【税理士監修】インボイスの経過措置(80%→70%→50%→30%→0%)|免税事業者からの仕入れの扱いと仕訳例

【税理士監修】インボイスの経過措置(80%→70%→50%→30%→0%)|免税事業者からの仕入れの扱いと仕訳例
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

インボイスの経過措置(80%→70%→50%→30%→0%)|免税事業者からの仕入れの扱いと仕訳例

「免税事業者との取引を続けたいけど、消費税の負担が増えるのでは?」とお悩みの経営者・個人事業主に向けて、経過措置の控除率・スケジュール・仕訳方法・帳簿の書き方を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の対応方針を判断できます。

🏆 結論:経過措置は段階的に縮小され、最終的に控除ゼロに

インボイスの経過措置とは、免税事業者からの仕入れでも一定割合の仕入税額控除を認める時限的な救済制度です。令和8年度税制改正大綱では、従来の80%→50%→0%(6年間)から、80%→70%→50%→30%→0%(8年間)に多段階化される方針が示されました。控除率が下がるほどコスト負担は増えるため、取引先のインボイス登録状況の確認と仕訳方法の整備を早めに進めましょう。

インボイスの経過措置とは?制度の基本的なしくみ

インボイスの経過措置とは、適格請求書発行事業者以外の者(免税事業者等)からの課税仕入れについて、一定期間、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額控除の対象とする制度です。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は2023年10月1日にスタートしました。本来、この制度のもとでは、適格請求書がなければ仕入税額控除を受けることができません。しかし、いきなり控除ゼロにすると課税事業者・免税事業者の双方に大きな負担がかかるため、段階的に控除率を引き下げる経過措置が設けられました。

経過措置が設けられた背景

経過措置には大きく2つの目的があります。1つ目は、課税事業者が免税事業者との取引で受ける税負担の急増を緩和すること。2つ目は、免税事業者がインボイス登録するかどうかを検討する時間を確保することです。

💡 実務のポイント

実務では、経過措置の対象となる取引を帳簿上で明確に区分管理する必要があります。「80%控除対象」や「免」といった記号を取引ごとに付記する方法が一般的です。この区分を怠ると、税務調査で仕入税額控除を否認されるリスクがあります。

経過措置の対象者

経過措置の適用を受けられるのは、以下の2つの条件をどちらも満たす事業者です。

条件 内容
買い手側の要件原則課税(一般課税)で消費税を計算している課税事業者
売り手側の条件適格請求書発行事業者でない者(免税事業者・未登録の課税事業者・消費者)

※簡易課税制度を選択している課税事業者は、そもそも仕入税額控除の計算にインボイスが不要のため、経過措置の対象外です。簡易課税のしくみについては「簡易課税制度とは?みなし仕入率・事業区分・届出方法を完全ガイド」で解説しています。

経過措置のスケジュール|新旧比較で変更点を整理

経過措置の控除割合は段階的に縮小されます。令和8年度税制改正大綱(2025年12月閣議決定)で、従来の3段階から5段階に多段階化される方針が示されました。

📢 令和8年度税制改正大綱による変更

令和8年度税制改正大綱では、免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置について、激変緩和の観点から控除割合の多段階化と期間延長が示されました。一方で、租税回避防止のため、一の免税事業者からの仕入れ上限額が10億円から1億円に引き下げられます。以下の情報は大綱に基づくものであり、今後の法案審議で変更される可能性があります。

期間 旧スケジュール 新スケジュール(改正案) 実務への影響
令和5年10月〜令和8年9月
(2023/10〜2026/9)
80%80%(変更なし)現行の控除率。2026年9月末で終了
令和8年10月〜令和10年9月
(2026/10〜2028/9)
50%70%新設の段階。旧より20%有利
令和10年10月〜令和12年9月
(2028/10〜2030/9)
0%(終了)50%旧制度では終了していた期間に50%控除
令和12年10月〜令和13年9月
(2030/10〜2031/9)
30%新設の段階
令和13年10月〜
(2031/10〜)
0%(完全終了)免税事業者からの仕入れは全額控除不可

参考: 国税庁「インボイス制度特設サイト」

⚠️ 注意:上限額の引き下げ

令和8年度改正案では、一の免税事業者からの経過措置対象となる課税仕入れの年間上限額が、従来の10億円から1億円に大きく引き下げられます。1億円を超える部分には経過措置が適用されません。大口の外注先や仕入先が免税事業者の場合は、この上限に注意が必要です。

経過措置の適用要件|帳簿と請求書に何を書くか

経過措置の適用を受けるには、一定の事項を記載した帳簿と請求書等を保存する必要があります。消費税法附則52条・53条に基づく要件であり、要件を満たさない場合は控除が認められません。

帳簿の記載事項

帳簿には、通常の仕入税額控除に必要な事項に加えて、「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載する必要があります。具体的な記載方法は国税庁のQ&Aで以下のとおり示されています。

記載事項 記載例
① 課税仕入れの相手方の氏名・名称株式会社○○
② 課税仕入れを行った年月日R8.4.15
③ 課税仕入れに係る資産・役務の内容デザイン制作費 ※軽減税率対象の場合はその旨も
④ 課税仕入れに係る支払対価の額110,000円(税込)
⑤ 経過措置の適用を受ける旨「80%控除対象」「免」「※」等の記号でもOK

⑤の記載方法については、取引ごとに「80%控除対象」と書く方法のほか、「※」「☆」等の記号を付して別途「※は80%控除対象」と一覧表示する方法も認められています。

参考: 国税庁「適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113

請求書等の保存要件

帳簿に加え、区分記載請求書等と同様の記載事項を満たす請求書等を保存する必要があります。適格請求書(インボイス)でなくてもよい点が重要です。

請求書の記載事項 必要?
発行者の氏名・名称
取引年月日
取引内容(軽減税率対象の旨を含む)
税率ごとに区分した対価の合計額
受領者の氏名・名称
登録番号❌ 不要
税率ごとの消費税額❌ 不要

💡 実務のポイント

経過措置の適用を受ける取引については、帳簿に「経過措置の適用を受ける旨」の記載漏れが最も多いミスです。会計ソフトで経過措置用の税区分を設定しておくと、帳簿要件を自動的に満たすことができます。freeeやマネーフォワード、弥生といった主要な会計ソフトはすでに経過措置の税区分に対応しています。

仕入税額控除の計算方法|積上げ計算と割り戻し計算

経過措置を適用した仕入税額控除の計算方法には、積上げ計算と割り戻し計算の2種類があります。適格請求書分の計算方法に合わせて選択します。

積上げ計算の場合

課税仕入れの都度、以下の計算式で控除税額を算出します。

📐 計算式(標準税率10%の場合)

  • 控除税額 = 税込の課税仕入額 × 7.8 ÷ 110 × 控除割合(80/100等)
  • 1円未満の端数は切り捨てまたは四捨五入
  • 軽減税率8%の場合は「6.24 ÷ 108」に読み替え

割り戻し計算の場合

課税期間中の経過措置対象の課税仕入れの合計額に対して、一括で計算します。計算式自体は積上げ計算と同じですが、個々の取引ではなく合計額に対して乗じる点が異なります。

計算例:免税事業者から税込110万円で仕入れた場合

計算ステップ 80%期間 70%期間 50%期間
① 税込仕入額1,100,000円1,100,000円1,100,000円
② 仕入税額(①×7.8÷110)78,000円78,000円78,000円
③ 控除可能額(②×控除割合)62,400円54,600円39,000円
④ 控除不可額(②−③)15,600円23,400円39,000円

このように、控除率が下がるほど事業者の実質的な負担が増加します。

経過措置の2つの仕訳方法|費用上乗せ vs 雑損失振替

経過措置の適用で生じる「控除できない消費税額」の会計処理には、2つの方法があります。

方法1:仕入額に上乗せする方法(取引時処理)

取引のつど、控除できない消費税を仕入金額に含めて仕訳します。

📐 仕訳例:免税事業者から消耗品を税込11,000円で購入(80%控除期間)

  • 消費税額 = 11,000 × 10/110 = 1,000円
  • 控除可能額 = 1,000 × 80% = 800円
  • 控除不可額 = 1,000 − 800 = 200円
借方 金額 貸方 金額
消耗品費10,200円現金11,000円
仮払消費税等800円

控除できない200円分を消耗品費に加算しています。この方法は取引時点で仕訳が完結するため、リアルタイムに正確な費用を把握できるメリットがあります。

方法2:雑損失に振り替える方法(決算時処理)

取引時はインボイス制度導入前と同じ仕訳を行い、決算時にまとめて控除不可額を振り替えます。

【取引時の仕訳】
借方 金額 貸方 金額
消耗品費10,000円現金11,000円
仮払消費税等1,000円
【決算時の振替仕訳】
借方 金額 貸方 金額
雑損失200円仮払消費税等200円

2つの仕訳方法の比較

比較項目 方法1:費用上乗せ 方法2:雑損失振替
処理タイミング取引のつど決算時にまとめて
仕訳の手間毎回計算が必要取引時は従来どおり
費用の正確性リアルタイムに正確決算時まで帳簿と実態が乖離
会計ソフト対応経過措置用税区分で自動化可能従来の設定のまま使用可能
固定資産取得時取得価額に自動加算される法人税の申告調整が必要
おすすめ対象会計ソフトで税区分設定可能な事業者システム変更を避けたい事業者

💡 実務のポイント

方法2(雑損失振替)を選択した場合、固定資産の取得で注意が必要です。例えば、免税事業者から建物を1,100万円(税込)で購入し、控除不可の消費税20万円を雑損失に計上した場合、法人税の計算上、この20万円は建物の取得価額に算入して減価償却を計算する必要があります。つまり、会計上の雑損失は法人税上は損金不算入となり、申告調整が必要です。実務では方法1(費用上乗せ)のほうがトラブルが少ない印象です。

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免税事業者からの仕入れ金額別コスト増シミュレーション

経過措置の控除率低下が自社の税負担にどれだけ影響するか、月額の仕入れ金額別にシミュレーションしてみましょう。

📐 シミュレーション前提条件

  • 免税事業者への支払いは全額標準税率10%
  • 買い手は原則課税(一般課税)の法人
  • 月額は税込ベース。「年間コスト増」は100%控除時と比較した追加負担額
  • 改正案のスケジュール(80%→70%→50%→30%→0%)で計算
月額仕入(税込) 80%期間
年間コスト増
70%期間
年間コスト増
50%期間
年間コスト増
30%期間
年間コスト増
0%(終了後)
年間コスト増
月11万円24,000円36,000円60,000円84,000円120,000円
月33万円72,000円108,000円180,000円252,000円360,000円
月110万円240,000円360,000円600,000円840,000円1,200,000円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

月額110万円の免税事業者との取引を続けた場合、経過措置が完全に終了すると年間120万円のコスト増になります。この金額を踏まえて、取引先にインボイス登録を依頼するか、取引条件を見直すかの判断が必要です。

📊 公認会計士の視点

経過措置で控除できない消費税は、原則として仕入コストに含まれます。つまり、経過措置の控除率が下がるほど原価が上がり、粗利益率が低下します。特に外注費の比率が高いサービス業や建設業では、経過措置終了後の収益インパクトを事前に試算し、価格交渉の材料にすることが重要です。

事業者タイプ別の経過措置の影響と対応方針

自社の消費税の計算方法によって、経過措置の影響度合いは大きく異なります。

事業者タイプ 経過措置の影響 推奨アクション
原則課税の事業者
(一般課税)
影響大。免税事業者からの仕入れが多いほどコスト増取引先のインボイス登録状況を棚卸し。未登録先への登録依頼 or 取引条件の見直し
簡易課税の事業者影響なし。みなし仕入率で計算するため、インボイスの有無は無関係現状維持。ただし簡易課税の基準期間売上が5,000万円超になった場合は原則課税に移行するため注意
免税事業者
(売り手側)
間接的に影響。取引先のコスト増→値引き要請・取引縮小のリスクインボイス登録するかの判断。登録する場合は2割特例(改正案では3割納付特例)の活用を検討

📢 2割特例は令和8年9月30日の属する課税期間で終了

2割特例は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間が対象の時限措置で、個人事業者は令和8年分(2026年分)の申告が最後の適用です。令和8年度税制改正により、個人事業者に限り売上税額の3割を納める「3割特例」が令和9年分・令和10年分の2年間新設されました(法人は対象外)。簡易課税へ移行する場合は原則として適用したい課税期間の開始前までに届出が必要です(個人が令和9年分から適用するなら令和8年12月31日まで)。

簡易課税制度を選択している事業者には、経過措置は直接的な影響を与えません。簡易課税では、みなし仕入率を使って消費税を計算するため、仕入先がインボイスを発行するかどうかは関係ないのです。詳しくは「簡易課税制度とは?みなし仕入率・事業区分・届出方法を完全ガイド」をご覧ください。

控除率切替時の実務上の判定ルール

2026年10月1日の切替日前後では、「いつの取引か」によって適用する控除率が変わります。国税庁のQ&Aで示された判定基準を整理します。

取引の種類別の判定基準

取引の種類 課税仕入れの時期 具体例
商品の仕入れ商品の引渡しがあった日9月25日に発注→10月3日に納品 → 70%控除
役務提供(サービス)役務の提供を受けた日(原則完了日)9月中に作業完了→10月に請求 → 80%控除
短期前払費用支出した課税期間9月に1年分の保守料を一括支払い → 80%控除(全額)

⚠️ 注意:月をまたぐ取引

切替日の前後で取引が分かれる場合、引渡し日(商品)または完了日(サービス)が基準です。「発注日」や「支払日」では判定しません。9月に発注して10月に納品された商品は、70%控除の対象になります。実務では、切替日前後の取引について引渡し日・完了日の記録を正確に残すことが重要です。

帳簿のみの保存で控除が認められる特例取引

経過措置とは別に、請求書等の保存が困難な一定の取引については、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例があります。この特例は免税事業者との取引にも関係するため、あわせて確認しておきましょう。

特例取引 具体例
3万円未満の公共交通機関の運賃電車・バスの乗車料金
3万円未満の自動販売機からの購入自動販売機の飲料・コインロッカー
入場券等が回収される取引映画館・遊園地の入場券
簡易インボイスの記載事項を満たす場合小売業・タクシー等の領収書
古物商が適格請求書発行事業者でない者から仕入れる場合個人からの中古品買取

これらの取引は、帳簿に所定の事項を記載していれば、相手方がインボイスを発行できなくても全額の仕入税額控除が可能です。

少額特例との使い分け

税込1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存なしで仕入税額控除を受けられる「少額特例」が別途あります。経過措置との違いを整理しておきましょう。

比較項目 経過措置(80%→70%→...) 少額特例
控除割合段階的に縮小全額控除(100%)
金額制限なし(上限1億円/年あり)1回の取引が税込1万円未満
適用対象者原則課税の全事業者基準期間の課税売上高1億円以下 or 特定期間5,000万円以下
適用期限令和13年9月30日まで(改正案)令和11年9月30日まで
保存要件区分記載請求書+帳簿帳簿のみ

税込1万円未満の少額取引であれば、少額特例を使えば全額控除できます。少額特例の対象とならない取引について、経過措置が適用されるというイメージです。

少額な返還インボイスの免除と経過措置の関係

税込1万円未満の値引き・返品・割戻しについては、返還インボイスの交付義務が免除されています。これは経過措置とは別の制度ですが、免税事業者との取引でも関係するため確認しておきましょう。

たとえば、免税事業者に対して税込5,000円の値引きを行った場合、返還インボイスの交付は不要です。値引き後の金額に対して経過措置の控除率を適用して仕入税額控除を計算します。

仮払消費税の法人税への影響

経過措置で控除できなかった消費税は、法人税の所得計算にも影響を与えます。控除できない消費税の処理方法によって法人税の取り扱いが異なるため、税理士と確認しておくことをおすすめします。

費用上乗せ方式の場合

控除不可額を仕入や経費に上乗せしているため、法人税上は通常の費用として損金に算入されます。固定資産の場合は取得価額に含まれ、減価償却を通じて損金に反映されます。追加の申告調整は不要です。

雑損失方式の場合

雑損失として計上した控除不可額のうち、棚卸資産や固定資産に関する部分は、法人税上の申告調整が必要です。

🧮 シミュレーション:固定資産取得時の法人税調整

免税事業者から店舗用建物を税込1,100万円で購入(80%控除期間・税抜経理方式)の場合、控除不可の消費税20万円を雑損失に計上すると、法人税上はこの20万円を建物の取得価額に加算して減価償却を計算します。雑損失20万円は「償却費として損金経理をした金額」として扱われ、償却限度額を超える部分は減価償却超過額として所得に加算されます。

このように、雑損失方式は決算時の処理が楽な反面、固定資産取得時の法人税申告調整が複雑になります。自社の取引内容に合った方法を選択しましょう。

経過措置終了に向けた実務対応チェックリスト

経過措置は段階的に控除率が下がるため、早めに対応を始めることが重要です。以下のチェックリストで自社の対応状況を確認してください。

No. チェック項目 対応のポイント
1取引先のインボイス登録状況を把握しているか国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認
2免税事業者との取引金額を集計しているかコスト増のシミュレーションに必要
3帳簿に「経過措置の適用を受ける旨」を記載しているか記載漏れ→控除否認のリスク
4会計ソフトの経過措置用税区分を設定しているか2026年10月以降の新控除率への対応も確認
5免税事業者にインボイス登録を依頼するか方針を決めているか下請法・独禁法に抵触しない範囲で
6免税事業者からの請求書(区分記載請求書)を適切に保存しているか請求書がないと経過措置も使えない
7コスト増分の価格転嫁や取引条件の見直しを検討しているか免税事業者への一方的な値引き要請は禁止
8簡易課税への切替えを検討したか簡易課税ならインボイス不要。ただし基準期間売上5,000万円以下が条件

インボイス制度の全体像については「インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?仕組み・影響・対応を完全ガイド」で網羅的に解説しています。また、フリーランスの方は「フリーランス・個人事業主のインボイス対応|登録すべき?判断基準とメリット・デメリット」もあわせてご覧ください。

免税事業者への対応で注意すべき法律上のルール

経過措置の控除率が下がることを理由に、取引先の免税事業者に対して一方的に不利な条件を押し付けることは、独占禁止法や下請法に抵触する可能性があります。

禁止される行為の例

公正取引委員会は、インボイス制度を理由とする以下の行為を「優越的地位の濫用」に該当しうると注意喚起しています。

禁止行為 具体例
インボイスを交付できないことを理由とした一方的な取引停止「インボイスを出せないなら契約解除」と通告
消費税相当額の一方的な減額「インボイスがないので消費税分を払わない」
課税事業者になることの強制「登録しなければ取引できない」と圧力

取引先との対話を通じて、双方にとって合理的な解決策を模索することが大切です。

よくある質問(FAQ)

経過措置はいつまで使えますか?
令和8年度税制改正大綱の方針に基づくと、令和13年9月30日(2031年9月30日)まで使える見込みです。従来は令和11年9月30日で終了予定でしたが、2年間延長される方針です。ただし、控除割合は80%→70%→50%→30%と段階的に縮小されます。
簡易課税を選択していますが、経過措置は関係ありますか?
簡易課税制度を選択している事業者は、みなし仕入率で消費税を計算するため、経過措置は直接的に関係しません。仕入先がインボイスを発行するかどうかにかかわらず、消費税の計算結果は同じです。
帳簿に「80%控除対象」と書き忘れたらどうなりますか?
経過措置の適用を受けるには、帳簿に「経過措置の適用を受ける旨」の記載が必要です。記載がない場合、税務調査で仕入税額控除を否認される可能性があります。事後的に帳簿を修正することは可能ですが、税務調査で指摘される前に自主的に修正しておくことが望ましいです。
2つの仕訳方法(費用上乗せ・雑損失振替)は混在してもよいですか?
はい、取引の性質に応じて使い分けることができます。ただし、会計処理の一貫性の観点から、原則として1つの方法に統一し、固定資産などの特殊な取引についてのみ別の方法を使う運用が実務的です。
免税事業者からの仕入れの上限額(1億円)はどう計算しますか?
令和8年度改正案では、「一の免税事業者」からの経過措置対象となる課税仕入れの額の合計額が、その年(個人)またはその事業年度(法人)で税込1億円を超える場合、超える部分には経過措置が適用されません。「一の免税事業者」ごとに判定するため、複数の免税事業者との合計ではありません。
2026年10月1日をまたぐ継続的な役務提供の場合、控除率はどうなりますか?
役務の提供については「完了日」で判定します。9月中に完了した役務は80%控除、10月以降に完了した役務は70%控除(改正案)です。ただし、短期前払費用として処理する場合は、支出した課税期間の控除率が全額に適用されます。
消費税の還付を受けている場合、経過措置の影響はどうなりますか?
輸出事業者など消費税の還付を受けている場合、経過措置で控除できない消費税が増えると、還付額が減少します。免税事業者からの仕入れが多い場合は、還付額への影響を試算しておきましょう。なお、消費税の基本的なしくみについては「消費税のしくみと基本を完全ガイド」で解説しています。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • インボイスの経過措置は、免税事業者からの仕入れの一定割合を控除できる時限的な救済制度
  • 令和8年度税制改正大綱で、80%→70%→50%→30%→0%の5段階に多段階化される方針
  • 適用には「経過措置の適用を受ける旨」を記載した帳簿と区分記載請求書の保存が必要
  • 仕訳方法は「費用上乗せ」と「雑損失振替」の2つ。固定資産取得がある場合は費用上乗せが無難
  • 簡易課税を選択している事業者は経過措置の影響を受けない
  • 免税事業者への一方的な値引き要請や取引停止は独禁法・下請法に抵触する可能性がある
  • 経過措置終了に向けて、取引先のインボイス登録状況の確認と対応方針の策定を早めに

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