【公認会計士×税理士が解説】融資審査で落ちる会社・通る会社の違い|格付けと財務指標ベスト5

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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融資審査で「落ちる会社」と「通る会社」の違い|格付け・スコアリングと金融機関が見る財務指標ベスト5
「融資の審査に落ちた理由がわからない」「通る会社と何が違うのか」という経営者に向けて、銀行の格付け・CRDスコアリングの仕組みと、審査で見られる財務指標の配点構造を解説します。この記事を読めば、自社の格付けを改善するための具体的なアクションがわかります。
🏆 結論:融資の可否は「決算書の数字」で8割決まる
銀行の融資審査は、決算書の数値で行う「定量評価」が約80%、経営者の資質や業界動向で行う「定性評価」が約20%の配分です。つまり、決算書の5大指標(自己資本比率・債務償還年数・経常利益率・借入金月商倍率・営業CF)を合格ラインに持っていくことが、融資審査を通す最も確実な方法です。「通る会社」と「落ちる会社」の最大の差は、決算書を「作りっぱなし」にしているか、「融資を意識して計画的に作っている」かの違いです。
銀行の格付け(信用格付け)の仕組み
銀行は融資先の企業を独自の評価システムで10〜12段階にランク分けしています。この「格付け」が、融資の可否・金利・融資限度額を決定する最大の要因です。
格付けの基準は、金融庁の「金融検査マニュアル」(2019年に公式廃止されたが、実務では引き続き参照されている)に基づく「債務者区分」が土台になっています。
| 格付け |
債務者区分 |
特徴 |
融資可否 |
金利目安 |
| 1〜3 | 正常先(上位) | 財務良好・安定黒字 | プロパー融資可 | 年1〜2% |
| 4〜6 | 正常先(下位) | 概ね良好だが一部課題あり | 保証付きで融資可 | 年2〜3% |
| 7〜9 | 要注意先 | 業績不振・赤字・延滞 | 条件付きで可能 | 年3〜5% |
| 10 | 要管理先 | 3ヶ月以上の延滞 | 原則不可 | — |
| 11〜12 | 破綻懸念先〜破綻先 | 実質債務超過・法的整理 | 不可 | — |
参考: 金融庁「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」
定量評価(80%)と定性評価(20%)の配点構造
格付けは「定量評価」と「定性評価」の合計点で決まります。定量評価が約80%を占めるため、決算書の数字が圧倒的に重要です。
| 評価区分 |
配点目安 |
評価項目 |
データソース |
| 定量評価(約80%) | 約25% | 安全性(自己資本比率・流動比率) | BS |
| 約25% | 返済能力(債務償還年数・借入金月商倍率) | BS+PL |
| 約20% | 収益性(経常利益率・売上高営業利益率) | PL |
| 約10% | 成長性(売上高増加率・経常利益増加率) | PL(前期比較) |
| 定性評価(約20%) | 約8% | 経営者の資質・後継者の有無 | 面談 |
| 約7% | 業界動向・市場の将来性 | 業界レポート |
| 約5% | 取引実績・預金残高・返済履歴 | 銀行内部データ |
💡 実務のポイント
定性評価は「経営者の人柄がいいから融資する」という意味ではありません。経営者が事業を数字で語れるか、業界の変化に対応する戦略があるか、後継者育成の計画があるかなど、「経営の持続可能性」を評価するものです。決算説明書を自ら作成して銀行に提出する経営者は、定性評価で加点される傾向があります。
CRDスコアリングの仕組み【信用保証協会の評価基準】
CRD(Credit Risk Database)とは、全国の信用保証協会と金融機関が共有する中小企業の信用リスク評価システムです。約300万社のデータを基に統計的に倒産確率を算出し、スコアリングを行います。
信用保証協会では、このCRDスコアに基づいて保証料率(年0.45〜1.90%の9区分)を決定しています。スコアが高い(倒産リスクが低い)企業ほど保証料が安くなります。
| CRD区分 |
保証料率 |
リスク水準 |
| 1(最優良) | 0.45% | 極めて低い |
| 2〜3 | 0.50〜0.70% | 低い |
| 4〜5 | 0.80〜1.00% | 標準 |
| 6〜7 | 1.15〜1.35% | やや高い |
| 8〜9(最高リスク) | 1.55〜1.90% | 高い |
参考: 一般社団法人CRD協会、中小企業庁「信用保証制度の概要」
信用保証協会の仕組みや保証料の詳細は「信用保証協会の仕組みと保証料の計算方法」で解説しています。
「落ちる会社」と「通る会社」の決算書比較【before/after】
同じ年商1億円の製造業でも、決算書の内容次第で格付けが大きく異なります。典型的な「落ちる会社」と「通る会社」の違いを比較します。
| チェック項目 |
❌ 落ちる会社 |
✅ 通る会社 |
| 自己資本比率 | 8%(債務超過ギリギリ) | 25%(安全圏) |
| 債務償還年数 | 15年(返済困難) | 6年(合格ライン内) |
| 経常利益率 | 0.5%(ギリギリ黒字) | 4%(安定黒字) |
| 役員貸付金 | 1,500万円あり | ゼロ |
| 利益のトレンド | 3期連続減収減益 | 3期連続増収増益 |
| 月次試算表の提出 | していない | 毎月提出 |
| 決算説明書 | 添付なし | 毎期添付 |
| 銀行からの格付け | 要注意先(格付け8) | 正常先上位(格付け3) |
📊 公認会計士の視点
「落ちる会社」に共通する最大の特徴は「役員貸付金の存在」です。銀行は役員貸付金を見た瞬間に「経営者が会社のお金を私的に流用している」と判断します。金額の大小に関わらず、役員貸付金はゼロにすべきです。すぐに返済できない場合は、役員報酬との相殺で段階的に減らす計画を銀行に示してください。
デットファイナンスとエクイティファイナンスの使い分け
資金調達は「デットファイナンス(借入)」と「エクイティファイナンス(出資)」の2つに大別されます。中小企業の経営者はデット(銀行融資)に偏りがちですが、成長フェーズによってはエクイティの検討も必要です。
| 比較項目 |
デットファイナンス(借入) |
エクイティファイナンス(出資) |
| 返済義務 | あり(元本+利息) | なし(配当の期待はある) |
| 経営権 | 影響なし | 持分に応じて経営介入リスク |
| BSへの影響 | 負債増加→自己資本比率低下 | 純資産増加→自己資本比率向上 |
| コスト | 金利(年1〜5%)は税務上損金 | 配当(利益から支払い)は損金不算入 |
| 向いているケース | 安定収益があり、返済計画が立てられる | 成長投資が先行し、当面赤字が続く |
資金調達の全体像は「中小企業の資金調達方法完全ガイド」を、個人事業主向けの融資は「個人事業主のための資金調達ガイド」をご覧ください。
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金利上昇局面での借入戦略【固定金利vs変動金利】
日銀の金融政策の転換により、金利上昇局面での借入戦略が経営の重要課題になっています。固定金利と変動金利の選択は、返済総額に大きな差を生みます。
| 比較項目 |
固定金利 |
変動金利 |
| 金利水準(初期) | やや高い | やや低い |
| 金利変動リスク | なし(返済額が確定) | あり(金利上昇で返済額増加) |
| 金利低下時 | 不利(高い金利で固定される) | 有利(返済額が減少) |
| 向いているケース | 金利上昇が予測される局面・長期借入 | 金利横ばい〜低下局面・短期借入 |
実務では「固定と変動を組み合わせる」ことでリスクを分散するのが王道です。例えば、設備資金(長期)は固定金利で返済額を確定し、運転資金(短期)は変動金利でコストを抑えるという使い分けが有効です。
元金均等返済と元利均等返済の違い【シミュレーション比較】
返済方法の選択も融資コストに大きく影響します。
📐 シミュレーション前提条件
- 借入額:3,000万円
- 金利:年2.5%(固定)
- 返済期間:7年(84ヶ月)
| 比較項目 |
元金均等返済 |
元利均等返済 |
| 月々の返済額(初回) | 約41.9万円 | 約39.1万円 |
| 月々の返済額(最終回) | 約35.8万円 | 約39.1万円 |
| 支払利息合計 | 約266万円 | 約284万円 |
| 利息差額 | 元金均等のほうが約18万円お得 |
| 特徴 | 初期の返済額が大きい→徐々に減少 | 毎月の返済額が一定→資金計画が立てやすい |
※概算値です。実際の金額は金利・端数処理により異なります。
💡 実務のポイント
総支払額を抑えたいなら「元金均等返済」が有利ですが、創業期やCFが不安定な時期は「元利均等返済」で月々の負担を一定にするほうが安全です。銀行側も元利均等を標準提案するケースが多いので、元金均等を希望する場合は自ら申し出る必要があります。決算書への影響としては、元金均等のほうが元本の減りが早いため、翌期以降の債務償還年数が改善しやすいメリットがあります。
融資審査に通るための実践チェックリスト
| # |
チェック項目 |
合格基準 |
| 1 | 自己資本比率 | 20%以上(マイナスは論外) |
| 2 | 債務償還年数 | 10年以内(5年以内で優良) |
| 3 | 経常利益 | 黒字(3期連続が理想) |
| 4 | 役員貸付金 | ゼロ |
| 5 | 税金の完納 | 未納・延滞なし |
| 6 | 延滞履歴 | 返済延滞なし(過去2年以内) |
| 7 | 資金使途の明確さ | 見積書・契約書で裏付け |
| 8 | 事業計画書の提出 | 売上根拠が数値で示されている |
決算書の具体的な改善方法は「銀行融資に強い決算書の作り方」で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
自社の格付けを銀行に聞くことはできますか?
銀行は格付けを原則開示しません。ただし、担当者に「うちの財務状況はどう評価されていますか?」と聞けば、具体的な格付け番号は教えてもらえなくても、「正常先の範囲内です」「やや課題があります」程度のフィードバックは得られることがあります。また、保証料率の通知を見れば間接的にCRDスコアの水準がわかります(保証料率が低いほど高評価)。
創業間もない企業はどう評価されますか?
決算実績がない創業企業は、定量評価(決算書)ができないため、事業計画書と経営者の経歴・自己資金で判断されます。日本政策金融公庫は創業企業への融資を主要ミッションとしているため、民間銀行より審査が通りやすいです。創業2期目以降は1期分の決算書が使えるようになるため、初年度の決算を黒字にすることが2期目以降の融資を左右します。
固定金利と変動金利はどちらを選ぶべきですか?
金利上昇が予測される局面では固定金利が安全です。特に設備資金など返済期間が5年以上の長期借入は固定金利をおすすめします。短期の運転資金(1〜2年)は変動金利でも金利変動の影響が限定的なので許容範囲です。理想は固定と変動を組み合わせてリスク分散すること。現場では「設備資金=固定、運転資金=変動」の使い分けを推奨しています。
2期連続赤字でも融資は受けられますか?
非常に困難ですが、絶対に不可能ではありません。条件は、①赤字の原因が一時的であることを説明できる、②3期目で黒字転換する具体的な経営改善計画がある、③代表者の個人資産で実質的に債務超過でない、の3つを満たすことです。信用保証協会付きの制度融資であれば、民間銀行のプロパーより通りやすい傾向があります。
融資を断られた後、同じ銀行に再申請できますか?
可能ですが、最低6ヶ月は空けるのが通例です。断られた理由(決算書の数値・事業計画の不備など)を改善してから再申請しましょう。同じ銀行に固執するよりも、別の銀行や日本政策金融公庫に申し込むほうが効率的な場合もあります。融資を断られた理由は銀行の担当者に聞けば教えてくれることが多いので、必ず確認してください。
元金均等返済と元利均等返済のどちらが銀行評価に有利ですか?
元金均等返済のほうが元本の減りが早いため、翌期以降の決算書における有利子負債が少なくなり、債務償還年数・借入金月商倍率の改善効果が大きくなります。ただし、初期の返済負担が大きいため、営業CFに余裕がない場合は元利均等を選ぶのが安全です。
保証料率を下げる方法はありますか?
保証料率はCRDスコアで機械的に決まるため、直接的な交渉は難しいです。ただし、決算書の5大指標を改善してCRDスコアを上げることで、次回の保証付き融資から保証料率が下がります。また、自治体の制度融資を利用すれば保証料の一部を補助してもらえるケースがあります。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 融資の可否は「決算書の数字(定量評価)」が80%を決める
- 銀行の格付けは10〜12段階。正常先上位(格付け1〜3)ならプロパー融資の可能性あり
- CRDスコアリングが信用保証協会の保証料率(9区分)を決定する
- 「落ちる会社」の共通点:自己資本比率低い・役員貸付金あり・3期連続減益・試算表未提出
- 金利上昇局面では設備資金=固定金利、運転資金=変動金利の組み合わせが王道
- 元金均等返済のほうが総支払額が少なく、翌期の債務償還年数も改善しやすい
- 格付け改善の最短ルートは「5大指標の合格ライン達成+決算説明書の提出」
融資審査は「落ちてから対策する」のでは遅すぎます。「通る会社」は、融資を受ける予定がなくても常に決算書の数字を意識し、格付けが上がる方向に経営しています。まずは自社の5大指標を計算して、合格ラインとの差を把握することから始めてください。
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