開業届の出し方|提出期限・書き方・廃業届・納税地異動届を税理士が完全解説

開業届の出し方|提出期限・書き方・廃業届・納税地異動届を税理士が完全解説
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の個人事業主開業・法人設立を支援。
📋 税理士監修 🚀 個人事業主開業 📝 届出7点セット

「個人事業主として開業したい」「開業届の書き方が分からない」「廃業届はいつ出す?」とお悩みの方に向けて、開業届の提出期限・3つの納税地選択・同時提出すべき7つの届出書・廃業時の手続き5点セット・納税地異動届まで完全ガイドします。

🏆 結論:開業届は事業開始から1ヶ月以内・青色申告承認も同時提出

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、個人事業主として事業を開始した場合に税務署へ提出する書類です。提出期限は事業開始日から1ヶ月以内で、原則として納税地を所轄する税務署に提出します。納税地は「住所地・居所地・事業所等」の3つから選択でき、それぞれメリットがあります。開業届だけでなく、青色申告承認申請書・青色専従者給与届出書・源泉所得税納期特例届出書等の7つの届出を同時提出することで、税務上の優遇を最大化できます。廃業時は廃業届・青色取りやめ届・事業廃止届・予定納税減額申請・適格請求書登録取消申請の5点セットを漏れなく提出します。引越し等で住所が変わった場合の「納税地異動届出書」は、原則として現在の納税地を所轄する税務署に提出します。

開業届とは|正式名称と提出義務

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」(国税庁様式)です。所得税法第229条により、新たに事業所得・不動産所得・山林所得を得る事業を開始した個人は、事業開始から1ヶ月以内に税務署への届出義務があります。

創業準備中の方の開業支援を担当した経験では、開業届の提出を後回しにして、結果として青色申告の承認申請期限(2ヶ月以内)を逃してしまい、その年は白色申告で65万円控除が使えず、約13万円(節税効果)を逃してしまったケースがあります。開業時の届出は、提出のタイミングが税負担に直結する重要な手続きです。

開業届の提出義務と罰則

事項 内容
提出義務所得税法第229条により事業所得・不動産所得・山林所得を得る者は提出義務あり
提出期限事業開始日から1ヶ月以内
未提出の罰則罰則規定なし(ただし青色申告承認等の他特典が受けられない)
手数料無料

開業届を提出するメリット

罰則がないとはいえ、開業届を提出することで多くの税務的メリットが受けられます。主なメリットを整理します。

7つの開業届提出メリット

メリット 内容
①青色申告の選択可能最大65万円特別控除・赤字3年繰越
②屋号付き銀行口座開設事業用と個人用の口座を分離
③屋号での電子契約・取引freee・マネーフォワード契約・契約書での屋号使用
④小規模企業共済への加入退職金代わりの積立・全額所得控除
⑤社会的信用の向上取引先・顧客への信頼性アピール
⑥補助金・助成金の申請可能事業者対象の補助金の応募資格
⑦事業の経費計上が明確化事業と個人の経費の区分が明確に

納税地の3つの選択肢

開業届における「納税地」は3つから選択できます。それぞれにメリット・デメリットがあり、自身の状況に合わせて選びます。

納税地の3パターン

納税地 該当例 特徴
①住所地自宅で事業を行う・住所地と事業所所在地が同じ最も一般的・原則
②居所地住所地が国外・国内に居所がある海外居住者向け
③事業所等自宅と別に店舗・オフィスを持つ住所地と事業所地が違う場合に選択可能

💡 納税地選択のコツ

事業所等を納税地に選ぶケース:
・店舗・事務所が遠方にあり、税務署とのやりとりを事業所近隣で行いたい
・取引先や顧客とのアクセス上、事業所所在地で税務処理を完結させたい

住所地が一般的:
多くの個人事業主は住所地を納税地に選びます。引越しした場合の住所変更手続きと税務署変更の両方を一度で済ませられる利点があります。

開業届の書き方

開業届の各項目の書き方を解説します。正確な記入で税務署との後の連絡を円滑にします。

基本情報の記入

項目 記入内容
提出先税務署納税地を所轄する税務署名(国税庁HPで検索)
提出日届出書を提出する日(郵送なら投函日)
納税地住所地・居所地・事業所等から選択+住所+電話番号
氏名・生年月日氏名・フリガナ・生年月日(西暦/和暦は統一)
マイナンバー12桁の個人番号(本人確認書類提示要)
職業具体的に(例:Webデザイナー・飲食店経営)
屋号任意。決まっていれば記入(後付け変更可)

届出の区分・所得の種類

  • 届出の区分:「開業」を○で囲む
  • 所得の種類:「事業所得」「不動産所得」「山林所得」から該当を選択
  • 開業・廃業等日:事業を開始した日(過去にさかのぼっての記入可)
  • 事業の概要:具体的に(例:「Webサイトのデザイン・制作」「カフェ経営」)
  • 給与等の支払の状況:従業員を雇う場合は人数と給与方法

同時提出すべき7つの届出書

開業届だけでなく、節税効果のある関連届出書を同時に提出することで、税務上の優遇を最大化できます。

7つの同時提出届出書

届出書 提出期限 メリット
①青色申告承認申請書開業から2ヶ月以内65万円控除・赤字3年繰越
②青色事業専従者給与に関する届出書開業から2ヶ月以内家族への給与を経費計上可能
③源泉所得税の納期特例届出書提出月の翌月から適用源泉所得税を半年まとめ納付
④給与支払事務所等の開設届出書給与支払事務所開設から1ヶ月以内従業員雇用時必須
⑤消費税課税事業者選択届出書課税期間開始日の前日まで設備投資多額・輸出主体時に還付選択
⑥適格請求書発行事業者の登録申請書適用したい課税期間の初日から15日前までインボイス制度対応
⑦個人事業税の事業開始等申告書都道府県により異なる(15日以内が一般的)個人事業税の納付義務発生時の届出

📢 青色申告承認申請は別期限

開業届の提出期限は「開業から1ヶ月以内」ですが、青色申告承認申請書は「開業から2ヶ月以内」と異なります。1月15日までに開業した場合の青色申告は当年3月15日が承認期限。同時に提出すれば期限管理が楽になります。

1ヶ月遅れただけで青色申告ができない!例:3月1日開業→5月1日が青色申告承認期限。5月2日に提出すると、当年は白色申告で65万円控除なし→約13万円の損失。

提出方法と必要書類

開業届の提出は3つの方法から選べます。それぞれに特徴があります。

3つの提出方法

提出方法 特徴 推奨される人
e-Tax(電子)24時間提出可能・マイナンバーカード必要日中時間が取れない・効率重視
税務署窓口対面で確認可能・控えを即時受領初めての提出で不安な人
郵送控え返送用封筒+切手必要遠方の税務署管轄・時間ない人

必要書類

  • 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書):2枚(提出用+控え用)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード or 通知カード+運転免許証等)
  • マイナンバーカード or マイナンバー記載の住民票(マイナンバー番号確認用)
  • 返信用封筒+切手(郵送時のみ・控え返送用)
  • 関連届出書(青色申告承認申請等を同時提出する場合)

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廃業届の手続き

事業を廃止する場合は、廃業届を提出する必要があります。開業届と同じ用紙(個人事業の開業・廃業等届出書)で、「廃業」を選択します。

廃業時の手続き5点セット

届出書 提出期限 対象者
①個人事業の廃業届廃業日から1ヶ月以内全員
②青色申告の取りやめ届出書取りやめる年の翌年3月15日青色申告者
③事業廃止届出書(消費税)速やかに消費税課税事業者
④予定納税額減額申請書7月15日 or 11月15日予定納税義務者
⑤適格請求書発行事業者の登録取消届出書速やかにインボイス登録事業者

廃業後の確定申告

廃業届を提出しても、その年の1月1日から廃業日までの所得については、翌年3月15日までに確定申告が必要です。廃業届=確定申告不要ではありません。

⚠️ 廃業届の提出忘れに注意

廃業届を出さないと税務署は事業継続中と判断し、確定申告書が来ます。提出しないと無申告加算税が発生する可能性も。事業を辞めたら必ず1ヶ月以内に廃業届を提出してください。

「事業はやめたけど確定申告がやってない」ケースで税務署から連絡が来るのは1〜2年後が多く、その時には延滞税・加算税が膨らんでいることがあります。

納税地異動届出書

個人事業主が引越し等で納税地が変わる場合、「個人事業者の納税地異動届出書」を提出します。原則として変更前の納税地を所轄する税務署に提出します。

納税地異動届出書を提出するケース

  • 引越しで住所地(納税地)が変わった
  • 事業所等を納税地としていたが、所在地を変更した
  • 住所地から事業所等に納税地を変更したい
  • 事業所等から住所地に納税地を変更したい

納税地異動届の提出手順

手続き 内容
提出書類個人事業者の納税地異動届出書
提出先変更前の納税地を所轄する税務署
提出期限遅滞なく(明確な期限なし)
記載事項氏名・マイナンバー・新旧の納税地・異動年月日・異動理由

よくある質問

開業届を提出しないと違法ですか?
所得税法第229条で提出義務はありますが、未提出に対する明確な罰則はありません。ただし、青色申告承認や青色専従者給与等の税務メリットが受けられないこと、屋号付き銀行口座が開設できないこと、各種補助金の申請ができないなどの実質的なデメリットがあります。確定申告は提出しなくても可能ですが、開業届は税務上のメリットを得るために提出することを推奨します。
副業の開業届はどうすればいい?
副業でも、事業として継続性があり「事業所得」として申告する場合は開業届を提出します。一方、単発の「雑所得」として申告する場合は不要です。判断は①継続性、②独立性、③営利性、④反復性などから総合的に決まります。副業所得が20万円超で確定申告が必要な場合、事業所得として青色申告(65万円控除)を選択するメリットが大きいです。会社員でも副業で開業届を出すことは可能です。
開業届は事業開始から1ヶ月過ぎても提出できる?
提出は可能です。期限後でも受理されます。ただし、青色申告承認申請書の期限(開業から2ヶ月以内)を逃すと、その年は青色申告できなくなります。青色申告のメリットを受けたい場合は、開業届と一緒に2ヶ月以内に提出してください。1月15日以前に開業した場合の青色申告承認期限は3月15日です。
屋号は後から変更できますか?
変更可能です。屋号変更には特別な届出は不要で、確定申告時の屋号欄を新しい屋号で記載するだけで自動的に変更されます。ただし、銀行口座・契約書等の屋号は別途変更手続きが必要なため、頻繁な変更は避けた方が良いです。
e-Taxで開業届を出すにはマイナンバーカードが必要?
必要です。e-Tax(電子申請)では、マイナンバーカード+ICカードリーダーまたはマイナポータルアプリ(スマホ)が必要です。マイナンバーカードがない場合は、税務署窓口または郵送での提出となります。e-Taxなら24時間提出可能で、控えのデータも自動保存される利点があります。
夫の扶養に入ったまま個人事業主になれますか?
なれます。ただし、所得(売上−経費)が一定額を超えると扶養から外れます。所得税の配偶者控除は年収123万円(令和7年改正後)以下、配偶者特別控除は201万円以下が目安。健康保険の扶養は年収130万円基準。事業主の場合は経費控除後の所得で判定するため、売上が大きくても経費が多ければ扶養内で継続できる可能性があります。
廃業届の提出を忘れていた場合の対応は?
気づいた時点ですぐに提出してください。廃業届の提出期限は廃業から1ヶ月以内ですが、期限後でも受理されます。罰則は通常ありません。ただし、廃業届を出していない期間中も税務署からは事業継続中と認識されるため、未提出の確定申告がある場合は無申告加算税(税額の10%)が発生します。早めの対応が重要です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」
  • 提出期限は事業開始から1ヶ月以内・無料・罰則なし
  • 納税地は住所地・居所地・事業所等から選択(原則住所地)
  • 青色申告承認(2ヶ月以内)を必ず同時提出
  • 同時提出すべき7つの届出書で税務メリット最大化
  • e-Tax・税務署窓口・郵送の3方法から選択
  • 廃業時は5つの届出を漏れなく提出
  • 引越し時の納税地異動届出書も忘れずに

📝 次のアクション

  1. 事業開始日を確定して開業届を準備
  2. 納税地(住所地・事業所等)を決定
  3. 同時提出すべき7つの届出書をリストアップ
  4. 青色申告承認申請を期限内に提出
  5. e-Tax・窓口・郵送の中から自分に合った提出方法を選択

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