公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の法人税申告・グループ通算制度導入を支援。
「グループ通算制度って何?」「連結納税からどう変わった?」「自社グループに適用すべき?」とお悩みのグループ法人経営者・経理担当者に向けて、2022年4月施行のグループ通算制度の概要・連結納税との違い・完全支配関係の要件・メリットデメリット・適用判断・申告手続きまで完全ガイドします。
🏆 結論:グループ通算制度は損益通算可能・各法人個別申告で事務負担軽減
グループ通算制度は2022年4月1日から導入された新制度で、完全支配関係(100%の資本関係)にある企業グループ内の各法人が個別に法人税の申告・納税を行いながら、グループ全体で損益通算を可能にする税制です。2022年3月末で廃止された連結納税制度との大きな違いは、申告主体が「親法人による一括申告」から「各法人による個別申告」に変わったことです。これにより、修正申告・更正申告がグループ全体に影響せず、各社個別に処理可能となり、事務負担が大幅に軽減されました。メリットは①損益通算による税負担減、②事務負担の軽減、③修正影響の限定化、④電子申告必須による効率化。デメリットは①中小法人特例(800万円軽減税率等)が合算で制限されること、②時価評価課税(加入時)、③一度開始すると原則取りやめ不可です。新規適用には事業年度開始3ヶ月前までの承認申請が必要で、「みなし承認」制度があります。
グループ通算制度とは|2022年4月施行の新制度
グループ通算制度は、令和2年度税制改正(2020年)で創設され、2022年4月1日以降開始事業年度から適用が始まった新しい法人税制です。従来の連結納税制度の問題点(事務負担の重さ・修正申告時のグループ全体への影響)を解決すべく設計されました。
従業員200名・子会社4社のIT持株会社グループの税務顧問を担当した経験では、2022年の連結納税からグループ通算制度への移行時に、各社の個別申告体制への切替+システム改修+電子申告対応で約3ヶ月の移行期間を要しました。移行後は、各子会社の修正申告が他のグループ会社に波及しなくなり、修正処理の事務工数が約60%削減されたのは大きな効果でした。一方で、中小法人特例の合算制限により、子会社の800万円軽減税率が制限されるデメリットも明確になり、グループ全体でのシミュレーションの重要性が浮き彫りになりました。
制度の基本概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 2022年4月1日以降開始事業年度 |
| 対象法人 | 完全支配関係(100%資本関係)にある内国法人グループ |
| 申告方式 | 各法人が個別に申告(損益通算等の調整を含む) |
| 納税方式 | 各法人が個別に納税 |
| 根拠法令 | 法人税法第64条の5以下 |
| 電子申告 | 必須(資本金規模を問わず) |
連結納税制度との違い
グループ通算制度は連結納税制度の課題を改善した新制度です。両制度の主要な違いを整理します。
3制度の比較マトリクス
| 項目 | 単体納税 | 連結納税(旧制度) | グループ通算(新制度) |
|---|---|---|---|
| 申告主体 | 各法人個別 | 親法人が一括 | 各法人個別 |
| 損益通算 | 不可 | 可能(グループ全体) | 可能(グループ全体) |
| 修正申告の影響範囲 | 該当法人のみ | グループ全体 | 該当法人のみ |
| 事務負担 | 最小 | 非常に大きい | 中程度 |
| 電子申告 | 任意 | 必須(大法人のみ) | 必須(資本金問わず) |
| 時価評価課税(加入時) | なし | 広範囲 | 縮小・限定的 |
| 青色申告との関係 | 独立 | 連結納税内で完結 | 各社で青色申告承認必要 |
連結納税からの自動移行
💡 連結納税からグループ通算への移行
既に連結納税制度の承認を受けている法人は、2022年4月1日以降最初に開始する事業年度から、原則として自動的にグループ通算制度に移行されました。
移行しない場合の手続き:
2022年4月1日以降に最初に開始する事業年度開始日の前日までに「グループ通算制度へ移行しない旨の届出書」を親法人の納税地を所轄する税務署長に提出。
多くの法人は自動移行を選択しています。
完全支配関係の要件
グループ通算制度の適用対象は「完全支配関係」にある法人グループです。完全支配関係の判定基準を正確に理解することが重要です。
完全支配関係の定義
| 区分 | 定義 |
|---|---|
| 完全支配関係 | 親法人が直接or間接に他の法人の発行済株式等の100%を保有 |
| 直接の完全支配関係 | 親法人が直接子法人の株式100%を保有 |
| 間接の完全支配関係 | 親法人→子法人→孫法人と100%の支配が連鎖 |
| 適用除外法人 | 外国法人・公益法人・協同組合等 |
⚠️ 100%でないと適用不可
親会社が子会社の株式を99%しか保有していない場合、完全支配関係には該当せず、グループ通算制度は適用できません。役員持株や従業員持株会等で残りの1%が分散している場合、グループ通算適用のために株式集中の検討が必要です。
外国法人(海外子会社等)はグループ通算制度の適用外です。日本国内の内国法人のみが対象となります。
グループ通算制度のメリット
グループ通算制度には連結納税から引き継いだメリットと、新たに加わったメリットがあります。
主な4つのメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| ①損益通算による納税額削減 | 黒字法人と赤字法人の所得を通算 |
| ②事務負担の軽減 | 各社個別申告で全体計算項目が大幅減 |
| ③修正申告影響の限定化 | 1社の修正がグループ全体に波及しない |
| ④繰越欠損金の通算活用 | グループ内の繰越欠損金をグループ全体で活用 |
損益通算のシミュレーション
🧮 シミュレーション:グループ3社の損益通算
条件:親会社+子会社A+子会社B
・親会社所得:5,000万円(黒字)
・子会社A所得:▲2,000万円(赤字)
・子会社B所得:1,000万円(黒字)
合計所得:4,000万円
(A)単体納税の場合:
・親会社:5,000万円×23.2%=1,160万円
・子会社A:0円(赤字繰越)
・子会社B:1,000万円×23.2%=232万円
・合計納税額:1,392万円
(B)グループ通算の場合:
通算所得:5,000-2,000+1,000=4,000万円
・親会社負担分:5,000万円×23.2%=1,160万円→損益通算で減少
・子会社A:0円(損益で吸収)
・子会社B:1,000万円×23.2%=232万円
・通算による減算:▲2,000万円×23.2%=▲464万円
・合計納税額:928万円
節税効果:464万円
グループ通算制度のデメリット
メリットだけでなく、グループ通算制度には注意すべきデメリットもあります。適用前に十分なシミュレーションが必要です。
主な4つのデメリット
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| ①中小法人特例の制限 | 800万円軽減税率等が合算で制限 |
| ②時価評価課税(加入時) | グループ加入時に資産の時価評価が必要なケース |
| ③取りやめ不可 | 一度開始すると「やむを得ない事情」がない限り取りやめ不可 |
| ④電子申告必須・システム対応 | 電子申告システムの整備が必要 |
中小法人特例の制限
⚠️ 800万円軽減税率の合算制限
中小法人(資本金1億円以下)には法人税の軽減税率(800万円以下の所得に15%)が適用されます。しかし、グループ通算制度を適用すると、グループ全体で800万円までしか軽減税率が使えません。
例:中小法人3社のグループ
・単体納税:各社が800万円×15%軽減=3社×800万=2,400万円分の軽減税率
・グループ通算:グループ全体で800万円のみ軽減税率
差額:1,600万円分の軽減税率消失→税負担増加(15%→23.2%の差で約128万円増)
AYUSAWA PARTNERS
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鮎澤パートナーズに相談する適用判断のシミュレーション
グループ通算制度の適用は、メリット(損益通算)とデメリット(中小法人特例制限等)を定量的に比較して判断します。
適用判断の試算例
🧮 シミュレーション:中小法人3社グループの適用判断
条件:すべて中小法人(資本金1億円以下)・3社
・親会社所得:1,500万円(黒字)
・子会社A所得:▲800万円(赤字)
・子会社B所得:600万円(黒字)
合計所得:1,300万円
(A)単体納税の場合:
・親会社:800万円×15%+700万円×23.2%=282.4万円
・子会社A:0円
・子会社B:600万円×15%=90万円
・合計納税額:372.4万円
(B)グループ通算の場合:
通算所得1,300万円→グループ全体で800万円のみ軽減税率
・800万円×15%=120万円
・500万円×23.2%=116万円
・合計納税額:236万円
判定:グループ通算で136万円節税
(損益通算効果が中小法人特例制限を上回るパターン)
適用しない方が良いパターン
- グループ全社が安定的に黒字(損益通算メリットがない)
- 中小法人特例の活用度が非常に高い(全社800万円以下の所得が多数)
- グループ内に時価評価対象資産が多い(加入時の課税負担)
- 子会社の業績変動が小さい(損益通算機会が少ない)
- グループ再編・売却を予定している(取りやめ不可のリスク)
適用開始の手続き
新規にグループ通算制度を適用する場合は、事業年度開始3ヶ月前までに承認申請書を提出します。
承認申請の手順
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 提出書類 | グループ通算制度の承認の申請書(様式付き) |
| 提出者 | 親法人(全子法人の連名必要) |
| 提出先 | 親法人の納税地を所轄する税務署 |
| 提出期限 | 適用開始最初の事業年度開始日の3ヶ月前まで |
| 記載事項 | 親法人+全子法人の名称・住所・代表者・資本金等 |
みなし承認制度
💡 みなし承認
承認申請書を提出した後、適用開始事業年度開始日の前日までに税務署長から否認の通知がない場合、承認されたとみなされます(みなし承認)。
実務的には:
・3月決算法人の例:翌年4月1日開始事業年度から適用したい→12月末までに申請
・12月決算法人の例:翌年1月1日開始事業年度から適用したい→9月末までに申請
申請から承認まで実質的に3ヶ月の準備期間があるため、計画的な手続きが必要です。
申告書作成の実務
グループ通算制度の申告書作成は、各法人が個別に作成しますが、グループ全体での損益通算等の調整が必要となるため、独特の手続きがあります。
申告書作成のフロー
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①各社の個別所得計算 | 通常の法人税申告と同様に各社で所得を計算 |
| ②グループ内通算項目の調整 | 損益通算・繰越欠損金通算等の調整計算 |
| ③通算税効果額の精算 | グループ内法人間で通算税効果額の授受 |
| ④各社の最終法人税額確定 | 調整後の各社の納付税額を確定 |
| ⑤電子申告 | 各社の所轄税務署に電子申告(必須) |
通算税効果額の精算
通算税効果額とは、損益通算等により減少した法人税相当額のうち、グループ内法人間で精算する金額です。これは益金・損金には算入せず、グループ内のキャッシュフロー上のやり取りとして処理されます。
関連制度との関係
グループ通算制度は他の税制と関連性があり、適用判断にあたっては全体的な税務最適化を検討する必要があります。
関連する税制
| 関連税制 | グループ通算との関係 |
|---|---|
| 中小企業投資促進税制 | グループ通算適用でも各社個別に適用可 |
| 研究開発税制 | グループ全体での税額控除限度額調整あり |
| 外国税額控除 | グループ全体での限度額計算 |
| IFRS(国際会計基準) | グループ通算は税務上の制度・会計とは別建て |
よくある質問
まとめ
📋 この記事のポイント
- グループ通算制度は2022年4月施行・連結納税制度の後継
- 完全支配関係(100%)にある内国法人グループが対象
- 各法人が個別に申告・納税(連結納税の一括申告から変更)
- 損益通算可能・修正申告影響の限定化・電子申告必須
- 中小法人特例(800万円軽減税率等)はグループ全体で制限
- 一度適用したら原則取りやめ不可・長期的判断必要
- 適用開始は事業年度開始3ヶ月前までの承認申請
- みなし承認制度あり(否認通知なければ自動承認)
- 連結納税からは原則自動移行(移行しない選択も可能)
📝 次のアクション
- 自社グループの完全支配関係(100%)を確認
- 過去3年間のグループ各社の損益データを集計
- 適用 vs 不適用のシミュレーションを実施
- 中小法人特例の影響を試算
- 適用判断後、事業年度開始3ヶ月前までに承認申請
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