【行政書士×税理士が解説】合同会社(LLC)の設立手続きと費用|株式会社との比較と定款自治の活かし方

【行政書士×税理士が解説】合同会社(LLC)の設立手続きと費用|株式会社との比較と定款自治の活かし方
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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合同会社(LLC)の設立手続きと費用|株式会社との比較と定款自治の活かし方

設立コストを抑えたい創業者向けに、合同会社(LLC)の設立手続きを解説します。この記事を読めば、最安6万円での設立方法、定款認証が不要な手続きの流れ、代表社員・業務執行社員の設計、株式会社との実費14万円差の内訳が具体的にわかります。

🏆 結論:合同会社は定款認証不要・登録免許税6万円からで最安6万円。定款自治で運営の自由度が高い反面、社会的認知度は株式会社に劣る

合同会社(LLC)は会社法に基づく法人形態の一つで、株式会社と比べて最大14万円も設立費用が安く、最短実費約6万円で設立可能です。定款認証手数料が不要(公証役場での認証が不要)、登録免許税は資本金の0.7%または最低6万円と株式会社の最低15万円より9万円も安く、定款自治により組織設計の自由度が高いことが最大の特徴です。一方、社員(出資者=経営者)全員の同意が必要な決議事項があり、対外的な社会的認知度は株式会社に劣るため、業種・規模・将来ビジョンによって選択を検討します。

合同会社(LLC)とは|株式会社との本質的な違い

合同会社は、2006年5月施行の会社法により新設された法人形態で、米国のLLC(Limited Liability Company)をモデルとした「人的会社」です。株式会社が「株主(出資者)」と「経営者」を分離した資本多数決の会社であるのに対し、合同会社は原則として「社員(出資者)が全員経営に参加する」人的組合型の会社です。

項目 合同会社 株式会社
根拠法令会社法第3編(持分会社)会社法第2編(株式会社)
出資者の呼び方社員(従業員ではない)株主
責任有限責任(出資額の範囲)有限責任(出資額の範囲)
経営の主体業務執行社員(原則、社員全員)取締役
代表者代表社員代表取締役
定款認証不要必要(公証役場)
登録免許税の最低額6万円15万円
決算公告義務なしあり
役員任期制限なし最長10年(非公開会社)
利益配分出資比率に関係なく定款で自由設計出資比率(株数)に応じる
意思決定原則、社員全員の同意株主総会の多数決
社会的認知度中程度(普及しつつあるが株式会社より低い)高い
法人税の税率株式会社と同じ同じ

💡 行政書士の視点

日本では「合同会社=信用度が低い」という誤解がありますが、Amazon Japan・Google 合同会社・Apple Japan・西友など大手外資系企業が合同会社の形態を取っており、法人としての信用力は株式会社と変わりません。ただし、日本の中小企業・取引先との商談では「株式会社」表記を期待されるケースが依然多いため、B2B取引の業種では株式会社を選ぶメリットが残ります。

合同会社設立の全体フロー【7ステップ】

合同会社の設立は、株式会社と比べて「定款認証」のステップが不要なため、1ステップ少なくなります。全体で2〜3週間が標準スケジュールです。

  1. 基本事項の決定(1週目前半):商号・本店所在地・事業目的・資本金・社員・代表社員・決算期
  2. 定款の作成(1週目後半):会社法第576条の絶対的記載事項を含め、組織ルールを定款に規定
  3. 印鑑の作成(1週目後半):会社実印・銀行印・角印を発注(3〜7日)
  4. 資本金の払込(2週目):代表社員の個人口座に資本金を振込み、払込証明書を作成
  5. 登記申請書類の作成(2週目):設立登記申請書、代表社員就任承諾書等を準備
  6. 法務局への登記申請(3週目):本店所在地管轄の法務局に申請(申請日が設立日)
  7. 登記完了後の各種届出(3〜4週目):税務署・年金事務所・都道府県税事務所等へ届出

🧮 株式会社との工程差

定款認証ステップがないため、公証役場への訪問・事前チェックの往復(通常3〜5日)が省かれます。電子定款を自作する場合はマイナンバーカード等の準備も不要ですが、印紙代4万円を節約するためには電子定款を選ぶのがセオリーです。実務上、定款を作成→印鑑作成→資本金払込→登記申請の流れで最短10日前後での設立も可能です。

設立費用の全内訳【最安6万円も可能】

費用項目 紙定款 電子定款
定款認証手数料不要(0円)不要(0円)
定款印紙代40,000円0円
登録免許税(資本金の0.7%、最低6万円)60,000円〜60,000円〜
会社実印・銀行印・角印10,000〜30,000円10,000〜30,000円
代表社員の印鑑証明書数百円数百円
登記事項証明書(登記後取得)600円/通600円/通
実費合計(資本金100万円未満)約11万円約7万円

※資本金の払込み自体は費用ではなく、会社の資産となります。行政書士・司法書士に設立代行を依頼する場合は別途3〜10万円の報酬が発生します。

登録免許税の計算例

資本金額 0.7%計算 最低6万円との比較 登録免許税額
100万円7,000円最低額のほうが大60,000円
500万円35,000円最低額のほうが大60,000円
1,000万円70,000円計算額が大70,000円
3,000万円210,000円計算額が大210,000円

合同会社の役職構造【社員・業務執行社員・代表社員】

合同会社の役職は、株式会社の取締役・代表取締役と異なる独特の構造を持ちます。

社員(出資者=経営者)

合同会社の「社員」は、従業員の意味ではなく出資者のことを指します。原則として全ての社員が会社の業務執行権と代表権を持ちます。定款で別段の定めをしない場合、1人で設立する合同会社は「その1人が全権を持つ代表社員」となります。

業務執行社員(定款で指定する場合)

定款で業務執行社員を指定した場合、指定された社員のみが会社の業務執行権を持ち、他の社員は出資のみ行う「パッシブ社員」となります。この仕組みを使うことで、米国LLC的な「投資家社員」と「経営社員」の区分が可能です。

代表社員

会社を代表して対外的な契約を締結する権限を持ちます。株式会社の代表取締役に相当します。定款で「代表社員は○○とする」と定めるか、業務執行社員の互選で選任します。1社員合同会社の場合、その社員が自動的に代表社員となります。

💡 実務のポイント

設立時は「1社員・1業務執行社員・1代表社員」(全て同一人物)がシンプルで運営しやすい構成です。共同創業の場合、出資比率と同じ比率で損益配分するか、貢献度に応じて異なる比率にするかを定款で自由に設計できます。例えば「AさんとBさんが50万円ずつ出資したが、Aさんがフルタイムで経営するので利益配分はA:B=7:3」という設計も可能で、これは株式会社にはない柔軟性です。

定款作成の実務|絶対的記載事項と定款自治

絶対的記載事項(会社法第576条)

以下を記載しないと定款自体が無効となります。

  1. 目的:会社の事業内容。将来展開を見据えて広めに記載
  2. 商号:「合同会社」の文字を商号の前後いずれかに含める
  3. 本店所在地:最小行政区画(例:東京都新宿区)まで
  4. 社員の氏名又は名称及び住所:印鑑登録証明書と一致
  5. 社員の全部を有限責任社員とする旨:合同会社の本質的要素
  6. 社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準:金銭・現物・労務の区別

定款自治で規定すべき重要事項

合同会社は「定款自治」が広く認められており、以下の項目を定款で自由に設計することで運営トラブルを防げます。

項目 法定ルール(デフォルト) 定款自治で変更できる例
業務執行の意思決定業務執行社員の過半数3分の2・代表社員単独決定等
定款変更・社員追加総社員の同意3分の2・過半数に緩和可
社員の死亡時退社(地位喪失)相続人が地位承継可
利益配分出資比率に応じて分配出資比率と無関係に自由設計
持分譲渡他の社員全員の承諾条件付き自由譲渡可

⚠️ 1人社員合同会社の死亡リスク

法定ルールでは「社員数がゼロになると合同会社は解散」します。1人社員の合同会社で社員が死亡した場合、相続人が地位を承継しない限り会社が自動的に解散となる重大リスクがあります。定款に「社員が死亡した場合、相続人がその持分を承継する」旨を明記することで、このリスクを回避できます。1人合同会社では設立時に必ず設定すべき規定です。

資本金の払込みと登記申請

払込の流れ

  1. 定款完成後、代表社員の個人口座(既存の普通預金口座で可)を指定
  2. 社員全員が代表社員の指定口座へ出資額を振込(1人社員は自分の別口座から本人口座への振込でも可)
  3. 通帳の該当ページ(表紙・見開き・振込記帳ページ)をコピー
  4. 払込証明書を作成し、代表社員が記名押印

登記申請の必要書類

  1. 合同会社設立登記申請書
  2. 登録免許税の収入印紙貼付台紙
  3. 定款(公証人認証は不要)
  4. 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
  5. 代表社員の就任承諾書(定款で直接定めた場合は不要)
  6. 代表社員の印鑑登録証明書(3か月以内)
  7. 払込を証する書面(通帳コピー含む)
  8. 印鑑届書(会社実印の届出)
  9. 資本金の額の計上に関する証明書

登記申請と設立日

本店所在地管轄の法務局に、書面申請・オンライン申請・郵送申請のいずれかで提出します。窓口に申請した日が会社設立日として登記されます。審査期間は1〜2週間です。

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合同会社が向いているケース・向いていないケース

向いているケース

  • 1人社長のスタートアップ:株式総会・取締役会等の形式が不要でスピード経営が可能
  • 家族経営の小規模事業:家族で出資比率と別の利益配分を設定でき、柔軟な経営が可能
  • サブスク・SaaS・Web事業:対個人のB2Cビジネスは合同会社でも違和感なく受け入れられる
  • 不動産管理会社:決算公告義務なし・低コストで節税効果を狙える
  • 外資系の日本法人:本国の意思決定を尊重しつつ、役員任期等の縛りがない
  • 副業の受け皿:会社員が副業用に法人を設立する場合のコスト最小化

向いていないケース

  • 将来IPO(上場)を目指す:株式会社形態が前提。途中変更コスト高
  • VC・エンジェル投資家から出資を受ける:株式による出資が前提のため不向き
  • 大手企業・官公庁との取引がメイン:「株式会社」を商談条件にする先が一部存在
  • 多数の従業員を雇用する大組織:社員全員の同意原則が運営の足かせになりやすい
  • 複雑な資本政策が必要:種類株・新株予約権等は合同会社にない

株式会社との詳細費用シミュレーション

設立費用の総額を資本金別に比較します。

資本金 合同会社(電子定款) 株式会社(電子定款・新制度) 差額
100万円未満約6〜7万円約16万円(新制度適用)9〜10万円
100万円以上300万円未満約6〜7万円約19万円12万円
300万円以上1,000万円未満約6〜7万円約20万円13〜14万円
1,000万円約8万円約20万円12万円
3,000万円約22万円約26万円4万円

資本金が低いほど設立費用の差が相対的に大きくなります。100万円未満の小規模設立なら合同会社のコストメリットが最大です。

合同会社から株式会社への組織変更

合同会社で設立後、事業拡大に伴って株式会社に変更することも可能です。

組織変更の流れ

  1. 社員全員の同意による組織変更計画の作成
  2. 債権者への公告・催告(官報公告で1か月以上の異議申述期間)
  3. 株式会社への組織変更登記(同時に合同会社の解散登記)

組織変更時の費用

費用項目 金額
株式会社への設立登記の登録免許税資本金の0.15%(最低3万円)
合同会社の解散登記の登録免許税30,000円
官報公告費約40,000円
定款変更・認証(新定款が必要)30,000〜50,000円
合計目安10〜15万円

組織変更費用は新規株式会社設立とほぼ同額になるため、最初から株式会社で設立した方がトータルでは安くなるケースも多いです。将来上場を明確に狙う場合は、最初から株式会社を選択する判断が経済的です。

設立後によくある失敗例と対策

失敗例1:1人社員で死亡時の承継規定を入れていない

1人社員が死亡すると会社が自動解散となり、事業資産・取引先・従業員の引継ぎができません。対策:定款に「社員が死亡した場合、相続人が持分を承継する」旨を明記。

失敗例2:業務執行社員の決め方で揉める

複数社員が全員業務執行権を持つと、意思決定で対立が生じやすくなります。対策:定款で業務執行社員を特定の社員に限定し、決定方法(過半数・3分の2等)を具体的に定める。

失敗例3:持分譲渡のハードルが高すぎて資本移動できない

法定ルールの「他の社員全員の承諾」では、1名でも反対すれば譲渡不可です。対策:定款で「代表社員の承諾のみで譲渡可」等に緩和。

失敗例4:合同会社だから社会保険加入義務がないと誤解

法人は合同会社でも社会保険加入義務があります(1人代表社員でも対象)。対策:設立後5日以内に年金事務所へ新規適用届を提出。

失敗例5:取引先に「株式会社でないと取引できない」と言われる

業種・取引先によっては株式会社形態が商慣習として求められます。対策:設立前にメインターゲットの業界慣習をリサーチ。合同会社でも大手取引先を持つ会社は複数あるため、説明資料を準備。

よくある質問

合同会社の設立費用は本当に最安6万円ですか?
登録免許税の最低額6万円のみで設立可能ですが、実際には印鑑作成費・印鑑証明書取得費等で合わせて最低約7万円程度となります。電子定款で印紙代4万円を節約することが前提です。紙定款なら実費約11万円となります。
合同会社は信用度が低いと言われますが、取引に影響しますか?
業種・規模によります。Amazon・Google・Apple等の大手外資系も合同会社形態ですが、日本の中小企業対中小企業の取引では「株式会社」を要求されるケースが残ります。メインターゲットがB2C・個人事業主なら合同会社でも問題ありません。B2B・大手企業取引がメインなら株式会社の方が無難です。
合同会社の代表者を何と呼びますか?名刺にはどう書きますか?
法律上の正式呼称は「代表社員」です。名刺・Webサイトでは「代表」「CEO」「社長」等の慣習的呼称を使うことも多いです。登記上は代表社員と表記されますが、対外的な営業・PRでは柔軟な肩書きを用いて構いません。ただし契約書等の法的文書では「代表社員」の表記を使うべきです。
合同会社の決算公告は不要とのことですが、決算書類の保存は必要ですか?
決算公告義務はありませんが、会社法上の計算書類(貸借対照表・損益計算書・社員資本等変動計算書)の作成と10年間の保存義務は株式会社と同じです。税務申告でも必要なため実務上は同じ決算処理を行います。
合同会社でも法人税の税率や社会保険料は株式会社と同じですか?
同じです。法人税率・消費税・地方税・社会保険料・労働保険料は法人形態に関係なく同一の税率・計算方法が適用されます。税務上のメリットは法人化自体にあり、株式会社と合同会社の間に差はありません。
1人で合同会社を設立する場合の資本金はいくらが適切ですか?
事業規模・業種により変動しますが、100万〜500万円が目安です。資本金1円でも設立可能ですが、銀行融資・取引信用で不利になるため避けます。初期投資費用+半年分の運転資金を合算した額を資本金として設定する実務が多く見られます。
合同会社の定款認証は本当に不要ですか?
はい、合同会社は公証役場での定款認証が不要です(会社法第30条は株式会社にのみ適用)。ただし、紙定款の場合は印紙税法上の課税文書として4万円の収入印紙が必要です。電子定款なら印紙代も不要となり、認証関連コストは完全にゼロになります。
設立後に合同会社から株式会社に変更するのは簡単ですか?
手続きは可能ですが、費用約10〜15万円と期間約2か月(官報公告期間含む)がかかります。新設株式会社の設立コストとほぼ同等のため、将来上場を確実に狙うなら最初から株式会社にした方が経済的です。
合同会社の利益配分を出資比率と変えると問題がありますか?
会社法上は問題ありません。定款で自由に設計できます。ただし税務上は、労務提供実態等の合理的な根拠が必要です。「出資ゼロの社員に多額配分」など合理性のない配分は、税務調査で「贈与」と認定されるリスクがあります。
合同会社の定款変更はどの程度の手続きが必要ですか?
原則として総社員の同意が必要です。商号・本店所在地・目的・資本金等の登記事項を変更した場合、変更登記(登録免許税3万円〜)も必要です。定款で「3分の2の同意で変更可」等に緩和することで、運営の柔軟性を高められます。

📋 この記事のポイント

  • 合同会社は最安実費約6〜7万円で設立可能(電子定款+最低登録免許税)
  • 定款認証不要・登録免許税最低6万円で株式会社より9〜14万円安い
  • 役職は社員→業務執行社員→代表社員の3層構造
  • 定款自治で利益配分・意思決定方法を自由設計可能
  • 1人社員の場合、死亡時の承継規定を定款に必ず明記
  • 対個人・サブスク・家族経営・外資日本法人に向く
  • IPO志向・VC出資予定なら最初から株式会社が合理的
  • 合同会社→株式会社の組織変更は約10〜15万円・2か月
  • 社会保険加入義務は株式会社と同じ(設立後5日以内)

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