居住者の海外株式譲渡の課税|申告分離課税・外国税額控除・NISAの扱いを税理士が完全解説

居住者の海外株式譲渡の課税|申告分離課税・外国税額控除・NISAの扱いを税理士が完全解説
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の国際税務・海外投資の確定申告対応を支援。
📋 税理士監修 📈 米国株 🌏 国際税務

「米国株を売却したら日本でも課税?」「配当の二重課税はどう取り戻す?」「NISAで外国税額控除は使える?」とお悩みの居住者・海外投資家に向けて、譲渡益と配当の課税の違い・申告分離課税・外国税額控除・NISAの特殊性・特定口座運用まで完全ガイドします。

🏆 結論:海外株式譲渡は日本のみで課税・配当は外国税額控除で二重課税調整

日本の居住者が海外株式を譲渡(売却)した場合、原則として日本でのみ20.315%(所得税15.315%+住民税5%)で課税され、現地国では原則として非課税です(租税条約による)。一方、海外株式の配当は現地国で源泉徴収後、日本でも課税されるため二重課税が発生し、外国税額控除(所得税法第95条)で調整します。NISA口座での海外株式は、譲渡益・配当ともに日本では非課税ですが、本国(米国等)での源泉徴収10%は取り戻せず外国税額控除も適用不可です(二重課税ではないため)。譲渡所得の計算は申告分離課税(措法37の10)で、上場株式等と一般株式等で区分。譲渡損失の3年繰越控除(措法37の12の2)も活用可能。特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、配当の二重課税自動調整制度(2020年〜)で外国税額控除を自動適用可能。為替換算は売却TTB・取得TTSが原則。NISA口座は便利ですが、外国税額控除との関係でデメリットもあるため、商品選択は慎重に行う必要があります。

海外株式の課税の基本

居住者の海外株式投資の課税は、譲渡益と配当で取扱いが大きく異なります。両者を正確に理解することが、効率的な投資戦略の基礎となります。

年収2,000万円の個人投資家が米国株(Apple・Microsoft・Amazon等)を年間500万円分譲渡(売却益150万円)、配当年間30万円を受け取ったケースの確定申告サポート経験では、配当に米国源泉徴収10%(3万円)があり、外国税額控除の申告で1万8,000円程度の還付を実現。譲渡益は日本のみ20.315%で約30万円の納税で、二重課税は発生しませんでした。米国株を一定額以上保有している場合、確定申告の有無で年間数万円の差が出るため、適切な申告が重要です。

譲渡益と配当の課税の違い

項目 譲渡益(売却益) 配当
本国(米国等)の課税原則非課税(租税条約)源泉徴収あり(米10%・他国は条約による)
日本での課税20.315%(申告分離課税)20.315%(申告分離or総合課税)
二重課税の発生なしあり
外国税額控除不要(二重課税なし)必要(確定申告で適用)
損益通算同一口座内自動・他口座は確定申告申告分離課税で譲渡損と通算可

譲渡益の課税(日本のみで課税)

居住者が海外株式を売却した場合、原則として本国側では課税されず、日本のみで課税されます。これは多くの国との租税条約に基づくものです。

譲渡益の計算と税率

項目 内容
課税方式申告分離課税(他所得と分離)
税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
計算式譲渡所得=売却価額−(取得費+譲渡費用)
為替換算売却TTB・取得TTS・譲渡費用TTSが原則
長期/短期区分区分なし(税率一律)

💡 海外不動産との税率の違い

海外不動産売却は所有期間により長期(20.315%)・短期(39.63%)に区分されますが、株式譲渡所得は所有期間に関わらず一律20.315%です。1年未満で売却しても税率変動なし。これは海外株式も日本国内株式も同じです。

米国株売却の計算例

🧮 シミュレーション:米国Apple株売却

条件:
・取得:2022年、Apple株100株を$15,000(取得時TTS:130円)
・売却:2026年、Apple株100株を$25,000(売却時TTB:155円)
・売買手数料:$50+$50=$100(売却時)

円換算:
・売却価額:$25,000×155円=387.5万円
・取得費:$15,000×130円=195万円
・売却手数料:$100×155円=1.55万円

譲渡所得計算:
387.5万円−195万円−1.55万円=190.95万円

日本側税額(20.315%):
190.95万円×20.315%=約38.79万円

米国側では譲渡益への課税なし。日本のみで完結。

配当の課税(二重課税)

海外株式の配当は、現地国で源泉徴収された後、日本でも課税されるため二重課税が発生します。外国税額控除で調整します。

配当の課税の流れ

ステップ 課税
①現地国で源泉徴収米国10%・他国は租税条約による(英0%・独15%等)
②日本で源泉徴収現地源泉徴収後の金額×20.315%
③確定申告外国税額控除を申告して①の還付

米国株配当の計算例

🧮 シミュレーション:米国株配当の二重課税調整

条件:
・配当総額:$10,000(為替155円換算=155万円)
・米国源泉徴収10%:$1,000(=15.5万円)
・米国控除後の手取り:$9,000

日本での課税:
・配当所得:155万円(現地源泉徴収前の総額)
・日本側源泉徴収:9,000×155円×20.315%=28.34万円

外国税額控除:
・控除限度額=日本所得税×(国外所得/全所得)
・控除額(上限内なら)=15.5万円程度

確定申告で取り戻せる金額:約15.5万円

外国税額控除の計算

外国税額控除の控除限度額は厳格に計算されます。所得税の控除限度額と復興特別所得税の控除限度額が別枠で計算されます。

控除限度額の計算式

💡 控除限度額の2段階計算

所得税の控除限度額:
= その年分の所得税額 × (調整国外所得 / その年分の所得総額)

復興特別所得税の控除限度額:
= その年分の復興特別所得税額 × (調整国外所得 / その年分の所得総額)

住民税への移行:
所得税で控除しきれない分は住民税(都道府県民税12%・市町村民税18%)から控除可能

3年繰越:それでも控除しきれない場合は翌年以降3年間の繰越控除可能

NISA口座での海外株式の特殊性

NISA口座は譲渡益・配当ともに日本では非課税ですが、海外株式の場合は本国の源泉徴収を取り戻せない仕様となっています。

NISA口座での海外株式の取扱い

項目 NISA口座 特定口座/一般口座
譲渡益の日本での課税非課税20.315%
配当の日本での課税非課税20.315%
本国での配当源泉徴収あり(米国10%等)あり
外国税額控除不可(二重課税ではないため)適用可
譲渡損失の繰越不可3年繰越可

📢 NISAで米国株を保有する場合の隠れたコスト

米国株をNISA口座で保有すると、配当の米国源泉徴収10%は永久に取り戻せません。例:配当10万円→米国源泉徴収1万円→NISAでも還付なし。

一方、特定口座なら配当10万円→米国源泉徴収1万円→日本でも19,685円(20.315%×8万9,000円)→確定申告で1万円分還付→実質的に米国源泉徴収を取り戻せる。

配当目的の米国株投資なら、NISAより特定口座+外国税額控除の方が手取りが多くなるケースもあります。投資戦略に応じた口座選択が重要です。

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口座の種類と申告の関係

海外株式取引に使う口座(特定口座/一般口座/海外証券口座)により、確定申告の必要性と方法が異なります。

口座別の比較

口座 譲渡益の処理 配当二重課税調整
特定口座(源泉徴収あり)源泉徴収・申告不要自動調整制度あり(2020年〜)
特定口座(源泉徴収なし)年間取引報告書を基に申告確定申告で外国税額控除
一般口座自分で計算・申告確定申告で外国税額控除
海外証券口座(Interactive Brokers等)自分で計算・申告確定申告で外国税額控除

譲渡損失の3年繰越控除

海外株式の譲渡損失も、上場株式等の譲渡損失として3年繰越控除(措法37の12の2)を活用できます。

3年繰越控除の要件

要件 内容
対象上場株式等の譲渡損失(海外含む)
繰越期間譲渡損失が生じた翌年から3年間
通算先上場株式等の譲渡益+申告分離課税の配当
申告要件譲渡損失年と繰越年すべて確定申告必要

よくある質問

米国株を売却した場合、米国でも確定申告が必要ですか?
日本居住者なら米国での申告は原則不要です。日米租税条約により、米国非居住者(=日本居住者)の米国株譲渡益は米国で課税されません。証券会社経由の取引なら源泉徴収もなし。米国側の手続きは特に必要なく、日本で20.315%の申告分離課税のみで完結します。
特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告不要ですか?
譲渡益は確定申告不要ですが、配当の二重課税調整は確定申告で還付申請する方が有利な場合があります。2020年から特定口座での「配当の二重課税自動調整制度」が始まりましたが、これは主に投資信託向け。米国個別株は通常通り確定申告で外国税額控除を適用する必要があります。配当が多い投資家は確定申告した方が還付を受けられるケースが多いです。
NISAで米国株を持つメリット・デメリットは?
メリット:譲渡益が完全非課税(20.315%節税)。デメリット:配当の米国源泉徴収10%は永久に取り戻せず、外国税額控除も不可。

戦略の指針:成長株(配当少・売却益狙い)はNISAが圧倒的に有利。高配当株(配当狙い)は特定口座の方が外国税額控除を取れて有利な場合あり。投資目的に応じた口座選択が重要です。
複数の証券会社で海外株を取引している場合、損益通算は?
確定申告で損益通算できます。同一証券会社内なら特定口座で自動通算しますが、複数の証券会社にまたがる損益は確定申告で通算します。例:楽天証券で200万円の利益・SBI証券で100万円の損失→確定申告で通算して課税所得100万円。30万円の源泉徴収済み税の還付を受けられる場合もあります。
海外証券口座(Interactive Brokers等)を使う場合の注意点は?
日本の証券会社と違って税務情報の自動連携がないため、すべての取引を自分で記録・申告する必要があります。①取引履歴のダウンロードと為替換算、②売却損益の自己計算、③配当の源泉徴収額の集計、④確定申告書の作成。これらが煩雑なため、海外証券口座を使う場合は税理士サポートを推奨します。海外送金限度額・国外財産調書の提出義務(5,000万円超)にも注意。
国外財産調書の提出義務がある場合は?
12月31日時点で国外財産5,000万円超の居住者は、翌年6月30日までに「国外財産調書」を税務署に提出する必要があります(国外送金等調書法第5条)。海外株式・海外不動産・海外預金等の合計で判定。未提出または虚偽の場合、加算税の加重(過少申告加算税+5%等)のリスクがあります。海外資産が多い投資家は確認が必要です。
海外株式を相続・贈与で取得した場合の取得費は?
被相続人・贈与者の取得時の取得費を引き継ぎます(所法60)。新たに評価し直すのではなく、元の取得費でそのまま計算。例:父が1株$50で取得した米国株を相続→相続時の時価ではなく、父の取得時$50が取得費。為替換算も父の取得日のTTSが原則です。相続税の取得費加算特例(措法39)も併用可能で、相続発生から3年10ヶ月以内の譲渡なら有利になる場合があります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 居住者の海外株式譲渡益は日本のみで20.315%課税
  • 租税条約により本国(米国等)では譲渡益非課税
  • 配当は二重課税(本国源泉徴収+日本20.315%)
  • 配当の二重課税は外国税額控除で調整
  • 所有期間に関わらず一律20.315%(長期/短期区分なし)
  • NISA口座は譲渡益・配当ともに日本では非課税
  • NISAでは本国源泉徴収10%を取り戻せない(外税控除不可)
  • 配当目的なら特定口座+外国税額控除の方が有利な場合あり
  • 譲渡損失は3年繰越控除可能
  • 国外財産5,000万円超は国外財産調書提出義務

📝 次のアクション

  1. 使用口座(特定/一般/NISA/海外証券)を確認
  2. 年間取引報告書・特定口座年間取引報告書を取得
  3. 配当の現地源泉徴収額を集計
  4. 確定申告で外国税額控除を申告
  5. 国外財産5,000万円超なら国外財産調書を提出

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