【税理士×公認会計士×行政書士が解説】廃業の手続きと清算の流れ|法人解散から清算結了までの税務・届出を完全ガイド

【税理士×公認会計士×行政書士が解説】廃業の手続きと清算の流れ|法人解散から清算結了までの税務・届出を完全ガイド
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

廃業の手続きと清算の流れ|法人解散から清算結了までの税務・届出を完全ガイド

廃業を決断した経営者向けに、法人解散から清算結了までの11ステップ、3種類の税務申告、費用(合計35〜60万円)、各種届出先を税理士×公認会計士×行政書士がガイドします。この記事を読めば、自分で進められる部分と専門家に依頼すべき部分が判断でき、90日〜数ヶ月で確実に廃業手続きを完了できます。

🏆 結論:廃業は「解散→官報公告→清算→結了」の4フェーズで最低2ヶ月、実務的には3〜4ヶ月

廃業手続きの核となる流れは、①株主総会の解散決議、②法務局への解散登記、③官報公告(2ヶ月間の債権者保護手続き)、④残余財産の確定、⑤税務申告(解散事業年度+清算事業年度)、⑥清算結了登記、⑦各種機関への届出、の7段階です。官報公告期間2ヶ月は法律で定められた最短期間のため、どんなに急いでも解散から清算結了まで最低2ヶ月は必要です。実務的には、資産の換金・債務の弁済・税務申告書の作成を含めると3〜4ヶ月が標準で、費用は合計35〜60万円程度が目安です。

廃業の選択肢|4つのパターンから自社に合う方法を選ぶ

「廃業」と一言で言っても、実は4つの選択肢があります。資産状況と債務状況によって適切な方法が異なるため、まず自社の状況を客観的に把握することが重要です。

廃業の4パターン完全分類

パターン 前提条件 手続きの特徴 費用目安
①通常清算 資産>負債
(資産超過)
株主総会決議で自主的に清算。裁判所の関与なし 35〜60万円
②特別清算 資産≒負債
(債務超過の疑いあり)
株式会社限定。裁判所が関与する清算手続き 100〜300万円
③破産 資産<負債
(明確な債務超過)
裁判所による破産手続開始決定。管財人選任 200〜500万円以上
④休眠 将来的な再開可能性 事業活動停止。法人格は維持、解散せず 数万円(異動届のみ)

本記事で扱うのは「通常清算」

本記事で詳しく解説するのは、①通常清算(法律上の正式名称は「清算手続」)です。株式会社・合同会社のいずれでも利用可能で、資産超過の会社が自主的に解散する最も一般的な廃業方法です。

💡 実務のポイント

実務では、「廃業したい」と相談に来る経営者の9割が通常清算で対応可能です。債務超過で破産を検討する場合は、事業再生のスキームを先に検討することをお勧めします。「事業再生のスキームを比較|私的整理・民事再生・活性化協議会・特定調停の使い分け」で解説している私的整理で再建できるケースも多く、破産は最終手段です。

廃業(通常清算)の全体像|11ステップ完全タイムライン

法人の通常清算は、法律で定められた11ステップを順番に進める必要があります。途中で飛ばせるステップはほぼなく、特に官報公告の2ヶ月間は法定期間です。

11ステップのタイムライン

ステップ 内容 期限 関係機関
①株主総会の特別決議 解散と清算人選任を決議
②解散・清算人選任登記 法務局へ登記申請 解散日から2週間以内 法務局
③解散の届出 税務署・都道府県・市区町村等に届出 解散日から1ヶ月以内 税務署・自治体
④財産目録・貸借対照表作成 解散日現在の財産を確認 解散後遅滞なく
⑤官報公告・個別催告 債権者保護手続き(2ヶ月以上) 解散後遅滞なく 官報
⑥解散確定申告 解散日までの事業年度を申告 解散日翌日から2ヶ月以内 税務署
⑦清算事務遂行 債権回収・資産換価・債務弁済 官報公告期間中に並行
⑧残余財産の確定・分配 株主へ残余財産を分配 債務弁済完了後
⑨清算確定申告 清算事業年度の最終申告 残余財産確定日翌日から1ヶ月以内 税務署
⑩決算報告承認・清算結了登記 株主総会承認→法務局登記 承認日から2週間以内 法務局
⑪清算結了の届出 税務署等に法人消滅を届出 登記完了後速やかに 税務署・自治体

最短スケジュール(3〜4ヶ月)のモデルケース

🧮 3〜4ヶ月完了モデル

1日目:株主総会解散決議
3〜5日:司法書士に解散登記依頼、官報掲載予約
2週間:解散登記完了、官報公告開始
1ヶ月:税務署・自治体への解散届出完了、財産目録作成
2ヶ月:解散確定申告完了、官報公告期間満了(債権申出なし)
2.5ヶ月:残余財産確定、株主へ分配
3ヶ月:清算確定申告、株主総会承認、清算結了登記
3.5ヶ月:各種機関への清算結了届出完了

官報公告期間(2ヶ月)は法定で短縮不可。これを見越した計画が必要です。

ステップ1|株主総会の特別決議|解散と清算人選任

廃業の第一歩は、株主総会による解散の特別決議です。会社法第471条第3号により、株式会社の解散には議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の2/3以上の賛成が必要です。

株主総会議事録に記載すべき内容

💡 実務のポイント

実務では、解散決議と清算人選任は同じ株主総会で同時に決議するのが標準です。清算人は代表取締役がそのまま就任するケースが9割以上です。これにより、会社の事情を熟知した者が清算手続きを進められ、外部清算人を選任するコストを省けます。議事録の雛形は司法書士・行政書士に依頼すれば用意してもらえます。

ステップ2〜3|解散登記と税務署等への届出

解散・清算人選任登記(登録免許税39,000円)

株主総会の解散決議から2週間以内に、法務局へ以下の登記申請を行います。

登記の種類 登録免許税 添付書類
解散登記 30,000円 株主総会議事録
清算人選任登記 9,000円 就任承諾書、印鑑届書
合計 39,000円

税務署等への解散届出

解散登記完了後、以下の機関に異動届出書を提出します。清算結了まで法人税の申告義務は継続するため、「異動届(解散)」として処理します。

届出先 提出書類 期限
税務署 異動届出書、登記事項証明書 速やかに
都道府県税事務所 異動届出書、登記事項証明書 速やかに
市区町村役場 異動届出書、登記事項証明書
※東京23区は不要
速やかに
年金事務所 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届 事実発生から5日以内
ハローワーク 雇用保険適用事業所廃止届 廃止日翌日から10日以内
労働基準監督署 労働保険確定保険料申告書 廃止日翌日から50日以内

📝 行政書士の視点

行政書士法第1条の2に基づき、各種許認可を取得している会社は、廃業前に許認可の廃止届出も必要になります。建設業許可・宅建業免許・古物商許可・運送業許可・飲食店営業許可など、許認可の種類によって届出先と期限が異なります。特に建設業許可は、廃業届を出さずに放置すると5年間再取得できない可能性があるため注意が必要です。行政書士が一括で対応することで、各許認可の届出漏れを防げます。

ステップ4〜5|財産目録の作成と債権者保護手続き

財産目録・貸借対照表の作成

清算人は、解散日現在の財産目録と貸借対照表を作成します(会社法第492条第1項)。これは清算手続きの出発点となる重要な書類で、以下の要素を含みます。

官報公告(2ヶ月間の債権者保護手続き)

会社法第499条により、清算人は解散後遅滞なく、債権者に対して「債権があれば一定期間内(2ヶ月以上)に申し出るよう」官報に公告する必要があります。この期間中、清算手続きは最終段階に進めません。

項目 内容
公告媒体 官報(国立印刷局発行の機関紙)
公告期間 2ヶ月以上(会社法第499条)
費用 1枠40,882円〜(2025年4月改定、1行22文字の行数制)
公告内容 解散した旨、債権者に対する申出期間(2ヶ月以上)
個別催告 知れている債権者には個別に書面で催告(会社法第499条第2項)

⚠️ 債権者保護手続きを怠るとどうなるか

官報公告や個別催告を怠ったまま清算結了すると、①公告期間内に申し出なかった債権者から損害賠償請求される、②清算結了登記が受理されない、③最悪の場合、清算人の個人責任に発展する、のリスクがあります。官報公告費は40,000円程度ですが、これを惜しんで省略すると数百万円の損害賠償リスクに発展する可能性があります。必ず適法に行うべき手続きです。

ステップ6・9|3つの税務申告を正確に理解する

廃業プロセスでは、通常の確定申告とは別に、解散・清算に伴う3種類の申告が必要です。それぞれ計算方法・期限・留意点が異なるため、混同しないことが重要です。

3つの税務申告の区分

申告の種類 対象期間 申告期限 計算上の特徴
①通常事業年度申告 事業年度開始日〜解散日の前日
※解散日でみなし事業年度終了
通常の法人税計算
②解散確定申告(解散事業年度) 事業年度開始日〜解散日 解散日翌日から2ヶ月以内 通常計算と同じ。みなし事業年度
③清算事業年度申告 解散日翌日〜残余財産確定日 残余財産確定日翌日から1ヶ月以内 期限切れ欠損金の特例適用可

参考: 国税庁タックスアンサーNo.5480「法人の解散・清算と税務」

解散確定申告(②)のポイント

解散確定申告は、事業年度開始日から解散日までの期間を対象とします。通常の法人税計算と同じで、特例は基本的にありません。ただし、解散に伴い資産を売却した場合の損益(売却損・売却益)や、事業用資産の評価替えが含まれることが一般的です。

清算事業年度申告(③)のポイント — 期限切れ欠損金の損金算入特例

清算事業年度の申告で最も重要なのが、法人税法第59条第3項の「期限切れ欠損金の損金算入特例」です。残余財産がないと見込まれる場合、通常は使えない「期限切れ欠損金」(青色欠損金の繰越期限10年を超過したもの)を、債務免除益や資産売却益と相殺できる特例です。

📊 公認会計士の視点

実務では、清算事業年度で債務免除を受けるケースや、含み益のある資産を売却するケースで期限切れ欠損金の特例が活用されます。例えば、長年赤字で期限切れ欠損金が5,000万円ある会社が、清算中に土地を売却して譲渡益3,000万円が出た場合、通常は3,000万円に課税されますが、期限切れ欠損金の特例を使えば相殺でき、税負担なしで清算を完了できます。適用要件は「残余財産がないと見込まれる」ことで、実質債務超過状態の会社なら適用可能です。税理士の関与が必須の論点です。

消費税の最終申告

消費税の課税事業者の場合、解散事業年度・清算事業年度それぞれで消費税の確定申告も必要です。会社が解散しても、2期前の課税売上高が1,000万円を超えている場合、消費税の納税義務は消滅しません。清算結了まで消費税の申告義務は継続します。

ステップ7|清算事務の遂行|資産換価と債務弁済

官報公告期間(2ヶ月)と並行して、清算人は以下の清算事務を遂行します。

清算事務の5つの作業

  1. 現在業務の結了:進行中の契約の完了、新規契約の停止
  2. 債権の取立て:売掛金・貸付金の回収
  3. 資産の換価:不動産・機械・在庫の売却、現金化
  4. 債務の弁済:買掛金・未払金・借入金の支払い
  5. 残余財産の確定:資産<負債の場合は特別清算・破産へ移行、資産>負債なら次のステップへ

従業員の退職・解雇対応

🔷 社労士の視点

従業員がいる会社の廃業では、労働基準法第20条に基づく解雇予告(30日前予告または30日分以上の解雇予告手当)が必要です。また、社会保険労務士法に基づく社会保険の喪失手続き、雇用保険の離職手続き、退職金の支払い、源泉徴収票の交付、住民税の特別徴収から普通徴収への切替など、多数の労務手続きが発生します。従業員とのトラブル回避のためにも、廃業決断後30日以上の準備期間を確保することをお勧めします。

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ステップ8|残余財産の確定と株主への分配

債務弁済が完了し、残余財産が確定したら、株主への分配を行います。分配は、原則として現金で行い、各株主の持株比率に応じて配分します(会社法第504条)。

残余財産分配の税務(みなし配当と資本の払戻し)

残余財産の分配は、株主にとって税務上「みなし配当」と「資本の払戻し」の両方の性質を持ちます(所得税法第25条第1項第4号、法人税法第24条第1項第4号)。

🧮 みなし配当の計算例

例:資本金1,000万円、利益剰余金2,000万円の会社を清算
残余財産3,000万円を100%株主(個人)1名に分配する場合

みなし配当額=3,000万円 − 1,000万円(資本金等)=2,000万円
資本の払戻し額=1,000万円

みなし配当2,000万円は配当所得として総合課税(所得税・住民税)、資本の払戻し1,000万円は株式の譲渡対価として分離課税(譲渡所得)で処理されます。配当所得は源泉徴収(20.42%)されるため、会社は源泉徴収と納付が必要です。

ステップ10〜11|清算結了登記と最終届出

決算報告書の作成・承認

清算事務がすべて完了したら、清算人は決算報告書を作成し、株主総会で承認を受けます(会社法第507条第3項)。決算報告書は以下の要素を含みます。

清算結了登記(登録免許税2,000円)

株主総会で決算報告書が承認された日から2週間以内に、法務局へ清算結了登記を申請します。登録免許税は2,000円です。この登記によって、会社の法人格が正式に消滅します。

清算結了の届出

清算結了登記完了後、以下の機関へ清算結了の届出を行います。

年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署は解散届出時点で手続き済みのため、この段階では不要です。

廃業(通常清算)の費用シミュレーション

通常清算にかかる費用の目安を、小規模な中小企業のケースで試算します。

📐 シミュレーション前提条件

  • 小規模中小企業:年商3,000万円、資産超過、従業員3名
  • 専門家(司法書士・税理士・社労士・行政書士)に一括依頼
  • 複雑な許認可や不動産処分なし
費用項目 金額目安 備考
登録免許税(解散・清算人選任) 39,000円 法定費用
登録免許税(清算結了) 2,000円 法定費用
官報公告料 40,882円〜 2025年4月改定、1枠から
司法書士報酬(登記) 100,000〜200,000円 解散・清算結了の2回
税理士報酬(3種の申告) 150,000〜300,000円 解散確定申告+清算確定申告
社労士報酬(労務手続き) 50,000〜100,000円 社保・雇用保険の喪失手続き
行政書士報酬(許認可廃止等) 30,000〜100,000円 許認可の有無で変動
費用合計 約350,000〜600,000円

※概算値です。専門家への依頼内容、会社の規模、許認可の数、資産処分の複雑性により変動します。

費用を抑える3つの方法

休眠を選ぶという選択肢|清算との比較

廃業の相談を受ける際、「清算するか休眠するか」の判断に迷う経営者が多くいます。状況に応じて、休眠の方が適切なケースもあります。

清算 vs 休眠の比較表

項目 清算(解散〜結了) 休眠
法人格 消滅する 存続する
手続き 解散・清算結了登記、11ステップ 異動届出書の提出のみ
費用 35〜60万円 数万円以内
期間 3〜4ヶ月 届出直後から休眠状態
法人住民税均等割 不要(消滅) 原則必要(免除申請で免除可能な自治体あり)
法人税申告 不要(消滅) 必要(赤字でも均等割のみ申告)
事業再開 不可(新会社設立が必要) 可能(休眠解除で再開)
みなし解散のリスク 12年間登記がないと法務局がみなし解散の職権登記

休眠を選ぶべきケース

💡 休眠が適するケース

①将来的な事業再開の可能性がある、②許認可を維持したい(建設業許可など取り直しに時間がかかるもの)、③繰越欠損金を活用したい、④後継者候補がいるが決断に時間が必要、⑤廃業費用を捻出する余裕がない、のいずれかに該当する場合は、休眠を選ぶメリットがあります。ただし休眠中も法人住民税均等割(年7万円程度)が発生する自治体が多いため、長期間(5年以上)の休眠はコスト面で不利になります。

廃業でよくある失敗事例|NG事例5選と回避策

NG1|官報公告を省略して清算結了

⚠️ NG事例

「債権者がいないから」と官報公告を省略して清算結了したケース。後から元取引先の小額債権が見つかり、清算人個人への損害賠償請求に発展。官報公告費40,000円を惜しんだことで、結果的に数百万円の訴訟対応費用を負担することに。官報公告は法定手続きで省略不可です。

NG2|解散確定申告の期限を過ぎる

解散日翌日から2ヶ月以内の解散確定申告を忘れると、無申告加算税(15〜20%)+延滞税のペナルティが発生します。解散登記と同時に、税理士に申告期限をカレンダー登録してもらうことをお勧めします。

NG3|残余財産分配の税務処理ミス

残余財産分配時のみなし配当に対する源泉徴収(20.42%)を怠ると、法人に源泉所得税の納付義務違反となります。税額が大きい場合、数百万円〜の追徴課税につながります。分配前に必ず税理士に相談し、正しい税務処理を確認してください。

NG4|許認可の廃止届出を忘れる

建設業許可・宅建業免許などの許認可を取得したまま廃業すると、許可期限まで許可業者として取り扱われ、関連法令違反のリスクがあります。特に建設業許可は、適切な廃業届を出さないと5年間再取得できない制裁規定があります。

NG5|帳簿書類の保存義務を忘れる

法人税法第126条により、法人の帳簿書類は原則として7年間(一部10年間)の保存義務があります。清算結了後も、最後の事業年度の確定申告書提出期限から7年間は帳簿保存が必要です。廃業時に書類を廃棄すると税務調査で指摘されるリスクがあります。

廃業と事業承継・M&A|他の選択肢も検討する

廃業を決断する前に、事業承継やM&Aという選択肢も検討する価値があります。廃業は会社の歴史を閉じる決断ですが、事業承継やM&Aなら事業が継続され、従業員の雇用も維持されます。

廃業 vs 事業承継 vs M&Aの比較

選択肢 前提条件 メリット デメリット
廃業(通常清算) 資産超過 迅速、シンプル 事業価値消滅、雇用終了
事業承継(親族内) 後継者あり 事業継続、文化維持 後継者の能力・意欲に依存
事業承継(社内) 従業員に後継候補 文化維持、スムーズ 資金調達(MBO)が課題
M&A(第三者承継) 事業価値あり 売却代金取得、雇用維持 買い手発見に時間、条件交渉

M&Aについては、中小企業庁「事業承継・引継ぎ支援センター」が全国に設置されており、M&Aマッチング支援を無料で受けられます。廃業を決断する前に、こうした公的支援機関への相談も検討する価値があります。

参考: 中小企業庁「事業承継・引継ぎ支援センター」。全国47都道府県に設置された公的な事業承継支援機関です。

よくある質問(FAQ)

廃業の決断から完了までどれくらい期間がかかりますか?
最短で3〜4ヶ月、標準的には4〜6ヶ月です。官報公告期間(2ヶ月)が法定で短縮不可のため、どんなに急いでも最短2ヶ月は必要です。さらに、解散前の準備(従業員への通知、取引先への挨拶回り、資産の整理)に1ヶ月、清算事業年度の税務申告に1ヶ月程度を見込みます。不動産売却や複雑な債権回収がある場合は、半年〜1年かかるケースもあります。
廃業にかかる合計費用はいくらですか?
小規模な中小企業の通常清算で、合計35〜60万円程度が目安です。内訳は、法定費用(登録免許税41,000円+官報公告40,882円〜)が約8万円、司法書士・税理士・社労士・行政書士の報酬が合計30〜50万円です。許認可が多い、不動産処分がある、複雑な債権債務がある場合はこれより高くなります。なお、破産手続きは200〜500万円、特別清算は100〜300万円とさらに高額になります。
解散後に借入金を返しきれない場合はどうなりますか?
借入金を返済できる範囲で弁済し、残った債務は代表者の個人保証に基づき、代表者個人への請求に移ります。個人で完済できない場合、経営者保証ガイドラインに基づき保証債務の整理、または個人破産を検討することになります。いずれにしても、通常清算で対応できない場合は、特別清算または破産に切り替える必要があります。「債務超過の判定と解消方法」もご参照ください。
清算事業年度で残っている繰越欠損金は使えますか?
使えます。法人税法第57条の繰越欠損金の控除は、清算事業年度でも通常通り適用されます。さらに、期限切れ欠損金(繰越期限10年超過分)も、「残余財産がないと見込まれる場合」に限り、法人税法第59条第3項で損金算入可能です。長年赤字だった会社が清算中に資産売却益を出した場合、期限切れ欠損金と相殺して税負担をゼロにできるケースが多々あります。
個人事業主の廃業手続きはどう違いますか?
個人事業主の廃業は、法人よりはるかにシンプルです。「個人事業の開業・廃業等届出書」を廃業日から1ヶ月以内に税務署に提出、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を翌年3月15日までに提出、「事業廃止届出書」(消費税の課税事業者の場合)を速やかに提出、の3種類が基本です。費用もほぼゼロで、1〜2週間で完了します。ただし確定申告は通常通り必要です。
代表取締役の退職金はいつ払えばいいですか?
代表取締役の退職金は、解散決議と同時または解散事業年度中に株主総会で決議し、支払うのが一般的です。解散事業年度で退職金を損金算入することで、法人税の節税になります。ただし、不相当に高額な退職金は損金算入が否認されるリスクがあるため、法人税法施行令第70条の「功績倍率法」などの合理的な算定方法で計算することが必要です。
休眠と清算、どちらが税金面で得ですか?
結論から言えば、1〜2年以内に再開の可能性があるなら休眠、再開可能性がないなら清算です。休眠中も法人住民税均等割(年7万円程度)が発生する自治体が多く、5年休眠すると35万円の均等割負担となります。これに対し、清算費用は35〜60万円。5年以上休眠するなら清算の方がトータルコストで安くなります。また、清算すると赤字の繰越欠損金が消滅するため、繰越欠損金を活用したい場合は休眠が有利です。
清算結了後に債権者が現れた場合はどうなりますか?
官報公告・個別催告の期間内に申し出なかった債権者は、原則として弁済を受けられません(会社法第503条第2項)。ただし、清算人が悪意または重大な過失で債権者を除外した場合、清算人個人の損害賠償責任が生じます。実務では、清算結了後に想定外の債権が判明するケースがあるため、念のため清算結了後も数年間は清算人が対応できる連絡先を残しておくことをお勧めします。
廃業後の帳簿書類は何年保存が必要ですか?
法人税法第126条により、原則として7年間(青色欠損金の繰越控除を受けた場合は10年間)の保存義務があります。清算結了後も、最後の事業年度の確定申告書提出期限から起算するため、廃業後も7〜10年は帳簿を保存する必要があります。紙の書類は物理的な保管場所、電子書類はサーバー保存が必要です。廃業時に全て廃棄するのは違法です。
廃業を決断する前に他に検討すべきことはありますか?
事業承継(親族内・社内)とM&A(第三者承継)を必ず検討してください。中小企業庁の「事業承継・引継ぎ支援センター」で無料相談できます。また、事業再生の可能性も検討に値します。「事業再生のスキームを比較」で解説している中小企業活性化協議会スキームなどで、再建できる可能性があるかもしれません。廃業は最終手段として位置づけ、事業と従業員を守る選択肢を尽くした上で決断することをお勧めします。

まとめ|廃業は計画的に、4士業ワンストップでの対応が最も効率的

📋 この記事のポイント

  • 廃業には4パターン(通常清算・特別清算・破産・休眠)があり、財務状況で選択する
  • 通常清算は11ステップ、最短3〜4ヶ月、費用35〜60万円で完了
  • 官報公告の2ヶ月間は法律で定められた最短期間で短縮不可
  • 3つの税務申告(通常事業年度・解散事業年度・清算事業年度)が必要で期限厳守
  • 清算事業年度では、期限切れ欠損金の損金算入特例(法人税法第59条第3項)が活用可能
  • 残余財産の分配はみなし配当+資本の払戻しで、株主に所得税が発生
  • 届出先は税務署・自治体・年金事務所・ハローワーク・労基署・許認可官庁など多数
  • 司法書士(登記)・税理士(税務)・社労士(労務)・行政書士(許認可)の4士業連携が必要
  • 廃業前に事業承継・M&Aの検討、事業再生の可能性も必ず確認する

廃業は会社の歴史を閉じる重大な決断ですが、適切な手順で進めれば3〜4ヶ月で完了します。重要なのは、感情に流されず計画的に進めることと、専門家との連携で漏れなく手続きを進めることです。特に官報公告・税務申告・残余財産の分配は法定要件と税務影響が複雑で、自分だけで進めるとミスや追加コストのリスクがあります。4士業ワンストップで対応することで、トータルコストと期間を最小化できます。

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