【税理士×会計士が解説】控除対象外消費税額等の処理|損金算入・繰延消費税の取扱い

【税理士×会計士が解説】控除対象外消費税額等の処理|損金算入・繰延消費税の取扱い
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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控除対象外消費税額等の処理|損金算入・繰延消費税の取扱い

「仕入税額控除で控除しきれなかった消費税はどう処理する?」とお悩みの法人経理担当者に向けて、控除対象外消費税額等の判定方法・損金算入ルール・繰延消費税の償却計算・交際費との関係を完全ガイドします。この記事を読めば、法人税申告書の別表16(10)を迷わず作成できます。

🏆 結論:3つの条件で損金算入可否が決まる

控除対象外消費税額等の処理は、①課税売上割合が80%以上か②棚卸資産に係るものか③1資産あたり20万円未満か——この3条件のいずれかを満たせば当期の損金に算入できます。いずれにも該当しない場合は「繰延消費税額等」として資産計上し、60ヶ月(5年)で均等償却します。交際費に係る控除対象外消費税は交際費の額に加算して損金不算入額を計算する点に注意が必要です。

控除対象外消費税額等とは?発生する条件

控除対象外消費税額等とは、税抜経理方式を採用している課税事業者が、仕入税額控除で全額を控除しきれなかった仮払消費税のことです。以下の2つの条件を同時に満たす場合に発生します。

条件 内容
条件①税抜経理方式を採用している
条件②課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満である

税込経理方式を採用している場合は、消費税がすでに取得価額や経費に含まれているため、控除対象外消費税額等は発生しません。また、課税売上割合が95%以上かつ課税売上高が5億円以下の場合は、仕入税額の全額が控除されるため、同様に発生しません。

💡 実務のポイント

控除対象外消費税が発生しやすいのは、不動産賃貸業(住宅家賃=非課税売上が多い)、病院・診療所(社会保険診療=非課税売上が多い)、金融業(利子=非課税売上が多い)など、非課税売上の割合が高い業種です。こうした業種では毎期発生するため、処理方法を正しく理解しておくことが不可欠です。

消費税の仕入税額控除のしくみ全体については「消費税のしくみと基本|課税・非課税・免税の違いから申告まで完全ガイド」で解説しています。

課税売上割合の計算式

📐 課税売上割合の計算式

課税売上割合 = 課税売上高(税抜)÷ 総売上高(税抜)

  • 課税売上高には輸出による免税売上高を含む
  • 総売上高には非課税売上高を含む(ただし国外取引は除く)

処理方法の判定フローチャート

控除対象外消費税額等の処理方法は、「資産に係るもの」と「経費に係るもの」で大きく異なります。以下の判定フローで処理方法を確認してください。

資産に係る控除対象外消費税の判定フロー

判定ステップ 条件 処理方法
STEP 1取得価額に算入する方法を選択?→ Yes:取得価額に含めて減価償却(任意選択可)
STEP 2課税売上割合80%以上?→ Yes:当期損金算入(損金経理要件あり)
STEP 3棚卸資産に係るもの?→ Yes:当期損金算入(損金経理要件あり)
STEP 41資産あたり20万円未満?→ Yes:当期損金算入(損金経理要件あり)
STEP 5上記いずれにも該当しない繰延消費税額等として資産計上し、60ヶ月で償却

経費に係る控除対象外消費税の処理

区分 処理方法
交際費以外の経費全額をその事業年度の損金に算入(租税公課や雑損失で処理)
交際費に係るもの交際費の額に加算して、交際費の損金不算入額を計算

参考: 国税庁「No.6921 控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」

⚠️ 注意

交際費に係る控除対象外消費税は、単純に「租税公課」で損金算入してはいけません。法人税法上の交際費の額に加算して、別表15で損金不算入額の計算を行う必要があります。この処理を忘れると、税務調査で指摘を受けて追加の法人税が発生するリスクがあります。

繰延消費税額等の計算方法と償却シミュレーション

判定フローのSTEP 5に該当した場合、控除対象外消費税額等は「繰延消費税額等」として資産に計上し、60ヶ月(5年)で均等に償却します。取得事業年度は半年分しか償却できないため、最低6期間で償却が完了します。

償却計算の算式

📐 繰延消費税額等の償却算式

各期の損金算入限度額 = 繰延消費税額等 ÷ 60 × その事業年度の月数

※取得事業年度は上記の 1/2 が限度額

※損金経理が要件(法人税法施行令第139条の4)

3パターンのシミュレーション比較表

📐 シミュレーション前提条件

  • 3月決算法人(事業年度12ヶ月)
  • 資産取得は期首に行ったものとする
  • 損金経理を毎期行うものとする
50万円の場合 100万円の場合 300万円の場合
1期目(取得年度)50,000円100,000円300,000円
2期目100,000円200,000円600,000円
3期目100,000円200,000円600,000円
4期目100,000円200,000円600,000円
5期目100,000円200,000円600,000円
6期目(最終)50,000円100,000円300,000円
合計500,000円1,000,000円3,000,000円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

💡 実務のポイント

繰延消費税額等を資産計上した後にその資産を売却・除却しても、繰延消費税額等の残額を一括で損金算入することはできません。引き続き60ヶ月の均等償却を続ける必要があります(法人税基本通達11-5-8)。通常の固定資産の除却損とは扱いが異なるため、実務で混同しないよう注意してください。

仕訳例(繰延消費税額等100万円の場合)

タイミング 借方 貸方
決算整理(資産計上)繰延消費税額等 1,000,000仮払消費税 1,000,000
決算整理(1期目償却)租税公課 100,000繰延消費税額等 100,000
翌期以降(2〜5期目)租税公課 200,000繰延消費税額等 200,000

交際費等に係る控除対象外消費税の取扱い

控除対象外消費税の処理で最もミスが多いのが、交際費に係る部分の取扱いです。交際費に係る控除対象外消費税額等は、交際費の額に加算して損金不算入額の計算を行う必要があります(措法61の4)。

交際費に係る控除対象外消費税の計算例

📐 シミュレーション前提条件

  • 資本金1億円以下の中小企業(定額控除限度額800万円の適用あり)
  • 交際費の支出額:税抜700万円(仮払消費税70万円)
  • 課税売上割合:60%
  • 個別対応方式で「共通対応」に区分
計算項目 金額
交際費の仮払消費税700,000円
控除対象消費税(700,000 × 60%)420,000円
控除対象外消費税(700,000 − 420,000)280,000円
法人税上の交際費の額(7,000,000 + 280,000)7,280,000円
定額控除限度額8,000,000円
損金不算入額0円(限度額以内)

この例では限度額以内に収まりましたが、交際費の支出額が多い企業では、控除対象外消費税の加算によって800万円を超え、損金不算入額が発生するケースがあります。

参考: 国税庁「No.6917 交際費等の損金不算入額を算出する場合における消費税等の取扱い」

📊 公認会計士の視点

法人税申告書では、交際費に係る控除対象外消費税は別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」の「支出交際費等の額」に加算して記載します。別表16(10)の繰延消費税額等とは別の論点ですので、両方の別表を確認してください。決算実務でよくある誤りは、別表16(10)のみ作成して別表15への加算を忘れるケースです。

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税込経理方式と税抜経理方式の場合の違い

控除対象外消費税額等の処理は、経理方式によって大きく異なります。

項目 税抜経理方式 税込経理方式
控除対象外消費税の発生発生する発生しない
控除できない消費税の扱い仮払消費税のうち控除不能分を別途処理もともと取得価額・経費に含まれている
繰延消費税の処理必要な場合あり不要
別表16(10)の提出繰延消費税がある場合は必要不要

税込経理方式を採用している場合は、控除できない消費税が資産の取得価額や経費に含まれた状態で処理されるため、繰延消費税額等の別途処理は不要です。ただし、交際費に係る部分については、税込経理方式でも税抜金額に対応する控除対象外消費税を認識して、別表15に加算する必要がある点は変わりません。税込経理と税抜経理の違いについては「税込経理と税抜経理の違い|選択基準・仕訳例・法人税への影響」で詳しく解説しています。

インボイス制度の経過措置と控除対象外消費税の関係

インボイス制度の導入後、免税事業者等(適格請求書発行事業者でない事業者)からの課税仕入れには経過措置が設けられています。令和8年度税制改正大綱により、この経過措置のスケジュールが当初予定から大幅に変更されました。インボイス制度の概要については「インボイス制度の概要と対応方法|完全ガイド」をご覧ください。

📢 令和8年度税制改正大綱による変更

当初予定の「R8.10から一律50%」から、控除割合の引き下げペースが緩和され、段階が2段階から4段階に増加しました。最終的な経過措置の終了時期も2年延長されています。

経過措置の控除割合スケジュール(改正後)

期間 控除割合 控除対象外割合 備考
R5.10.1〜R8.9.3080%20%当初予定どおり
R8.10.1〜R10.9.3070%30%当初50%→70%に緩和(改正)
R10.10.1〜R12.9.3050%50%新設の段階(改正)
R12.10.1〜R13.9.3030%70%新設の段階(改正)
R13.10.1〜0%100%経過措置終了(当初R11.10→2年延長)

控除対象外消費税への影響シミュレーション

免税事業者から税込110万円(税抜100万円、消費税10万円)の課税仕入れを行った場合、控除対象外消費税がどう変化するかを見てみましょう。

期間 控除できる額 控除対象外額
〜R8.9(80%控除)80,000円20,000円
R8.10〜R10.9(70%控除)70,000円30,000円
R10.10〜R12.9(50%控除)50,000円50,000円
R12.10〜R13.9(30%控除)30,000円70,000円
R13.10〜(経過措置終了)0円100,000円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

インボイス経過措置分の経理処理の注意点

インボイスの経過措置による控除対象外消費税について、重要な経理上の注意点があります。

⚠️ 注意:免税事業者からの仕入れの経理処理

消費税経理通達14の2により、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る控除対象外消費税は、通常の「控除対象外消費税額等」としてではなく、対価の額に含めて処理することとされています。つまり、免税事業者からの仕入れで控除できない消費税分は、仕入高や固定資産の取得価額に上乗せして経理します。繰延消費税額等としての資産計上は、あくまで課税売上割合が95%未満であることにより発生する控除対象外消費税(本来の制度上のもの)が対象です。

また、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの経過措置対象の課税仕入れの合計額が年間1億円(現行10億円から引き下げ)を超える場合、超えた分は経過措置の適用を受けられなくなります。

酒税・たばこ税等の個別消費税と課税標準への算入

消費税の課税標準(消費税が課される金額の基礎)には、酒税、たばこ税、揮発油税などの「個別消費税」が含まれます。これは控除対象外消費税とは直接の関連はありませんが、消費税の経理処理を行う際に混同しやすいポイントです。

個別消費税の課税標準への算入ルール

税金の種類 消費税の課税標準に含まれるか 理由
酒税含まれる商品の対価の一部として価格に組み込まれている
たばこ税含まれる同上
揮発油税・地方揮発油税含まれる同上
石油石炭税含まれる同上
軽油引取税含まれない消費者に別途請求する特別徴収方式のため
入湯税・ゴルフ場利用税含まれない利用者に別途請求する特別徴収方式のため

たとえば、酒税が含まれた税抜1,000円のビールを仕入れた場合、酒税部分も含めた1,000円が仕入税額控除の対象になる課税標準です。酒税を分離して控除対象外として処理する必要はありません。一方、軽油引取税のように利用者に別途請求される税金は、消費税の課税標準に含まれないため、請求書や帳簿での区分経理が必要です。

💡 実務のポイント

運送業や建設業で軽油を大量に使用する場合、軽油引取税を課税標準に含めてしまうと消費税の過大計上になります。軽油の請求書では「軽油引取税○○円」が区分表示されているケースが多いので、仕訳時に「不課税仕入」として処理してください。この処理を怠ると、結果的に控除対象外消費税が過大に計算される原因にもなります。

法人税申告書 別表16(10)の書き方

繰延消費税額等がある場合は、法人税の確定申告書に「別表16(10)資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入に関する明細書」を添付する必要があります。

別表16(10)に記載する主な項目

記載項目 内容
当期の課税売上割合消費税申告書から転記
資産に係る控除対象外消費税額等の合計税抜経理で控除できなかった仮払消費税のうち資産に係る分
20万円未満のものの合計額当期損金算入する金額
棚卸資産に係るものの合計額当期損金算入する金額
当期の繰延消費税額等資産計上する金額
当期損金算入額60ヶ月償却で計算した金額
翌期への繰越額期首残高 + 当期発生額 − 当期損金算入額

年間100社以上の決算を担当してきた経験上、別表16(10)の作成でよくある誤りは、課税売上割合が80%以上の年度に繰延消費税額等の新規発生を計上してしまうケースです。80%以上の年度は全額当期損金算入できるため、繰延消費税の資産計上は不要です。

個人事業主の場合の取扱い

個人事業主の場合も、控除対象外消費税額等の処理の基本的な考え方は法人と同じです。ただし、いくつか異なる点があります。

法人との違い

項目 法人 個人事業主
経費に係る控除対象外消費税損金経理で損金算入全額を必要経費に算入
繰延消費税の償却(取得年度)60ヶ月按分の1/2が限度同じ計算方法
繰延消費税の償却(翌年以降)損金経理要件あり事業を行っていた期間の月数で計算。必要経費に算入
交際費の扱い定額控除限度額800万円あり全額必要経費に算入可能(損金不算入制度なし)

個人事業主の場合、法人のような交際費の損金不算入制度がないため、交際費に係る控除対象外消費税を別途交際費に加算する処理は不要です。全額を必要経費に算入できます。簡易課税を選択している場合は「簡易課税制度のしくみ|みなし仕入率・届出・選択の判断基準」も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

控除対象外消費税額等は全額損金不算入になるのですか?
いいえ。交際費に係る部分は交際費の損金不算入額の計算に影響しますが、それ以外の経費に係る控除対象外消費税は全額当期の損金に算入できます。資産に係るものも、課税売上割合80%以上・棚卸資産・20万円未満のいずれかに該当すれば当期損金算入が可能です。
税込経理方式でも控除対象外消費税の処理は必要ですか?
税込経理方式を採用している場合、消費税はすでに資産の取得価額や経費に含まれているため、控除対象外消費税額等としての別途処理は不要です。ただし、交際費に係る控除対象外消費税の別表15への加算は、税込経理方式でも必要になるケースがある点には注意してください。
繰延消費税額等を計上した資産を途中で売却した場合、残額はどうなりますか?
資産を売却・除却しても、繰延消費税額等の残額を一括で損金算入することはできません。引き続き60ヶ月の均等償却を続ける必要があります(法人税基本通達11-5-8)。これは通常の固定資産の除却損とは異なる取扱いです。
簡易課税制度を選択している場合、控除対象外消費税は発生しますか?
簡易課税制度ではみなし仕入率で仕入税額を計算するため、個別の課税仕入れに対する控除対象外消費税という概念は発生しません。ただし、帳簿上の仮払消費税と実際の消費税申告額に差額が生じるため、決算時にその差額を「雑損失」または「雑収入」として調整する必要があります。
インボイス制度で免税事業者からの仕入れの控除対象外消費税はどう処理しますか?
消費税経理通達14の2により、免税事業者からの仕入れに係る控除対象外部分は、通常の控除対象外消費税額等としてではなく、対価の額に含めて処理します。つまり、仕入高や資産の取得価額に上乗せします。繰延消費税額等としての資産計上対象にはなりません。
別表16(10)はどのような場合に提出が必要ですか?
繰延消費税額等が発生する場合(課税売上割合80%未満で、1資産あたり20万円以上の固定資産に係る控除対象外消費税がある場合)に提出が必要です。また、過年度に発生した繰延消費税額等の償却が続いている場合も、翌期への繰越額がある限り毎期提出します。
居住用賃貸建物に係る控除対象外消費税の取扱いは?
令和2年10月1日以後に取得した税抜1,000万円以上の居住用賃貸建物は、仕入税額控除が全額認められないため、全額が控除対象外消費税になります。この場合も、判定フローに従って処理します。20万円以上であれば繰延消費税額等として60ヶ月償却の対象になります。居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限については別途記事で解説しています。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 控除対象外消費税額等は、税抜経理方式+課税売上割合95%未満(または課税売上高5億円超)で発生する
  • 課税売上割合80%以上・棚卸資産・1資産20万円未満のいずれかに該当すれば当期損金算入可能
  • いずれにも該当しなければ「繰延消費税額等」として60ヶ月で均等償却(取得年度は1/2)
  • 交際費に係る控除対象外消費税は交際費の額に加算して別表15で計算が必要
  • インボイスの経過措置は令和8年度改正で4段階に変更(80%→70%→50%→30%→0%)
  • 免税事業者からの仕入れの控除対象外部分は、繰延消費税ではなく対価の額に含めて処理する
  • 繰延消費税がある場合は法人税申告書に別表16(10)の添付が必要

控除対象外消費税の処理は、消費税と法人税の両方にまたがる複合的な論点です。特にインボイス制度の経過措置が段階的に縮小されるに伴い、免税事業者との取引が多い企業ほど影響が大きくなります。処理方法に迷ったら、ぜひ税理士にご相談ください。

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