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「うちの会社には税務調査は来ないだろう」と思っていませんか。法人の調査確率は約1.9%、個人事業主は約0.9%、相続税は約5.5%ですが、売上規模・業種・赤字の状況によってその確率は大きく変わります。令和5事務年度の最新データをもとに、あなたのケースでの実際の確率を税理士が解説します。


「うちの会社には税務調査は来ないだろう」と思っていませんか。法人の調査確率は約1.9%、個人事業主は約0.9%、相続税は約5.5%ですが、売上規模・業種・赤字の状況によってその確率は大きく変わります。令和5事務年度の最新データをもとに、あなたのケースでの実際の確率を税理士が解説します。
🏆 結論:平均確率は目安。本当に見るべきは「業種×規模×利益率」の3要素
令和5事務年度の税務調査確率は、法人約1.9%・個人事業主約0.9%・相続税約5.5%です。ただし単純平均の数字だけを見て安心するのは危険。現金商売・所得率乖離・売上急増の3要素に該当する法人は平均の3〜5倍の確率で選定されます。また、調査は7〜12月(上期)と1〜6月(下期)で対象決算月が分かれ、国税通則法第70条により最大5年(不正行為があれば7年)まで遡及されます。「確率が低いから大丈夫」ではなく「選ばれる側に入らないための日頃の備え」が最も確実な対策です。
税務調査の確率は、法人・個人・相続税のそれぞれで大きく異なります。まずは最新の実地調査確率を整理します。
| 税目 | 申告件数 | 実地調査件数 | 実地調査確率 | 非違割合(誤り率) |
|---|---|---|---|---|
| 法人税 | 約317.6万件 | 約5.9万件 | 約1.9% | 約76% |
| 所得税(個人) | 約530万件 | 約4.8万件 | 約0.9% | 約83% |
| 相続税 | 約15.1万件 | 約8,300件 | 約5.5% | 約85% |
※実地調査件数は国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」「所得税及び消費税調査等の状況」「相続税の調査等の状況」より。申告件数は概算値。
法人1.9%という確率は、単純計算で「50年に1回」となりますが、現実には売上規模1億円以上の法人の多くが10〜15年に1回は税務調査を受けています。理由は、税務署が限られた調査人員を「効率よく追徴税額を確保できる法人」に集中投下しているためです。
💡 実務のポイント
当事務所の関与先で税務調査を経験した法人を集計すると、売上1億円以上の法人では10〜12年に1回、売上5億円以上では5〜7年に1回の頻度で調査が入っています。平均確率1.9%という数字は、休眠会社や小規模法人を含めた分母なので、実際に事業を行っている法人の体感確率はこれより高めです。
税務調査に入られた場合、誤りが指摘される確率は法人で約76%、個人で約83%、相続税で約85%に達します。つまり「調査に入られたら8割方、追徴課税がある」と覚悟しておくべきです。
法人税の平均調査確率は1.9%ですが、売上規模別に細かく見ると、実際の確率は大きく変動します。
| 売上規模 | 体感的な調査頻度 | 年間確率目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 〜1,000万円 | 30年に1回以下 | 約0.5% | 免税事業者の場合さらに低い |
| 1,000〜3,000万円 | 20年に1回 | 約1% | 課税事業者化直後は要注意 |
| 3,000万〜1億円 | 12〜15年に1回 | 約2% | 中小企業の中心層 |
| 1億〜5億円 | 7〜10年に1回 | 約3〜5% | 税務署の注目エリア |
| 5億〜10億円 | 5〜7年に1回 | 約7〜10% | 国税局の管轄外縁 |
| 10億〜100億円 | 3〜5年に1回 | 約15〜30% | 国税局調査部の対象 |
| 100億円以上(上場企業等) | 2〜3年に1回 | 約40〜50% | ほぼ隔年で調査対象 |
※筆者の経験値に基づく目安。統計上の正式値ではありません。
「赤字なので税務調査は来ない」と考える経営者がいますが、これは誤りです。赤字法人でも以下のケースでは調査対象になります。
特に消費税の還付申告は、赤字法人であっても高確率で調査対象となります。輸出業・多額の設備投資を行った法人・還付請求額が1,000万円を超える案件は、ほぼ100%書面確認または実地調査が行われます。
個人事業主の平均調査確率は0.9%ですが、業種による確率の差は極めて大きく、上位業種は平均の5〜10倍の確率で調査対象になります。
📢 個人事業主は「簡易な接触」にも注意
個人事業主に対しては、実地調査(約4.8万件/年)に加えて、書面・電話・来署依頼による「簡易な接触」が令和5事務年度で約59.9万件実施されています。単純合計で約64.7万件となり、個人申告件数530万件に対する確率は約12%。およそ8人に1人が何らかの税務署からの接触を受けている計算です。
| 順位 | 業種 | 1件あたり申告漏れ所得金額 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 経営コンサルタント | 約3,300万円 | 3年連続1位。裁量経費が多く売上把握が困難 |
| 2位 | くず金卸売業 | 約3,000万円 | 現金取引が多い業種 |
| 3位 | ブリーダー | 約2,400万円 | 売上の把握困難・経費区分曖昧 |
| 4位 | タイル工事 | 約2,300万円 | 建設業系 |
| 5位 | コンテンツ配信 | 約2,100万円 | YouTuber等・新興業種 |
| 6位 | 不動産代理仲介 | 約2,000万円 | 高額取引・仲介手数料 |
| 7位 | システムエンジニア | 約1,700万円 | IT系・高所得フリーランス |
| 8位 | 内科医 | 約1,600万円 | 医業・自由診療分 |
| 9位 | 商工業デザイナー | 約1,500万円 | クリエイター系 |
| 10位 | 冷暖房設備工事 | 約1,400万円 | 建設業系 |
参考: 国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
⚠️ 注意:IT・コンテンツ系の上位化
近年の特徴は、コンテンツ配信(YouTuber・ライブ配信者)とシステムエンジニア(フリーランスプログラマー)が継続的に上位に入っていることです。クラウドソーシング収入・海外プラットフォーム収入・暗号資産取引収入などは所得税法第36条の収入計上漏れが起きやすく、税務署がKSK(国税総合管理システム)による情報突合に力を入れている分野です。
相続税の調査確率は約5.5%と、法人税・所得税に比べて明らかに高い水準です。これには明確な理由があります。
💡 相続税の選定根拠
①1件あたりの追徴税額が大きい(平均800〜1,000万円)ため費用対効果が高い/②被相続人の預金・保険・証券取引データがKSKに集約されており、申告漏れを機械的に発見しやすい/③法定相続人の口座や海外資産の調査で複雑な論点があり「簡易な接触」だけでは解決しない。この3点が相続税の調査確率を押し上げています。
| 項目 | 令和5事務年度 | 前年比 |
|---|---|---|
| 実地調査件数 | 約8,300件 | +2% |
| 申告漏れ課税価格 | 約2,736億円 | -12% |
| 追徴税額 | 約789億円 | +11% |
| 1件あたり追徴税額 | 約950万円 | +9% |
| 無申告・簡易な接触件数 | 約18,800件 | +25% |
参考: 国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」
注目すべきは、無申告案件に対する「簡易な接触」が令和5事務年度で約18,800件と前年比25%増加していることです。平成28事務年度以降で最高となっており、税務署が「相続があっても申告していないケース」の洗い出しに力を入れていることがわかります。
税務調査には明確な「多い時期」と「少ない時期」があります。これは税務署の事務年度と人事異動に起因します。
税務署の事務年度は、会計年度(4月〜3月)と異なり、7月1日〜翌年6月30日です。一般職の税務職員の定期人事異動は毎年7月10日に実施され、この時期に新体制での業務が本格的にスタートします。
| 時期 | 税務署の業務 | 対象となる決算月 | 調査ピーク |
|---|---|---|---|
| 7〜9月 | 人事異動後の調査準備・着任 | 2〜5月決算法人 | 通知開始 |
| 9〜11月 | 実地調査の最盛期(法人) | 3月決算が中心 | ★最盛期 |
| 8〜12月 | 相続税調査の実施 | — | 相続税ピーク |
| 12月 | 上期調査の手仕舞い・確定申告準備 | 調査終結 | 減少 |
| 1〜3月 | 確定申告業務で多忙 | ほぼなし | ★閑散期 |
| 4〜6月 | 下期調査(法人・個人) | 6月〜翌1月決算法人 | 下期最盛期 |
個人事業主の場合、3月15日の確定申告後に税務署が申告書を精査するため、4〜5月に「お尋ね」や「簡易な接触」が多くなります。実地調査のピークは10〜12月です。
💡 実務のポイント
当事務所の関与先で税務調査の事前通知を受ける時期は、法人の場合9〜11月が圧倒的に多く、次いで4〜6月という順序です。3月決算法人は9〜11月に集中する傾向があるため、8月末から9月にかけて「そろそろ税務調査がありそうだ」と感じたら、決算3期分の証憑整理と残高確認を先回りで行っておくと直前の慌てがなくなります。
税務調査では何年分の帳簿を確認されるのかは、国税通則法第70条で明確に定められています。
| 遡及期間 | 根拠条文 | 適用される状況 | 実務頻度 |
|---|---|---|---|
| 3年 | 実務慣行 | 通常の調査開始時の初期設定。問題がなければ3年で終了 | 約60% |
| 5年 | 国税通則法第70条第1項 | 3年調査で誤りが見つかり、同様の誤りが過年度にもありそうな場合 | 約30% |
| 7年 | 国税通則法第70条第5項 | 「偽りその他不正の行為」があった場合(脱税・仮装隠蔽) | 約10% |
| 10年 | 特例(移転価格税制等) | 国外関連取引・一部の特殊事案 | 約1%未満 |
参考: e-Gov法令検索「国税通則法」
⚠️ 注意:調査期間の延長
事前通知で「対象期間は3年分」と伝えられても、調査の過程で過年度にも同様の論点がありそうだと判断されれば、その場で5年・7年に延長されます。「3年と聞いていたから5年前の証憑は破棄した」という言い訳は通用しません。帳簿書類の保存期間は法人税法施行規則第59条により7年間(欠損金が生じた事業年度は10年間)と定められています。
国税通則法第70条第5項の「偽りその他不正の行為」とは、最高裁判決(昭和42年11月8日)により「ほ脱の意図をもって、税の賦課徴収を不能又は著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作を行うこと」と解されています。具体的には次のような行為が該当します。
これらの行為が認定されると、7年遡及に加えて重加算税(35%〜40%)の対象となり、延滞税も7年分加算されます。
法人税の調査では、業種ごとに調査の集中度が大きく異なります。国税庁は毎年「法人税等の調査事績」で業種別の不正発見割合を公表しており、この数字から業種別リスクが読み取れます。
| 順位 | 業種 | 不正発見割合の目安 | 主な論点 |
|---|---|---|---|
| 1位 | その他の道路貨物運送 | 約40% | 現金売上の除外・外注費の架空計上 |
| 2位 | 廃棄物処理業 | 約38% | 現金取引・リサイクル料の計上漏れ |
| 3位 | 中古品小売業 | 約35% | 仕入れの架空計上・在庫の過少計上 |
| 4位 | 機械修理 | 約34% | 現金売上・作業員給与の仮装 |
| 5位 | 土木工事 | 約33% | 外注費の水増し・完成工事基準の操作 |
| 6位 | バー・クラブ | 約32% | 現金売上除外・ホステス報酬の源泉漏れ |
| 7位 | 飲食業(全般) | 約28% | 現金売上の漏れ・賄い費の区分 |
| 8位 | 美容・理容業 | 約26% | 現金売上・業務委託美容師の区分 |
| 9位 | 建設業(一般) | 約22% | 下請への外注費・仮装請求書 |
| 10位 | 自動車修理・板金 | 約20% | パーツ仕入れと売上の乖離 |
※法人調査全体の不正発見割合(約15〜20%)に対する各業種の水準を筆者が整理したもの。
上位業種には以下の3つの共通パターンがあります。
税務調査の確率は完全にはコントロールできませんが、調査対象として選定されるリスクを下げ、選定されても短時間で終わらせる対策は実務的に可能です。
売上・粗利率・人件費比率が前期比で30%以上変動すると、税務署のKSKシステムが異常値として検知します。月次決算を定期的に行い、期末時点で説明可能な状態にしておくことが第一の対策です。
📊 公認会計士の視点
税理士法第33条の2の書面添付制度は、申告書に税理士が「どのような資料に基づき、どのような審査を行ったか」を記載した書面を添付する制度です。書面添付があると、税務調査の前に税理士への意見聴取が先行し、ここで疑問点が解消されれば実地調査が省略されるケースがあります。書面添付の利用率は法人全体で10%未満と低いのが現状ですが、実際に利用している法人では調査省略率が高いと言われています。
令和6年1月から、電子取引データは完全電子保存が義務化されました。紙で保存しているケースが発見されると青色申告承認取消の検討対象になります。取引先から受け取った電子請求書・領収書は、電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプ・検索機能・改ざん防止)を満たす方法で保存する必要があります。
税務調査の事前通知を受けたら、まず税理士に連絡し、調査対象期間の証憑整理と論点の洗い出しを進めます。税理士が税務調査立会い契約をしている場合、調査当日の応対も税理士が中心となり、経営者が慣れない税法用語でうまく説明できずに墓穴を掘るリスクを回避できます。
調査対象になってしまった場合でも、以下の6ステップで対応すれば被害を最小限に抑えられます。
| ステップ | 内容 | 所要期間 |
|---|---|---|
| ①事前通知受領 | 国税通則法第74条の9に基づく10項目の通知 | 調査10日〜2週間前 |
| ②日程調整・税理士連絡 | 日程変更は正当理由があれば可能 | 通知後すぐ |
| ③事前準備 | 3〜5期分の帳簿・証憑・契約書を整理 | 1〜2週間 |
| ④実地調査 | 通常2〜3日、大規模法人は1〜2週間 | 2日〜2週間 |
| ⑤調査後の折衝 | 追加資料提出・見解の調整 | 1〜3か月 |
| ⑥結果通知・修正申告 | 修正申告書提出と追徴税額の納付 | 結果通知後1か月 |
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📋 この記事のポイント
税務調査の確率を把握したら、次は実際の調査対応に備えることが重要です。まずは税務調査の全体像と流れを「税務調査とは?目的・種類・全体の流れ」で確認し、自社が調査対象になりやすいかを「税務調査の対象になりやすい会社・個人事業主の特徴」でチェックしてください。事前通知を受けた場合の具体的対応は「税務調査の事前通知の内容と対応」、万一追徴課税となった場合の加算税計算は「加算税の種類と計算方法」で確認できます。
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