退職一時金・役員退職慰労金の収入時期|株主総会決議のタイミングを税理士が完全解説

退職一時金・役員退職慰労金の収入時期|株主総会決議のタイミングを税理士が完全解説
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の役員退職金支給・退職所得の課税対応を支援。
📋 税理士監修 💼 役員退職金 📅 収入時期

「役員退職慰労金はいつの所得?」「企業年金の一時金は退職所得?」とお悩みの経営者・役員・税務担当者に向けて、退職所得の収入時期(所基通36-10)・株主総会決議の2パターン・取締役会一任・企業年金脱退一時金の区分まで完全ガイドします。

🏆 結論:収入時期は退職日が原則・役員は株主総会決議日が基準

退職所得の収入すべき時期は所得税基本通達36-10により判定されます。通常の従業員退職金退職日が原則。役員退職慰労金株主総会その他正当な権限がある機関の決議日(役員退職後の決議の場合)。ただし、株主総会で具体的金額が決議されず取締役会に一任された場合具体的金額が確定した日が収入時期となります。役員退職慰労金制度を廃止して在任中の役員に「打切り支給」する場合は退職所得ではなく給与所得として課税される点が重要(国税庁通達)。確定給付企業年金(DB)の脱退一時金退職基因なら退職所得・退職以外の事由なら一時所得として区分。会社退職金の支給がある場合は合算して退職所得(同じ年分の退職所得)、退職金支給がない場合はDBの一時金支給日が属する年分の退職所得となります。源泉徴収義務は支払者(会社・年金基金)にあり、「退職所得の受給に関する申告書」の提出有無で源泉徴収方法が変わります(申告書提出なら20.42%源泉徴収のみ)。

退職所得の収入すべき時期とは

退職所得の「収入すべき時期」は、所得税の課税年分を決定する重要な判定基準です。所得税基本通達36-10により、退職金の種類ごとに細かく定められています。

従業員50名規模の中堅企業で長年経営に貢献した代表取締役の退職慰労金支給を担当した経験では、株主総会で金額確定の決議をしたタイミングを年度末ぎりぎりにしてしまい、退職所得の収入時期が予定よりも1年ずれて、本人の所得税負担が大きく変動するトラブルが発生しました。役員退職慰労金の収入時期は株主総会決議のタイミング次第で前年or当年の所得が変わるため、慎重な計画が必要です。経営者・役員の退職プランニングでは、税理士との事前相談が必須となります。

退職所得の収入時期の基本ルール

退職金の種類 収入すべき時期
通常の退職金退職日
役員退職金(株主総会決議要)株主総会その他の決議日
役員退職金(具体額が決議に至らない場合)具体額が確定した日
役員退職金の改訂支給改訂の効力が生じた日
退職金規程の改訂による遅延支給支給日(支給日定めなら効力発生日)
企業年金等の一時金給付事由が生じた日

役員退職慰労金の収入時期

役員退職慰労金は、会社法第361条の規定により株主総会の決議が必須です(取締役の場合)。決議の方法により収入時期が変わります。

株主総会決議の2パターン

パターン 内容 収入時期
①具体額決議型株主総会で支給総額・支給時期・支給方法等を具体的に決議株主総会決議日
②取締役会一任型株主総会で支給することのみ決議し、具体額は取締役会に一任取締役会で具体額が確定した日

💡 実務での主流は「取締役会一任型」

実務上、株主総会で具体額を決議するのではなく、「役員退職慰労金支給規程に従って取締役会が決定」と決議するケースが多数派です。退職金額の機密性確保・調整余地確保の観点から、内規一任型が主流。

ただし、取締役会への無条件一任は無効で、「退職慰労金規程」等の支給基準を株主に開示する必要があります。

具体的な収入時期のケース

🧮 ケーススタディ:代表取締役の退職

条件:
・2025年12月15日:代表取締役を退任
・2026年2月20日:臨時株主総会で「退職慰労金を支給する旨」決議+取締役会に一任
・2026年3月10日:取締役会で具体額5,000万円を決議
・2026年4月1日:5,000万円が口座振込

収入すべき時期の判定:
・退任日(2025年12月15日)ではない
・株主総会決議日(2026年2月20日)でもない
取締役会で具体額確定日(2026年3月10日)が収入時期

→2026年分の退職所得として課税。
支給日(4月1日)が翌期にずれても、収入時期は確定日に従う。

役員退職慰労金制度の廃止・打切り支給

近年、役員退職慰労金制度を廃止する企業が増えています。この際に「在任中の役員に過去分を打切り支給する」場合、退職所得ではなく給与所得となる点に注意が必要です。

打切り支給の課税判定

パターン 所得区分
役員退職時に通常退職慰労金として支給退職所得
制度廃止+在任中役員に過去分打切り支給給与所得(国税庁通達)
役員区分変更(常勤→非常勤・職務大幅縮減)退職所得として認められる場合あり

⚠️ 在任中役員への打切り支給は退職所得不可

役員退職慰労金制度を廃止する際に、「制度廃止日までの過去分」を在任中の役員に打切り支給するケースでは、退職所得として課税できません(国税庁通達:在職中の取締役・監査役に対して支払われる役員退職慰労金は給与所得)。

給与所得として処理することで:
・所得税の累進課税(最高税率45%)
・退職所得控除(40万円×勤続年数等)が使えない
・住民税も給与所得として課税

税負担が大幅増となるため、制度廃止のタイミングは慎重に判断する必要があります。

企業年金の脱退一時金

確定給付企業年金(DB)・確定拠出年金(DC)の脱退一時金は、退職基因かどうかで所得区分が変わります。

企業年金脱退一時金の所得区分

支給原因 所得区分 根拠
退職(原則)退職所得所法31
退職に準じた事実(打切り支給)退職所得(条件付き)通達による
脱退基準満たさず途中脱退一時所得所法34
年金支給開始前の選択一時金(退職後)退職所得通達による
年金支給開始後の選択一時金(退職後・全額)退職所得通達による
遺族一時金・遺族年金中の死亡一時金非課税(所得税)相続税の対象

DB一時金の収入時期と合算ルール

💡 会社退職金との合算ルール

会社からの退職金支給がある場合:
会社退職金とDB一時金は同じ年分の退職所得として合算。退職所得控除は1回のみ適用(40万円×勤続年数または70万円×勤続年数−30万円等)。

会社からの退職金支給がない場合:
DB一時金の支給日が属する年分の退職所得として課税。

退職金支給日に大きなタイミングのズレがある場合:
5年以内は合算とみなされる(過去5年内に他の退職金を受給している場合の合算ルール)。

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「退職の事実」の否認リスク

役員退職慰労金が退職所得として課税されるためには、実質的な「退職の事実」が必要です。形式的な肩書変更だけでは認められません。

退職の事実が否認されるパターン

⚠️ 退職の事実否認の典型例

  • 代表取締役→取締役会長:実質的に経営権を維持していれば否認リスク
  • 取締役→相談役/顧問:業務内容・報酬実態が変わらないと否認
  • 退職金分割支給:毎月数十万円の継続支給は給与扱いリスク
  • 同族会社の親→子への代表交代:実権維持が明確だと否認
  • 退任直後の再任:1年以内の再任は退職の事実否認

否認回避のポイント

ポイント 実務対応
①職務の大幅縮減業務範囲を明確に縮小・業務日数を週1〜2日に
②報酬の大幅減額(50%以上)退任前報酬の50%以下に減額・形式報酬程度に
③意思決定権の譲渡経営判断を後任者に明確に委ねる
④文書化・規程整備退任時の業務分担を文書化・株主総会議事録
⑤事前相談税理士との退任プランニング・税務署事前照会

源泉徴収の方法

退職所得の源泉徴収方法は、「退職所得の受給に関する申告書」の提出有無で大きく変わります。

源泉徴収方法の2パターン

パターン 源泉徴収方法
「退職所得の受給に関する申告書」提出退職所得控除・1/2課税適用後の正規の所得税額(分離課税)
申告書未提出退職金等の支給額×20.42%(復興特別所得税込み)を一律源泉徴収

💡 「申告書」提出のメリット

「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、退職所得控除(勤続20年以下40万円×年数・20年超70万円×年数−600万円)+1/2課税が適用され、源泉徴収段階で正確な税額になります。

未提出の場合は20.42%一律源泉徴収のため過大徴収となるケースが多く、確定申告で還付申請が必要となります。実務上、ほとんどのケースで申告書提出を推奨します。

退職所得の計算方法

退職所得は、退職金支給額から退職所得控除を差し引き、その1/2を課税対象とします。

退職所得の計算式

💡 退職所得の計算式

退職所得=(退職金支給額−退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額:
・勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
・勤続20年超:70万円×(勤続年数−20年)+800万円

役員等で勤続5年以下:1/2課税が適用不可(令和4年改正)
従業員等で勤続5年以下・退職所得300万円超部分:1/2課税が一部不適用(令和4年改正)

具体的計算例

🧮 シミュレーション:勤続30年の代表取締役退職金5,000万円

条件:
・勤続年数:30年(役員25年含む)
・退職金:5,000万円

退職所得控除額:
70万円×(30年−20年)+800万円=1,500万円

退職所得:
(5,000万円−1,500万円)×1/2=1,750万円

所得税(分離課税・速算表):
1,750万円×33%−153.6万円=424万円
+復興特別所得税8.9万円
+住民税175万円

合計税額:約608万円(実質13.3%)

よくある質問

株主総会決議が退職日より前に行われた場合の収入時期は?
「退職日」が収入時期となります。所基通36-10は「株主総会の決議があった日」と「役員退職後」を前提としています。退職前に決議があっても退職していなければ収入時期は発生せず、実際の退職日に収入時期となります。一方、退職後の決議なら決議日が収入時期です。事前決議+退任を意図的に組合せると、税務上は否認リスクがあります。
退職慰労金の分割支給を選択した場合、収入時期は?
分割であっても全額がいずれかの収入時期に一括計上されます。例:総額5,000万円を5年分割支給(毎年1,000万円)→収入時期は決議日(または取締役会一任なら具体額確定日)で5,000万円が一括計上。分割支給を理由に各年分割計上することは認められません。実際の支給は5年に分かれても、課税は一括という重要なポイントです。
役員から取締役相談役に変更した場合は退職所得?
実態次第です。「代表取締役→取締役会長」「常勤→非常勤」等の肩書変更でも、職務内容・報酬・経営権が実質的に大幅縮小していれば退職所得として認められます(分掌変更による退職所得・所基通30-2の2)。逆に実態が変わらないと否認リスクが高いです。判断には①報酬50%以上減・②職務内容大幅縮小・③意思決定権譲渡が指標となります。
DC(企業型確定拠出年金)の一時金受取時期は?
DC脱退一時金は、加入者が60歳到達して老齢給付金を受給する場合は退職所得として一時金受給可能。60歳前の脱退の場合は、原則として個人型iDeCoに移換され、即時の一時金受取は限定的(脱退一時金の支給要件)。受取時期は受給請求日が属する年分の退職所得として課税されます。
2か所から退職金を同時に受け取った場合は?
合算して退職所得を計算します。例:本社退職金1,500万円+DB一時金500万円=2,000万円→退職所得控除は1回のみ適用(勤続年数で計算)。「退職所得の受給に関する申告書」を主たる支給者(通常は本社)に提出し、他の支給先からの源泉徴収票を添付。源泉徴収では本社で正確に計算され、必要に応じて確定申告で精算します。
遺族に支払われる死亡退職金の課税は?
死亡退職金は所得税の対象外で、相続税の対象となります(所法9条1項16号)。受取人(配偶者・子等)の相続税申告で計上。生命保険金と同様に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。配偶者の場合、配偶者控除1.6億円との併用で実質的に課税ゼロとなるケースが多いです。
小規模企業共済の解約一時金は退職所得?
解約事由により異なります。①個人事業の廃業・会社解散等(共済事由)→退職所得、②65歳到達による任意脱退→退職所得、③240ヶ月未満の任意解約→一時所得、④死亡→相続税(みなし相続財産)。退職所得扱いとなれば退職所得控除+1/2課税で大きく節税効果あり。任意解約は一時所得で課税負担が重くなるため、解約タイミングの慎重な検討が必要です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 退職所得の収入時期は所基通36-10で判定
  • 通常退職金の収入時期は退職日
  • 役員退職金の収入時期は株主総会決議日(または具体額確定日)
  • 取締役会一任型の場合は取締役会の具体額確定日
  • 制度廃止での在任役員打切り支給は給与所得扱い
  • DB一時金は退職基因なら退職所得・それ以外は一時所得
  • 「退職の事実」の否認リスクに注意
  • 「退職所得の受給に関する申告書」提出で正確な源泉徴収
  • 退職所得は(支給額−控除額)×1/2で計算
  • 勤続20年超は70万円×(年数-20)+800万円の退職所得控除

📝 次のアクション

  1. 役員退職慰労金規程の整備状況を確認
  2. 株主総会決議の方法(具体額決議or取締役会一任)を決定
  3. 退職プランニングを税理士と事前相談
  4. 「退職所得の受給に関する申告書」を支給前に提出
  5. 過去5年内の他の退職金受給を確認(合算ルール)

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