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「税務署から電話があった。来月、税務調査に来るらしい」——突然の事前通知を受けたら、まず何を確認すべきでしょうか。国税通則法第74条の9で定められた通知10項目と、無予告調査(第74条の10)が行われる例外ケース、日程変更の正当事由まで、税理士が実務目線で解説します。


「税務署から電話があった。来月、税務調査に来るらしい」——突然の事前通知を受けたら、まず何を確認すべきでしょうか。国税通則法第74条の9で定められた通知10項目と、無予告調査(第74条の10)が行われる例外ケース、日程変更の正当事由まで、税理士が実務目線で解説します。
🏆 結論:事前通知は国税通則法第74条の9の10項目。電話を受けたらその場で答えず税理士に折り返すのが鉄則
税務調査の事前通知は、国税通則法第74条の9により①調査開始日時、②調査場所、③調査目的、④対象税目、⑤対象期間、⑥対象帳簿、⑦納税義務者氏名、⑧担当職員氏名、⑨日時場所変更可、⑩対象外事項への拡大可の10項目が必ず通知されます。通常10日〜2週間前に電話で連絡があり、やむを得ない事情(業務繁忙・税理士日程調整・病気等)があれば日程変更は可能です。ただし国税通則法第74条の10に該当するケース(現金商売で売上除外が疑われる・過去に不正の前歴がある等)では無予告調査となり、通知なしで調査官が臨場します。税務代理権限証書に事前通知同意の記載があれば、通知は税理士に直接行われます。
税務調査の事前通知とは、税務署が実地調査を実施する前に、納税者および税務代理人に対して調査の内容を事前に知らせる制度です。平成23年の国税通則法改正により明文化され、平成25年1月1日以降の調査から適用されています。
事前通知制度には、以下の3つの目的があります。
| 項目 | 平成23年改正前 | 平成25年1月以降 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 運用上の取扱い(法律上の規定なし) | 国税通則法第74条の9に明文化 |
| 通知事項 | 日時・場所のみが一般的 | 10項目を必ず通知 |
| 日程変更 | 事実上困難 | 合理的理由があれば可(通達5-6) |
| 税務代理人への通知 | 納税者経由で通知 | 同意があれば税理士のみ通知可 |
| 無予告調査 | 判例(最決昭48.7.10)により限定 | 第74条の10に要件を明文化 |
参考: 国税庁「国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係通達」
国税通則法第74条の9第1項により、事前通知で伝えられる内容は以下の10項目です。電話で通知を受けた際は、メモを取りながらすべての項目を確認してください。
| No | 通知項目 | 条文 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| ① | 調査を開始する日時 | 第74条の9第1項第1号 | 複数日にまたがる場合は初日 |
| ② | 調査を行う場所 | 第74条の9第1項第2号 | 本社・支店・税理士事務所等 |
| ③ | 調査の目的 | 第74条の9第1項第3号 | 申告内容の確認等 |
| ④ | 調査の対象となる税目 | 第74条の9第1項第4号 | 法人税・消費税・源泉所得税等 |
| ⑤ | 調査の対象となる期間 | 第74条の9第1項第5号 | 通常3年分・最大5年〜7年 |
| ⑥ | 調査の対象となる帳簿書類その他の物件 | 第74条の9第1項第6号 | 総勘定元帳・証憑・契約書等 |
| ⑦ | 納税義務者の氏名・住所 | 第74条の9第1項第7号 | 法人名・所在地等 |
| ⑧ | 調査を行う当該職員の氏名・所属官署 | 第74条の9第1項第8号 | 担当調査官・統括官の氏名 |
| ⑨ | 調査開始日時・場所の変更の可否 | 第74条の9第2項 | 合理的理由があれば変更可 |
| ⑩ | 通知事項以外の事項への調査拡大の可否 | 第74条の9第4項 | 必要に応じ事項追加可能 |
⚠️ 注意:選定理由は通知されない
事前通知では「なぜあなたの会社が選ばれたのか」という選定理由は通知されません。これは国税通則法第74条の9第3項により、選定理由の通知は不要とされているためです。また、調査における具体的な「疑い」や「着眼点」も事前には明かされません。調査官は独自に作成した調査計画書に基づき、事前通知にない論点についても調査中に質問検査権を行使できます。
税務署から事前通知の電話がかかってきたら、慌てずに以下の初動フローで対応します。
🧮 初動フロー
①相手の確認:所属官署・担当者名・部門(所得税・法人税・資産課税等)をメモ/②10項目のメモ:日時・場所・期間・税目を正確に記録/③即答しない:「税理士と調整して折り返します」と伝える/④折り返し番号の確認:税務署の代表電話ではなく担当者直通番号/⑤税理士への連絡:通知内容を共有し、日程と論点を協議。
電話口で即答すべきではない項目が3つあります。これらを即答してしまうと、後から変更が困難になります。
| 即答NG項目 | 理由 | 推奨返答 |
|---|---|---|
| 調査日程 | 税理士の日程と調整が必要 | 「税理士に確認後、24時間以内に折り返します」 |
| 調査場所 | 本社・税理士事務所の選択肢あり | 「税理士と協議し、場所を決めて連絡します」 |
| 事業内容の詳細説明 | 電話口での説明は記録に残り、後で不利になる可能性 | 「調査当日に丁寧にご説明します」 |
📝 電話受付メモ用テンプレート
国税通則法第74条の9第2項により、納税者は合理的な理由があれば調査日時・場所の変更を求めることができます。変更が認められる具体的なケースを整理します。
国税庁の通達5-6では、以下のような場合を「合理的な理由」として例示しています。
| 分類 | 具体例 | 変更可能性 |
|---|---|---|
| 健康上の事情 | 経営者・経理担当者の入院、怪我、通院 | ◎ 高確率 |
| 家族の事情 | 親族の葬儀、配偶者の出産 | ◎ 高確率 |
| 業務上の事情 | 決算期直前、繁忙期、重要商談、海外出張 | ○ 可能 |
| 税理士の事情 | 顧問税理士の日程が合わない | ○ 可能 |
| 税理士選定中 | 顧問税理士がいない場合の調査立会税理士の選定期間 | ○ 可能 |
| 書類整理 | 倉庫移転直後、帳簿整理に時間を要する | △ 理由次第 |
| 単なる都合 | 「気が進まない」「忙しい」という漠然とした理由 | × 不可 |
参考: 国税庁「法第74条の9〜法第74条の11関係 通達5-6」
法律上の明確な期限はありませんが、実務上は以下のタイミングが目安です。
💡 実務のポイント
当事務所で関与先の税務調査対応をしている経験から言えば、通知から1週間〜10日以内の変更依頼であれば、合理的理由を明示すれば9割以上で日程変更に応じてもらえます。ただし変更先の日程は「税務署側の都合」も絡むため、調査官の別案件スケジュールとの調整で2〜3週間後ろ倒しになるケースが多く、過度な先延ばしは期待できません。
税理士が税務代理権限証書を税務署に提出しており、かつ「事前通知に関する同意」欄にチェックがある場合、事前通知は税理士のみに行われ、納税者本人には通知されません。
| 同意欄 | 内容 | 実務的意義 |
|---|---|---|
| 事前通知に関する同意 | 事前通知を税理士のみに行うことへの同意 | 税理士が一次対応するので混乱を回避 |
| 調査結果説明に関する同意 | 調査終了時の結果説明を税理士が代理で受領 | 納税者の精神的負担を軽減 |
| 修正申告等の勧奨に関する同意 | 修正申告勧奨時の説明を税理士が代理で受領 | 税務対応を一元化 |
📊 公認会計士の視点
税務代理権限証書の同意欄にチェックを入れておくメリットは明確です。①納税者が税務署からの電話対応で動揺することを防げる、②税理士が先に論点を整理できる、③日程調整を税理士主導で行える、の3点です。一方で注意点として、税理士によっては「連絡が届いていたが納税者に伝え忘れた」というミスが起きうるため、税理士との定期的なコミュニケーションが前提となります。相続税申告のような単発案件でも、過去の年分について再提出が可能です。
国税通則法第74条の10は、第74条の9の事前通知の例外として、事前通知を要しない無予告調査の要件を規定しています。
第74条の10により、税務署長等は納税義務者の申告内容・過去の調査結果・営む事業内容等の情報から、以下の2つのおそれがあると認める場合には事前通知を要しないとされています。
| No | 典型パターン | 該当事業 |
|---|---|---|
| ① | 現金商売で売上除外が疑われる | バー・クラブ・風俗・パチンコ等 |
| ② | 過去に重加算税の賦課歴がある | 不正の前歴がある法人・個人 |
| ③ | 調査時に即時確認が必要(在庫・現金等) | 小売・飲食・卸売等 |
| ④ | 事前通知先が不明・連絡が取れない | 無申告・所在不明者 |
| ⑤ | 情報提供(タレコミ)で具体的な脱税情報あり | 業種不問 |
| ⑥ | 反面調査で新たな疑義が発覚 | 取引先調査からの派生 |
無予告調査(抜き打ち調査)については、国税通則法改正前から最高裁判決により要件が示されてきました。最決昭48.7.10刑集27巻7号1205頁は、抜き打ち調査を行う要件として以下3点を示しています。
この判例の趣旨は現行国税通則法第74条の10にも引き継がれており、税務署が恣意的に無予告調査を行うことはできない建付けとなっています。
💡 実務のポイント
国税不服審判所の公表裁決事例では、無予告調査の適法性を争った事例があります。裁決では「原処分庁が把握していた情報および確定申告書の記載内容から売上除外等が想定され、事前通知をすることで原始記録・帳簿書類等を破棄するおそれがあると認められた」として、無予告調査を適法と判断しています。裁量権の範囲を超えた濫用がない限り、裁判・審査請求で無予告調査自体を覆すのは極めて困難です。
無予告調査の場合でも、納税者には一定の権利があります。突然の訪問に動揺せず、以下の手順で対応します。
| ステップ | 対応内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| ① | 身分証明書の提示を求める | 国税通則法第74条の13 |
| ② | 調査担当者の氏名・所属・統括官を確認 | 通達4-1 |
| ③ | 調査目的・対象税目・対象期間を確認 | 第74条の9第1項 |
| ④ | 税理士への連絡を求める(合理的時間内での到着を調整) | 通達5-6(準用) |
| ⑤ | 税理士到着までの質問検査は最小限に | 質問検査権の合理性 |
| ⑥ | やむを得ない事情があれば延期を申し出る | 第74条の9第2項準用 |
| ⑦ | 記録・メモを残す(日時・発言内容・見せた資料) | 後日の交渉材料 |
無予告調査の場合でも、顧問税理士の到着までの待機を求めることは実務上広く認められています。ただし、以下の条件があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の見解では、「調査対応する税理士を探す時間が欲しい」という理由もやむを得ない事情となり得るとされています。ただし、数日間の延期を求めると通らない可能性が高いため、その日のうちに税理士が到着できる体制を整えておくことが重要です。
平成28年度税制改正により、加算税制度の改正に伴って「調査通知」という概念が導入されました。これは「事前通知」より前の段階で行われる簡略通知で、事前通知とは別物です。
| 項目 | 調査通知 | 事前通知 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 国税通則法第65条第5項等 | 国税通則法第74条の9 |
| 通知内容 | 3項目(実地調査を行う旨・税目・期間) | 10項目(日時・場所等詳細) |
| 通知のタイミング | 事前通知の直前または同時 | 調査10日〜2週間前 |
| 目的 | 加算税軽減措置の遮断 | 調査の詳細告知 |
| 実務的影響 | この通知後の修正申告は加算税(5%)対象 | 調査準備の開始 |
📢 重要な実務ポイント
税務署からの「調査通知」を受ける前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は課されません(国税通則法第65条第5項)。調査通知後から調査による更正予知前までに修正申告すれば、加算税は5%に軽減されます。この点は令和6年度改正で厳格化されており、繰り返し無申告の場合等は加重措置(+10%)が適用されます。「もしかして」と気づいた時点で税理士に相談するのが最善です。
事前通知を受けてから実地調査までの10日〜2週間は、準備のための貴重な時間です。具体的なスケジュール感を示します。
| 日数 | やるべきこと | 担当 |
|---|---|---|
| Day 0(通知当日) | 税理士連絡・日程確定・論点の事前共有 | 経営者・税理士 |
| Day 1-3 | 税理士と対策ミーティング・リスク論点洗い出し | 税理士主導 |
| Day 4-7 | 対象期間の帳簿・証憑・契約書を整理 | 経理担当・税理士 |
| Day 8-10 | 弱点論点の追加証憑確認・質問想定と回答準備 | 税理士主導 |
| Day 11-13 | 調査会場の準備・調査官用資料のプリントアウト | 経理担当 |
| Day 14(調査前日) | 経営者との最終打合せ・想定質問リハーサル | 税理士・経営者 |
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📋 この記事のポイント
事前通知について理解したら、次は実際の調査対応に向けた準備を進めましょう。まず自社が調査対象になりやすいかを「税務調査の対象になりやすい会社・個人事業主の特徴」で確認し、「税務調査とは?目的・種類・全体の流れ」で調査の全体像を把握してください。調査が来る確率や時期の目安は「税務調査の確率と頻度」で、万一の追徴課税に備える加算税の知識は「加算税の種類と計算方法」で確認できます。具体的な事前準備の手順は「税務調査の事前準備チェックリスト」をご活用ください。
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