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設立1期目の役員報酬の決め方|3か月以内ルールと利益別シミュレーション
「設立1期目の役員報酬をいくらに設定すべきか分からない」という創業者に向けて、3か月以内ルール、利益別の最適額、社会保険料を含めた手取り計算、令和8年度の所得税改正の影響を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の利益見込みに応じた最適な月額を判断でき、設立日から3か月以内に確実に決議できます。
🏆 結論:設立日から3か月以内に決め、利益1,500万円なら月40〜60万円が最適ゾーン
設立1期目の役員報酬は、設立日から3か月以内に株主総会で決議しなければ全額損金不算入になります。最適額は会社の利益見込みによって変わりますが、役員報酬計上前の利益が1,500万円程度なら、令和8年度の所得税改正後の試算で月40〜60万円のレンジが個人手取りと法人税のバランスで優位です。社会保険料は労使合計で給与の約30%発生するため、報酬の引き上げには注意が必要です。
設立1期目の役員報酬は「3か月以内ルール」が絶対
3か月以内ルールの内容
ひとことで言えば、法人税法上、役員報酬を損金(経費)に計上するためには、設立日から3か月以内に株主総会で報酬額を決議し、その後は毎月同額を支給し続ける必要があります(法人税法第34条第1項第1号、定期同額給与)。 例えば9月20日設立の会社であれば、12月19日までに株主総会を開催し、役員報酬額を決議しなければなりません。この期限を1日でも過ぎると、その期の役員報酬は全額が損金不算入となります。⚠️ 注意
実務でよく見る事故が「3か月以内に決めたつもりで4か月目になっていた」というケースです。設立から3か月以内に「決議」と「支給」の両方を済ませる必要があります。報酬月額60万円で12か月支給した場合、損金不算入になると720万円分の経費が消えて、概算で法人税等が200万円超増えます。
設立日から3か月以内に行うべき手続き
設立1期目の役員報酬決定は、次の3ステップで進めます。| ステップ | 実施内容 | 期限 |
|---|---|---|
| ①報酬額の設計 | 利益見込み・社会保険料・所得税のバランスを試算 | 設立後すぐ |
| ②株主総会の決議 | 役員報酬の総額または各人別の金額を決議し議事録を作成 | 設立日〜3か月以内 |
| ③初回支給 | 決定した金額で初回給与を支給 | 設立日から3か月以内 |
💡 実務のポイント
設立直後は本業の立ち上げで忙しく、議事録作成が後回しになりがちです。実務上は、設立後1か月以内に株主総会議事録を作成・押印し、PDFと印刷物の両方で保管する運用が安全です。税務調査では「いつ決議したか」が議事録の日付で判定されるため、後付けの作成は否認リスクが高くなります。
役員報酬が損金算入できる3つの形態
法人税法では、役員報酬を損金算入できるパターンを3種類に限定しています(法人税法第34条)。設立1期目は実質的に「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の2択になります。| 種類 | 内容 | 届出 | 設立期での活用 |
|---|---|---|---|
| 定期同額給与 | 毎月同額を支給する月給型 | 不要 | 基本形・推奨 |
| 事前確定届出給与 | 役員の賞与に相当。あらかじめ届出した日に届出額を支給 | 必要 | 消費税の特定期間対策で活用 |
| 業績連動給与 | 客観的な指標で業績連動 | 必要(複雑) | 非同族の上場会社等のみ |
定期同額給与のルール
定期同額給与とは、1か月以下の一定期間ごとに同額で支給される役員報酬です。「月給」のイメージそのものです。 - 毎月同額(手取り後の金額でも可) - 改定は事業年度開始日から3か月以内が原則 - 期中の変更は原則不可(例外:臨時改定事由・業績悪化改定事由)事前確定届出給与のルール
事前確定届出給与とは、あらかじめ税務署に「いつ、いくら支給する」と届出を行ったうえで、届出どおりに支給する役員賞与です。 届出期限は、原則として「株主総会等の決議をした日から1か月以内」または「会計期間開始日から4か月以内」のいずれか早い日です(法人税法施行令第69条第4項)。💡 実務のポイント
事前確定届出給与は「届出どおり1円違わず支給する」のが鉄則です。届出額より1円でも少なく支給すると、その賞与全額が損金不算入になります。設立1期目の利益が読めない段階での届出は慎重に行い、必要なければ届け出ない選択もあります。
役員報酬の最適額シミュレーション【利益別】
設立1期目の役員報酬は、会社の利益見込みによって最適額が変わります。以下、3つの利益水準でシミュレーションを行います。📐 シミュレーション前提条件
- 役員1人(社長)、扶養家族なし、40歳以上
- 協会けんぽ東京支部、令和8年度(2026年)想定の保険料率
- 令和8年度税制改正後の基礎控除・給与所得控除を適用
- 法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税を含む
- 個人所得税は復興特別所得税込み、住民税は均等割5,000円含む
パターンA:役員報酬計上前の利益が1,500万円の場合
| 月額 | 年報酬 | 社保(個人) | 所得税 | 住民税 | 法人税等 | 個人手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 240万円 | 34万円 | 2万円 | 9万円 | 350万円 | 195万円 |
| 40万円 | 480万円 | 68万円 | 11万円 | 23万円 | 256万円 | 378万円 |
| 60万円 | 720万円 | 102万円 | 33万円 | 40万円 | 174万円 | 546万円 |
| 80万円 | 960万円 | 119万円 | 76万円 | 61万円 | 110万円 | 704万円 |
| 100万円 | 1,200万円 | 131万円 | 127万円 | 84万円 | 49万円 | 859万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
このパターンでは、月100万円まで上げると法人税はほぼゼロまで圧縮できますが、個人の社会保険料と所得税が膨らみます。個人の手取りと残る法人利益のバランスで、月40〜60万円のレンジが効率的です。パターンB:役員報酬計上前の利益が500万円の場合
利益500万円程度の小規模なケースでは、役員報酬を抑えて法人に内部留保を残すか、報酬を多めにして個人で取るかの判断が問われます。| 月額 | 特徴 | 推奨度 |
|---|---|---|
| 20万円 | 個人の所得税ほぼなし、法人内部留保が増える | ○ 内部留保重視 |
| 30万円 | 給与所得控除と基礎控除でほぼ非課税圏、社保負担も限定的 | ◎ バランス重視 |
| 40万円 | 個人の生活費は十分。法人利益はほぼ消滅 | ○ 個人手取り重視 |
パターンC:役員報酬計上前の利益が3,000万円以上の場合
利益が大きいケースでは、役員報酬を高めに設定して法人の所得を800万円以下に抑え、軽減税率(15%)を最大限活用するのが基本戦略です。| 月額 | 戦略 |
|---|---|
| 100万円 | 法人利益約1,800万円。軽減税率と通常税率の中間ライン |
| 150万円 | 法人利益約1,200万円。個人の所得税率33%帯に入る前 |
| 200万円 | 法人利益約600万円で軽減税率内。個人所得税率33%超 |
📊 公認会計士の視点
利益が大きい場合、役員退職金の積立てを兼ねた経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済、月20万円・年240万円まで損金算入可)の活用も検討すべきです。法人で損金算入しつつ、解約時に役員退職金原資として活用できれば、トータルの税負担を最適化できます。
令和8年度税制改正の影響と「178万円の壁」
📢 令和7年度・令和8年度税制改正の重要ポイント
所得税の「年収の壁」が令和7年度改正で103万円→160万円に、令和8年度改正でさらに178万円まで引き上げられました。給与所得控除の最低額が65万円に、基礎控除も中低所得者向けに最大104万円(所得132万円以下なら95万円+特例上乗せ)まで拡大。設立期の役員報酬設計は、改正前のセオリーが通用しなくなっている点に注意が必要です。
参考: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直しについて」
改正の役員報酬への影響
令和8年度の所得税改正は、特に低〜中所得帯の役員報酬の手取りに大きく影響します。| 役員年報酬 | 改正前(令和6年) | 改正後(令和8年) | 影響 |
|---|---|---|---|
| 178万円(月14.8万円) | 所得税課税あり | 所得税ゼロ | 手取り増 |
| 300万円(月25万円) | 所得税約7万円 | 所得税約2万円 | ▲5万円減 |
| 600万円(月50万円) | 所得税約25万円 | 所得税約20万円 | ▲5万円減 |
住民税は据え置きという落とし穴
ただし、所得税の基礎控除引き上げに対して、住民税の基礎控除(43万円)は据え置きとなっています。所得税がゼロでも住民税が発生するゾーンが拡大しており、創業期のキャッシュフロー計画では住民税負担を別途見込む必要があります。AYUSAWA PARTNERS
役員報酬の最適額シミュレーションを無料で実施します
事業計画・利益見込みをもとに、税理士・公認会計士・社労士が一体で個別シミュレーションを行います。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する社会保険料の負担を正しく理解する
役員報酬の決定で見落とされがちなのが、社会保険料の負担です。役員報酬を上げると、所得税・住民税だけでなく、健康保険・厚生年金の保険料も上昇します。労使合計で給与の約30%
健康保険(協会けんぽ東京支部・40歳以上の場合)と厚生年金を合計すると、労使合計で給与のおよそ29〜30%が社会保険料として発生します。これは個人と法人で折半するため、個人負担は約15%、法人負担も約15%です。| 月額報酬 | 個人負担(月) | 法人負担(月) | 労使合計(年) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 2.8万円 | 2.8万円 | 68万円 |
| 40万円 | 5.7万円 | 5.7万円 | 136万円 |
| 60万円 | 8.5万円 | 8.5万円 | 204万円 |
| 80万円 | 9.9万円 | 9.9万円 | 238万円 |
※厚生年金の標準報酬月額上限は65万円のため、月65万円超は厚生年金部分が打ち止め。
厚生年金の標準報酬月額上限が打ち止めになる「月65万円の壁」
🔷 社労士の視点
厚生年金の標準報酬月額は65万円が上限です(健康保険は139万円が上限)。つまり、報酬を月65万円から月100万円に上げても、厚生年金保険料は変わりません。社会保険料の負担増を避けつつ手取りを増やしたい経営者には、月65万円を1つのラインとして意識する選択肢があります。なお、令和9年9月以降に標準報酬月額の上限引き上げが議論されているため、中期的にはこの「壁」が動く可能性もあります。
社会保険料の節約テクニック「賞与活用」
健康保険・厚生年金は、賞与にも保険料がかかりますが、賞与の場合は標準賞与額の上限が決まっています(健康保険:年累計573万円、厚生年金:月150万円)。月給と賞与の配分を工夫することで、社会保険料の負担を最適化できる場合があります。ただし、役員賞与を損金算入するには事前確定届出給与の届出が必要です。創業期によくある失敗パターン
失敗パターン1:「利益が読めないから0円に設定」
設立直後は資金繰りが心配で、役員報酬を0円や月5万円程度に設定するケースがあります。後から「やはり生活費が足りない」と上げようとしても、定期同額給与のルールにより期中変更はできません。結果、1期目は生活費を貯金から取り崩すことになります。⚠️ 注意
月5万円のような極端に低い役員報酬では、社会保険の標準報酬月額が下限(健康保険58,000円・厚生年金88,000円)に張り付き、将来の年金額にも影響します。生活費の見直しと将来の年金額の両面で、月20万円以上は確保したいラインです。
失敗パターン2:「利益最大化を狙って法人に残しすぎる」
役員報酬を極端に低くして法人利益を残しすぎると、内部留保が積み上がり、将来の役員退職金原資としては良いものの、個人の生活が苦しくなります。また、いざ役員報酬を上げようとしても、定期同額給与のルールで翌期まで待つ必要があります。失敗パターン3:「3か月以内ルールを忘れていた」
設立から3か月以内に株主総会を開催し、議事録を作成・押印するという手続きを怠ると、その期の役員報酬は全額損金不算入になります。設立直後の事務作業の優先順位で見落とされやすい論点です。失敗パターン4:「期中に変更してしまった」
「利益が想定より少ないから役員報酬を下げよう」「黒字が出そうだから上げよう」と期中に変更すると、変更後の差額が損金不算入になります。期中変更が認められる「業績悪化改定事由」「臨時改定事由」のハードルは高く、自己都合の業績見込み変更では認められません。株主総会議事録のチェックポイント
役員報酬の決定は株主総会議事録に必ず残します。議事録には次の事項を記載してください。- 開催日時・場所
- 出席した株主の氏名と持株数
- 議長の選任
- 議案として「役員報酬決定の件」を明示
- 役員報酬の総額または各人別の月額
- 支給開始月
- 議事の経過および結果(議決)
- 議事録作成者の署名・押印
💡 実務のポイント
税務調査では、議事録の日付・押印・記載内容の整合性が確認されます。後から日付を遡って作成した議事録は否認の対象になりやすく、決議日と支給開始日のつじつま合わせができない場合、定期同額給与として認められない可能性があります。設立後の議事録は必ず実施した日に作成・押印してください。
役員報酬決定のチェックリスト
設立1期目の役員報酬を決める前に、以下を確認してください。- 設立日から3か月以内のスケジュールを確保したか
- 事業年度の利益見込みを試算したか(売上・経費の概算)
- 役員報酬計上前の利益を3パターン以上シミュレーションしたか
- 個人の生活費・住宅ローン・教育費から、最低必要額を算出したか
- 社会保険料の労使合計負担を見込んだか
- 令和8年度税制改正の基礎控除・給与所得控除を反映したか
- 株主総会議事録のひな形を準備したか
- 給与計算ソフトまたは社労士に依頼するルートを確保したか
- 役員報酬支給開始月の銀行送金スケジュールを組んだか
- 事前確定届出給与を使う場合、届出期限を確認したか
よくある質問
📋 この記事のポイント
- 設立1期目の役員報酬は、設立日から3か月以内に株主総会で決議し議事録に残す
- 3か月以内ルールを破ると役員報酬全額が損金不算入になる
- 役員報酬は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3パターン。設立期は前2つを使う
- 利益1,500万円規模なら、月40〜60万円が個人手取りと法人税のバランスで優位
- 令和8年度税制改正で基礎控除最大104万円・給与所得控除最低65万円。年収178万円が新しい壁
- 社会保険料は労使合計で給与の約30%。厚生年金は標準報酬月額65万円が上限
- 期中変更は原則不可。業績悪化改定事由・臨時改定事由のハードルは高い
- 株主総会議事録の日付・押印・記載内容は税務調査で必ず確認される
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