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発生主義と現金主義の違い|経過勘定の処理と決算整理の基礎
「発生主義と現金主義って何が違うの?」「決算で前払費用や未払費用の仕訳が必要と言われたけど、よくわからない」という個人事業主・法人経理の方に向けて、同じ取引を3方式で比較しながら、経過勘定の処理と決算整理の基礎をわかりやすく解説します。


「発生主義と現金主義って何が違うの?」「決算で前払費用や未払費用の仕訳が必要と言われたけど、よくわからない」という個人事業主・法人経理の方に向けて、同じ取引を3方式で比較しながら、経過勘定の処理と決算整理の基礎をわかりやすく解説します。
🏆 結論:法人は発生主義が必須。個人も青色65万円控除には発生主義が必要
発生主義は「取引が発生した時点」で、現金主義は「お金が動いた時点」で記帳する方法です。日本の会計基準では費用は発生主義、収益は実現主義で計上するのが原則です。法人は必ず発生主義を採用しなければなりません。個人事業主も青色申告で65万円控除を受けるには発生主義が必要です。現金主義が使えるのは、前々年の所得300万円以下かつ青色申告者のごく限られた場合だけです。発生主義では決算時に「経過勘定」の調整が必要になりますが、会計ソフトを使えば大部分が自動化されます。
会計には3つの「主義」があり、それぞれ費用や収益を帳簿に記録するタイミングが異なります。
| 比較項目 | 発生主義 | 現金主義 | 実現主義 |
|---|---|---|---|
| 記帳タイミング | 取引が発生した時点 | お金が動いた時点 | 収益が確定した時点 |
| 対象 | 主に費用の計上に適用 | 費用・収益の両方 | 主に収益(売上)の計上に適用 |
| メリット | 正確な期間損益を把握できる | 記帳が簡単。キャッシュフローが明確 | 確定した収益のみ計上するため堅実 |
| デメリット | 仕訳が複雑。経過勘定の調整が必要 | 期間損益がズレる。決算書が不正確に | 費用には使えない(発生主義と併用) |
| 法人での利用 | 必須(費用) | 不可 | 必須(収益) |
| 個人での利用 | 原則(青色65万/55万控除に必須) | 特例のみ(所得300万以下の青色) | 原則(収益) |
日本の会計基準では「費用=発生主義」「収益=実現主義」で計上するのが原則です。企業会計原則の損益計算書原則で「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」と定められています。
理論だけではわかりにくいので、同じ取引を発生主義と現金主義でどう仕訳するか、具体的に比較します。
📐 ケース設定
| 日付 | 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 3月15日 | 仕入 50,000 | 買掛金 50,000 | 商品を受け取った時点で費用計上 |
| 4月30日 | 買掛金 50,000 | 普通預金 50,000 | 代金を支払った時点で債務を消す |
3月の決算には仕入5万円が正しく反映されます。
| 日付 | 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 4月30日 | 仕入 50,000 | 普通預金 50,000 | 代金を支払った時点で初めて記帳 |
3月の決算には仕入5万円が反映されず、翌期(4月)に計上されてしまいます。つまり、3月の利益が5万円分過大に計算され、正確な決算書になりません。
📊 公認会計士の視点
この「期ズレ」こそが現金主義の最大の問題です。特に決算月をまたぐ取引が多い業種(建設業・IT業など)では、現金主義だと利益が実態から大きく乖離します。銀行融資の審査でも「正確な決算書」が求められるため、法人は発生主義以外の選択肢がないのです。
自分が発生主義を採用すべきか、現金主義の特例が使えるかを以下の判定表で確認してください。
| あなたの状況 | 採用すべき方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 法人(株式会社・合同会社) | 発生主義(必須) | 企業会計原則・法人税法で義務 |
| 個人事業主(青色65万円/55万円控除) | 発生主義(必須) | 複式簿記+発生主義が控除の要件 |
| 個人事業主(青色10万円控除) | 発生主義(原則) | 所得300万円以下なら現金主義特例も可 |
| 個人事業主(白色申告) | 発生主義(原則) | 白色でも発生主義が原則。現金主義特例は使えない |
⚠️ 注意
現金主義の特例を使うには、その年の3月15日までに「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を税務署に提出する必要があります。届出なしに勝手に現金主義で記帳しても認められません。また、現金主義を選択すると青色申告特別控除は10万円が上限になります。
簿記の基本(複式簿記・借方貸方)については、「簿記の基礎知識|複式簿記・単式簿記の違いと仕訳の基本ルール」で詳しく解説しています。
発生主義を採用すると、決算日をまたぐ取引について「経過勘定」の調整が必要になります。経過勘定には以下の4種類があり、「お金の動きが先か、サービスの提供が先か」×「費用か収益か」の2軸で判定します。
| 費用(お金を払う側) | 収益(お金を受け取る側) | |
|---|---|---|
| お金が先に動いた(先払い/先受け) | 前払費用 (翌期分のサービスに先に支払った) | 前受収益 (翌期分のサービスの代金を先に受け取った) |
| サービスが先に提供された(後払い/後受け) | 未払費用 (当期のサービスを受けたが代金は翌期に支払う) | 未収収益 (当期のサービスを提供したが代金は翌期に受け取る) |
💡 実務のポイント
年間100社以上の決算を担当していますが、経過勘定の調整漏れが最も多いのは「前払費用」と「未払費用」の2つです。たとえば12月決算の法人が1月〜12月の保険料を年払いで支払った場合、決算時に1月〜12月分は当期の費用、翌年1月以降分は前払費用に振り替える必要があります。この調整を忘れると、費用が過大に計上され利益が過少になります。
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鮎澤パートナーズに相談する経過勘定の仕訳パターンを、実務で頻出する5つのケースで具体的に見ていきましょう。いずれも決算月(3月決算を想定)に行う調整仕訳です。
4月に翌年3月までの1年分の保険料12万円を支払った場合。決算時に翌期分(4月〜3月分)を前払費用に振り替えます。ただしこのケースでは全額当期分のため調整不要です。仮に1月に12万円を年払いした場合、1月〜3月の3ヶ月分(3万円)が当期、4月〜12月の9ヶ月分(9万円)が前払費用となります。
| 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|
| 前払費用 90,000 | 保険料 90,000 | 翌期分9ヶ月分を費用から資産に振替 |
3月分の給料30万円を4月25日に支払う場合、3月決算時に未払計上します。
| 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|
| 給料手当 300,000 | 未払費用 300,000 | 3月分の給料を当期の費用として計上 |
2月に1年分の保守サービス料24万円を受け取った場合、4月以降の10ヶ月分(20万円)を前受収益に振り替えます。
| 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|
| 売上 200,000 | 前受収益 200,000 | 翌期分10ヶ月分を収益から負債に振替 |
3月にコンサルティング50万円を提供し、請求書を発行したが入金は4月末の場合。
| 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|
| 売掛金 500,000 | 売上 500,000 | サービス提供済みの売上を当期に計上 |
取得価額120万円・耐用年数4年・定額法のPCの当期分の償却費を計上します。
| 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|
| 減価償却費 300,000 | 工具器具備品 300,000 | 120万÷4年=30万円を当期の費用に配分 |
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 正確な期間損益を把握できるため経営判断に役立つ | 仕訳の回数が増え記帳が煩雑になる |
| 売掛金・買掛金・未払金の残高が常に把握できる | 帳簿上の利益とキャッシュ残高がズレることがある |
| 融資審査で信頼性の高い決算書を提出できる | 決算時に経過勘定の調整仕訳が必要 |
| 納税額の予測精度が向上し、税金の資金繰りがしやすい | 簿記の基礎知識が必要(会計ソフトで軽減可能) |
💡 実務のポイント
「帳簿上は黒字なのに、口座にお金がない」——この現象は発生主義だからこそ起きます。売上を計上しても入金がまだの場合、P/L上は利益が出ていてもキャッシュが不足します。これが「黒字倒産」の原因です。発生主義で正確な利益を把握しつつ、資金繰り表でキャッシュの動きも管理することが中小企業の鉄則です。
発生主義では「取引が発生した日」と「お金が動いた日」が異なるため、証憑(領収書・請求書等)の整理方法が重要になります。
| ルール | 具体的な方法 | 理由 |
|---|---|---|
| ① 発生日ベースで整理 | 証憑を「取引が発生した月」のフォルダに入れる(支払日ではない) | 仕訳帳と証憑の日付を一致させるため |
| ② 売上と仕入を分ける | 「売上関連(請求書控え・納品書控え)」と「仕入・経費関連(領収書・請求書)」を別ファイルに | 税務調査で売上と経費は別々にチェックされるため |
| ③ 通し番号を振る | 証憑に月ごとの連番を付ける(例:2026-03-001)。仕訳帳の摘要欄にも同じ番号を記載 | 証憑と仕訳を紐付けられるため |
💡 実務のポイント
紙の証憑をスマホで撮影してクラウドに保存している方が増えていますが、電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプまたは訂正削除履歴が残るシステムの利用等)を満たす必要があります。freee・マネーフォワード・弥生の証憑管理機能を使えば、撮影→アップロード→仕訳との紐付けが自動化され、ファイリングの手間がほぼゼロになります。
「発生主義は難しそう」と感じるかもしれませんが、会計ソフトを使えば大部分が自動化されます。
銀行口座・クレジットカードと連携すると、入出金データが自動取込されます。AIが取引内容を推測して勘定科目と仕訳を提案してくれます。ユーザーが「承認」するだけで仕訳帳に記録され、転記以降のプロセス(総勘定元帳→試算表→決算書)は全て自動です。
会計ソフトが自動化できないのは「決算整理仕訳」です。前払費用・未払費用・減価償却費などの経過勘定の調整は、事業の実態を判断した上で手動で入力する必要があります。ただし、減価償却は固定資産台帳に登録すれば自動計算されますし、毎月同じ金額の前払費用は「定期仕訳」機能で自動化できます。
会計ソフトの選び方については、「簿記の基礎知識|複式簿記・単式簿記の違いと仕訳の基本ルール」内の「会計ソフト3社の比較」セクションをご覧ください。
📋 この記事のポイント
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