【税理士×社労士が解説】住民税の特別徴収と普通徴収の違い|退職金の住民税計算も解説

【税理士×社労士が解説】住民税の特別徴収と普通徴収の違い|退職金の住民税計算も解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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住民税の特別徴収と普通徴収の違い|退職金の住民税計算も解説

「特別徴収と普通徴収は何が違うの?」「退職金の住民税はどう計算するの?」という疑問を持つ経営者・経理担当者に向けて、両制度の違い・退職時の住民税処理・副業の住民税の取扱いを比較表付きで解説します。この記事を読めば、自社の住民税事務を正確に処理できるようになります。

🏆 結論:特別徴収が原則。普通徴収に切り替えられるのは限定的

住民税の特別徴収(給与天引き・年12回)が法律上の原則であり、普通徴収(本人納付・年4回)に切り替えられるのは従業員2名以下の事業所など限定的なケースのみです。退職金の住民税は通常の住民税とは別に、退職時に一括で特別徴収されます(分離課税)。退職時期によって残りの住民税の取扱いが変わるため、経理担当者は時期別の判定を正確に行う必要があります。

特別徴収と普通徴収の違い【一覧表で比較】

住民税の特別徴収と普通徴収は、いずれも前年の所得に基づいて計算された住民税を納付する方法ですが、納付方法・回数・対象者が異なります。地方税法第321条の3により、給与の支払者は原則として特別徴収を行う義務があります。

比較項目 特別徴収 普通徴収
納税方法勤務先が給与から天引きして納付本人が納付書で直接納付
主な対象者会社員・パート(給与所得者)個人事業主・フリーランス・退職者
納付回数年12回(6月〜翌年5月の毎月)年4回(6月・8月・10月・翌年1月)
1回あたりの負担(年額30万円の場合)約25,000円/月約75,000円/回
納付期限翌月10日各期の納期限(自治体により異なる)
税額計算市区町村が計算して通知市区町村が計算して通知
納付忘れのリスク低い(自動天引き)高い(本人が忘れると滞納)
法律上の位置づけ原則(義務)例外(特定の要件を満たす場合)

参考: 総務省「地方税制度|個人住民税」

特別徴収の実務フロー|経理担当者の年間スケジュール

特別徴収の事務は、年間を通じて決まったスケジュールで進みます。経理担当者が押さえるべき月別の実務フローを整理します。

特別徴収の年間タイムライン

時期 経理担当者がやること 届出・書類
1月31日まで給与支払報告書を各従業員の住所地の市区町村に提出給与支払報告書(総括表+個人別明細書)
5月下旬市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が届く。従業員別の天引き額を確認特別徴収税額決定通知書(事業主用・従業員用)
6月〜翌年5月毎月の給与から通知書の金額を天引き。翌月10日までに納付納入書(市区町村所定の用紙)
随時入社・退社があれば「異動届出書」を提出給与所得者異動届出書

🔷 社労士の視点

特別徴収税額決定通知書が届いたら、従業員用の通知書は必ず本人に配布してください。通知書には個人番号(マイナンバー)が記載されていない形式が一般的ですが、自治体によって様式が異なります。電子データで受け取る「eLTAX」対応も進んでおり、令和6年度からは電子的な送付が本格化しています。

納期の特例制度(年2回納付)

従業員が常時10人未満の事業所は、「納期の特例」を申請することで、住民税の特別徴収を年2回にまとめて納付できます。

項目 通常 納期の特例
納付回数年12回(毎月)年2回
納付時期翌月10日6月〜11月分→12月10日、12月〜翌5月分→翌6月10日
適用条件給与の支払を受ける者が常時10人未満
申請方法市区町村に「納期特例の承認申請書」を提出

💡 実務のポイント

納期の特例は所得税の源泉徴収と同様の制度ですが、注意点が一つあります。所得税の納期の特例は税務署への申請だけで済みますが、住民税の納期の特例は従業員の住所地の市区町村ごとに申請が必要です。従業員が5つの市区町村に住んでいれば、5カ所に申請書を出す必要があります。

普通徴収に切り替えられるケース

特別徴収が原則ですが、以下のケースでは普通徴収への切り替えが認められます。各自治体で「個人住民税の普通徴収切替理由書」を給与支払報告書と一緒に1月31日までに提出します。

切替理由 具体例
事業所の総従業員数が2名以下代表者1名+パート1名の小規模事業所
他の事業所で特別徴収されているダブルワーク(副業先で特別徴収済み)
給与が少なく特別徴収しきれない月給5万円で住民税月額を引くと手取りが著しく減る
給与の支払が不定期毎月の給与支払がない(不定期雇用等)
退職者・休職者退職予定者で残りの住民税を一括徴収しない場合

⚠️ 注意

「従業員が普通徴収を希望している」「事務が面倒だから」という理由では普通徴収への切り替えは認められません。各自治体は特別徴収の徹底を推進しており、正当な理由なく普通徴収にした場合、是正指導を受けることがあります。

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退職時の住民税の取扱い|一括徴収と普通徴収の判定

従業員が退職すると、残りの住民税をどう処理するかが問題になります。退職時期によって取扱いが異なるため、経理担当者は時期別のルールを正確に把握する必要があります。

退職時期別の住民税処理フロー

退職時期 残りの住民税の処理 具体例
1月1日〜4月30日一括徴収が義務(残額を最後の給与から一括天引き)3月退職→4月・5月分の住民税を3月の給与から一括徴収
5月5月分の1回分のみ徴収5月退職→5月分のみ天引き。翌年度分は新しい職場or普通徴収
6月1日〜12月31日本人が選択(一括徴収 or 普通徴収に切替)9月退職→10月〜翌5月分を一括徴収するか、残りを普通徴収にするか選べる

💡 実務のポイント

1月〜4月の退職で「最後の給与から一括徴収するだけの金額が足りない」ケースがあります。たとえば、残りの住民税が10万円なのに最後の給与の手取りが8万円しかない場合です。この場合は一括徴収が困難なため、普通徴収への切替が認められます。退職者から事前に「一括徴収で問題ないか」を確認しておくことが実務上重要です。

経理担当者の退職手続きチェックリスト(住民税関連)

従業員の退職が決まったら、以下の手順で住民税の処理を行います。

順番 やること 期限
退職時期を確認し、一括徴収か普通徴収かを判定退職日確定後すぐ
6月〜12月退職なら本人に一括徴収 or 普通徴収を確認退職日まで
「給与所得者異動届出書」を退職者の住所地の市区町村に提出退職日の翌月10日まで
一括徴収の場合は最後の給与から残額を天引きして納付翌月10日まで
転職先が決まっている場合は「特別徴収継続」の手続きも可能転職先と連携

退職金にかかる住民税の計算方法

退職金に対する住民税は、通常の住民税(給与からの特別徴収や普通徴収)とは別の「分離課税」として計算されます。退職金の支払者(会社)が税額を計算し、支払時に天引きして市区町村に納入する義務があります(地方税法第328条)。

退職金の住民税計算の3ステップ

退職金の住民税は以下の順序で計算します。

🧮 退職金の住民税計算式

ステップ1:退職所得控除額を計算
勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
ステップ2:退職所得金額を計算
(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得金額(千円未満切捨)
ステップ3:住民税額を計算
市区町村民税 = 退職所得金額 × 6%(百円未満切捨)
都道府県民税 = 退職所得金額 × 4%(百円未満切捨)

退職金の住民税シミュレーション(3パターン)

📐 シミュレーション前提条件

  • 退職所得の受給に関する申告書を提出済み
  • 障害退職ではない
  • 勤続年数の1年未満の端数は1年に切上げ
項目 一般社員(勤続25年) 役員(勤続4年) 一般社員(勤続3年)
退職金1,500万円1,500万円500万円
退職所得控除額1,150万円160万円120万円
1/2適用ありなし(特定役員)300万円以下のみ
退職所得金額175万円1,340万円150万円+80万円=230万円
市区町村民税(6%)105,000円804,000円138,000円
都道府県民税(4%)70,000円536,000円92,000円
住民税合計175,000円1,340,000円230,000円

※概算値です。端数処理の順序により若干の差が生じます。正確な計算は税理士にご相談ください。

⚠️ 注意:勤続5年以下の特例ルール

勤続年数5年以下の法人役員等は、退職所得控除後の金額に1/2を適用できません(特定役員退職手当等)。また、令和4年1月以降は、役員以外の一般社員でも勤続5年以下の場合、退職所得控除後の金額が300万円を超える部分には1/2が適用されなくなりました。短期間で高額の退職金を受け取る場合、住民税が大きくなる点に注意が必要です。

副業の住民税を普通徴収にする方法

会社員が副業をしている場合、「副業の住民税を会社にバレないように普通徴収にしたい」という相談を非常に多く受けます。結論として、給与所得以外の副業所得については確定申告書で「自分で納付」を選択すれば普通徴収にできます。

副業の住民税の納付方法を選ぶ手順

確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」にチェックを入れます。これにより、副業所得(事業所得・雑所得・不動産所得など)に対する住民税は普通徴収となり、自宅に納付書が届きます。

副業の所得の種類 普通徴収にできるか 注意点
事業所得(フリーランス副業など)確定申告書で「自分で納付」を選択
雑所得(原稿料・講演料など)確定申告書で「自分で納付」を選択
不動産所得確定申告書で「自分で納付」を選択
給与所得(アルバイト副業)✗ 原則不可副業先から給与支払報告書が市区町村に提出されるため、本業の会社に合算通知される

💡 実務のポイント

副業がアルバイト等の「給与所得」の場合は、原則として本業と合算して特別徴収されるため、本業の会社に住民税額の増加として気づかれる可能性があります。副業を会社に知られたくない場合は、副業の形態を「業務委託」にして雑所得として確定申告するという方法が実務的には多いです。ただし、自治体によっては確定申告で「自分で納付」を選んでも対応しないケースがまれにあるため、事前に自治体に確認することをお勧めします。

年金からの特別徴収

65歳以上で公的年金を受給している方は、住民税が年金から天引き(特別徴収)される場合があります。これは給与からの特別徴収とは別の制度で、本人が普通徴収への変更を希望しても認められません。

年金からの特別徴収の対象は、4月1日時点で65歳以上の公的年金受給者のうち、住民税の納税義務がある方です。年金の受給額が年18万円未満の場合や、介護保険料が年金から天引きされていない場合は対象外となります。

個人住民税の基本的なしくみ(税率・計算方法・非課税限度額)については、「個人住民税とは?計算方法・税率・非課税限度額をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。ふるさと納税の住民税控除については「ふるさと納税と住民税控除のしくみ|限度額の計算とワンストップ特例」も参考になります。住宅ローン控除と住民税の関係は「住民税の住宅ローン控除・申告不要制度・森林環境税」をご覧ください。加算税・延滞税の全体像は「加算税・延滞税の全体像」で確認できます。

よくある質問(FAQ)

特別徴収と普通徴収で住民税の金額は変わりますか?
変わりません。年間の住民税の総額は同じです。違いは納付方法と回数だけです。特別徴収は年12回、普通徴収は年4回なので、1回あたりの納付額は普通徴収のほうが大きくなります。
退職金の住民税は確定申告が必要ですか?
通常は不要です。退職金の住民税は、退職金支払時に会社が計算して特別徴収(天引き)するため、受給者側の手続きは原則不要です。ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない場合は、所得税が一律20.42%で源泉徴収されるため、確定申告で精算する必要があります。なお、住民税については申告書提出の有無に関わらず同じ計算方法が適用されます。
転職した場合、住民税はどうなりますか?
退職時に一括徴収するか普通徴収に切り替えるかを選択し、転職先が決まっている場合は転職先で特別徴収を継続することも可能です。継続する場合は、前の会社が「給与所得者異動届出書」に転職先の情報を記載し、市区町村に提出します。
パート・アルバイトも特別徴収の対象ですか?
はい。パート・アルバイトであっても、給与の支払を受けている限り原則として特別徴収の対象です。ただし、給与が少なく住民税を天引きしきれない場合や、短期雇用の場合は普通徴収への切替が認められるケースがあります。
副業の住民税を普通徴収にすれば会社にバレませんか?
副業が事業所得や雑所得であれば、確定申告で「自分で納付」を選択することで普通徴収にでき、会社に通知が行きません。ただし、副業が給与所得(アルバイト等)の場合は本業と合算して特別徴収されるため、住民税額の増加で気づかれる可能性があります。
住民税の納期の特例はどこに申請すればいいですか?
従業員の住所地の各市区町村に「納期特例の承認申請書」を提出します。所得税の源泉所得税の納期の特例(税務署への申請)とは別の手続きです。従業員が複数の市区町村に住んでいる場合は、それぞれの市区町村に個別に申請する必要があります。
退職金の住民税はいつの住所地に納入しますか?
退職金の支払を受けるべき日(通常は退職日)が属する年の1月1日現在の住所地です。たとえば3月に退職する場合は、その年の1月1日に住民登録があった市区町村に納入します。給与からの特別徴収の納入先とは異なる場合があるので注意してください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 特別徴収(年12回・給与天引き)が原則。普通徴収(年4回・本人納付)は例外的なケースのみ
  • 経理担当者は1月に給与支払報告書を提出し、5月に届く税額通知書に基づいて6月から天引き
  • 従業員10人未満なら「納期の特例」で年2回納付が可能(市区町村ごとに申請が必要)
  • 退職時の住民税は時期で処理が変わる。1〜4月退職は一括徴収が義務、6〜12月は本人選択
  • 退職金の住民税は分離課税。会社が計算して退職金から天引きし市区町村に納入
  • 勤続5年以下の役員は1/2控除なし。一般社員も300万円超部分は1/2控除が不適用
  • 副業の住民税は確定申告で「自分で納付」を選べば普通徴収にできる(給与所得の副業は原則不可)

住民税の特別徴収は、経理担当者にとって毎月の給与計算に直結する重要な事務です。特に退職時の処理は時期によってルールが異なるため、判断を誤ると従業員とのトラブルや自治体からの是正指導につながります。退職金の住民税計算も含め、不安がある場合は税理士に相談して正確な処理を行いましょう。

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参考: 総務省「退職所得に対する住民税の特別徴収について」

参考: 国税庁「退職金と税」