公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
控除対象外消費税額等の処理|損金算入・繰延消費税の取扱い
「仕入税額控除で控除しきれなかった消費税はどう処理する?」とお悩みの法人経理担当者に向けて、控除対象外消費税額等の判定方法・損金算入ルール・繰延消費税の償却計算・交際費との関係を完全ガイドします。この記事を読めば、法人税申告書の別表16(10)を迷わず作成できます。


控除対象外消費税額等の処理|損金算入・繰延消費税の取扱い
「仕入税額控除で控除しきれなかった消費税はどう処理する?」とお悩みの法人経理担当者に向けて、控除対象外消費税額等の判定方法・損金算入ルール・繰延消費税の償却計算・交際費との関係を完全ガイドします。この記事を読めば、法人税申告書の別表16(10)を迷わず作成できます。
🏆 結論:3つの条件で損金算入可否が決まる
控除対象外消費税額等の処理は、①課税売上割合が80%以上か②棚卸資産に係るものか③1資産あたり20万円未満か——この3条件のいずれかを満たせば当期の損金に算入できます。いずれにも該当しない場合は「繰延消費税額等」として資産計上し、60ヶ月(5年)で均等償却します。交際費に係る控除対象外消費税は交際費の額に加算して損金不算入額を計算する点に注意が必要です。
控除対象外消費税額等とは、税抜経理方式を採用している課税事業者が、仕入税額控除で全額を控除しきれなかった仮払消費税のことです。以下の2つの条件を同時に満たす場合に発生します。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 条件① | 税抜経理方式を採用している |
| 条件② | 課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満である |
税込経理方式を採用している場合は、消費税がすでに取得価額や経費に含まれているため、控除対象外消費税額等は発生しません。また、課税売上割合が95%以上かつ課税売上高が5億円以下の場合は、仕入税額の全額が控除されるため、同様に発生しません。
💡 実務のポイント
控除対象外消費税が発生しやすいのは、不動産賃貸業(住宅家賃=非課税売上が多い)、病院・診療所(社会保険診療=非課税売上が多い)、金融業(利子=非課税売上が多い)など、非課税売上の割合が高い業種です。こうした業種では毎期発生するため、処理方法を正しく理解しておくことが不可欠です。
消費税の仕入税額控除のしくみ全体については「消費税のしくみと基本|課税・非課税・免税の違いから申告まで完全ガイド」で解説しています。
📐 課税売上割合の計算式
課税売上割合 = 課税売上高(税抜)÷ 総売上高(税抜)
控除対象外消費税額等の処理方法は、「資産に係るもの」と「経費に係るもの」で大きく異なります。以下の判定フローで処理方法を確認してください。
| 判定ステップ | 条件 | 処理方法 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 取得価額に算入する方法を選択? | → Yes:取得価額に含めて減価償却(任意選択可) |
| STEP 2 | 課税売上割合80%以上? | → Yes:当期損金算入(損金経理要件あり) |
| STEP 3 | 棚卸資産に係るもの? | → Yes:当期損金算入(損金経理要件あり) |
| STEP 4 | 1資産あたり20万円未満? | → Yes:当期損金算入(損金経理要件あり) |
| STEP 5 | 上記いずれにも該当しない | → 繰延消費税額等として資産計上し、60ヶ月で償却 |
| 区分 | 処理方法 |
|---|---|
| 交際費以外の経費 | 全額をその事業年度の損金に算入(租税公課や雑損失で処理) |
| 交際費に係るもの | 交際費の額に加算して、交際費の損金不算入額を計算 |
参考: 国税庁「No.6921 控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」
⚠️ 注意
交際費に係る控除対象外消費税は、単純に「租税公課」で損金算入してはいけません。法人税法上の交際費の額に加算して、別表15で損金不算入額の計算を行う必要があります。この処理を忘れると、税務調査で指摘を受けて追加の法人税が発生するリスクがあります。
判定フローのSTEP 5に該当した場合、控除対象外消費税額等は「繰延消費税額等」として資産に計上し、60ヶ月(5年)で均等に償却します。取得事業年度は半年分しか償却できないため、最低6期間で償却が完了します。
📐 繰延消費税額等の償却算式
各期の損金算入限度額 = 繰延消費税額等 ÷ 60 × その事業年度の月数
※取得事業年度は上記の 1/2 が限度額
※損金経理が要件(法人税法施行令第139条の4)
📐 シミュレーション前提条件
| 期 | 50万円の場合 | 100万円の場合 | 300万円の場合 |
|---|---|---|---|
| 1期目(取得年度) | 50,000円 | 100,000円 | 300,000円 |
| 2期目 | 100,000円 | 200,000円 | 600,000円 |
| 3期目 | 100,000円 | 200,000円 | 600,000円 |
| 4期目 | 100,000円 | 200,000円 | 600,000円 |
| 5期目 | 100,000円 | 200,000円 | 600,000円 |
| 6期目(最終) | 50,000円 | 100,000円 | 300,000円 |
| 合計 | 500,000円 | 1,000,000円 | 3,000,000円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
💡 実務のポイント
繰延消費税額等を資産計上した後にその資産を売却・除却しても、繰延消費税額等の残額を一括で損金算入することはできません。引き続き60ヶ月の均等償却を続ける必要があります(法人税基本通達11-5-8)。通常の固定資産の除却損とは扱いが異なるため、実務で混同しないよう注意してください。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 決算整理(資産計上) | 繰延消費税額等 1,000,000 | 仮払消費税 1,000,000 |
| 決算整理(1期目償却) | 租税公課 100,000 | 繰延消費税額等 100,000 |
| 翌期以降(2〜5期目) | 租税公課 200,000 | 繰延消費税額等 200,000 |
控除対象外消費税の処理で最もミスが多いのが、交際費に係る部分の取扱いです。交際費に係る控除対象外消費税額等は、交際費の額に加算して損金不算入額の計算を行う必要があります(措法61の4)。
📐 シミュレーション前提条件
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 交際費の仮払消費税 | 700,000円 |
| 控除対象消費税(700,000 × 60%) | 420,000円 |
| 控除対象外消費税(700,000 − 420,000) | 280,000円 |
| 法人税上の交際費の額(7,000,000 + 280,000) | 7,280,000円 |
| 定額控除限度額 | 8,000,000円 |
| 損金不算入額 | 0円(限度額以内) |
この例では限度額以内に収まりましたが、交際費の支出額が多い企業では、控除対象外消費税の加算によって800万円を超え、損金不算入額が発生するケースがあります。
参考: 国税庁「No.6917 交際費等の損金不算入額を算出する場合における消費税等の取扱い」
📊 公認会計士の視点
法人税申告書では、交際費に係る控除対象外消費税は別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」の「支出交際費等の額」に加算して記載します。別表16(10)の繰延消費税額等とは別の論点ですので、両方の別表を確認してください。決算実務でよくある誤りは、別表16(10)のみ作成して別表15への加算を忘れるケースです。
AYUSAWA PARTNERS
控除対象外消費税の処理でお悩みなら鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する控除対象外消費税額等の処理は、経理方式によって大きく異なります。
| 項目 | 税抜経理方式 | 税込経理方式 |
|---|---|---|
| 控除対象外消費税の発生 | 発生する | 発生しない |
| 控除できない消費税の扱い | 仮払消費税のうち控除不能分を別途処理 | もともと取得価額・経費に含まれている |
| 繰延消費税の処理 | 必要な場合あり | 不要 |
| 別表16(10)の提出 | 繰延消費税がある場合は必要 | 不要 |
税込経理方式を採用している場合は、控除できない消費税が資産の取得価額や経費に含まれた状態で処理されるため、繰延消費税額等の別途処理は不要です。ただし、交際費に係る部分については、税込経理方式でも税抜金額に対応する控除対象外消費税を認識して、別表15に加算する必要がある点は変わりません。税込経理と税抜経理の違いについては「税込経理と税抜経理の違い|選択基準・仕訳例・法人税への影響」で詳しく解説しています。
インボイス制度の導入後、免税事業者等(適格請求書発行事業者でない事業者)からの課税仕入れには経過措置が設けられています。令和8年度税制改正大綱により、この経過措置のスケジュールが当初予定から大幅に変更されました。インボイス制度の概要については「インボイス制度の概要と対応方法|完全ガイド」をご覧ください。
📢 令和8年度税制改正大綱による変更
当初予定の「R8.10から一律50%」から、控除割合の引き下げペースが緩和され、段階が2段階から4段階に増加しました。最終的な経過措置の終了時期も2年延長されています。
| 期間 | 控除割合 | 控除対象外割合 | 備考 |
|---|---|---|---|
| R5.10.1〜R8.9.30 | 80% | 20% | 当初予定どおり |
| R8.10.1〜R10.9.30 | 70% | 30% | 当初50%→70%に緩和(改正) |
| R10.10.1〜R12.9.30 | 50% | 50% | 新設の段階(改正) |
| R12.10.1〜R13.9.30 | 30% | 70% | 新設の段階(改正) |
| R13.10.1〜 | 0% | 100% | 経過措置終了(当初R11.10→2年延長) |
免税事業者から税込110万円(税抜100万円、消費税10万円)の課税仕入れを行った場合、控除対象外消費税がどう変化するかを見てみましょう。
| 期間 | 控除できる額 | 控除対象外額 |
|---|---|---|
| 〜R8.9(80%控除) | 80,000円 | 20,000円 |
| R8.10〜R10.9(70%控除) | 70,000円 | 30,000円 |
| R10.10〜R12.9(50%控除) | 50,000円 | 50,000円 |
| R12.10〜R13.9(30%控除) | 30,000円 | 70,000円 |
| R13.10〜(経過措置終了) | 0円 | 100,000円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
インボイスの経過措置による控除対象外消費税について、重要な経理上の注意点があります。
⚠️ 注意:免税事業者からの仕入れの経理処理
消費税経理通達14の2により、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る控除対象外消費税は、通常の「控除対象外消費税額等」としてではなく、対価の額に含めて処理することとされています。つまり、免税事業者からの仕入れで控除できない消費税分は、仕入高や固定資産の取得価額に上乗せして経理します。繰延消費税額等としての資産計上は、あくまで課税売上割合が95%未満であることにより発生する控除対象外消費税(本来の制度上のもの)が対象です。
また、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの経過措置対象の課税仕入れの合計額が年間1億円(現行10億円から引き下げ)を超える場合、超えた分は経過措置の適用を受けられなくなります。
消費税の課税標準(消費税が課される金額の基礎)には、酒税、たばこ税、揮発油税などの「個別消費税」が含まれます。これは控除対象外消費税とは直接の関連はありませんが、消費税の経理処理を行う際に混同しやすいポイントです。
| 税金の種類 | 消費税の課税標準に含まれるか | 理由 |
|---|---|---|
| 酒税 | 含まれる | 商品の対価の一部として価格に組み込まれている |
| たばこ税 | 含まれる | 同上 |
| 揮発油税・地方揮発油税 | 含まれる | 同上 |
| 石油石炭税 | 含まれる | 同上 |
| 軽油引取税 | 含まれない | 消費者に別途請求する特別徴収方式のため |
| 入湯税・ゴルフ場利用税 | 含まれない | 利用者に別途請求する特別徴収方式のため |
たとえば、酒税が含まれた税抜1,000円のビールを仕入れた場合、酒税部分も含めた1,000円が仕入税額控除の対象になる課税標準です。酒税を分離して控除対象外として処理する必要はありません。一方、軽油引取税のように利用者に別途請求される税金は、消費税の課税標準に含まれないため、請求書や帳簿での区分経理が必要です。
💡 実務のポイント
運送業や建設業で軽油を大量に使用する場合、軽油引取税を課税標準に含めてしまうと消費税の過大計上になります。軽油の請求書では「軽油引取税○○円」が区分表示されているケースが多いので、仕訳時に「不課税仕入」として処理してください。この処理を怠ると、結果的に控除対象外消費税が過大に計算される原因にもなります。
繰延消費税額等がある場合は、法人税の確定申告書に「別表16(10)資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入に関する明細書」を添付する必要があります。
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 当期の課税売上割合 | 消費税申告書から転記 |
| 資産に係る控除対象外消費税額等の合計 | 税抜経理で控除できなかった仮払消費税のうち資産に係る分 |
| 20万円未満のものの合計額 | 当期損金算入する金額 |
| 棚卸資産に係るものの合計額 | 当期損金算入する金額 |
| 当期の繰延消費税額等 | 資産計上する金額 |
| 当期損金算入額 | 60ヶ月償却で計算した金額 |
| 翌期への繰越額 | 期首残高 + 当期発生額 − 当期損金算入額 |
年間100社以上の決算を担当してきた経験上、別表16(10)の作成でよくある誤りは、課税売上割合が80%以上の年度に繰延消費税額等の新規発生を計上してしまうケースです。80%以上の年度は全額当期損金算入できるため、繰延消費税の資産計上は不要です。
個人事業主の場合も、控除対象外消費税額等の処理の基本的な考え方は法人と同じです。ただし、いくつか異なる点があります。
| 項目 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 経費に係る控除対象外消費税 | 損金経理で損金算入 | 全額を必要経費に算入 |
| 繰延消費税の償却(取得年度) | 60ヶ月按分の1/2が限度 | 同じ計算方法 |
| 繰延消費税の償却(翌年以降) | 損金経理要件あり | 事業を行っていた期間の月数で計算。必要経費に算入 |
| 交際費の扱い | 定額控除限度額800万円あり | 全額必要経費に算入可能(損金不算入制度なし) |
個人事業主の場合、法人のような交際費の損金不算入制度がないため、交際費に係る控除対象外消費税を別途交際費に加算する処理は不要です。全額を必要経費に算入できます。簡易課税を選択している場合は「簡易課税制度のしくみ|みなし仕入率・届出・選択の判断基準」も参考にしてください。
📋 この記事のポイント
控除対象外消費税の処理は、消費税と法人税の両方にまたがる複合的な論点です。特にインボイス制度の経過措置が段階的に縮小されるに伴い、免税事業者との取引が多い企業ほど影響が大きくなります。処理方法に迷ったら、ぜひ税理士にご相談ください。
AYUSAWA PARTNERS
控除対象外消費税の処理のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する