude 5540」等メーカー・型番まで記載
2取得日購入日(納品日)請求書・納品書と一致
3事業供用日実際に使い始めた日月割計算の起算日
4取得価額付随費用を含む金額設置費・運搬費も含む
5耐用年数法定耐用年数国税庁の耐用年数表で確認
6償却方法定額法 or 定率法届出の有無を確認
7当期償却額当期に計上した減価償却費月割計算の場合は按分後
8累計償却額取得以来の償却費累計B/Sの減価償却累計額と一致
9期末簿価取得価額−累計償却額備忘価額1円が最終
10設置場所・管理番号本社/支店/○○事業所実地棚卸で現物と照合

💡 実務のポイント

固定資産台帳は会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)で自動管理できます。手動でExcel管理している場合は、年1回の実地棚卸(現物確認)を必ず実施してください。現場でよくあるのが「帳簿上は存在するが実際には廃棄済み」という資産です。除却損の計上漏れは償却資産税(固定資産税)の過大納付にもつながります。

帳簿管理の基本については「簿記・帳簿の基礎知識」で体系的に解説しています。

よく使う耐用年数の早見表

中小企業で頻出する資産の法定耐用年数をまとめました。

資産の種類 耐用年数 定額法償却率 定率法償却率
パソコン(サーバー以外)4年0.2500.500
パソコン(サーバー用)5年0.2000.400
事務机・いす・キャビネット8年(金属製)/5年(その他)0.125/0.2000.250/0.400
普通自動車6年0.1670.333
軽自動車4年0.2500.500
ソフトウェア(自社利用)5年0.200
エアコン(業務用)13年0.077—(建物附属設備)
コピー機・複合機5年0.2000.400

参考: 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

固定資産の除却・売却の仕訳

固定資産を廃棄(除却)したり売却した場合は、帳簿から資産を除く仕訳が必要です。

除却の仕訳(間接法・期首簿価30万円の場合)

借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額700,000器具備品1,000,000
固定資産除却損300,000

売却の仕訳(簿価30万円の資産を20万円で売却した場合)

借方 金額 貸方 金額
普通預金200,000器具備品1,000,000
減価償却累計額700,000
固定資産売却損100,000

除却・売却時は固定資産台帳からも該当資産を除外し、翌年の償却資産申告書(1月末提出)に反映させることを忘れないでください。

減価償却の経理処理でよくあるミス

No よくあるミス 正しい処理
1建物を定率法で計算している建物は定額法のみ(H10.4.1以降取得分)
2購入日を事業供用日として月割計算「事業の用に供した日」が起算点
3最終年度に簿価を0円にしている備忘価額1円を残す(除却時まで帳簿に記載)
4中古資産に新品の耐用年数を適用中古資産は見積耐用年数 or 簡便法で算定
5付随費用(設置工事費等)を取得価額に含めていない運搬費・据付費・試運転費用は取得価額に含める
6除却した資産が固定資産台帳に残っている除却日に台帳から除外+除却損を計上
7定率法の改定償却率への切替タイミングを間違える通常の償却額が償却保証額を下回った年度で切替

💡 実務のポイント

中古資産の耐用年数を簡便法で計算する場合、法定耐用年数の全部を経過した資産は「法定耐用年数×20%」、一部を経過した資産は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で算定します。たとえば、法定耐用年数6年の中古車を4年落ちで購入した場合、(6−4)+4×0.2=2.8年→端数切捨てで2年になります。中古資産の耐用年数は短くなるため、早期に費用計上できるメリットがあります。

会計ソフトの選び方については「会計ソフトの選び方ガイド」で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

法人が定額法を選択したい場合、届出は必要ですか?
はい。法人の法定償却方法は原則として定率法(建物・構築物・ソフトウェアを除く)ですので、定額法を選択するには「減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署に提出する必要があります。届出書は、設立第1期の確定申告書の提出期限までに提出してください。届出がなければ自動的に定率法が適用されます。
個人事業主は定率法を使えますか?
使えます。ただし個人事業主の法定償却方法は定額法のため、定率法を使うには「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を、その年の3月15日まで(新規開業の場合は確定申告期限まで)に税務署に提出する必要があります。建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアは定額法のみで定率法は選択できません。
備忘価額1円とは何ですか?いつまで帳簿に残しますか?
備忘価額1円は、減価償却が完了した資産がまだ存在していることを帳簿上で示すための金額です。最終年度の減価償却費は、残りの未償却残高から1円を差し引いた金額になります。備忘価額1円は、資産を実際に廃棄(除却)または売却するまで帳簿に残します。除却時に「固定資産除却損 1円」の仕訳で帳簿から消えます。
取得価額に含めるべき付随費用には何がありますか?
購入代金のほか、運搬費、据付費、設置工事費、試運転費用なども取得価額に含めます。一方、固定資産税の清算金(不動産取得時に売主に支払う日割り精算金)や不動産取得税は、取得価額に含めるか租税公課として処理するかを選択できます。
会計ソフトを使えば固定資産台帳は不要ですか?
不要ではありません。ただし、会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)には固定資産台帳機能が搭載されており、資産情報を登録すれば減価償却費の自動計算・仕訳の自動生成・台帳出力ができます。Excel管理と比べて計算ミスが大幅に減りますので、会計ソフトの活用をおすすめします。
定率法の「償却保証額」とは何ですか?
償却保証額は、取得価額に保証率を掛けた金額です。定率法の通常計算(期首簿価×償却率)の結果がこの金額を下回った年度以降は、改定取得価額×改定償却率に計算方法が切り替わります。たとえば取得価額100万円・耐用年数5年の場合、保証率0.10800で償却保証額は108,000円です。
減価償却費は毎月計上する必要がありますか?
法人税法上は年1回(決算時)の計上で問題ありませんが、月次決算を行っている場合は毎月按分して計上するのが一般的です。年間償却費÷12ヶ月を毎月計上することで、月次の損益がより正確になります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 法人は原則「定率法」、個人事業主は原則「定額法」が法定償却方法(届出で変更可)
  • 建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアは法人・個人とも定額法のみ
  • 仕訳は「直接法」と「間接法」の2パターンがあり、法人は間接法が一般的
  • 期中取得の場合は「事業の用に供した日」を起算点として月割計算
  • 最終年度は備忘価額1円を残し、除却まで帳簿に記載し続ける
  • 固定資産台帳は10項目を記載し、年1回の実地棚卸で現物と照合する

減価償却の経理処理は、一度仕組みを理解すれば毎年同じ流れで処理できます。最も重要なのは、取得時に「資産区分」「耐用年数」「償却方法」の3つを正しく設定することです。この3つさえ間違えなければ、あとは会計ソフトが自動計算してくれます。まずは固定資産台帳を整備するところから始めてください。

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