【公認会計士が解説】NPO法人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人の会計の特徴

【公認会計士が解説】NPO法人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人の会計の特徴
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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NPO法人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人の会計の特徴

「非営利法人の会計は株式会社と何が違うのか」「決算書の名前も勘定科目も異なって戸惑う」という経営者・事務担当者に向けて、4種類の非営利法人の適用会計基準・決算書・課税ルール・特有の勘定科目を比較表で一覧整理します。この記事を読めば、自法人の会計処理で押さえるべきポイントが明確になります。

🏆 結論:非営利法人の会計で最も重要なのは「適用する会計基準の確認」

株式会社は企業会計基準に従いますが、NPO法人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人はそれぞれ異なる会計基準が適用されます。決算書の名称も異なり、NPO法人は「活動計算書」、社会福祉法人は「事業活動計算書」を作成します。会計処理を始める前に「自法人にどの会計基準が適用されるか」を確認することが第一歩です。

非営利法人の会計処理が株式会社と異なる理由

「非営利」とは利益を分配しないこと

非営利法人は「利益を分配しない法人」です。事業で利益が出ること自体は問題ありませんが、株式会社のように株主に配当を行うことはできません。利益は次年度以降の事業活動に充てるか、内部留保として蓄積します。

この「利益を分配しない」という性質が、会計処理にも影響します。株式会社の決算書は株主への利益配分を前提に設計されていますが、非営利法人の決算書は「事業活動にどれだけの資源を投入し、どのような成果が得られたか」を示す設計になっています。

法人類型ごとに適用される会計基準が異なる

株式会社は原則として企業会計基準(中小企業の場合は中小会計要領または中小会計指針)に従いますが、非営利法人は法人の種類ごとに専用の会計基準が定められています。会計ソフトを導入する際も、法人類型に対応したプランを選ぶ必要があります。

4法人の適用会計基準・決算書・課税ルール【一覧比較表】

NPO法人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人の会計上の主要な違いを一覧表で整理しました。

項目 NPO法人 医療法人 社会福祉法人 一般社団法人
適用会計基準NPO法人会計基準医療法人会計基準(病院会計準則)社会福祉法人会計基準公益法人会計基準 or 企業会計基準
損益計算書の名称活動計算書損益計算書事業活動計算書正味財産増減計算書 or 損益計算書
貸借対照表の特徴純資産の部がない(正味財産)株式会社に近い構造純資産→基本金+国庫補助金等特別積立金+次期繰越活動増減差額正味財産の部(指定正味財産+一般正味財産)
法人税課税収益事業(34業種)のみ課税全所得課税(普通法人扱い)収益事業のみ課税(社会福祉事業は非課税)非営利型:収益事業のみ / 普通型:全所得課税
消費税課税売上1,000万超で課税自由診療は課税、保険診療は非課税社会福祉事業は非課税課税売上1,000万超で課税
監督官庁所轄庁(都道府県/内閣府)都道府県知事所轄庁(都道府県/市)なし(公益認定を受ける場合は内閣府/都道府県)

📊 公認会計士の視点

非営利法人の会計で最も注意すべきは「収益事業の区分経理」です。NPO法人や社会福祉法人は、法人税法上の34業種に該当する収益事業のみが課税対象であるため、収益事業とそれ以外の事業を区分して経理する必要があります。この区分経理を怠ると、本来非課税であるべき事業にまで課税されるリスクがあります。

NPO法人の会計の特徴

NPO法人会計基準の概要

NPO法人は「NPO法人会計基準」に基づいて会計処理を行います。この基準は2010年に策定され、2017年に改正されました。NPO法人特有の決算書として「活動計算書」があります。これは株式会社の損益計算書に相当するもので、法人の事業活動によってどれだけの収益と費用が発生したかを示します。

活動計算書と株式会社の損益計算書の違い

項目 NPO法人(活動計算書) 株式会社(損益計算書)
収益の名称受取会費、受取寄附金、受取助成金、事業収益売上高、営業外収益
費用の区分事業費(事業ごとに区分)+管理費売上原価+販管費+営業外費用
最終利益の名称当期正味財産増減額当期純利益
利益の使い道次期以降の事業活動に充当配当・内部留保

NPO法人の経理で注意すべき3つのポイント

第一に、寄附金の使途を「使途指定」と「使途非指定」に区分して管理する必要があります。使途指定の寄附金は、指定された目的にのみ使用でき、貸借対照表上は「指定正味財産」として区分されます。

第二に、ボランティアによる役務提供を会計上どう扱うかの判断です。NPO法人会計基準では、ボランティアの活動を金額換算して注記することが推奨されていますが、仕訳には計上しないのが一般的です。

第三に、所轄庁への事業報告書の提出義務があります。毎年の事業報告書、活動計算書、貸借対照表、財産目録を作成し、所轄庁に提出する必要があります。

💡 実務のポイント

NPO法人の決算支援を行ってきた経験上、最も多い誤りは「収益事業に該当するかどうかの判断」です。たとえば、NPO法人が行う研修事業や出版事業は法人税法上の収益事業に該当する場合があり、その収益には法人税が課税されます。「NPO法人だから非課税」と思い込んで申告を怠ると、後日追徴課税される可能性があります。

医療法人の会計の特徴

医療法人会計基準と病院会計準則

医療法人は「医療法人会計基準」に基づいて会計処理を行います。一定規模以上の医療法人(負債50億円以上又は収益70億円以上等)には、外部監査が義務付けられています。また、病院を開設する医療法人は「病院会計準則」も参考にします。

医療法人特有の勘定科目

医療法人の会計には、一般の企業にはない特有の勘定科目があります。

勘定科目 内容 株式会社との違い
医業収益保険診療収入+自由診療収入+室料差額収入等売上高に相当するが、保険診療は2ヶ月後の入金
医業費用材料費+給与費+委託費+経費+減価償却費等費用区分が医療特有(材料費=薬品費+診療材料費等)
社会保険診療報酬支払基金保険診療の請求先(社保分)売掛金に相当するが相手先が限定的

医療法人の消費税の特殊性

医療法人の会計で最も複雑なのが消費税の処理です。保険診療収入は消費税が非課税ですが、自由診療収入や物品販売は課税対象です。このため、仕入税額控除の計算では個別対応方式や一括比例配分方式の選択が必要になり、課税売上割合の管理が重要になります。

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社会福祉法人の会計の特徴

社会福祉法人会計基準の概要

社会福祉法人は「社会福祉法人会計基準」に基づいて会計処理を行います。この基準は2011年に全面改正され、従来の経理規程準則から大幅に変更されました。社会福祉法人の決算書は「事業活動計算書」「資金収支計算書」「貸借対照表」の3つで構成されます。

社会福祉法人特有の「資金収支計算書」

社会福祉法人に特有の決算書が「資金収支計算書」です。これは株式会社のキャッシュ・フロー計算書に似ていますが、「支払資金」(流動資産−流動負債−1年基準で振り替えた引当金)の増減を示す点が異なります。社会福祉法人は公的な補助金や措置費を財源とすることが多いため、「お金がどこから来てどこに使われたか」を明確に示す必要があるのです。

社会福祉法人の勘定科目の特徴

社会福祉法人の貸借対照表には「基本金」「国庫補助金等特別積立金」という特有の科目があります。基本金は株式会社の資本金に相当し、国庫補助金等特別積立金は施設整備に充てられた補助金の未償却残高です。補助金で取得した固定資産を減価償却する際、国庫補助金等特別積立金も同時に取り崩す処理(いわゆる「見合い取崩し」)が必要です。

💡 実務のポイント

社会福祉法人の決算で最も手間がかかるのが「拠点区分別」の会計処理です。社会福祉法人会計基準では、事業所(拠点)ごとに決算書を作成し、法人全体の合算決算書も作る必要があります。拠点間の内部取引の消去など、通常の中小企業では発生しない処理が求められるため、社会福祉法人の会計に精通した税理士に依頼することをおすすめします。

一般社団法人の会計の特徴

非営利型と普通型で会計基準が異なる

一般社団法人は「非営利型」と「普通型(営利型)」に分かれ、それぞれ適用する会計基準と課税ルールが異なります。非営利型は公益法人会計基準に準拠し、法人税は収益事業のみ課税。普通型は企業会計基準に準拠し、株式会社と同様に全所得が課税対象です。

項目 非営利型 普通型
会計基準公益法人会計基準企業会計基準
法人税課税収益事業(34業種)のみ全所得課税
決算書正味財産増減計算書損益計算書
要件剰余金の分配を行わない旨の定款記載、親族制限等特になし

非営利型の要件を維持する重要性

非営利型の一般社団法人は、定款に「剰余金の分配を行わない」旨の定めがあること、理事のうち親族関係者が3分の1以下であること等の要件を満たす必要があります。これらの要件を満たさなくなると「普通型」に変更され、過去に遡って全所得課税になるリスクがあります。

簿記の基礎から確認したい方は「複式簿記と帳簿の基礎知識」をご覧ください。

4法人の決算書提出先・提出期限・情報公開義務の比較

法人類型 決算書の提出先 提出期限 情報公開義務
NPO法人所轄庁+税務署事業年度終了後3ヶ月以内(所轄庁)あり(事務所備置+所轄庁で閲覧可)
医療法人都道府県知事+税務署事業年度終了後3ヶ月以内(都道府県)あり(都道府県で閲覧可)
社会福祉法人所轄庁+税務署事業年度終了後3ヶ月以内(所轄庁)あり(インターネット公表義務)
一般社団法人税務署のみ事業年度終了後2ヶ月以内(申告期限)なし(公益認定法人を除く)

⚠️ 注意

NPO法人は所轄庁への事業報告書の提出を3年連続で怠ると、認証が取り消される可能性があります。また、社会福祉法人は2017年度からインターネット上での決算書公表が義務化されています。これらの期限管理は税理士に任せるだけでなく、法人内部でもダブルチェックする体制を整えてください。

非営利法人の会計処理で共通する注意点

収益事業の区分経理

NPO法人・社会福祉法人・非営利型一般社団法人は、法人税法上の34業種に該当する収益事業を行う場合、収益事業とそれ以外の事業を区分して経理する必要があります。共通する経費(人件費・家賃・水道光熱費など)は、合理的な基準(従事時間比や面積比など)で按分します。

補助金・助成金の会計処理

非営利法人は公的な補助金・助成金を受けることが多く、その処理方法は法人類型によって異なります。NPO法人では「受取助成金」、社会福祉法人では「○○補助金収益」として計上し、使途が制限されている場合は指定正味財産や基本金として区分管理します。

会計ソフトの選定

一般的な会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生)は株式会社向けに設計されているため、NPO法人や社会福祉法人の決算書を直接出力できない場合があります。社会福祉法人は専用の会計ソフト(福祉大臣、わくわく社会福祉会計等)を導入するのが一般的です。詳しくは「会計ソフトの選び方完全ガイド」をご覧ください。

税理士に依頼すべき業務の判断チェックリスト

非営利法人の経理担当者が、どの業務を自法人で行い、どの業務を税理士に依頼すべきかの判断基準を整理しました。

業務 自法人で対応可 税理士に依頼推奨
日常の記帳(仕訳入力)○(会計ソフト使用)
収益事業の判定○(法人税法の知識が必要)
消費税の課税区分判定○(特に医療法人は複雑)
決算書の作成△(専用ソフトがあれば可)○(専用基準の知識が必要)
法人税確定申告○(区分経理の正確性が重要)
所轄庁への事業報告○(書式に従い記入)

記帳代行のコストが気になる方は「記帳代行の費用相場と選び方」で解説しています。電子帳簿保存法への対応は「電子帳簿保存法の概要と対応方法」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

NPO法人は法人税が非課税ですか?
全面的に非課税ではありません。NPO法人であっても、法人税法で定められた34業種の「収益事業」を行う場合はその所得に対して法人税が課税されます。たとえば、研修事業や出版事業、物品販売業は収益事業に該当する可能性があります。NPO法人の本来の非営利活動のみであれば課税されません。
医療法人の決算書は株式会社と同じ形式ですか?
基本的な構造は似ていますが、勘定科目が医療特有のものになります。収益は「医業収益」「医業外収益」に区分され、費用は「材料費」「給与費」「委託費」「経費」など医療業界特有の区分で表示されます。医療法人会計基準に準拠して作成します。
社会福祉法人の「資金収支計算書」とは何ですか?
社会福祉法人に特有の決算書で、「支払資金(流動資産−流動負債)」の増減を示すものです。キャッシュ・フロー計算書に似ていますが、対象が現金預金だけでなく支払資金全体である点が異なります。公的資金の適正な使途を明らかにする目的で作成が義務付けられています。
一般社団法人の「非営利型」と「普通型」の違いは何ですか?
法人税の課税範囲が異なります。非営利型は収益事業(34業種)のみが課税対象で、会費収入や寄附金収入は非課税です。普通型は株式会社と同様に全所得が課税対象です。非営利型になるには定款に剰余金不分配の定めを置き、理事の親族制限などの要件を満たす必要があります。
非営利法人でも消費税は課税されますか?
はい。法人税と消費税は別の制度です。非営利法人であっても、課税売上高が1,000万円を超えれば消費税の課税事業者になります。ただし、社会福祉事業や保険診療は消費税が非課税であるため、これらが収入の大半を占める法人は免税事業者になるケースもあります。
NPO法人の会計にfreeeやマネーフォワードは使えますか?
日常の記帳には使えますが、NPO法人特有の決算書(活動計算書)を直接出力できない場合があります。NPO法人向けの会計ソフト(NPO会計ソフト、会計王NPO法人版など)を使うか、汎用ソフトで記帳した上で決算書はExcelで別途作成する方法が一般的です。
社会福祉法人の会計を一般の税理士に頼めますか?
社会福祉法人会計基準は独特の処理(拠点区分別経理、国庫補助金等特別積立金の取崩し等)が多いため、社会福祉法人の実務経験がある税理士を選ぶことをおすすめします。経験のない税理士に依頼すると、所轄庁への報告書で修正を求められるケースがあります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • NPO法人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人はそれぞれ異なる会計基準が適用される
  • 決算書の名称が異なる(活動計算書/事業活動計算書/正味財産増減計算書など)
  • 法人税の課税範囲は法人類型によって異なり、収益事業の区分経理が必須
  • 消費税は法人税とは別制度で、非営利法人でも課税売上1,000万超なら課税事業者
  • NPO法人・社会福祉法人は所轄庁への事業報告書提出義務がある
  • 会計ソフトは法人類型に対応したものを選ぶ(社会福祉法人は専用ソフト推奨)
  • 収益事業の判定や消費税の課税区分は専門性が高いため税理士への依頼を推奨

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