経営事項審査(経審)の仕組みと評点アップ対策|公共工事受注の必須手続き

経営事項審査(経審)の仕組みと評点アップ対策|公共工事受注の必須手続き
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

公共工事の入札に参加するには、経営事項審査(経審)で総合評定値P点を算出する必要があります。P点はX1・X2・Y・Z・Wの5要素で構成され、それぞれに加点ロジックが設計されています。令和5年改正で加わったCCUSやワークライフバランス認定の加点も含め、P点アップの戦略を行政書士・公認会計士の視点で解説します。

🏆 結論:P点アップはW点から着手するのが最短ルート

総合評定値P点は、完成工事高(X1)・自己資本額等(X2)・経営状況(Y)・技術力(Z)・社会性(W)の5要素から算出されます。短期間で点数を上げるには、書類提出と制度申請で加点できる「W点」から始めるのが定石です。社会保険適正加入・建設業経理士の確保・防災協定・CCUS登録・ワークライフバランス認定など、1項目あたり21点超の加点も可能で、全業種の評点を底上げできる費用対効果の高さが特徴です。

経営事項審査(経審)とは

経営事項審査(通称「経審(けいしん)」)とは、公共工事の入札に参加しようとする建設業者が必ず受けなければならない審査で、建設業法第27条の23に規定されています。経審は、建設業者を客観的な数値で評価し、発注機関が入札参加者の格付けや等級分類を行う際の基礎データとなります。

経審を受けていない建設業者は、国・地方公共団体・公益法人・独立行政法人などが発注する公共工事を直接請け負うことができません。民間工事や下請工事には経審は不要ですが、公共工事の元請を目指す建設業者にとっては事実上の必須手続きです。経審の全体像は国土交通省 経営事項審査のページでも確認できます。

📋 経審の基本
項目 内容
根拠法令建設業法第27条の23、施行令第27条の13、施行規則第19条の8
申請対象公共工事の元請を希望する建設業許可業者
審査基準日申請会社の直前決算日
有効期間審査基準日から1年7か月
申請先知事許可=都道府県、大臣許可=地方整備局
手数料経営状況分析:1〜2万円/経営規模等評価:1業種約8,100円+2,200円/業種

総合評定値P点の計算式

経審の最終アウトプットが総合評定値(P点)です。P点は5つの評点を加重平均して算出されます。

📊 P点の計算式

P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W

上限値:2,160点/下限値:6点(令和5年8月14日以前は上限2,165点・下限-18点)
ウェイトの大きいX1とZ(各25%)、次いでY(20%)、X2・W(各15%)で構成されます。

🎯 5つの評点の内訳
評点 内容 ウェイト 業種別算出
X1完成工事高(業種別の売上規模)25%業種ごと
X2自己資本額・平均利益額15%全業種共通
Y経営状況(8指標の財務分析)20%全業種共通
Z技術力(技術職員数・元請完工高)25%業種ごと
Wその他社会性等(社会保険・CCUS等)15%全業種共通

X1とZは業種ごとに算出されるため、5業種で経審を受ける場合は5つの業種でX1とZが計算されます。一方、X2・Y・Wは全業種共通の評点で、ここを上げると全業種のP点が同時に底上げされます。

5つの評点の仕組み

X1:完成工事高評点(ウェイト25%・最高2,309点)

業種ごとの直近2年または3年の完成工事高の年間平均で評価します。2年平均と3年平均はどちらか有利な方を選択でき、全業種で統一する必要があります。

💰 X1の点数目安
年間完成工事高 X1点数(目安)
1,000万円397点
5,000万円580点
1億円659点
3億円797点
10億円938点
50億円1,159点
1,000億円2,309点(上限)

※概算の目安です。正確な値は国土交通省の評点テーブル(告示)でご確認ください。

X2:経営規模(自己資本額+平均利益額)(ウェイト15%・最高2,280点)

X2は「自己資本額点数」と「平均利益額点数」の平均値で算出されます。自己資本を厚くし、営業利益+減価償却費を積み上げることで点数が上がります。

📊 公認会計士の視点

X2の平均利益額は「営業利益+減価償却実施額」で算定されるため、減価償却費が大きいほど有利になります。会計実務で「減価償却不足」が発生している中小建設会社では、税務上の損金算入限度額まで減価償却を適正に実施することで、X2を大きく改善できるケースがあります。弊所が支援した建設会社では、5年間放置していた減価償却を適正化したことで、X2が前年比160点アップし、P点全体で24点向上した実例があります。

Y:経営状況評点(ウェイト20%・最高1,595点)

Y点は8つの財務指標から算出され、経営状況分析機関(登録分析機関)が計算します。国土交通大臣の登録を受けた分析機関(ワイス・マンパワー・CIAC等)に申請し、結果通知書を受領します。

指標 カテゴリ 計算式
Y1負債抵抗力純支払利息率=(支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100
Y2負債抵抗力負債回転期間=負債合計÷売上高÷12
Y3収益性・効率性総資本売上総利益率=売上総利益÷総資本×100
Y4収益性・効率性売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
Y5財務健全性自己資本対固定資産比率=自己資本÷固定資産×100
Y6財務健全性自己資本比率=自己資本÷総資本×100
Y7絶対的力量営業キャッシュフロー(絶対値)
Y8絶対的力量利益剰余金(絶対値)

Z:技術力評点(ウェイト25%・最高2,441点)

Z点は技術職員数と元請完成工事高から算出されます。1級建築施工管理技士・1級土木施工管理技士等の上位資格者が多いほど点数が上がります。

資格 1人あたり点数
1級監理技術者講習受講者6点
1級技術者(1級建築士・1級施工管理技士・技術士等)5点
基幹技能者3点
2級技術者(2級建築士・2級施工管理技士等)2点
その他技術者(実務経験等)1点

W:その他社会性等評点(ウェイト15%・最高1,966点)

W点は8項目で構成され、令和5年1月改正でCCUS・ワークライフバランス認定などが加わりました。書類提出と制度申請だけで加点できる項目が多いため、短期的な点数アップで最もコストパフォーマンスの高い領域です。

令和5年改正で加わったW点の新要素

令和5年(2023年)1月1日および8月14日以降、W点に次の加点項目が追加または変更されました。

📢 令和5年改正の主な変更点

①W1の名称変更(労働福祉の状況→建設工事の担い手育成)/②ワークライフバランス(WLB)認定の加点新設/③建設キャリアアップシステム(CCUS)就業履歴蓄積の加点新設(令和5年8月14日以降)/④建設機械保有数の加点対象に「ダンプ・締固め用機械・解体用機械・高所作業車」を追加/⑤W8に「エコアクション21」追加。詳細は国土交通省 経営事項審査の主な改正事項をご確認ください。

W点8項目の全体像

W評点 項目 代表的な加点対象
W1建設工事の担い手育成社会保険加入・退職一時金・WLB認定・CCUS就業履歴蓄積
W2営業年数建設業許可取得後の営業年数
W3防災活動への貢献自治体との防災協定締結
W4法令遵守の状況行政処分による減点
W5建設業経理の状況建設業経理士1級・2級、CPA・税理士等の保有
W6研究開発の状況研究開発費の平均額
W7建設機械の保有状況ショベル系建設機械・ダンプ等の保有
W8国際規格の登録状況ISO9001・ISO14001・エコアクション21

W1新設項目(WLB・CCUS)の加点詳細

加点項目 加点値 取得条件
くるみん認定(一般)2点子育てサポート企業
プラチナくるみん認定5点くるみんの高水準版
えるぼし認定(1〜3段階)1〜4点女性活躍推進
プラチナえるぼし認定5点えるぼしの最高位
CCUS全公共工事実施10点公共工事全現場でCCUS
CCUS全工事実施(民間含む)15点民間含む全現場でCCUS

P点アップの優先順位|何から着手するか

経審の点数アップは、「短期でコスパよく上げる項目」から順に進めるのが定石です。実務的な優先順位は以下のとおりです。

  1. W点の加点項目を洗い出し、取得可能なものから制度申請(3〜6か月)
  2. 建設業経理士2級を社内に配置(受験〜取得まで3〜6か月)
  3. 社会保険の適正加入と全員加入の確認(即日対応可能)
  4. Y点(財務指標)の改善準備:自己資本強化・負債圧縮(1〜2期必要)
  5. Z点の上位資格取得計画:1級施工管理技士等(1〜2年計画)
  6. X1の完成工事高拡大:営業戦略の見直し(複数年計画)

W点で狙いたい短期施策

施策 加点値 準備期間 費用目安
建設業退職金共済加入15点1〜2か月従業員数×月額数百円
CCUS全公共工事実施10点3〜6か月登録料数千〜数万円
防災協定締結20点6か月〜1年直接コストなし
ISO9001取得5点6〜12か月50〜150万円
エコアクション213点4〜6か月20〜50万円
建設業経理士2級取得(1名)10点3〜6か月受験料+研修数万円

💡 実務のポイント

W点の加点は「同じ審査基準日」に間に合わせる必要があります。たとえば3月決算の会社が翌年4月に経審を受ける場合、3月末時点で制度申請が完了し認定を受けている必要があります。弊所の経験上、「ISO取得」や「くるみん認定」などは認定までに6〜12か月かかるため、逆算して少なくとも決算月の9か月前からスタートを切るのが現実的です。逆に建設業退職金共済や建設業経理士2級は1〜3か月で対応可能なので、着手順は「すぐできる→中期→長期」の順に整理します。

経審の申請フロー|5ステップ

経審は以下の5ステップで進行します。審査基準日(決算日)から結果通知まで、平均で4〜6か月かかります。

  1. 決算確定後、決算変更届を許可行政庁へ提出(事業年度終了後4か月以内)
  2. 経営状況分析機関に分析申請(Y点の算定、約1〜3週間)
  3. Y点の結果通知書を受領(経営状況分析結果通知書)
  4. 許可行政庁に経営規模等評価申請+総合評定値請求(X1・X2・Z・Wの算定)
  5. 経営事項審査結果通知書を受領(P点確定)(審査から1〜2か月)

経営状況分析機関(Y点)

登録分析機関 手数料目安
ワイス約1.2〜1.6万円
マンパワー約1.5〜1.8万円
経営状況分析センター(CIAC)約1.1〜1.5万円
建設業情報管理センター(CIIC)約1.2万円

※手数料は機関ごとに異なります。申請前に公式サイトで最新の料金表を確認してください。

経審の有効期間と計画的受審

経審の結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月です。公共工事の入札に継続参加するには、毎年1回、途切れないよう経審を受審する必要があります。

⚠️ 経審の空白期間は命取り

審査基準日から1年7か月を過ぎると、経審結果は失効します。失効期間中は公共工事の入札に参加できず、その期間中に発注された案件の受注機会を失います。3月決算の会社であれば、審査基準日3/31→翌年10/31の経審申請が理想スケジュールです。実務では、審査基準日から遅くとも9〜10か月以内には申請を完了させることを推奨しています。弊所が支援した建設会社では、経審の2か月空白が発生した結果、年間の大型案件4件・総額1.2億円の受注機会を失った苦い経験があります。

経審の費用と期間

💰 経審トータル費用
項目 自分で申請 行政書士依頼
経営状況分析手数料1.1〜1.8万円同左
経営規模等評価手数料8,100円+2,200円×(業種数-1)同左
総合評定値請求手数料400円+200円×(業種数-1)同左
行政書士報酬0円10〜25万円
作業時間30〜60時間3〜5時間(資料提供のみ)

AYUSAWA PARTNERS

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建設業に強い税理士へ

P点の目安|何点あれば公共工事が受注できるか

P点 位置づけ 受注可能性
500点未満下位小規模公共工事のみ
600点台平均以下中規模案件の下位格付け
700点全国平均中規模公共工事に参加可能
800点上位大規模案件の入札で優位
1,000点以上最上位大型元請案件でA等級取得

発注機関(国・都道府県・市区町村)により格付けの基準は異なりますが、一般的には800点以上を目指すのが目標ラインとされています。中小建設会社がまず狙うのは「700点到達→毎年10点ずつ積み上げ→800点」というステップアップ戦略です。

よくある質問

経審を受けずに公共工事を受注することはできますか?
直接請け負うことはできません。公共工事の元請には経審結果通知書が必須です。ただし、経審を受けた元請会社の下請として工事に従事することは可能です。
経審の結果はいつから公開されますか?
経審結果通知後、おおむね10日〜2週間で建設業者の情報公開システム(CIIC等)に掲載されます。他社のP点や評点構成は誰でも閲覧可能なため、競合分析に活用できます。
完成工事高の「2年平均」と「3年平均」はどう選べばよいですか?
直近2年と3年の完成工事高平均を比較し、高い方を選択するのが一般的です。ただし、1業種だけ3年を選んで他業種で2年を選ぶことはできず、全業種で統一する必要があります。直近期が著しく好調/不調な場合に、この選択が効果を発揮します。
赤字決算でも経審は受けられますか?
受けられます。赤字決算によりY点(経営状況)は下がりますが、P点全体がゼロになるわけではありません。X1の完成工事高やZの技術職員数、W点などでカバーできれば、引き続き公共工事に参加できます。
建設業経理士は社内に何人置くのが最適ですか?
加点構造上、建設業経理士1級・2級合わせて2〜3名が効率的です。1級1名+2級2名の構成が、費用対効果の観点から一般的に推奨されます。
CCUS加点を取るには具体的に何をすれば良いですか?
①会社・技能者・現場の3登録、②現場にカードリーダー設置、③全技能者のカード読み取り実施、④直近1年間の元請工事全現場で上記を実施、が条件です。公共工事のみ全実施で10点、民間含む全工事で実施で15点が加点されます。
防災協定の加点は自治体と個別契約するのですか?
多くは建設業協会などの業界団体を通じて締結します。個別協定でも加点対象ですが、業界団体の一括協定の方が実務的にスムーズです。協定締結後1年以上経過していることが加点条件となる自治体が一般的です。
経審の結果は何か月間有効ですか?
審査基準日から1年7か月です。例えば3月31日決算の会社は、令和6年3月31日を審査基準日とする経審結果が、令和7年10月31日まで有効です。

📋 この記事のポイント

  • 経営事項審査(経審)は公共工事入札に必須の手続き、建設業法第27条の23が根拠
  • 総合評定値P点の計算式:P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
  • X1・Zは業種別、X2・Y・Wは全業種共通、W点を上げると全業種のP点が上がる
  • 令和5年改正:CCUS就業履歴蓄積・WLB認定(くるみん等)・建設機械対象拡大
  • 短期的にP点を上げるならW点から、長期ではX1・Zを計画的に強化
  • 建設業退職金共済・CCUS・ISO・建設業経理士は費用対効果が特に高い
  • 有効期間は審査基準日から1年7か月、空白期間を作らず毎年受審が鉄則

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