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医療機器の特別償却と税額控除|高額設備投資の節税策一覧と事業承継スキーム
「CT装置やMRIなど数千万円の設備投資をしたが、どの税制優遇が使えるかわからない」とお悩みの開業医・医療法人理事長に向けて、医療機器に使える特別償却・税額控除の全制度と、事業承継時の出資持分評価・のれんの取扱いまでを完全ガイドします。


「CT装置やMRIなど数千万円の設備投資をしたが、どの税制優遇が使えるかわからない」とお悩みの開業医・医療法人理事長に向けて、医療機器に使える特別償却・税額控除の全制度と、事業承継時の出資持分評価・のれんの取扱いまでを完全ガイドします。
🏆 結論:医療機器の節税は「どの制度が使えるか」の正確な判定が出発点
医療機器は中小企業投資促進税制(措法42条の6)の対象外ですが、医療用機器等の特別償却(措法45条の2・取得価額の12%)、少額減価償却資産の特例(40万円未満)、中小企業経営強化税制(ソフトウェアのみ)など複数の制度が利用可能です。制度ごとに対象資産・金額要件・申告手続きが異なるため、設備投資前に税理士と適用可否を確認することが節税効果を最大化するカギです。
医療機器の設備投資に使える税制優遇は複数ありますが、制度ごとに対象資産・適用要件・優遇内容が大きく異なります。まず全体像を表で把握しましょう。
| 制度名 | 根拠法令 | 医療機器の適用 | 優遇内容 | 主な要件 |
|---|---|---|---|---|
| 医療用機器等の特別償却 | 措法45条の2 | ◎ 主力制度 | 取得価額の12%特別償却 | 取得価額500万円以上・新品・告示指定品目 |
| 中小企業投資促進税制 | 措法42条の6 | ✕ 適用不可 | 30%特別償却 or 7%税額控除 | 医療機器は「器具備品」であり「機械装置」に該当しないため対象外 |
| 中小企業経営強化税制 | 措法42条の12の4 | △ 一部のみ | 即時償却 or 10%(7%)税額控除 | 医療保険業の器具備品・建物附属設備は除外。ソフトウェアのみ対象 |
| 少額減価償却資産の特例 | 措法67条の5 | ◎ 適用可 | 全額即時損金算入 | 取得価額40万円未満(2026年4月〜)・年間合計300万円まで |
⚠️ 注意
会計検査院の検査報告では、医療機器を「機械及び装置」と誤認して中小企業投資促進税制を適用し、税務署で徴収不足が発生した事例が複数報告されています。医療機器は耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」に分類されるため、中小企業投資促進税制は使えません。申告時には資産の種類区分に十分注意してください。
実務では、この2つの区分の違いが節税制度の適用可否を左右します。CTスキャナ装置、超音波診断装置、MRI装置、歯科診療用椅子などの医療機器は、いずれも耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」のうち「8 医療機器」に該当します。中小企業投資促進税制が対象とする「機械及び装置」には該当しないため、同税制の30%特別償却や7%税額控除は適用できません。
現場でよく見かける間違いが、納税者が申告書の明細書の種類欄に「医療機械」と記載してしまうケースです。税務署側もこの記載を見て「機械及び装置」と誤認してしまうことがあり、会計検査院から是正を求められた事例が報告されています。
医療機器の設備投資で最も広く使われるのが、措法45条の2に基づく医療用機器等の特別償却です。この制度は3つの区分に分かれており、それぞれ対象資産と特別償却率が異なります。
| 区分 | 対象資産 | 金額要件 | 特別償却率 |
|---|---|---|---|
| ①高度医療機器 | 厚労省告示指定品目(薬機法指定後2年以内) | 500万円以上 | 12% |
| ②勤務時間短縮用設備 | 医師等勤務時間短縮計画に基づく設備 | なし | 15% |
| ③構造設備基準適合施設 | 建物附属設備 | なし | 8% |
高度医療機器として特別償却の対象となるのは、薬機法(医薬品医療機器等法)に基づく高度管理医療機器・管理医療機器・一般医療機器のうち、厚生労働省が告示で指定した日から2年以内のものです。対象品目は厚生労働省告示(第248号)に記載されています。
実務では、購入する医療機器が「いつ指定されたか」の確認が最初のステップです。指定日から2年を超えていると特別償却の適用を受けられません。機器の製造業者やディーラーに確認するのが確実です。
💡 実務のポイント
特別償却は「事業供用年度」に限り適用できます。期末近くに購入して据付が翌期にずれ込むと適用時期がずれるため、高額機器の導入スケジュールは逆算して計画しましょう。なお、事業供用年度に適用できなかった場合でも、1年に限り翌年度への繰越しが認められます(措法52条の2)。
医師の働き方改革を背景に設けられた制度で、医療勤務環境改善センターの助言を受けて作成し、都道府県の確認を受けた「医師等勤務時間短縮計画」に基づいて取得した設備が対象です。金額要件はなく、新品であれば適用可能ですが、計画の策定と行政の確認プロセスが必要です。
一定の施設基準を満たす医療施設の建物附属設備が対象で、8%の特別償却を受けられます。
特別償却は通常の減価償却費に「上乗せ」するものです。そのベースとなる通常の耐用年数を正確に把握しておくことが重要です。医療機器の耐用年数は、耐用年数省令別表第一「器具及び備品」の「8 医療機器」に定められています。
| 機器分類 | 具体例 | 耐用年数 | 定率法償却率 |
|---|---|---|---|
| 消毒殺菌用機器 | オートクレーブ | 4年 | 0.500 |
| 手術機器 | 手術台・無影灯 | 5年 | 0.400 |
| 血液透析等機器 | 人工腎臓装置 | 7年 | 0.286 |
| 光学検査機器 | 内視鏡 | 6年 | 0.333 |
| レントゲンその他の電子装置を使用する機器 | CT・MRI・超音波診断装置 | 6年 | 0.333 |
| その他のもの | 電動ベッド・歯科診療用椅子 | 6年 | 0.333 |
💡 実務のポイント
医療法人(資本金1億円以下)は定率法・定額法のいずれかを選択できます。特別償却を適用する場合は定率法のほうが初年度の償却額が大きくなるため節税効果が高いですが、将来の減価償却費は小さくなる点を理解しておきましょう。特別償却はあくまで「将来の償却の前倒し」であり、耐用年数全体での償却総額は変わりません。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 500万円の機器 | 1,500万円の機器 | 3,000万円の機器 |
|---|---|---|---|
| 通常の減価償却費(定率法初年度) | 166.5万円 | 499.5万円 | 999万円 |
| 特別償却額(12%) | 60万円 | 180万円 | 360万円 |
| 初年度合計償却額 | 226.5万円 | 679.5万円 | 1,359万円 |
| 初年度の節税効果(税率25%) | 15万円 | 45万円 | 90万円 |
※節税効果は特別償却額×税率で算出。概算値であり、個別の状況により異なります。
3,000万円のCT装置を導入した場合、特別償却により初年度に約90万円の追加節税効果があります。ただし、これは将来の償却費の前倒しであるため、耐用年数全体での法人税の総額は変わりません。キャッシュフローの改善効果として捉えるのが正確です。
中小企業投資促進税制(ソフトウェア等に限る)や中小企業経営強化税制で税額控除と特別償却を選択できるケースでは、以下の判断基準を参考にしてください。
| 判断基準 | 特別償却が有利 | 税額控除が有利 |
|---|---|---|
| 当期の課税所得 | 大きい(税率が高い) | 安定して黒字 |
| 来期以降の見通し | 減益予想 | 増益予想 |
| 税額の絶対額を減らしたいか | ✕(償却の前倒しのみ) | ◎(税額を直接減額) |
| 控除しきれない場合 | 翌年繰越可 | 1年間の繰越可 |
中小企業経営強化税制(措法42条の12の4)は、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が対象設備を取得した場合に、即時償却または10%(出資金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択できる制度です。
しかし、医療保険業を営む事業者が取得する「器具備品」と「建物附属設備」は適用除外とされています。つまり、医療機器のほとんどは対象外です。
医療法人が経営強化税制を活用できるのは、実質的にはソフトウェア(取得価額70万円以上)に限られます。具体的には電子カルテシステム、レセプトコンピュータ、画像管理システム(PACS)などが該当します。経営力向上計画の策定・申請が必要ですが、ソフトウェアであれば即時償却が可能なため、導入費用が数百万円に及ぶ電子カルテの導入時には検討の価値があります。
なお、経営強化税制を適用するには、経済産業局の確認書の取得が必要です。申請から認定まで1〜2ヶ月程度かかるため、ソフトウェアの導入スケジュールに余裕を持って準備しましょう。
高額機器だけでなく、比較的少額の医療機器や周辺設備にも節税の余地があります。
| 取得価額 | 制度 | 処理方法 | 上限 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費 | 全額即時損金 | なし |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産 | 3年均等償却 | なし |
| 40万円未満 | 少額減価償却資産の特例 | 全額即時損金 | 年間合計300万円 |
2026年4月からは少額減価償却資産の特例の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。これにより、パルスオキシメーター、AED、電動昇降診察台など、30〜40万円の価格帯の機器も即時損金算入が可能になっています。
なお、この特例と医療用機器等の特別償却は対象となる取得価額帯が異なるため、併用が可能です。40万円未満の機器は少額減価償却資産の特例で即時損金、500万円以上の高度医療機器は特別償却で12%上乗せ、という使い分けが基本になります。
具体的な仕訳で、通常の減価償却と特別償却の計上方法を確認しましょう。取得価額2,000万円のCT装置(耐用年数6年・定率法)を例にします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 器具備品(CT装置) | 2,000万円 | 普通預金 | 2,000万円 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 666万円 | 器具備品 | 666万円 |
| 特別償却費 | 240万円 | 特別償却準備金 | 240万円 |
📊 公認会計士の視点
特別償却の会計処理には「損金経理方式(直接減額)」と「準備金方式(積立方式)」の2つがあります。準備金方式を採用すると、特別償却準備金として純資産の部に計上し、翌期以降に取崩益を計上します。財務諸表上の利益を過度に圧縮したくない場合や、金融機関への融資申請を控えている場合は準備金方式が有利です。
医療法人の事業承継は、株式会社の事業承継とは仕組みが大きく異なります。最も重要な違いは、出資持分と経営権が分離していることです。株式会社では株式の過半数を取得すれば経営権を掌握できますが、医療法人では出資持分を100%取得しても、社員総会における議決権は社員1人につき1票のため、経営権の確保には社員構成の見直しが別途必要です。
| 承継スキーム | 概要 | 課税関係 | 適用場面 |
|---|---|---|---|
| ①出資持分の譲渡 | 持分を後継者に売却 | 譲渡所得(所得税15%+住民税5%) | 第三者承継・M&A |
| ②出資持分の相続・贈与 | 持分を親族に移転 | 相続税・贈与税 | 親族内承継 |
| ③持分なしへの移行 | 認定医療法人制度を利用 | 贈与税の猶予・免除 | 持分の評価額が膨らんだ法人 |
| ④事業譲渡 | 事業資産・負債を個別に譲渡 | 法人税(法人側)・所得税(個人側) | 一部事業の切り離し |
詳しい法人化のメリット・デメリットや判断基準については、「医療法人化の損益分岐点|概算経費→法人成りのベストタイミングを徹底シミュレーション」で解説しています。
医療法人の出資持分の評価は、財産評価基本通達194-2に基づき、取引相場のない株式の評価に準じて行います。ただし、株式会社と異なる以下の特殊ルールがあります。
| 評価上のポイント | 株式会社 | 医療法人 |
|---|---|---|
| 評価方式 | 類似業種比準・純資産・配当還元 | 類似業種比準・純資産のみ(配当還元は不可) |
| 比準要素 | 配当・利益・純資産の3要素 | 利益・純資産の2要素のみ(配当禁止のため) |
| 営業権の評価 | 超過収益力として評価 | 原則として評価しない |
| 80%評価 | 少数株主は80%評価可 | 議決権平等のため80%評価不可 |
| 会社規模の判定 | 業種により区分 | 小売・サービス業として判定 |
💡 実務のポイント
医療法人は配当が禁止されているため、利益が内部に蓄積されやすく、出資持分の評価額が膨れ上がる傾向にあります。設立時の出資金が1,000万円でも、長年の経営で純資産が3億円になれば、出資持分の評価額も大幅に上昇します。事業承継を見据えて、理事長の退職金支給や設備投資による評価引下げ対策を計画的に行うことが重要です。
のれん(営業権)は、事業の超過収益力を表す無形資産です。医療法人の承継・M&Aにおいて、のれんの取扱いは株式会社と大きく異なります。
相続税の財産評価において、医師・弁護士のように個人の技術や手腕に大きく依存する事業の超過収益力は、その個人の死亡とともに消滅すると考えられています。医師の集合体である医療法人の出資持分評価でも、営業権は評価しないのが実務上の取扱いです。
この取扱いは、医療法人の出資持分の相続税評価額を引き下げる効果があります。株式会社であれば営業権が加算されて評価額が高くなるところ、医療法人では加算されません。
一方、事業譲渡やM&Aの実務では、譲渡価格の交渉において営業権(のれん代)が加算されるケースがあります。M&Aにおける出資持分の評価では、時価純資産額に営業権を加算する方法が一般的です。
| 場面 | のれんの取扱い | 償却期間 |
|---|---|---|
| 相続税の出資持分評価 | 原則として評価しない | — |
| 出資持分の譲渡(M&A) | 時価純資産+営業権で譲渡価格を算定 | 個別のれん計上はできない |
| 事業譲渡 | 資産調整勘定として計上可能 | 5年(60ヶ月)均等償却 |
| 個人診療所の営業権譲渡 | 総合譲渡所得として課税 | 5年超保有は長期総合譲渡所得 |
事業譲渡のスキームでのれんを計上できれば、承継後に5年間で損金算入できるため、買い手側にとっては節税メリットがあります。一方、出資持分の譲渡スキームではのれんの個別計上ができないため、この節税効果は得られません。承継方法の選択にあたっては、売り手・買い手双方の税負担を総合的にシミュレーションすることが重要です。
出資持分の評価額が高額になり、親族内承継で相続税の負担が大きい場合、認定医療法人制度を利用して持分なし医療法人へ移行するスキームが注目されています。
持分あり医療法人が持分なし医療法人への移行を決定し、厚生労働大臣の認定を受けると、出資持分を放棄した際に他の出資者が得る持分に対する贈与税の納付が猶予されます。移行後6年が経過すると猶予された贈与税は免除されます。
📢 認定医療法人制度の期限
認定医療法人制度は令和8年(2026年)12月31日までの時限措置です。活用を検討する場合は早めに移行計画の策定と認定申請を進める必要があります。移行計画の策定から認定取得まで通常6ヶ月〜1年程度かかります。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 税負担 | 贈与税の猶予→6年後免除 | 出資持分の払戻請求権を喪失 |
| 相続対策 | 持分に対する相続税が発生しない | 創業者利益を得る手段がなくなる |
| 解散時 | — | 残余財産は国等に帰属(出資者に分配されない) |
実務では、理事長の退職金を持分なしへの移行前に支給して内部留保を圧縮し、移行後の法人価値を適正水準にする戦略が取られることが多いです。退職金の適正額の算定については専門家への相談が不可欠です。
なお、概算経費率(措法26条)を活用した個人開業医の節税策については「開業医の概算経費率と実額経費の有利不利判定」をご参照ください。
高額な医療機器の設備投資は、事業承継対策の観点からも有効です。設備投資により法人の純資産が減少すれば、出資持分の評価額を引き下げる効果があるためです。
| 施策 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 高額医療機器の購入+特別償却 | 純資産の減少+利益の圧縮 | 事業に必要な投資であること |
| 理事長退職金の支給 | 純資産の大幅な減少 | 功績倍率法で適正額を算定 |
| 含み損のある資産の売却 | 帳簿価額と時価の差額を損失計上 | 事業継続に支障がないか確認 |
| 役員報酬の見直し | 利益の圧縮 | 定期同額給与の要件を遵守 |
ただし、純粋に評価引下げ目的の不要な設備投資は認められません。事業上の合理性がある投資であることが前提です。税務調査で「租税回避目的の行為」と認定されるリスクもあるため、設備投資計画と事業承継計画は一体として専門家と策定することをお勧めします。
MS法人を活用した節税策と税務調査での否認リスクについては「MS法人の活用と税務調査対策」で詳しく解説しています。
高額な医療機器を購入する前に、以下のチェックリストを確認してください。
| 確認項目 | 確認内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| ①厚労省告示の指定品目か | 特別償却の対象機器に該当するか、指定日から2年以内か | 機器メーカー・厚労省告示 |
| ②取得価額の確認 | 500万円以上か(消費税込み or 税抜きの判定基準確認) | ディーラー見積書 |
| ③事業供用時期 | 当期中に据付・使用開始できるか | 施工業者・納入スケジュール |
| ④新品であること | 中古品は特別償却の対象外 | 購入契約書 |
| ⑤申告書への記載 | 別表16(特別償却の付表)の添付が必要 | 顧問税理士 |
消費税の課税・非課税の判定や仕入税額控除の計算については「クリニックの消費税|保険診療と自由診療の課税・非課税判定と控除対象外消費税の会計処理」を参考にしてください。
📋 この記事のポイント