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男女賃金差異の公表義務(301人以上)|算定方法と開示のポイント5ステップ
男女賃金差異の算出・公表に戸惑う人事担当者に向けて、女性活躍推進法に基づく公表義務の全体像・算出5ステップ・実務の判断ポイントを整理します。101人超への対象拡大(2026年4月)にも対応。


男女賃金差異の算出・公表に戸惑う人事担当者に向けて、女性活躍推進法に基づく公表義務の全体像・算出5ステップ・実務の判断ポイントを整理します。101人超への対象拡大(2026年4月)にも対応。
🏆 結論:源泉徴収簿を使えば正確な男女賃金差異を3時間で算出できる
男女賃金差異の公表は、女性活躍推進法第20条に基づく情報公表項目の1つで、2022年7月から常時雇用301人超企業が義務化、2026年4月から101人超企業に拡大されます。算出は「正規・非正規の4区分で男女別に総賃金と人員数を算出→平均年間賃金を計算→女性÷男性の割合を出す」の5ステップで、源泉徴収簿を使えば実務3時間程度で完了します。退職手当と通勤手当は個別判断で「賃金」から除外可(ただし男女共通の取扱いが必要)。公表期限は事業年度終了後おおむね3カ月以内、自社HPまたは厚労省の「女性の活躍推進企業データベース」で行います。違反への直接罰則はないものの、労働局から助言・指導・勧告の対象となり、悪質な場合は企業名公表の可能性があります。
男女賃金差異の公表は、2022年7月8日の女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)の省令改正により導入された情報公表項目です。当初は常時雇用301人超の企業が対象でしたが、2025年の法改正により2026年4月1日から101人超の企業へと対象が拡大されます。
| 時期 | 対象企業 | 公表方式 |
|---|---|---|
| 2022年7月8日〜 | 常時雇用労働者301人超の企業 | 必須項目(義務) |
| 〜2026年3月31日 | 常時雇用労働者101〜300人の企業 | 努力義務 |
| 2026年4月1日〜 | 常時雇用労働者101人超の企業 | 必須項目(義務) |
💡 実務のポイント:「常時雇用労働者」の数え方に注意
常時雇用労働者とは、①期間の定めなく雇用されている者、または②過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者、③採用の時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者を指します。パート・アルバイトでもこの要件を満たせば含めて数えます。弊所顧問先で従業員総数350名だが「期間雇用が多く常時雇用は290名」として対象外と判断した企業がありましたが、運用実態を精査すると常時雇用が310名となり、2026年4月を待たず2022年から対象となるべき状態でした。判定ミスは労働局の調査で指摘されるため、労務監査で事前確認することをおすすめします。
「常時雇用する労働者数が301人以上」とは、事業主(会社単位)で判定します。事業場ごとではなく、会社全体で300人を超えているかどうかがポイントです。本社と複数の支店・工場を合算した人数で判断します。
男女賃金差異の算出は厚生労働省の解説資料に基づく以下5ステップで行います。源泉徴収簿を使えば実務効率が大幅に上がります。
対象となる全労働者を以下の4区分に分類します。
| 区分 | 該当者 |
|---|---|
| ①男性・正規 | 男性の正社員・無期雇用フルタイム |
| ②男性・非正規 | 男性のパート・契約社員・嘱託・再雇用 |
| ③女性・正規 | 女性の正社員・無期雇用フルタイム |
| ④女性・非正規 | 女性のパート・契約社員・嘱託・再雇用 |
派遣社員は派遣元企業で計算するため除外します。嘱託社員は直接雇用であれば非正規に含めます。
4区分ごとに、事業年度1年間の総賃金と人員数を算出します。
4区分ごとに「総賃金 ÷ 人員数」で平均年間賃金を計算します。
🧮 計算例:従業員500名のA社
男性・正規:総賃金18億円 ÷ 300名 = 平均600万円
女性・正規:総賃金8億円 ÷ 150名 = 平均533万円
男性・非正規:総賃金6,000万円 ÷ 20名 = 平均300万円
女性・非正規:総賃金9,000万円 ÷ 30名 = 平均300万円
正規・非正規の総賃金と人員数を合算して、男女別に全体の平均年間賃金を算出します。
正規・非正規・全労働者の3区分で、それぞれ「女性の平均年間賃金 ÷ 男性の平均年間賃金 × 100」を計算します。
| 区分 | A社の割合 |
|---|---|
| 正規労働者 | 533万円 ÷ 600万円 = 88.8% |
| 非正規労働者 | 300万円 ÷ 300万円 = 100.0% |
| 全労働者 | (合算計算)82.5% |
🔷 社労士の視点:源泉徴収簿が最も実務的
算出の基礎資料は源泉徴収簿が最も効率的です。源泉徴収簿に記載されている「給与所得」金額は所得税法第28条の給与所得と一致するため、総賃金の計算に直接使えます。事業年度が4月〜翌3月の場合、2年分の源泉徴収簿を用意して「当年4〜12月」「翌年1〜3月」の給与・賞与を合算します。賃金台帳から個別に集計するより3〜5倍速く、計算ミスも少なくなります。弊所で支援した従業員420名の製造業では、源泉徴収簿方式で実作業2時間半で算出完了しました。
総賃金の計算に含める項目と除外可能な項目を正確に理解することが、正しい算出の前提になります。
| 項目 | 扱い | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 基本給 | ◎含める | 労基法第11条の賃金 |
| 残業手当・休日手当 | ◎含める | 労働の対償 |
| 役職手当・職務手当 | ◎含める | 労働の対償 |
| 賞与(年2〜3回) | ◎含める | 労働の対償 |
| 家族手当・住宅手当 | ◎含める | 労働の対償 |
| 通勤手当 | △除外可 | 経費の実費弁償的性格があるため除外可(男女共通の取扱いが必要) |
| 退職手当 | △除外可 | 年度を超える労務の対価として除外可(男女共通の取扱いが必要) |
| 慶弔見舞金 | ✕除外 | 労働の対償ではない |
| 出張旅費 | ✕除外 | 実費弁償 |
| 社宅・食事の現物支給 | ○含める | 評価額を賃金に含める(労基法第11条) |
⚠️ 注意:退職手当・通勤手当の除外は「男女共通」で
退職手当と通勤手当は個別の事業主判断で「賃金」から除外できますが、男性も女性も同じ取扱いにする必要があります。「男性は除外、女性は含める」という恣意的な取扱いは、明確な違反として労働局の指摘対象になります。また、初回公表以降は一貫性ある方法を継続する必要があり、途中で「退職手当を含めるようにした」と変更する場合は理由の明記が求められます。
AYUSAWA PARTNERS
男女賃金差異の算出・公表支援は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。社労士が算出代行・公表文案作成・えるぼし認定支援までワンストップで対応します。
鮎澤パートナーズに相談する事業年度終了後、おおむね3カ月以内に公表する必要があります。
| 事業年度 | 公表期限 |
|---|---|
| 4月〜翌3月 | 翌年6月末頃まで |
| 10月〜翌9月 | 翌年12月末頃まで |
| 1月〜12月 | 翌年3月末頃まで |
実務上は両方に掲載するのが一般的です。厚労省データベースへの登録は、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の取得にも必須で、採用ブランディングにも活用できます。
数字だけを公表すると誤解を招く恐れがあるため、差異が生じている理由を補足説明するのが実務の標準です。
📐 公表文案の例
【男女の賃金の差異】(2026年3月期)
・正規雇用労働者:88.8%
・非正規雇用労働者:100.0%
・全労働者:82.5%
【差異の説明】
当社では、男女問わず同一の賃金体系を適用しており、同一等級における男女間の賃金差はありません。全労働者の差異が82.5%となっている主な要因は、①管理職に占める女性比率が25%にとどまっていること、②非正規雇用(パート等)に女性が多く在籍していることです。
【改善の取組】
女性管理職比率を2028年までに35%、2030年までに40%とする目標を設定。女性のキャリア形成支援プログラム、育児との両立支援(短時間勤務・テレワーク)の拡充を進めています。
男女賃金差異の公表義務違反に対して、女性活躍推進法には直接の罰則規定(罰金・拘禁刑)はありません。ただし以下の段階的措置が取られます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①労働局の報告徴収 | 公表状況の確認、報告書提出要求 |
| ②助言・指導 | 改善方法の指導、期限設定 |
| ③勧告 | 改善命令、公表猶予 |
| ④企業名公表 | 勧告に従わない場合、厚生労働大臣が企業名を公表(法第30条) |
📊 実務上のリスクは「採用力の低下」と「取引先評価」
罰金はないものの、公表義務違反の実務インパクトは採用・取引の両面で大きくなっています。就活生は女性の活躍推進企業データベースを入社検討に使う傾向が強く、未公表企業は応募数が減る傾向があります。また、大企業との取引ではサプライヤー選定の条件として公表企業であることを求める動きも出てきました。特にESG投資の観点から上場企業との取引比率が高い会社では、未公表が実質的な取引減少リスクに直結するケースを弊所でも見ています。罰則がないからと軽視すべきテーマではありません。
従業員101〜300人の企業は、2026年4月から初回公表義務が発生します。以下のチェックリストで準備状況を確認してください。
📋 この記事のポイント
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