【税理士のダブル監修】新設法人の消費税|資本金1,000万円基準・特定新規設立法人の特例

【税理士のダブル監修】新設法人の消費税|資本金1,000万円基準・特定新規設立法人の特例
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

新設法人の消費税|資本金1,000万円基準・特定新規設立法人の特例を完全解説

「会社を設立したら消費税はいつから払うの?」と疑問をお持ちの方に向けて、新設法人の消費税の判定ルールを完全ガイドします。資本金1,000万円基準、特定新規設立法人の要件、令和6年改正の影響、免税期間を最大化する方法まで、この記事を読めば設立時の消費税判断を正しく行えるようになります。

🏆 結論:資本金1,000万円未満なら原則2期まで免税

新たに設立された法人は、設立1期目・2期目は基準期間がないため、原則として消費税の納税義務が免除されます。ただし、①資本金1,000万円以上の「新設法人」、②50%超を出資する者の課税売上高が5億円超(または全世界収入50億円超)の「特定新規設立法人」、③インボイス登録をした法人は、設立初年度から課税事業者になります。

新設法人の消費税の基本ルール

なぜ設立1期目・2期目は免税になるのか

消費税の納税義務は、原則として「基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円超かどうか」で判定されます。新たに設立された法人には前々事業年度が存在しないため、基準期間の課税売上高はゼロとなり、原則として免税事業者になります。

この免税措置は、設立間もない企業の事務負担に配慮した制度です。ただし、一定の規模以上の法人が免税措置を利用して租税を回避することを防ぐため、いくつかの例外規定が設けられています。

「新設法人」と「新規設立法人」の違い

消費税法では「新設法人」と「新規設立法人」という似た名称の概念がありますが、意味が異なります。混同しやすいため、以下の表で整理します。

用語 定義 消費税の免税
新設法人(消費税法上)基準期間がなく、事業年度開始日の資本金が1,000万円以上の法人免税なし
新規設立法人基準期間がなく、事業年度開始日の資本金が1,000万円未満の法人原則免税
特定新規設立法人新規設立法人のうち、50%超出資者の課税売上高5億円超等の要件を満たす法人免税なし

新設法人の消費税判定フローチャート【4ステップ】

設立した法人が消費税の課税事業者になるかどうかは、以下の4ステップで判定できます。

STEP 判定項目 はい いいえ
1事業年度開始日の資本金が1,000万円以上か?→ 課税事業者→ STEP2へ
2特定新規設立法人に該当するか?
(50%超出資者の課税売上高5億円超 or 全世界収入50億円超)
→ 課税事業者→ STEP3へ
3インボイス登録をしている(する予定)か?→ 課税事業者→ STEP4へ
4課税事業者選択届出書を提出しているか?→ 課税事業者→ 免税事業者

課税事業者・免税事業者の判定の全体像については「消費税の課税事業者・免税事業者の判定」で詳しく解説しています。

STEP1:資本金1,000万円基準の判定

判定の基準日は「事業年度開始の日」

資本金1,000万円の判定は、各事業年度の「開始の日」時点で行います。設立時に登記した資本金の額が基準です。

ケース 1期目 2期目
設立時資本金500万円、変動なし免税免税
設立時資本金1,500万円課税課税
設立時資本金500万円 → 1期目途中に1,200万円に増資免税課税
設立時資本金500万円 → 2期目開始後に1,200万円に増資免税免税

💡 実務のポイント

増資のタイミングで消費税の取扱いが変わるケースは、会社設立の相談で最も多い質問のひとつです。1期目の途中で増資して資本金が1,000万円以上になっても、1期目は免税のままですが、2期目開始日の時点で1,000万円以上であれば2期目から課税事業者になります。増資を検討する場合は、2期目開始後に行えば2期目も免税を維持できます。

資本準備金は含まれない

1,000万円の判定対象は「資本金の額または出資の金額」であり、資本準備金は含まれません。たとえば、資本金300万円+資本準備金700万円=合計1,000万円であっても、判定上の資本金は300万円なので免税事業者になります。

参考: 国税庁「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」

STEP2:特定新規設立法人の判定

特定新規設立法人とは

資本金1,000万円未満で設立した法人であっても、大規模な親会社やグループ企業が背後にある場合は、設立初年度から課税事業者となります。これが「特定新規設立法人」の制度です。2014年4月以降に設立された法人に適用されます。

2つの判定要件

要件 内容 具体例
特定要件:「他の者」が新規設立法人の株式等の50%超を直接・間接に保有親会社A社が子会社B社の株式を60%保有
課税売上高要件:他の者またはその特殊関係法人の基準期間相当期間の課税売上高が5億円超、または全世界収入50億円超A社の基準期間相当期間の課税売上高が8億円

上記の要件①②を両方満たす場合に、特定新規設立法人として課税事業者になります。

特定要件の判定パターン

パターン 出資構造 特定要件
直接保有A社(個人)→ 新法人に60%出資該当
間接保有A社 → B社(100%子会社) → 新法人に60%出資該当
個人と親族の合算代表者30%+配偶者25% → 合計55%該当
分散出資A社30%、B社20%(A・Bは無関係)→ いずれも50%以下非該当

⚠️ 注意

形式的に持株比率を分散させても、実質的に同一人物や同一グループが支配していると判断されれば特定要件に該当します。たとえば、社長個人が30%、社長の100%子会社が25%を出資している場合、間接保有を合算すると55%となり特定要件を満たします。

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令和6年改正:全世界収入50億円超の基準

令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、特定新規設立法人の判定基準が拡大されました。従来は「国内の課税売上高5億円超」のみが要件でしたが、改正後は「全世界の収入金額50億円超」も追加されています。

判定基準 対象 適用開始
国内の課税売上高 5億円超国内取引のみ従来から
全世界の収入金額 50億円超国内外の売上・収入すべて令和6年10月1日以後の課税期間

📢 令和6年度改正のポイント

「全世界の収入金額」とは、国内の課税売上高に限らず、国外での売上や資産の譲渡対価以外の収入も含む広い概念です。外資系企業の日本子会社設立や、グローバル展開している企業グループの新会社設立で影響が出る可能性があります。国内売上高が5億円以下でも、グループ全体の収入が50億円を超えていれば特定新規設立法人に該当します。

免税期間を最大化する設立時のポイント

資本金の設定

免税事業者のメリットを最大限に活かすには、設立時の資本金を1,000万円未満に設定します。ただし、資本金が少なすぎると取引先からの信用力や融資審査に影響する場合があるため、事業計画に合わせたバランスが重要です。

資本金の設定 消費税への影響 その他の影響
100万円〜300万円免税(最大2期)信用力がやや低い。融資時に追加資料を求められることも
500万円〜999万円免税(最大2期)許認可業種の最低資本金要件を満たしやすい
1,000万円以上1期目から課税事業者信用力が高い。住民税均等割の税額が上がる場合あり

決算期の設定と免税期間の長さ

設立1期目の事業年度の長さによって、免税期間の実質的な長さが変わります。

📐 シミュレーション前提条件

  • 資本金500万円(特定新規設立法人に非該当)
  • インボイス登録なし
  • 3期目に基準期間の課税売上高が1,000万円超で課税事業者になると仮定
設立日 決算月 1期目の長さ 免税期間の合計
4月1日3月12か月最大24か月
4月1日9月6か月最大18か月
1月15日3月約2.5か月最大約14.5か月

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

💡 実務のポイント

免税期間を最大化するには、1期目の事業年度をできるだけ長くする(設立月と決算月が近い設定にしない)のが基本です。ただし、特定期間の判定も考慮すると、1期目を7か月以下にすることで2期目の特定期間による課税を回避できる場合もあります。設立前に税理士と相談して最適な決算月を決めることをおすすめします。

2期目の判定:特定期間に注意

2期目の消費税は、1期目の上半期(特定期間)の課税売上高と給与等支払額で追加判定されます。

1期目の長さ 特定期間の取扱い 2期目への影響
8か月以上1期目開始日〜6か月が特定期間課税売上高・給与等が両方1,000万円超なら課税
7か月以下特定期間なし特定期間による課税判定は不要

実務では、急成長する会社で1期目の売上が高い場合、特定期間の判定によって2期目から課税事業者になるケースがあります。1期目の事業年度を7か月以下に設定すれば特定期間が発生しないため、2期目も免税を維持しやすくなります。

個人事業の法人成りと消費税の関係

個人事業の課税売上高は法人に引き継がない

個人事業主が法人成り(法人化)した場合、個人事業主時代の課税売上高は新設法人には引き継がれません。個人事業主と法人は税務上は別の人格として扱われるためです。

つまり、個人事業主時代に課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者だった場合でも、法人成りすれば資本金1,000万円未満であれば原則として最大2期間は免税になります。

📝 行政書士の視点

法人成りの手続きでは、定款の作成・認証、法人設立登記、各種届出書の提出が必要です。消費税の免税メリットを活かすには、資本金の設定、決算月の選択、届出書の提出タイミングを総合的に検討する必要があります。行政書士は定款の作成・届出書類の作成を、税理士は消費税の最適化をそれぞれサポートできます。

法人成り時の注意点

項目 内容
個人の課税売上高は引き継がない法人は新たな人格のため、基準期間の売上はゼロからスタート
固定資産の譲渡に注意個人から法人へ固定資産を譲渡すると、個人側で消費税の課税取引になる場合がある
個人側の最終申告を忘れない個人事業を廃業する年の確定申告(消費税含む)が必要
インボイス登録の引継ぎ個人のインボイス番号は法人に引き継げない。法人で新たに登録が必要

新設法人のインボイス登録の判断

設立時からインボイスを発行したい場合

取引先がBtoB中心の場合、設立初年度からインボイス(適格請求書)を発行できることが求められるケースがあります。インボイス登録をすると、免税事業者であっても登録日から課税事業者になります。

法人の区分 インボイス登録の手続き
資本金1,000万円以上(すでに課税事業者)「適格請求書発行事業者の登録申請書」のみ提出
資本金1,000万円未満(免税事業者)「消費税課税事業者選択届出書」+「登録申請書」を提出

免税メリット vs インボイス発行のどちらを優先するか

免税事業者の消費税免除メリットとインボイス発行のどちらを優先すべきかは、取引先の構成によります。

取引先の構成 推奨される判断
BtoB中心(法人顧客がほとんど)インボイス登録を優先。取引先が仕入税額控除を求める
BtoC中心(一般消費者が顧客)免税メリットを活用。消費者にはインボイスは不要
設備投資が大きい課税事業者を選択して消費税の還付を受ける

インボイス制度の全体像は「インボイス制度の概要と対応方法」、簡易課税の選択は「簡易課税制度のしくみ」で詳しく解説しています。

新設法人が提出すべき届出書一覧

届出書 必要なケース 提出期限
消費税の新設法人に該当する旨の届出書資本金1,000万円以上速やかに(法人設立届出書で兼用可)
消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出書特定新規設立法人に該当速やかに
消費税課税事業者選択届出書免税だが自ら課税事業者を選択適用課税期間の初日の前日まで
適格請求書発行事業者の登録申請書インボイスを発行したい場合設立事業年度中(翌期に登録希望なら前期末まで)
消費税簡易課税制度選択届出書簡易課税を選択する場合適用課税期間の初日の前日まで

参考: 国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」

調整対象固定資産と3年縛りの注意点

新設法人や特定新規設立法人が、基準期間がない課税期間中に調整対象固定資産(税抜100万円以上の建物・設備等)を取得し、その課税期間を一般課税(本則課税)で申告した場合、取得した課税期間から3年間は免税事業者になることができず、簡易課税の選択もできません。

この「3年縛り」は、設備投資に伴う消費税の還付を受けた後に免税事業者に戻ることを防止するための規定です。大型の設備投資を予定している場合は、消費税の計画を慎重に立てる必要があります。

よくある質問(FAQ)

資本金を999万円にすれば消費税は免除されますか?
原則として免除されます。ただし、50%超の株式を保有する親会社等の課税売上高が5億円超(または全世界収入50億円超)の場合は、特定新規設立法人として課税事業者になります。また、インボイス登録をした場合も課税事業者です。
設立1期目の途中で増資して資本金が1,000万円を超えたらどうなりますか?
1期目は免税のままです。ただし、2期目の開始日時点で資本金が1,000万円以上であれば、2期目から課税事業者になります。増資を2期目開始後に行えば、2期目も免税を維持できる可能性があります。
個人事業で課税売上高が2,000万円ありましたが、法人成りすれば免税になりますか?
はい、個人事業と法人は税務上別の人格のため、個人事業の課税売上高は法人に引き継がれません。資本金1,000万円未満で設立し、特定新規設立法人に該当しなければ、原則として設立後最大2期間は免税事業者です。
特定新規設立法人に該当するかどうかはどうやって判断すればいいですか?
①設立法人の株式50%超を保有する「他の者」がいるか、②その「他の者」またはその者と特殊関係のある法人の基準期間相当期間における課税売上高が5億円超(または全世界収入50億円超)か、の2つを確認します。出資構造が複雑な場合は税理士への相談を強くおすすめします。
新設法人で消費税の還付を受けることはできますか?
課税事業者であれば可能です。資本金1,000万円以上の新設法人や、課税事業者選択届出書を提出した法人は、設備投資等で仕入税額が売上税額を上回れば消費税の還付を受けられます。ただし、一般課税で申告する必要があり、調整対象固定資産の取得がある場合は3年縛りに注意が必要です。
合同会社でも資本金1,000万円の基準は同じですか?
はい、合同会社でも株式会社でも判定基準は同じです。消費税法では「資本金の額または出資の金額」で判定するため、合同会社の場合は出資金の額で判定します。
資本準備金を含めて1,000万円以上になる場合はどうですか?
資本準備金は判定に含まれません。判定の対象は「資本金の額または出資の金額」に限られるため、資本金300万円+資本準備金700万円=合計1,000万円であっても、判定上は300万円(1,000万円未満)で免税事業者になれます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 新設法人は設立1期目・2期目は基準期間がなく、原則として免税事業者
  • 資本金1,000万円以上の法人は設立初年度から課税事業者(「新設法人」)
  • 資本金1,000万円未満でも、50%超出資者の課税売上高5億円超等なら課税(「特定新規設立法人」)
  • 令和6年改正で全世界収入50億円超の基準が追加された
  • 増資は2期目開始後に行えば2期目の免税を維持できる
  • 個人事業の法人成りでは個人時代の課税売上高は引き継がれない
  • インボイス登録をすると免税事業者でも課税事業者になる

会社設立時の消費税の判定は、資本金の設定・出資構造・インボイス登録の判断が複合的に絡み合います。特に特定新規設立法人の判定は出資関係が複雑になることがあるため、設立前の段階で税理士に相談してシミュレーションを行うことをおすすめします。

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