【税理士×行政書士が解説】事業承継に強い税理士・コンサルタントの選び方

【税理士×行政書士が解説】事業承継に強い税理士・コンサルタントの選び方
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

事業承継に強い税理士・コンサルタントの選び方|承継パターン別の判定マトリクスと費用相場

「そろそろ事業承継を考えたいが、顧問税理士に相談して大丈夫だろうか?」とお悩みの中小企業経営者に向けて、承継パターン別の税務難易度・自社株評価の判定フロー・事業承継税制の活用判断・費用相場と専門家の選び方を体系的にガイドします。この記事を読めば、自社に最適な承継方法と相談先がわかります。

🏆 結論:事業承継は「顧問税理士で十分」とは限らない

事業承継には自社株評価・事業承継税制・M&Aバリュエーション・登記届出・社保手続きなど多分野の知識が必要です。顧問税理士の専門が記帳・法人税中心の場合、事業承継を専門とする税理士やコンサルタントの起用が不可欠です。特に自社株評価額が5,000万円を超える場合や、事業承継税制の特例措置を検討している場合は、承継実績のある専門家に早期に相談すべきです。

事業承継で「専門家選び」が最重要な理由

顧問税理士と事業承継専門税理士の違い

事業承継は通常の法人税務とは全く異なるスキルセットが求められます。中小企業庁の調査によると、後継者が決定した企業の約7割が顧問の税理士・公認会計士に事業承継の相談をしていますが、実際に承継プランを実行段階まで設計できる税理士は限られています。

実務では、顧問税理士に事業承継の相談をしたところ「うちでは対応が難しい」と正直に言われるケースと、「任せてください」と言いつつ自社株評価の経験がほとんどないケースの両方を見てきました。前者はまだ良心的ですが、後者は評価額の誤りが数千万円単位の税負担の差に直結するリスクがあります。

比較項目 一般的な顧問税理士 事業承継専門税理士
自社株評価の経験年0〜数件年10件以上
事業承継税制の申請経験ほぼなし特例計画の策定・認定申請の実績あり
M&A対応デューデリジェンス未経験が多いバリュエーション・DD対応可
他士業との連携必要に応じて紹介弁護士・司法書士・社労士とチーム対応
費用の目安顧問料の範囲内(簡易相談)50万〜300万円(承継プラン策定一式)

事業承継で必要になる専門領域一覧

事業承継は「税務だけ」で完結しません。相続税法・会社法・経営承継円滑化法・労働法・許認可法令など、複数の法域にまたがる手続きが発生します。

💡 実務のポイント

事業承継のトラブルで最も多いのは「税理士に任せたつもりが、登記の変更を忘れていた」「許認可の承継手続きを誰もやっていなかった」というケースです。事業承継では、税理士・弁護士・司法書士・社労士・行政書士のうち最低3士業の連携が必要になることがほとんどです。

承継パターン5分類と税務難易度マトリクス

事業承継の5つのパターン

事業承継には大きく分けて5つのパターンがあり、それぞれ税務の複雑さと必要な専門家が異なります。自社の状況に最も近いパターンを確認してください。

承継パターン 税務難易度 主な税務論点 必要な専門家
①親族内承継(子・配偶者)★★★★自社株贈与税・相続税・事業承継税制・遺留分・株式分散防止税理士・弁護士・司法書士
②従業員承継(MBO/EBO)★★★★★自社株評価・買取資金調達・役員退職金・所得税税理士・弁護士・金融機関
③M&A(第三者承継)★★★★★バリュエーション・DD・株式譲渡所得・のれん・退職金スキームM&A仲介・税理士・弁護士・公認会計士
④IPO(株式公開)★★★★★上場準備・内部統制・ストックオプション税務・監査法人対応監査法人・証券会社・税理士・弁護士
⑤廃業・清算★★★清算所得・残余財産分配・みなし配当・退職金税理士・司法書士・行政書士

自社に最適な承継パターンの判定フロー

「後継者がいるか」「後継者が親族か」「M&Aの意向があるか」の3つの問いで、最適な承継パターンの目安がわかります。

判定条件 Yes の場合 No の場合
Q1. 後継者候補がいるか?→ Q2へ→ ③M&A or ⑤廃業を検討
Q2. 後継者は親族か?→ ①親族内承継→ ②従業員承継(MBO)
Q3. 会社の成長余地が大きいか?→ ④IPOも検討→ ①〜③の中で最適を選択

実務では、最初は「息子に継がせたい」と親族内承継を想定していても、後継者が承継を辞退するケースが少なくありません。その場合にM&Aや従業員承継にスムーズに切り替えられるかどうかは、最初に相談した専門家の守備範囲に大きく左右されます。事業承継に強い税理士であれば、最初から複数パターンを並行して検討してくれます。

自社株評価の方式と税理士に求められる評価スキル

非上場株式の3つの評価方式

事業承継で最も重要なのが自社株の評価です。非上場株式の評価方式は大きく3つに分かれ、どの方式が適用されるかで評価額が数倍変わることもあります。

評価方式 概要 評価額の傾向 適用される主なケース
類似業種比準方式上場している類似業種の株価をベースに算出利益が低いほど有利大会社・中会社
純資産価額方式会社の資産を時価評価して算出含み益が大きいと高額に小会社・資産保有型会社
配当還元方式年間配当金をベースに算出非常に低額になりやすい少数株主(同族以外)

📊 公認会計士の視点

自社株評価の実務で最も差がつくのは、「類似業種比準方式と純資産価額方式の併用割合」の判定です。会社の規模区分(従業員数・総資産・売上高)の判定を誤ると、併用割合が変わり評価額に大きな差が出ます。特に従業員70人前後の会社は「大会社」と「中会社の大」の境界にあり、1人の差で数千万円の評価差が生じ得ます。

自社株対策の3つのアプローチ

自社株の評価額が高すぎると、承継時の税負担が重くなります。事業承継に強い税理士は、以下の3つのアプローチを組み合わせて株価を引き下げます。

アプローチ1:利益の圧縮 — 役員退職金の支給、設備投資の前倒し、不良在庫の処分などにより利益を一時的に下げ、類似業種比準方式の評価額を引き下げます。

アプローチ2:純資産の圧縮 — 不動産の取得(相続税評価額と時価の乖離を利用)、生命保険の活用、従業員持株会の設立などにより純資産価額を下げます。

アプローチ3:評価方式の有利選択 — 会社規模の区分変更(従業員の増減・関連会社の整理)により、より有利な評価方式が適用されるよう調整します。

「自社株をどう下げるか」で実際に提案できる税理士は少数です。現場の経験上、「退職金を出して株価を下げましょう」までは多くの税理士が言えますが、「いくらの退職金をいつ出せば、何方式でいくらまで下がるか」をシミュレーションできる税理士を選ぶべきです。

事業承継税制の特例措置と活用判断

事業承継税制(特例措置)の概要

事業承継税制の特例措置は、後継者が贈与または相続で取得した自社株に係る贈与税・相続税の100%が猶予される制度です。租税特別措置法第70条の7の5(贈与税の納税猶予)・第70条の7の8(相続税の納税猶予)が根拠法令です。

📢 事業承継税制の特例措置 — 期限迫る

令和8年度税制改正大綱により、特例承継計画の提出期限は法人版が2027年9月30日、個人版が2028年9月30日まで延長されました。ただし、特例措置の適用期限(贈与・相続の実行期限)は法人版2027年12月31日のまま延長されません。計画の準備に2〜3ヶ月かかるため、活用を検討する経営者は早急に動く必要があります。

特例措置 vs 一般措置 vs 通常の贈与・相続 — 3パターン比較

📐 シミュレーション前提条件

  • 自社株評価額:2億円
  • 先代経営者(70歳)→ 後継者(40歳・長男)への贈与
  • 贈与税の税率は直系尊属からの贈与(特例税率)を適用
  • 一般措置の猶予割合は贈与税100%(2/3制限あり)・相続税80%
  • 専門家費用は認定支援機関への報酬・申告報酬を含む
項目 特例措置 一般措置 通常の暦年贈与
対象株式の上限全株式2/3まで制限なし
贈与税の猶予割合100%100%(2/3分のみ)猶予なし
相続税の猶予割合100%80%(2/3分のみ)猶予なし
贈与時の税負担0円(猶予)約2,600万円分は課税約9,000万円
年次報告の手間5年間毎年+その後3年ごと同左なし
認定取消リスクあり(利子税含め全額納付)同左なし
専門家費用の目安100万〜200万円80万〜150万円20万〜50万円

※概算値です。個別の状況により大きく異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

自社株評価額が高く同族承継が確定している会社は特例措置の活用メリットが大きいですが、将来M&Aで売却する可能性がある場合は猶予の打ち切りリスクがあるため慎重な判断が必要です。「制度ありきで判断しない」ことが重要で、これを冷静にアドバイスできる税理士が信頼できます。

AYUSAWA PARTNERS

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初回相談無料。税理士・公認会計士・社労士・行政書士がワンストップで事業承継をサポートします。

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承継パターン別の税理士・コンサルタント費用相場

承継方法ごとの費用一覧

事業承継に関わる専門家費用は、承継パターンと会社規模によって大きく異なります。以下は中小企業(年商1億〜10億円)における一般的な費用相場です。

承継パターン 業務内容 費用相場
①親族内承継自社株評価+承継プラン策定+申告80万〜300万円
②従業員承継(MBO)株価算定+買取スキーム設計+資金調達支援100万〜400万円
③M&A仲介手数料+DD+譲渡税務最低500万円〜(譲渡額の3〜5%)
④IPO上場準備全体数千万円〜
⑤廃業・清算清算申告+登記+届出50万〜150万円

※M&Aの仲介手数料はレーマン方式(取引金額に応じた逓減料率)が一般的。最低報酬額の確認が重要です。

⚠️ 注意

事業承継の費用で「安いから」という理由だけで専門家を選ぶのは危険です。自社株評価を1件だけで見ると20〜30万円の差ですが、評価方式の判定を誤ると税負担に数千万円の差が出ることがあります。費用の安さではなく「承継実績の数と内容」で選ぶことが鉄則です。

事業承継のステージ別に必要な専門家マップ

準備期(承継の3〜5年前)

事業承継は「思い立った日」から最低3年、理想的には5年の準備期間が必要です。準備期にやるべきことと相談先を整理します。

まず現状把握として、自社株の簡易評価を税理士に依頼します。この段階では「株価が高いか低いか」のざっくりとした把握が目的です。費用は10万〜30万円程度。同時に、後継者候補の有無と意思を確認し、承継パターンの方向性を決めます。

次に、株価対策の検討に入ります。利益の圧縮(役員退職金の時期設計)、含み益のある不動産の評価見直し、持株会社スキームの要否など、実行に時間がかかる対策は早期に着手します。

📝 行政書士の視点

許認可業種(建設業・宅建業・運送業・飲食業など)の事業承継では、許認可の承継手続きを忘れると事業が止まるリスクがあります。建設業許可は原則として個人から法人への移行ができないため、法人成りを伴う承継では新規申請が必要です。準備期に許認可の棚卸しをしておくことが重要です。

実行期(承継の1〜2年前〜当日)

実行期は、事業承継税制を利用する場合は特例承継計画の提出(認定支援機関の指導を受けて都道府県知事に提出)、贈与契約の締結、株式の名義変更、役員変更登記、税務申告を一気に行います。

税理士(認定支援機関)が特例承継計画を策定し、都道府県庁への認定申請を主導します。贈与を実行した翌年1月15日までに認定申請を行い、認定書を添えて贈与税の申告書を提出する流れです。この一連の手続きにミスがあると猶予が受けられなくなるため、申請経験のある税理士への依頼が不可欠です。

完了後(承継実行後5年間+その後)

事業承継税制の適用を受けた後は、5年間毎年、都道府県庁への年次報告書と税務署への継続届出書を提出する義務があります。6年目以降は3年に1回に減りますが、届出を忘れると猶予が打ち切られ利子税を含む全額の納付が求められます。

💡 実務のポイント

事業承継税制を適用した後、承継後5年以内に後継者が代表を辞任したり、株式を売却すると猶予が打ち切られます。「承継した後も5年間は動けない」という制約を、契約前に明確に説明してくれる税理士を選びましょう。この点を曖昧にして「全額免除になりますよ」とだけ言う税理士は要注意です。

事業承継に強い税理士を見極める8つの質問

初回面談で以下の質問をすることで、事業承継の実力を判断できます。良い回答と注意が必要な回答の対照を示します。

質問 良い回答の例 注意が必要な回答
①事業承継の支援実績は何件ですか?「直近3年で○件。親族内承継が○件、M&Aが○件です」「たくさんやっています」(具体的な数字がない)
②事業承継税制の特例承継計画を作成した経験はありますか?「○件作成し、都道府県の確認を受けています」「制度は知っていますが作成経験はありません」
③自社株評価はどの方式で行いますか?「まず会社規模を判定し、類似業種と純資産の併用割合を検討します」「純資産で出すのが一般的です」(方式の選択肢が狭い)
④株価対策はどのような方法がありますか?「退職金・含み損の実現・持株会社スキームなど複数の選択肢を比較します」「退職金を出せば下がります」(1つの方法しか提示しない)
⑤M&Aになった場合も対応できますか?「自社でDDチームがあります」or「提携しているM&A仲介会社があります」「M&Aは専門外です」(親族承継しか対応できない)
⑥弁護士・司法書士・社労士との連携体制は?「グループ内 or 提携先がおり、ワンストップで対応します」「必要に応じてお客様で探してください」
⑦認定経営革新等支援機関の登録はありますか?「はい。事業承継税制の適用には認定支援機関の指導が必須なので」「登録していません」(特例承継計画の策定ができない)
⑧事業承継税制を使わない方がいいケースはどんな場合ですか?「株価が低い会社やM&Aの可能性がある場合は通常の贈与の方が有利です」「使った方が絶対お得です」(デメリットを説明しない)

経営者からの相談で実際に多いのが「顧問税理士が事業承継税制を勧めてくれなかった」というケースです。制度を知らなかったのか、適用が難しいと判断したのかで対応は変わります。セカンドオピニオンとして事業承継専門税理士に1度相談するだけでも、顧問税理士の判断の妥当性を確認できます。顧問料を払っている税理士への遠慮は不要です。

相談先4タイプの比較と使い分け

事業承継の相談先は税理士だけではありません。金融機関・M&A仲介会社・コンサルティング会社・商工会議所の4タイプを比較します。

相談先 強み 弱み 向いているケース
事業承継専門税理士自社株評価・税務申告・節税対策をワンストップで対応M&Aの買い手探しは不得意なことがある親族内承継・従業員承継
M&A仲介会社買い手のネットワークが広い手数料が高額・売却ありきの提案になりがち第三者承継(M&A)
地銀・信用金庫融資と組み合わせた資金調達提案税務の専門性は低い・自行商品への誘導リスク後継者の買取資金が必要な場合
商工会議所・事業引継ぎ支援センター無料相談・公的な専門家の紹介具体的な実行段階のサポートは限定的まず何をすべきかわからない段階

「まず何から手をつけたらいいかわからない」という場合は、商工会議所の無料相談か、事業承継に強い税理士の初回無料面談を活用してください。どこに相談しても最終的には税理士が関与する場面が出てきますので、最初から税理士に相談するのが最も効率的です。なお、顧問税理士との関係を壊したくない場合は「セカンドオピニオン」として別の税理士に相談する形が一般的です。

契約前に確認すべき10項目チェックリスト

事業承継の専門家と契約する前に、以下の10項目を必ず確認してください。

No. 確認項目 確認のポイント
1事業承継の支援実績(件数・業種・規模)直近3年で5件以上が目安
2認定経営革新等支援機関の登録有無特例承継計画の策定に必須
3自社株評価の方法と根拠の説明複数方式の比較検討ができるか
4承継プランの選択肢の提示1つの方法に固執しないか
5他士業との連携体制弁護士・司法書士・社労士・行政書士
6費用の見積もりと内訳追加費用の発生条件も含めて確認
7スケジュール案の提示特例承継計画の期限を考慮しているか
8デメリット・リスクの説明認定取消リスクや利子税を説明するか
9承継後のフォロー体制年次報告の代行対応の有無
10セカンドオピニオンへの態度他の専門家への相談を嫌がらないか

なお、事業承継の費用相場について詳しくは「税理士の顧問料・費用の相場」で解説しています。また、確定申告を含む個人の税務については「確定申告の税理士費用」も参考になります。業種別の費用感については「業種・売上規模別の税理士費用」をご覧ください。

事業承継の失敗事例と回避策

失敗事例1:株式が分散して経営権を失った

先代社長が遺言書を作成しないまま急逝し、自社株が法定相続分で3人の相続人に分散。後継者の長男が51%を確保できず、株主総会で経営方針の決定ができなくなったケースです。

回避策は、遺言書の作成と「遺留分に関する民法の特例」(経営承継円滑化法第4条)の活用です。後継者に自社株を集中させつつ、他の相続人の遺留分を侵害しない設計を弁護士・税理士が連携して行います。

失敗事例2:事業承継税制の認定取消で全額納付

特例措置を適用して贈与税の猶予を受けた後、3年目に後継者が代表を辞任(体調不良)。認定取消事由に該当し、猶予されていた贈与税に加えて利子税を含む全額の納付を求められたケースです。

回避策は、やむを得ない事由による代表辞任の場合は都道府県庁への報告で認定を維持できるケースがあるため、辞任前に必ず税理士に相談すること。また、「5年間は代表を辞められない」というリスクを承継計画策定時に後継者と共有しておくことが重要です。

失敗事例3:M&A仲介会社に任せきりで税務対策が漏れた

M&A仲介会社の紹介で会社を売却したが、譲渡時の退職金スキームを検討しなかったため、株式譲渡所得として約20%の税負担に加え、退職金を使えば節税できた分(推定1,000万円以上)を取り逃したケースです。

回避策は、M&A仲介会社に任せきりにせず、売却前に事業承継に強い税理士に税務面のセカンドオピニオンを依頼すること。退職金の損金算入、のれんの税務処理、個人の譲渡所得の特例など、税理士でなければ判断できない論点が多数あります。

🔷 社労士の視点

事業承継では従業員の社会保険・雇用保険の手続きも発生します。特にM&Aの場合、合併か事業譲渡かで従業員の労働契約の承継方法が変わります。事業譲渡では従業員との再契約が必要になるケースがあり、社労士が従業員説明会の設計と労務DD(デューデリジェンス)を行うことでトラブルを防止できます。

よくある質問(FAQ)

顧問税理士がいるのに別の税理士に事業承継を相談してもいいですか?
問題ありません。事業承継は顧問税理士の専門外であることが多く、セカンドオピニオンとして別の専門家に相談するのは一般的です。顧問税理士との関係を壊さないよう、「専門家の意見も聞いてみたい」と伝えれば角が立ちません。実務では顧問税理士と事業承継専門税理士が連携するケースも多くあります。
事業承継税制の特例措置はまだ間に合いますか?
令和8年度税制改正大綱により、特例承継計画の提出期限は法人版が2027年9月30日まで延長されました。ただし特例措置の適用期限(贈与・相続の実行期限)は2027年12月31日のまま変わりません。計画策定には認定支援機関との面談で2〜3ヶ月かかるため、早急に税理士に相談することをおすすめします。
事業承継税制を使うと、将来会社を売却できなくなりますか?
売却自体は可能ですが、猶予されていた贈与税・相続税の全額(+利子税)の納付が必要になります。ただし特例措置では、経営環境の変化に伴う売却の場合、売却時点の株価で税額を再計算し差額を減免する仕組みがあります。M&Aの可能性がある場合は、この点を十分に理解した上で適用を判断すべきです。
自社株の評価額が低い場合も事業承継税制を使うべきですか?
自社株評価額が低い場合(目安として5,000万円未満)は、通常の暦年贈与や相続時精算課税制度で移転した方が、年次報告の手間や認定取消リスクを避けられるため有利になることがあります。事業承継税制はメリットだけでなくデメリット(経営の制約・報告義務)もある制度ですので、費用対効果を税理士と一緒に検討してください。
事業承継の準備はいつから始めるべきですか?
理想的には承継の5年前からです。自社株の評価と対策だけで1〜2年、事業承継税制の計画策定と実行で1〜2年、承継後の安定化に1〜2年かかります。経営者が60歳になったら着手しても早すぎることはありません。まずは自社株の簡易評価(費用10万〜30万円程度)を税理士に依頼するところから始めてください。
事業承継に「事業承継士」という資格の専門家がいると聞きましたが、税理士との違いは?
事業承継士は民間資格であり、主に税理士や弁護士などの国家資格保有者が取得する上乗せ資格です。事業承継の実務知識と他士業とのネットワーク構築が目的で、税務申告の権限は税理士資格が別途必要です。「事業承継士の資格を持つ税理士」であれば、承継に関する幅広い知識と税務の実行力を兼ね備えている可能性が高いといえます。
個人事業主の事業承継にも税理士は必要ですか?
個人事業主の場合も、事業用資産の贈与税・相続税が発生します。個人版事業承継税制を利用すれば一定の事業用資産に係る贈与税・相続税が猶予されます。特に青色申告の個人事業主で事業用不動産や高額な設備を持つ場合は、税理士に相談して個人事業承継計画を検討すべきです。個人版の計画提出期限は2028年9月30日まで延長されています。

参考: 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 事業承継は通常の法人税務と異なるスキルセットが必要 — 顧問税理士で十分とは限らない
  • 承継パターンは5分類(親族内/MBO/M&A/IPO/廃業)で、それぞれ税務難易度と必要な専門家が異なる
  • 自社株評価は3方式(類似業種比準/純資産/配当還元)の判定が勝負 — 評価額が数千万円変わる
  • 事業承継税制の特例措置は法人版の計画提出期限が2027年9月末まで延長されたが、適用期限は2027年12月末で変わらず
  • 専門家選びでは「実績の件数と内容」「認定支援機関の登録」「複数パターンの提案力」の3点が最重要
  • 承継の準備は5年前から — まずは自社株の簡易評価から着手する

事業承継は経営者にとって人生で一度あるかないかの大きな決断です。「そのうち考えよう」と先延ばしにしていると、事業承継税制の特例措置の期限を逃したり、突然の相続で準備不足のまま承継を迫られるリスクがあります。まずは自社株の簡易評価だけでも、事業承継に強い税理士に依頼してみてください。

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