【税理士×会計士が解説】輸入消費税の仕組み|輸入取引の課税関係と仕入税額控除

【税理士×会計士が解説】輸入消費税の仕組み|輸入取引の課税関係と仕入税額控除
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

輸入消費税の仕組み|輸入取引の課税関係と仕入税額控除

海外から商品を輸入している法人経営者に向けて、輸入消費税の計算方法・仕訳・仕入税額控除の要件を完全ガイドします。この記事を読めば、輸入消費税の経理処理を正しく行い、控除漏れを防ぐことができます。

🏆 結論:輸入消費税は仕入税額控除の対象。輸入許可通知書の保存が必須

海外から商品を輸入した際に税関で納付する輸入消費税は、国内の課税仕入れと同様に仕入税額控除の対象になります。控除を受けるには輸入許可通知書(輸入許可書)の保存が必要です。インボイス(適格請求書)は不要です。ただし、輸入消費税と地方消費税の按分を誤ると消費税額の計算がずれるため、通関業者からの書類を正確に読み取ることが重要です。

輸入消費税とは?国内消費税との違い

輸入消費税とは、保税地域(税関が管理する場所)から外国貨物を引き取る際に課される消費税のことです。国内で商品を購入するときに支払う消費税と同じ税率(標準税率10%)ですが、課税の仕組みや納付先が異なります。

消費税は多段階課税の仕組みを採用しており、製造→卸→小売→消費者の各段階で消費税が課され、最終的に消費者が負担します。輸入消費税はこの仕組みの中で「海外から国内に入る段階」で課される消費税であり、国内の消費税と二重課税にならないよう仕入税額控除の対象とされています。

国内消費税と輸入消費税の違い

項目 国内消費税 輸入消費税
納税義務者課税事業者のみ貨物を引き取る者(事業者・個人を問わない)
納付先所轄税務署保税地域の所在地を管轄する税関
納付時期確定申告時(期末から2ヶ月以内)輸入申告時(引取り時)
課税標準売上対価の額CIF価格+関税額+その他内国税
仕入税額控除の保存書類インボイス(適格請求書)+帳簿輸入許可通知書+帳簿(インボイス不要)
免税事業者の扱い消費税の申告義務なし免税事業者でも輸入消費税の納付義務あり

💡 実務のポイント

輸入消費税の仕入税額控除には、国内取引で必要なインボイス(適格請求書)が不要です。これは消費税法第30条第7項に基づくもので、輸入許可通知書と帳簿の保存のみで控除が認められます。通関業者に手続きを委託している場合でも、輸入許可通知書の原本は必ず自社で保管してください。

輸入消費税がかかる取引・かからない取引

保税地域から引き取られる外国貨物には、原則として輸入消費税がかかります。ただし、国内取引で非課税とされる物品との整合性を取るため、一部の貨物は非課税とされています。

輸入消費税の課税・非課税・免税の判定表

区分 具体例 根拠
課税(原則)一般的な商品(機械、原材料、食品、衣類等)消費税法第4条第2項
非課税有価証券、郵便切手、印紙、教科書用図書、身体障害者用物品消費税法第6条第2項
免税関税定率法に基づく無条件免税品(携帯品の免税範囲内、外交官の公用品等)消費税法第7条等
軽減税率(8%)飲食料品(酒類を除く)消費税法別表第1

参考: 国税庁「No.6563 輸入品に対する内国消費税の徴収」

消費税の基本的な仕組み(多段階課税・仕入税額控除の考え方)については「消費税の仕組みと基礎知識」で詳しく解説しています。

輸入消費税の計算方法|関税率別3パターンのシミュレーション

輸入消費税の計算は、国内取引の消費税計算とは異なり、CIF価格(商品代金+運賃+保険料)に関税額を加えた金額が課税標準になります。

輸入消費税の計算式

📐 輸入消費税の計算ステップ

  • ステップ1:CIF価格を算出 = 商品代金+運賃+保険料
  • ステップ2:関税額を算出 = CIF価格 × 関税率(千円未満切捨て後)
  • ステップ3:課税標準を算出 = CIF価格+関税額(+その他内国税があれば加算)→千円未満切捨て
  • ステップ4:内国消費税 = 課税標準 × 7.8%(百円未満切捨て)
  • ステップ5:地方消費税 = 内国消費税 × 22/78(百円未満切捨て)
  • ステップ6:輸入消費税の合計 = 内国消費税+地方消費税

関税率別シミュレーション(CIF価格100万円のケース)

📐 シミュレーション前提条件

  • CIF価格:1,000,000円
  • その他内国税:なし
  • 標準税率10%(内国消費税7.8%+地方消費税2.2%)
項目 関税率0% 関税率5% 関税率12%
CIF価格1,000,000円1,000,000円1,000,000円
関税額0円50,000円120,000円
課税標準(千円未満切捨て)1,000,000円1,050,000円1,120,000円
内国消費税(7.8%、百円未満切捨て)78,000円81,900円87,300円
地方消費税(×22/78、百円未満切捨て)22,000円23,100円24,600円
輸入消費税の合計100,000円105,000円111,900円
税関納付合計(関税+消費税)100,000円155,000円231,900円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税関または税理士にご相談ください。

参考: 税関「輸入時に支払う関税や消費税の計算方法について」

関税と輸入消費税の経理処理の違い

輸入取引では関税と輸入消費税を同時に税関で納付しますが、経理処理はまったく異なります。この区別を誤ると、消費税の計算が狂い、仕入税額控除の金額にも影響します。

関税・輸入消費税・通関手数料の経理処理比較表

税金・費用 勘定科目 消費税区分 損益への影響
関税仕入高(取得原価に算入)不課税(消費税の対象外)売上原価を増加させる
輸入消費税(内国消費税7.8%)仮払消費税(税抜方式)課税対応輸入消費税仕入税額控除で相殺(費用にならない)
地方消費税(2.2%)仮払消費税(税抜方式)地方消費税貨物割仕入税額控除で相殺(費用にならない)
通関手数料支払手数料 or 仕入高課税仕入れ(国内取引)費用として計上

⚠️ 注意

関税と輸入消費税をまとめて「租税公課」で処理するのはよくある間違いです。関税は商品の取得原価に算入すべき費用であり、輸入消費税は仕入税額控除の対象となる消費税の前払いです。「租税公課」に一括計上すると、売上原価の計算も消費税の計算も誤りになります。

輸入消費税の仕訳|税抜経理方式の具体例

税抜経理方式を前提に、輸入取引の仕訳を具体的な数値で解説します。

📐 仕訳の前提条件

  • CIF価格:500,000円(商品代金450,000円+運賃40,000円+保険料10,000円)
  • 関税率:5% → 関税額25,000円
  • 内国消費税:40,900円(課税標準525,000円×7.8%)
  • 地方消費税:11,500円(40,900円×22/78)
  • 通関手数料:11,000円(税込)

仕訳例

【税関への納付時】

(借方)仕入高 525,000円 /(貸方)現金預金 588,400円
(借方)仮払消費税(国税) 40,900円
(借方)仮払消費税(地方) 11,500円
(借方)支払手数料 10,000円
(借方)仮払消費税 1,000円

※仕入高525,000円=CIF価格500,000円+関税25,000円(取得原価に含める)

📊 公認会計士の視点

会計ソフトへの入力時に特に注意が必要なのは、輸入消費税を「内国消費税(7.8%)」と「地方消費税(2.2%)」に分けて計上する点です。この按分を誤ると消費税申告書の付表の金額が合わなくなります。輸入許可通知書には内国消費税額と地方消費税額が別々に記載されていますので、その金額をそのまま使用してください。

AYUSAWA PARTNERS

輸入取引の消費税のご相談は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。公認会計士・税理士・社労士・行政書士がワンストップで対応します。

鮎澤パートナーズに相談する

輸入消費税の仕入税額控除|要件と保存書類

輸入消費税の仕入税額控除を受けるための要件は、国内取引の仕入税額控除とは異なります。最も大きな違いは、インボイス(適格請求書)が不要であるという点です。

仕入税額控除の要件比較表

項目 国内課税仕入れ 輸入消費税
必要な保存書類インボイス(適格請求書)+帳簿輸入許可通知書+帳簿
インボイスの要否必要不要
控除の時期課税仕入れを行った日輸入許可を受けた日
申告書の記載箇所付表2-3 ⑩欄付表2-3 ⑬欄「課税貨物に係る消費税額」
記載する金額税込対価の額内国消費税額のみ(地方消費税を含まない)

💡 実務のポイント

消費税確定申告の付表2-3の⑬欄に記載する金額は「内国消費税額のみ」です。地方消費税を含めて記載すると過大控除になります。輸入許可通知書には内国消費税と地方消費税が区分して記載されていますので、内国消費税の金額だけを抽出して記載してください。なお、納付期限の延長を受けて未納の輸入消費税も控除の対象です。

輸入消費税の納付方法|3つの選択肢

輸入消費税の納付方法は以下の3つがあります。取引量や資金繰りに応じて最適な方法を選びましょう。

納付方法 概要 メリット 対象者
即時納付(原則)輸入申告時に税関で納付手続きがシンプル全ての輸入者
納期限延長(担保提供)税関長の承認で3ヶ月延長資金繰りの改善継続的に輸入する事業者
マルチペイメント(電子納付)インターネットバンキングで納付税関窓口に行かなくてよいNACCS利用者

輸入量が多い事業者は「納期限延長制度」の利用を検討しましょう。担保を提供して税関長の承認を受ければ、最大3ヶ月間の納付猶予が得られます。なお、納期限延長を受けている未納の輸入消費税も、仕入税額控除の対象です(消費税法第30条第1項第2号)。

輸入代行を利用する場合の注意点|仕入税額控除は誰が受けられるか

輸入手続きを代行業者に委託するケースでは、「誰が輸入消費税の仕入税額控除を受けられるか」が重要な問題になります。原則として、仕入税額控除は輸入申告を行った者(輸入申告名義人)のみが受けられます。

輸入代行利用時の控除帰属判定表

パターン 輸入申告名義人 仕入税額控除ができる者
自社名義で輸入申告(通関業者に手続き委託)自社自社(原本保存必須)
代行業者名義で輸入申告代行業者代行業者(自社は控除不可)
代行業者名義だが通達11-1-6の要件を全て充足代行業者(名義のみ)実質的輸入者(3要件の充足が必要)

参考: 国税庁「輸入取引に係る輸入手続を委託した場合の仕入税額控除の取扱い」

⚠️ 注意

輸入代行業者に手続きを一任している場合、代行業者名義で輸入申告が行われていると、自社では仕入税額控除を受けられません。代行業者に輸入消費税相当額を後日支払っていても、控除の権利は輸入申告名義人にあります。代行利用時は必ず「誰の名義で輸入申告を行うか」を事前に確認してください。

輸入代行業者に手続きを依頼する場合は、必ず自社名義で輸入申告を行うよう契約で取り決め、輸入許可通知書の原本を自社で保管することが重要です。

輸入消費税の実務で間違えやすい5つのポイント

ポイント1:輸入消費税と地方消費税の按分を忘れる

会計ソフトへの入力で最も多いミスは、輸入消費税(内国消費税+地方消費税)を一括で計上してしまうことです。消費税確定申告では内国消費税(7.8%分)のみを仕入税額控除の計算に使うため、地方消費税(2.2%分)と必ず分けて管理しましょう。

ポイント2:関税を「租税公課」で処理する

関税は商品の取得原価に算入すべき費用です。「租税公課」に計上すると、棚卸資産の原価が過小評価され、売上原価の金額も狂います。仕入高(または商品仕入)の勘定科目に含めてください。

ポイント3:仕入税額控除の時期を間違える

輸入消費税の仕入税額控除の時期は「輸入許可日」です。商品が自社に届いた日でも、代金を支払った日でもありません。決算月をまたぐ輸入取引では、輸入許可日がどの課税期間に属するかを確認してください。

ポイント4:簡易課税事業者の取り扱い

簡易課税制度を選択している場合、課税売上高にみなし仕入率を乗じて控除税額を計算するため、実際に支払った輸入消費税の金額は控除額に反映されません。輸入仕入れが多い事業者は、原則課税の方が有利になる場合があるため、事前にシミュレーションすることをお勧めします。

簡易課税と原則課税の有利不利の判定については「簡易課税制度の仕組みと選択基準」をご参照ください。

ポイント5:品違い・返品時の輸入消費税の還付

輸入した商品が品違いで返品する場合、税関に申告することで関税と輸入消費税の還付を受けられます。還付の請求期限は原則過去5年です。ただし、前期以前に仕入税額控除を受けた輸入消費税が還付になった場合は、その還付を受けた課税期間の消費税額に加算する必要がある点に注意してください。

今後の改正|少額免税制度の見直しとプラットフォーム課税の拡大

令和8年度税制改正大綱では、輸入消費税に関連する重要な改正が盛り込まれています。

改正スケジュール表

時期 改正内容 影響
令和9年(2027年)4月1日少額免税制度の見直し(税抜1万円以下の通信販売物品を課税対象化)海外ECサイトからの少額商品購入にも輸入消費税が課される
令和10年(2028年)4月1日物品販売に係るプラットフォーム課税の開始(第2種PF事業者)大手EC経由の物品取引はPF事業者が消費税を納付

📢 今後の注目ポイント

現行では、課税価格の合計額が1万円以下の輸入貨物は消費税が免税とされています(個人使用の場合は海外小売価格16,666円以下)。この制度を利用して、海外ECサイトが消費税負担なく日本の消費者に少額商品を大量販売しているとの指摘があり、令和9年4月から少額免税制度が見直される予定です。海外ECサイトからの仕入れが多い事業者は、仕入コストの増加に備えた対策が必要です。

プラットフォーム課税やリバースチャージ方式の詳細は「プラットフォーム課税・リバースチャージ方式」で解説しています。また、輸出取引の免税については「輸出免税と消費税の還付」をご参照ください。

よくある質問(FAQ)

輸入消費税は仕入税額控除の対象ですか?
はい、対象です。保税地域から引き取る課税貨物に課された輸入消費税は、国内の課税仕入れと同様に仕入税額控除の対象になります。控除を受けるには、輸入許可通知書と帳簿の保存が必要です。国内取引で必要なインボイス(適格請求書)は不要です。
輸入消費税の仕入税額控除のタイミングはいつですか?
輸入許可を受けた日(輸入許可日)です。商品が実際に届いた日や代金を支払った日ではありません。決算月をまたぐ輸入取引では、輸入許可日がどの課税期間に属するかを必ず確認してください。
輸入消費税と関税の違いは何ですか?
最も大きな違いは経理処理です。関税は商品の取得原価(仕入高)に含めて処理し、仕入税額控除の対象外です。一方、輸入消費税は仮払消費税として処理し、仕入税額控除の対象になります。両方とも税関で同時に納付しますが、会計上の扱いはまったく異なります。
輸入代行業者を使っている場合、仕入税額控除は受けられますか?
輸入申告の名義人が自社であれば受けられます。代行業者に手続きを委託していても、自社名義で輸入申告を行い、輸入許可通知書の原本を保管していれば仕入税額控除を受けられます。ただし、代行業者名義で輸入申告が行われている場合は、原則として自社では控除を受けられません。
輸入許可通知書を紛失した場合、仕入税額控除は受けられませんか?
輸入許可通知書の保存は仕入税額控除の要件です。紛失した場合は、税関に対して輸入許可通知書の再発行を依頼できます。NACCSで電子的に輸入許可を受けた場合は、NACCSの記録を保存することで対応可能です。
簡易課税を選択している場合、輸入消費税の扱いはどうなりますか?
簡易課税制度では、課税売上高にみなし仕入率を乗じて控除税額を計算するため、実際に支払った輸入消費税の金額は控除額に直接反映されません。そのため、輸入仕入れが売上の大きな割合を占める事業者は、簡易課税よりも原則課税の方が有利になるケースが多いです。
輸入した商品を返品した場合、輸入消費税は還付されますか?
品違いや数量超過などの理由で返品する場合、税関に申告することで関税と輸入消費税の還付を受けられます。還付の請求期限は原則5年です。ただし、すでに仕入税額控除を受けている場合は、還付を受けた課税期間の消費税額に加算調整が必要になります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 輸入消費税は保税地域から外国貨物を引き取る際に税関で納付する消費税
  • 仕入税額控除の対象。保存書類は輸入許可通知書+帳簿(インボイス不要)
  • 関税は取得原価(仕入高)、輸入消費税は仮払消費税。「租税公課」での一括処理はNG
  • 内国消費税(7.8%)と地方消費税(2.2%)は必ず按分して管理する
  • 輸入代行利用時は自社名義で輸入申告すること。名義が代行業者だと控除不可
  • 仕入税額控除の時期は「輸入許可日」。商品到着日や支払日ではない
  • 令和9年4月から少額免税制度が見直され、1万円以下の通信販売物品も課税対象に

インボイス制度との関係については「インボイス制度の概要と実務対応」もあわせてご覧ください。

AYUSAWA PARTNERS

消費税・インボイスのご相談は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。公認会計士・税理士・社労士・行政書士がワンストップで対応します。

鮎澤パートナーズに相談する